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読んだ本の感想あれこれ。
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b910831d.jpg発行年月:2007年4月


現役医師が描く「医療の危機」!困難に立ち向かう医師たちのドラマ!

城南大学病院に勤める女性医師・柊奈智は、深夜の当直で容態の急変した胎児を救うために緊急帝王切開を行なう。それは、生死を分けるギリギリの判断だった。だが、それから悪夢が始まった。過酷な勤務の中、次々と奈智を襲う試練。そして、ついに、迎えた医療における最大の悲劇にショックを受けた奈智は・・・・・・。

                                      
(早川書房HPより)

この秋スタ-トのテレビドラマ「ギネ 産婦人科の女たち」の原作本ということで興味があり読みました。
著者は現役の産婦人科医師で教授。
その立場から、現場の過酷な状況を臨場感溢れる描写で書きながら、産婦人科医師としての著者本人の今の日本の周産期医療の遅れを鋭く指摘されていました。

患者さんに精神誠意、向き合い、その場その場で一番良いと判断した処置を行なっている医師たち。
そんな医師でも、不幸な結果が起きてしまったら?
物語は、そんな設定で進みます。

お産は病気じゃない。赤ちゃんが生まれて母子共に無事に退院するのが普通だと認識されている今の世の中。
そこで、母子死亡という事態が起きてしまったら?
遺族のショックが大きいのは想像つきますが、医師側のショックも計り知れないものだと、読者はこれを読んで気づく。

ショックを受けた担当医と遺族、それぞれ同じ哀しみを抱えながら、周りからいろいろな影響にさらされ裁判というものにより、敵対するような形を取らざるを得ない状況はどうにかならないものか?
いろいろな影響の最たるものは、マスコミの容赦ないバッシング。

医師の助けられなかったという自責の念は、置きざりにされ、病院のトップは過失はなかったの証拠集めに奔走。
そんな様子を遺族側は、担当弁護士から聞かされ、信頼していた気持ち一挙に失う。
なんとか助けようと懸命に処置を行なった医師が訴えられる側になってしまう。

裁判って、誰のため?何のために必要?

今の日本では、それをしないと遺族側に何ら補償の手立てがないから・・・・。

それなら、補償制度を作ればいいじゃない!!

読んでいるとそう強く思います。

著者もその辺の事を強く世間に訴えたかったと、あとがきで書かれていました。

一刻も早く、産科医療における無過失補償制度が創設されますように。
それを機に、全領域の医療事故に適応されることも必要ですが、先ずは産科!


かなりリアルな医療の現場の話で、難しい専門用語も多いのですが、多くの方に読まれるべき書だと思います。

ドラマも楽しみに見ていますが・・・・ちょっと誇張し過ぎで「そんな事は現場ではあり得ない!」という事も度々出て来て、ずっと前、産婦人科病棟で勤務していたわたしには苦笑してしまう場面もありますが。。。。^^;

原作は、素晴らしいです!!
主人公の柊先生、原作では、始終素晴らしい先生です。


お医者さんって、自分の訴えることがあると、こんな風に本を書けちゃうものなのかな?
すごく忙しいと思うのに、こんな文才もあって、尊敬します。


★★★★★
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c0bd8374.jpg発行年月:2009年9月


38歳の菜月は奇天烈な会合に誘われて・・・・。

日々の「?」をまな板に載せ、老若女女が語らえば-----人との関わりに戸惑いを覚える貴方に贈る、コミカルにして奥深いガ-ルズトーク小説。


                      (中央公論新社HPより)


いや~最高に面白かったなぁ~。

結婚8年目、2歳年上の夫・光と気ままな二人暮らしをしている菜月。
「おんなは30過ぎまで働けばじゅぶん」という光の考えに、さして疑問も抱かず専業主婦の日々。

そんな彼女の買い物途中のいつもの道で、声を掛けて来たのは、元彼(?)のお母さん。
元彼の苗字が戸井だったことから、彼女を戸井母と呼ぶ。

戸井母との会話中、出てきた「これでよろしくて?同好会」。
名刺をもらい、良かったら参加してみない?と言われ、後日その会に参加するところから物語が面白く進む。

会のメンバ-は菜月のほか、最初は三人。
その後、もう一人加わり全員揃えば、5人?誰かが用事で4人だったりするけど、
その会の様子が実に楽しい。
いつも決まったお店で、食事(ランチ?)を楽しみながら、誰ともなく提議された事について、各自の考えを述べる。
戸井母が毎回、ノ-トに議事録(?)をつけているのも可笑しい。

その内容が、また「ああ、それわたしも疑問だと思ってる!」って事だったり・・・。

夫婦間のこと、職場でのこと、嫁姑のこと・・・。

最初の方に出てきた、「パンツ問題」には、笑いながらもちょっと自分の事、考えちゃったり・・・^^;
実はわたし、立木雛子説と同じです(照)
これ、読んだ人だけわかるけど・・・笑


メンバ-が既婚者なので、これは結婚してる人が読む方が面白いでしょう。
いや、結婚してる人なら皆、面白く読めると思う!

同好会の話以外にも、菜月の夫婦間、夫の実家の家族(両親、夫の兄弟とその配偶者)との関わりもリアルで興味深かった。


最初から最後まで楽しめました(^^)

★★★★
aca60afc.jpg発行年月:2009年4月


『ゆれる』で世界的な評価を獲得し、今、最も注目を集める映画監督が、日常に潜む人間の本性を渾身の筆致で炙りだした短編集。

『ディア・ドクタ-』に寄り添うアナザ-スト-リ-ズ。


                     
  (ポプラ社HPより)


『ゆれる』は映画も本も読みました。
人間の内面にある心理の揺れを描いて、映画も本もそれぞれに感動しました。

この作品も人間の内面にあるものが、よく描かれていました。
短編集ということで、5つのお話。

「ありの行列」「ディア・ドクタ-」「満月の代弁者」は、都会の最先端医療の現場でない場所(僻地)での医療に臨む医師たちが描かれていました。

映画化された「ディア・ドクタ-」は、まだ見ていませんが、ここでは、主人公の目線でみた家族の姿が描かれていて、医師を目指しながら、違う道に進ん兄に対する憂いなどが伝わり、切なかった。


最初の話「1983年のほたる」は、病院は出てこなかったかな?・・・・^^;
もしかしたら、映画「ディア・ドクタ-」に関わる人物の子ども時代?
主人公の女の子は小学生で、都会じゃない村のなかでいろいろ彼女なりに、考えがあって努力し、自分の道を進んでいく。
高校生になった彼女が生き生きして、かつて自分より高いところに居たような同級生と対等に付き合っている様子は、読んでいて気持ちよかった!

一番個人的に好きなのは「ノミの愛情」、かなり自尊心も高い外科医の夫とナ-スの妻の話。
日常のやり取りもなかなか面白いけど、夫の具合が悪くなり、救急車を呼ぶ呼ばないの問答。

自分が元看護師なので、もしも・・・夫が医師で同じ状況になったら・・・
なんて、つい想像しちゃって可笑しかった。


短編集なのに、ひとつひとつの話の中の人物たちの心境やらその置かれた状況が、
すごくよくわかって、映画監督だからなのか?
その状況が視覚的に浮かぶような表現で、どの作品も良かった。

映画『ディア・ドクタ-』も見てみなきゃ!!

★★★★
dd10cedd.jpg発行年月:2009年9月


江戸の匂いも残る日本橋の一角で発見された、ひとり暮らしの四十代女性の絞殺死体。
「どうして、あんなにいい人が・・・」周囲がこう声を重ねる彼女の身に何が起きていたのか。
着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、事件の謎を解き明かすため、未知の土地を歩き回る。


                                      
(講談社HPより)

ひとつの殺人事件の聞き込みをしながら、事件の起きた人形町近辺を回る刑事・加賀。
この土地の新参者というわけですが、情報収集能力は素晴らしい!

9章に分かれて、いろいろな場面で、情報を得るなかで、事件に直接は関係しない人のちょっといい話が散りばめられていました。
殺人事件の真相も気になりますが、加賀が聞き込みで接した、人形町の人々の日常の出来事が楽しかった。

お店が多く出て来ました・・・・煎餅屋、料亭、瀬戸物屋、時計屋、洋菓子店、清掃屋、民芸品屋

町の様子が浮かぶよう。歩いてみたくなる。

後半部分になると、段々と被害者の近い間柄の人たちとの接触になり、事件の真相も段々と明かされる。
被害者の生前の暮らしぶりを知ると、何とも無念と感じました。
生きていたときの事を知ると、犯人に対する憎しみも倍増!

直接、犯人逮捕に結び付かないような情報も得る加賀ですが、それらについて
「事件の捜査だけが刑事の仕事じゃない。事件によって心が傷付けられた人がいるのなら、その人だって被害者だ。被害者を救う手段を探しだすのも刑事の役目」と言う加賀刑事は、素敵!

こんな人情に厚い刑事さん、いいですね~。

事件の真相も明かされ、犯人もわかり、スッキリ!

なかなか面白い展開でした。

この加賀刑事が登場の作品は、シリ-ズで結構、あるようですね。
最後の著者経歴を見ていたら、そのシリ-ズ物の作品名がありました。

わたしは・・・・「赤い指」しか読んでなかったですが・・・加賀刑事、こんな人だったっけ?あまり覚えていません^^;

かなりこの刑事さん、気に入ったので、過去作品の加賀刑事を知りたくなりました。
今度、読んでみよう。


★★★★
246e0f6f.jpg発行年月:2009年7月


ライラックの森にユニコ-ンが暮らしていた。
あるとき、自分は世界でただ一頭のユニコ-ンになってしまったのでは?の不安に駆られて森を抜け、仲間探しの旅に出る。

1968年発表の名作ファンタジ-「最後のユニコ-ン」に37年ぶりに続編「ふたつの心臓」を併せての完全版


文芸誌に紹介されていて、読んでみました。
結構、厚い本で、少し読むのに時間がかかりましたが、面白かった。
面白いと簡単に言えるものではなく・・・・物悲しいけれど美しい、最後は、ちょっと温かいものも感じるお話で、結構、好みの作品でした。

「最後のユニコ-ン」では、自分以外の仲間の存在が気になり、ずっと暮らしていた森から出て、仲間探しの旅に出るユニコ-ン。
自分は気高く美しい生き物と自負していたが、森を出て遭う人間たちには、ユニコ-ンをユニコ-ンとわからない。
そのことに戸惑うユニコ-ン。
まさに浦島太郎状態ですね・・・哀しいです(/_;)

けれど、旅の途中にユニコ-ンに気づいた者がいた。
それは魔術師のシュメンドリック。
もう一人・モリ-・グル-をお供の仲間に、ユニコ-ンの仲間探しの旅に同行する。

旅の最後に訪れたお城で、そこに住む、王と王子と4人の兵士に出会う。

王子とユニコ-ン(魔法で若い美しい姫に変えられて)の恋。

ユニコ-ンの敵、赤い雄牛との対決。

冒険のクライマックスは、ハラハラドキドキ。

魔法によって、人間の心を持ってしまったユニコ-ンの最後の決意は、哀しい。

魔術師に出会わなかった方が幸せだったんじゃないか?
でも、ユニコ-ンのままなら体験出来なかった恋を経験出来たのは良かったのか?

そして、その続編にあたる「ふたつの心臓」
「最後のユニコ-ン」から37年後に発表とあるが、物語自体もかなりの年月を経た様子。

ユニコ-ンが恋した王子は、王になっていたがかなりの高齢。

魔術師・シュメンドリックとモリ-は、その王を雄牛との闘い以来、初めて訪ねようとしていた。
その途中グリフィンにさらわれた友達を救い出してほしいと王様にお願いしに行こうと思っている9歳のス-ズと会い、一緒に王の元に。

リ-ア王は再会を喜び、そして、自らグリフィン退治の為、ス-ズの村に出向く。
王である事を隠し、王に仕える騎士の一人であるとして・・・・


再び、壮絶な闘い。
またまた、ハラハラドキドキ。

そして・・・・・

哀しい・・・・でも美しい・・・・最後に駆けつけたユニコ-ン。

再び出会えて良かった。

読み終えたあと、なんだか、ず~っと不思議な余韻が続いていました。

これ、続編も含めての映像化されないかな?

訳者の金原さんが「あとがき」で書いていますが、「指輪物語」「ゲド戦記」とは、ちょっと違った幻想的ファンタジ-だと思いました。

何度か読み返したい物語!


★★★★★

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自己紹介:
台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;

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