プロ棋士の夢が破れた男と、金髪碧眼の不思議な美少女が出会う。
彼女に将棋を教えるといつしか奇跡的な才能が開花する…。
「天才とは何か?」厳しくも豊かな勝負の世界を生き生きと描き出す快作。
第24回小説すばる新人賞受賞作。
(集英社HPより)
将棋の話なので、理解出来るか心配でしたが・・・結構、面白く読めました!
表題の「香車」はキョウシャと読んで、将棋のコマの名前ということすら知らなかったわたし^^;
かつては将棋の世界にいた著者ならではの物語です!
登場人物が結構、多いけれど、女性陣のほうが魅力的。
将棋の天才的センスを持つサラ。
その能力を見出し、将棋を教える瀬尾健司。
瀬尾も以前はプロの棋士を目指していた。
将棋の世界では、4段からがプロで、給料もいただけるらしい。
そして、瀬尾とかつてプロを目指し入会していた「奨励会」で一緒だった萩原塔子。
塔子は女流棋士として有名になっていた。
瀬尾はいつかサラを塔子と対局させたいと言う。
サラとは別の場所で天才少女棋士として名が知れていた北森七海。
七海は塔子に憧れ目標にしていた。
サラ、七海、塔子の3人の物語がよい。
七海はサラと対局し、負けたことで将棋の世界から遠ざかる。
そして、終盤のサラと塔子の対局の場面。
ビックリなことが起きて・・・・・でもその後の物語が感動的だった!
二人の対局を見ていた七海も、再び違うかたちで将棋に関わっていこうと決め
ラストはそれぞれのこれからの活躍が期待出来そうでした。
始終、つかみどころのないサラの行動や発言。
でもそんな雰囲気が魅力的でもあり、サラの今後の話を特に知りたいな・・・と思った。
将棋を知らないわたしでも十分、楽しめたから、将棋を少しでも知っている方は、もっともっと楽しめるだろうなぁ~。
著者はこれがデビュ-作かな?
これからの作品も大いに期待できる作家さんがまた増えて嬉しい(^^)
曙光の人もある。夜陰を照らす月のごとき、脇役の人生もある。
「私は歴史の敗者を描きたい。彼らの存在に意味はなかったのかと」
50歳で創作活動に入り、アラカン世代で直木賞を受賞した歴史・時代小説家、初めての随筆集。
ひたむきに生きる人々の姿を、和歌や漢詩を引用しながら香り高く描いた作品がファンを広げている葉室麟氏。
小説のモデルとなった人物や、敬愛する作家、自身の読書遍歴、
50代で創作活動に入った思いなどをつづった。
直木賞受賞後に書かれた随筆のほか江戸時代の福岡・博多を舞台にした短編小説「夏芝居」も収録。
(西日本新聞社HPより)
こんなに格調高いエッセイは、今まで読んだことないなぁ~。
歴史は学校で習ってはいるけど、人物については意外と深くは知らない。
葉室さんの本では、今までの知っている歴史上の人物のほかにもあまり聞き馴染みのない人物も多々登場。
そして葉室さんの取り上げる人物たちに共通しているのが、ひたむきさ。
真摯に自分のできることを世のため、人のために黙々とこなしていく。
この随筆集を読むと、葉室さん自身にそんな雰囲気がみえる。
北重人さんとの思い出を語った箇所は感慨深かった。
北さんの作品をわたしも幾つか読んで、まだまだ作品を読ませて貰いたいと思っていたのに61歳という若さで2009年に亡くなって、とても残念に思っていたので、その北さんとのエピソ-ドを読んで、ジ~ンと来るものがあった。
そして、若い頃、読んだ書をもう一度読むことにより、記憶のなかの懐かしい自分と対話する時間を持てるという部分には、なるほど~!と思った。
葉室さんが若い頃に読んだという「心変わり」(ミシャエル・ビュト-ル/著 清水徹/訳)を、読んでみようかなぁ~。
最後の短編「夏芝居」も良かった!
若い頃、夏芝居を父親と見に行き、そこで知り合った男性と駆け落ち騒動まで起こしたことのある、お若が10年ぶりにその男性・市助と再会する話。
お若の夫・治三郎が粋だなぁ~。
短編は読んだことないけれど、面白かった!
過去の作品には短編集もあるのだろうか?
探してみようかな?
表題の意味も随筆を読むとよくわかる。
どうか長く作家活動を続けてください!!と言いたい作家さん。
家老と一藩士の、少年時代からの友情と相克を描く松本清張賞受賞作
江戸中期、西国の地方藩で同じ道場に通った少年二人。
不名誉な死を遂げた父を持つ藩士・源五の友は、いまや名家老となっていた
(文藝春秋HPより)
素晴らしかった!!
なんと美しい文章なんでしょう。
葉室作品を読むようになったのは、最近なので、まだ読んだ作品数が少ないのですが
ハズレにない作家さんですね!
この書は、3月24日の記事同一著者の「無双の花」にコメントを下さった、ひろさんから薦められたものです。
薦めてくださってありがとうございますm(__)m
物語は、家老となった松浦将監が領内の新田の様子を視察に来て、郡方側の日下部源五がその案内役を命じられ二人が久しぶりに顔を合わすところから始まる。
将監と源五は12歳~13歳頃、剣術を学ぶ道場で知り合い、それ以後親しくなったが、ある事を境に二人の間には隔たりが生じていた。
そして、物語は、まだ二人が知り合った頃の出来事から語られていく。
現在の身分が違う二人の姿を織り交ぜながら。
二人が出会った頃に知り合った十蔵と3人で夏祭りに行き、夜空を見上げて話す場面が印象的。
それがは、その後の成長した3人にも同じように思い出深い場面として心に留められていたのだとわかる場面では、ジ~ンと胸が熱くなった。
十蔵が大切に保管していた蘇軾(そしょく)の「中秋月」という漢詩
暮雲収め尽くして清寒溢れ
銀漢声無く玉盤を転ず
此の生、此の夜、長くは好からず
明月、明年、何れの処にて看ん
日暮れ方、雲が無くなり、さわやかな涼気が満ち
銀河には玉の盆のような明月が音も無くのぼる。
この美しい人生、この楽しい夜も永久につづくわけではない。
この明月を、明年はどこで眺めることだろう。
これを持っていた十蔵の気持ちを思うと泣けた。
将監に絶縁状を送った源五の気持ちもわかったけれど、将監の立場ならば十蔵に行ったことも仕方のないことだったとわかる。
ところどころに漢詩が出て来るのですが、これがとても効果的だった。
漢詩はよくわからないのですが・・・ちゃんとどんな意味か書いてくれているので助かります。
詩の言葉がそのときの登場人物の気持ちや情景がよく表していました。
終盤、脱藩し、江戸に向かうという将監を助ける源五。
無事に果たせるのか?ハラハラドキドキ。
緊迫感が終盤で増して、盛り上がりました!
葉室作品にハズレなしの予感。
まだまだ未読の過去作品がたくさんあるので、これから読んでいこう!
たのしみ♪たのしみ♪
これは文句なしの★5つ・・・以上だな。
★★★★★
「ヘブン」に行けばきっと幸せになれる――自分の居場所はここではないという疎外感のなかで育ち、「地上の楽園」を求めて日本を離れた一人の少女を待ち受けていたものとは……。北朝鮮への帰国事業が引き起こした悲劇を下敷きに、少女の心の成長を描く。
(朝日新聞出版HPより)
物語は、祖父が父に宛てた手紙にあった「ヘブン」を目指して日本を後にした少女・茉奈の物語と、
在日朝鮮人の北への帰国事業に関わった人物の手記の部分が交代に出て来る。
最初は、その二人の関係がわからないまま読み進むかたちになったけど、段々とその関係性が分かってくる。
史実が元となってはいるけど、どこかSFっぽいかんじもするのは、「ヘブン」を目指して辿り着いた国が、あまりにも日本とは違うため、異世界の雰囲気を感じるためかもしれない。
何者かに追われ、逃げる茉奈は、暗い洞窟のような場所に身を潜めるのだが、そこでいろいろと助けてくれた若い兵士との出会いがなければ命も危なかった。
そして、その兵士自身は、命を賭けて茉奈を助けてくれた。
兵士との別れの場面は、哀しかった。
そして、「ヘブン」の本当の姿を知り愕然とする。
その後も危ない目には遭いながらも、助けてくれる人が居て、茉奈は生き延びた。
茉奈の物語と一緒に進んだもう一つの話との関係性も最後には、わかる。
う~ん。
なかなかよく出来た物語だった!
あまり知らなかった史実のことも考える事が出来たし。
哀しい物語だったけど、最後に救いがあったのは嬉しかった。
この著者は、いろいろな話を読ませてくれる。
次回作も大いに期待します!!
戦国の世、信長の娘が選んだ「女いくさ」
信長の血をもっとも色濃く受け継いだ娘、冬。
生まれながらに背負った運命に翻弄されながら、
夫・蒲生氏郷への愛と父への崇敬を胸に自らが信じる道を歩んでいく。
その数奇な半生を辿る歴史長編。
(集英社HPより)
信長に娘がいたことは知っていましたが、名前までは知らず・・・
冬姫という人がこんな一生を送った人ということも本書で初めて知りました。
物語に主人公になる人は、多少脚色されて魅力的に描かれるものだとは思いますが、
冬姫の考え方や生き方には、共感できる部分があってとても好感が持てました。
今まであまり世の中に知られていないのが不思議なくらい。
信長の娘であり、それなりの誇りも持っているけれど、嫁いだ先の蒲生家のなかで夫・忠三郎(のちの氏郷)を支え、蒲生家が安泰に存続することを常に願って立ち振る舞う姿は慎ましかった。
キリシタンとなった夫を見守る広い心も持っていたし・・・。
本能寺の変以後、あれこれ噂された、安土城炎上の真相は、なかなか興味深かった。
作者の仮説だろうか?
信長の妹・市とその娘・茶々が、ここでは気位の高いやや嫌な女性として描かれているのも今までにはなかったので新鮮だった!
とにかく最初から最後まで、読みやすく楽しめた。
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;