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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2024年11月


今日が、雨でよかった――時を超え、かたちを変えて巡る、“つながり”と再生の物語。
ビルの取り壊しに伴うリフォームジュエリー会社の廃業を起点に時間をさかのぼりながら、物から物へ、人から人へと、30年の月日のなかで巡る想いと“つながり”、そして新たなはじまりを描く、寺地はるな(2023年本屋大賞9位)の真骨頂が光る、感動長篇。
出会い、卒業、就職、結婚、親子、別れ……。中学の卒業制作づくりで出会った4人がそれぞれ直面する数々の選択と、その先にある転機、人生のままならなさ。不器用に、でもひたむきに向き合う彼らの姿を通して、日常のささいな不安や違和感を丁寧にすくい取って人の弱さにそっと寄り添いながら、いまを生きるあなたにエールを贈る大人の青春小説。
《あらすじ》
1996年冬、中学卒業を控え、卒業制作のレリーフづくりで同じ班になった永瀬珠、高峰能見、森侑、木下しずくはそのモチーフを考えていた。進路に迷う美術部員の永瀬、男女問わず学校中の人気者の高峰、誰に対しても優しくおっとりした森、物静かで周囲と距離を置く転校生のしずく。タイプの異なる4人がモチーフに選んだのは雫型(ティアドロップ)だった。
「古代、雨は神々が流す涙であると考えられていました。雨の雫はあつまって川となり、海へと流れ込み、やがて空にのぼっていく。その繰り返しが『永遠』を意味する、という説があります」
「永遠って、なんですか? 先生。そんなもの、あるんですか?」
美術教師が教えた「永遠」の意味。以来、永瀬や高峰の心に「永遠」が静かに宿り、やがて4人は別々の道を歩み始めた――。
時は流れて2025年春、リフォームジュエリー会社『ジュエリータカミネ』は、入居するビルの取り壊しにあわせて営業を終了した。ビルからの退去当日、デザイナーとして勤めた永瀬は将来への不安を抱えつつも次の仕事を決められずにいた。かたや、信念を持って店を立ち上げた高峰は、妻との離婚や自身の体調を崩して以来すっかり覇気がない。森は誰もが知る企業に勤めたものの上司のパワハラによって心に傷を負った。地金職人として独立したのち離島へ渡ったしずくは、いまも自分の感情を表すのが苦手なままだ。
30年の道のりの過程にある仕事、結婚、親子関係……。人との関わりでつまずきながらも、一方で人とのつながりによって救われてきた不器用な4人は、ままならない人生にもどのようにして前を向こうとするのか。「永遠」は不変で繰り返されるからこそ続くものなのか、それとも――。物から物へ受け継がれるジュエリー、人から人へと受け継がれる想いを通して、つながりの尊さとささやかで慈しみ深い日常を描く珠玉のヒューマンドラマ。


                    (NHK出版HPより)



永瀬 珠・・・同級生の高峰能見に誘われて「ジュエリータカミネ」で
       ジュエリーデザイナーとして25歳~20年間働いてきた

高峰能見・・・株式会社高峰の社長。「ジュエリータカミネ」は廃業すると決める


森 侑(たすく)・・・高峰ビル内の「かに印刷」で働いていた。会社が移転することに


木下しずく・・・高峰とは親戚関係。家庭の事情で中学卒業と同時に地金細工をする
        駒工房に弟子入りした。一時期、高峰の家で暮らしていた。



4人は中学3年生の卒業制作のとき、同じ班になり以来、親交がつづく。
男女で、こういう絆で結ばれている関係はいいな~。

高峰も森も結婚して子供もいるのだけど、高峰は離婚して妻と娘とは離れて暮らしている。
一時、心労から入院までした高峰だけど、その時も森や珠が見舞い勇気づけている。
しずくは、少し内向的であまり自分を主張しないけれど、好きな人と巡りあって
しあわせそうで良かった。


表題の「雫」は、卒業制作で4人が作ったモチーフ。
永遠に継続されていくという意味もあると教えてくれた美術教師の田村先生も
素敵だったな。

最後はその田村の個展で4人が再会という場面。
しずくのパートナー・奥田さおりもすてきな女性だった。


最後の場面は雨だけど、清々しい。




                      ★★★★
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発行年月:2024年8月


会社員の實成は、父を亡くした後、得体のしれない不安(「モヤヤン」と呼んでいる)にとり憑かれるようになった。特に夜に来るそいつを遠ざけるため、とにかくなにも考えずに、ひたすら夜道を歩く。そんなある日、会社の同僚・塩田さんが女性を連れて歩いているのに出くわした。中学生くらいみえるその連れの女性は、塩田さんの娘ではないという……。やがて、何故か増えてくる「深夜の散歩」メンバー。元カノ・伊吹さん、伊吹さんの住むマンションの管理人・松江さん。皆、それぞれ日常に問題を抱えながら、譲れないもののため、歩き続ける。いつも月夜、ではないけれど。

                  (角川j春樹事務所HPより)



主人公の實成冬至の人との関わり方がすごくいいなと思った。
自身は自分のことを過小評価しているのだけど・・・


父親が癌で他界してから何かモヤッとした影のような存在を感じるようになる。
寝ていて、それに覆われそうになると布団から出て住んでいるアパートの近辺を
グルグル歩く。

そんなある日、出会った同じ職場の女性・塩田さん。
一緒に歩いているのは中学生の女の子。
以来、都合が合えば一緒に歩くようになる。


独身だと聞いている塩田さんと女の子の関係を気になりながらも質問しない實成。
そういうところ好感をもつ。
次第に、相手から実はね・・・・と話してくれる。
その時も、ただ話を聞いて「そうなんですね~」に留めるとこともいい。
實成のアパートの隣人とベランダ越しに会話を時々するのだけど、
ある日、小学校時代の同級生とわかり驚く實成。
深く相手を詮索しないとこういうかんじになるんだな・・・・と少し笑えた^m^

夜の散歩のメンバーがすこしずつ増えていく。

實成の元彼女の伊吹さん、伊吹さんのマンションの管理人・松江は男性の
パートナーと暮らしている。
松江は普段、言わないそのことをサラリと實成たちの前で話し
「自分から普通は言わないんですけど・・・」と。
たぶん、この人たちになら話してもいいと思ったんだろうな。


そして、誰かが困った状況になっていると確信すれば、迷わず助けに入る。
ほんと、理想的な人間関係。



伊吹さんは今、付き合っている男性との問題を解決しようと実家に。
中学生の彩夏(呼び名がザべ子~熊と変わったが)は自分で考えて父親の元に。


みんな最後は自分で一歩踏み出していった。
實成も会いにきた、もっちゃん(望月ゆうな)と新しい関係が生まれるのかな?


今回の話、過去の寺地さんの作品のなかで一番、すきかも。


表題は 「いつも月夜に米の飯」 ということわざかららしい。
これ、ことわざだったんだぁ~

一年中、月夜と米の飯さえあれば申し分ない(あきることない、気楽な生活)
という意味らしい。
また、満足な生活を願えど実際は、なかなかそうはいかないことという意味も
同時にあるとか。
勉強になりました。



                     ★★★★★



発行年月:2024年3月


前職の人間関係や職場環境に疲れ果て退職した茉子は、親戚の伸吾が社長を務める小さな製菓会社「吉成製菓」に転職する。
父の跡を継いで社長に就任した頼りない伸吾、誰よりも業務を知っているのに訳あってパートとして働く亀田さん。やたらと声が大きく態度も大きい江島さん、その部下でいつも怒られてばかりの正置さん、畑違いの有名企業から転職してきた千葉さん……。
それぞれの人生を歩んできた面々と働き始めた茉子は、サービス残業や女性スタッフによるお茶くみなど、会社の中の「見えないルール」が見過ごせず、声をあげていくが――。
一人一人違う”私たち”が関わり合い、
働いて、生きていくことのかけがえのなさが胸に響く感動長編!

                    (集英社HPより)




主人公・小松茉子(27歳)。

前の会社で同僚に対してのわだかまりを抱えつつ、新たな職場で奮闘。

古い会社のルールに疑問を感じる。
・昼休みは電話番をしながら食事。
・就業時間後の残業は、タイムカードを押してから

これは、まずい。
ブラック過ぎる。
こういう会社、今も実際にありそう。
異を唱える人もいない・・・ずっとそれでやってきたから・・・と。

職場の人間関係にも戸惑いつつ・・・
それでも、根っからの悪い性格の人がいないのは救いかな?

無口で最低限のことしか話さない女性パート職員の亀田もいいと思う。
その息子・善哉は、陽気でいい感じ。
茉子とも親しくなっていく。

父親から後を継いだ吉成伸吾は、頼りないかんじだけれど、彼なりに
頑張っているのがいい。
頑張りすぎて倒れても、結局、続ける決断をしたのは、良かった。

社長一人が頑張らなくても、皆で頑張ればいいんじゃない?という雰囲気に
なっていったのは茉子の存在が大きかったと思う。

前の会社できまずい関係になった同僚とも再会し、関係が修復されたのも
良かった。

大丈夫そうじゃないひとに「大丈夫?」と聞いて「大丈夫です」と言われたとき
安心してしまうのは、本当に危険なこと。
うんうん、わかる。
違う聞き方で何度も本当に大丈夫なのかを確かめないと。
でも、つい言っちゃう「だいじょうぶ?」

逆に聞かれることもある。
本当に大丈夫な時以外「大丈夫です」は、言わないこと・・・再確認した。


表紙の絵は可愛らしいけれど、内容は結構、シビアで考えさせられた。
寺地さんらしい本。



                    ★★★



発行年月:2023年8月


同じ地方都市に生まれ育ち現在もそこに暮らしている三人。4歳の娘を育てるシングルマザー――朱音。朱音と同じ保育園に娘を預ける専業主婦――莉子。マンション管理会社勤務の独身――園田。いじめ、モラハラ夫、母親の支配。心の傷は、恨みとなり、やがて……。2023年本屋大賞ノミネート、最旬の注目度No.1作家最新長篇。

                   (新潮社HPより)




中学時代、いじめを受けていた園田 律。
暴力を振るわれたとかではないけれど、中原大樹のことがずっと忘れられず
「あいつを殺してから死のう」とまで思いつめる。

園田と偶然、会った佐々木朱音。夫とは離婚前提で別居し、4歳の娘・鈴音と
暮らしている。

中原大樹の妻・莉子は、中学時代の同級生・大樹と結婚したが
いつも自分を見下しているような大樹の態度が許せなくなってきている。


園田、朱音、莉子。
同じ街に暮らし、接点も。

それぞれが接していくうちに、少しずつ、自分の気持ちが変化していく。

自分に不の感情しか与えない人とは、離れるべきだな。


最後、園田の姪・かんなと、朱音の娘・鈴音、莉子の娘・芽愛が
仲良く下校する様子が微笑ましかった。
重たい話が少し軽くなって、良いラストだった。



                     ★★★★



発行年月:2023年2月


良い子は天国へ行く。悪い子はどこへでも行ける。
行き場のない母子を守る「のばらのいえ」は、大学のボランティア活動で知り合った志道さんと実奈子さんが、「かわいそうな子どもを救いたい」と理想を掲げ同志となって立ち上げ運営する家。そこに暮らす祐希は、束縛され未来のない現実から高校卒業と同時に逃げ出した。十年後のある日、志道さんが突然迎えに来る。しらゆきちゃん、べにばらちゃんと呼ばれ、幼少のころから一心同体だった紘果を置いてきたことをずっと後悔してきた祐希は、二度と帰らないと出てきた「のばらのいえ」に戻る決意をするが――。

                   (幻冬舎HPより)




6歳の時、両親が育児出来ない状況になり、父のいとこの娘・実奈子と

その夫・志道の元で暮らし始める祐希。
夫婦はボランティア目的で母親とその子どもの避難所的な住処を提供。
そして、ある日、祐希と同い年の紘果と11歳の保の兄妹が、子どもだけで来て
実奈子と志道は、新しい家族だと一緒に暮らし始める。


6歳では、保護者が居ないと生活できないから、幼い祐希には、実奈子と志道の
存在は生きていくためには必要だった。
でも、彼らは次第に祐希を都合よく利用していく。
保は精神が安定せず、接し方が難しいが、祐希に対しては逆らわないので
余計、祐希の負担が増えていく。
心の中にある不満もなんとか我慢して生活している祐希に、
担任になった春日先生の存在が救いになる。
祐希の内面に抱えているものを理解し、高校卒業と同時に
自由になる手助けをする。

必要最小限の手助け。
だけど、それが祐希が生きる力になる。

10年後、住んでいたアバートが火事になり、焼け出されたところに
志道が来て、また「のばらのいえ」に戻ることを勧められ、行き場もないので
それに従い、再会した紘果に接しながら、10年間に「のばらのいえ」で
起きたことを知っていくうち、紘果も連れだすことを決心。
紘果もよく頑張った!

最後まで、どうなる?と心配だったけれど
寺地さんの物語ならきっと希望で終わるはず!と信じて読んで良かった。


しかし、志道のような人は厄介だな。
一見、優しく保護してくれている様でも実は子どもたちを縛り付けていた
わけだから。。。

高校の同級生で、志道の兄の息子・英輔の存在も祐希たちにとっては
有難かった。

色々と助けてくれる人の存在があって、良かった。
こんな状況に置かれた子どもが居ることに世の中の大人たちは
気づいてあげないといけないな。



                     ★★★

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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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