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読んだ本の感想あれこれ。
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df2ce909.jpg発行年月:2010年12月


女子大生・瑛は、恋人から逃れて、南の町のホテルにたどり着いた。そこで、ホテルの部屋の電話機に残されたメッセージを聞く。「とても簡単なのですぐわかります。市電に乗って湖前で降ります。とてもいいところです。ボート乗り場に10時でいいですか? 待ってます」そして、瑛とニノは出会った。ニノもまた、何者かから逃げているらしい。追っ手から追いつめられ、離ればなれになってしまう2人。「1人で行っちゃだめ。私も行くから」

                                           (講談社HPより)

21歳の瑛は、恋人の元から南の町に逃げてきた。
そして出会った、寡黙な少年・ニノ。

灰色の人から逃げて来たと語る。
ニノは、日本人の父とフィリピン人の母を持つらしいが、母親は自分を出産後祖国に帰ったとか。
そして父親は行方知れずで、施設で育った。
灰色の人は、ニノを外国に住まわせようとしているらしい。

二人の逃げている者同士が出会い、一緒にあちこち住む場所を変えていく。
最初、南の町というのは、沖縄か?と思ったけど・・・・読んで行くと
辛子レンコンやら、ざぼんやら出てきたので、これは九州なんだ!と気づく。
でも、なんだか異国っぽい描写もあったりして不思議。

二人の逃避行の話も面白いけど、途中途中に語られる逸話も面白かった。
最初に二人が出会った子守町で、瑛は最初、ホテル暮らしをしていたが、その後おばあさんが一人で店を開いている石松砂糖販売で暮らすようになる。

子守町に伝わる子守地蔵の言い伝え。
日本に砂糖が伝わった話。
なるほどなるほどと思いながら本筋の話をちょっと置いといて語られる話がその後も沢山!
こういう書き方面白い(^^)

「森のくまさん」の歌詞の不思議も言われてみれば、妙だと気づく。

逃げる瑛の話とこういう風に繋がるとは・・・感心しちゃいました!

瑛とニノは、逃げたままじゃいられない。どうなるのかな?と心配しながら読みましたが、
最後は、ホッと出来る結末だったのも良かった。


★★★★★

 
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518f9957.jpg   発行年月:2010年5月

昭和6年、若く美しい時子奥様との出会いが長年の奉公のなかでも特に忘れがたい日々の始まりだった。女中という職業に誇りをもち、思い出をノートに綴る老女、タキ。モダンな風物や戦争に向かう世相をよそに続く穏やかな家庭生活、そこに秘められた奥様の切ない恋。そして物語は意外な形で現代へと継がれ……。最終章で浮かび上がるタキの秘密の想いに胸を熱くせずにおれない上質の恋愛小説

                            (文藝春秋HPより)


2010年 第143回直木賞受賞作品ですね。
中島さんの作品は、結構好きなので受賞は嬉しかったなぁ~(^^)


この物語は、タキが女中奉公をした時代の回想録のような話で進みます。
昭和5年に尋常小学校を卒業し、先ずは小説家の小中先生の家に女中として入り、その後、小中先生の知り合いの娘さんの居る平井家に女中として住み込み。
その平井家での事が主に語られる。
奥様の時子は穏やかで優しい人柄。
恭一坊ちゃんも可愛らしく素直。
二人とも女中のタキを信頼し、家族の一員のように接していて、読んでいて心地いい。
昭和の時代のレトロでお洒落な上流階級の暮らしを垣間見るかんじ。

しかし、時代は、段々と戦争を背景にした穏やかでない情勢へと変化していく。
史実に基づいた事件、昭和11年の2.26事件やらも語られ、そのときの話で、暗殺を逃れた岡田首相を助けたのは、女中たちの機転だったという話は、事実かどうかさておき、タキの気持ちになって読んでいたので、ジ~ンとした。

タキの記す回想録を時々、読んでは矛盾を感じる箇所に文句をつけるタキの甥の次男の健史が、後々、重大なことを成し遂げるのだが、それは読んでる途中には予想出来ない事で、
最後の方で登場したときには、前に書かれていた多くの事が少しずつ繋がっていたんだと気づき衝撃的だった。

タキが女中として平井家に仕え、奥様の時子やその周りの人達と接するなかで気づいたある秘密。
それは他言はしてはないないこと。

ラストの方で、語り手がタキから他の者に変わり、その秘密の真相が明らかになり、今までのタキが語った回想録を再び最初から読み返したくなった!

タキが抱えていた秘密を良い形で明らかに出来て、皆がそれを知り当時の事を懐かしく思い出す。
年月が経てば秘密も公にした方が、良いこともあるんだなぁ~。

読後感は、なんだか幸せな気持ちになれるお話でした。

表紙の絵も、読み終えてみると違った感動がありました。

★★★★★


3de5130d.jpg発行年月:2009年8月


林芙美子、吉屋信子、永井荷風が描いた女中小説を一直線に繋ぎ、21世紀のAKIHABARAを閃光でつらぬく、昭和モダン異聞。

失業男とカフェ-メイドの悪だくみ・・・「ヒモの手紙」
令嬢と女中は戒厳令の夜に・・・「すみの話」
インテリ文士と踊り子は洋館で・・・「文士のはなし」

                 
(本の帯文より)


元の作品は全く知りませんが、面白かった。
以前読んだ、「FUTON]も田山花袋の「蒲団」を現代版風に打ち直しして書かれていましたが、これも現代版に。

90歳を越えている、老女・すみ子が語る女中回顧録というかんじで、物語が進む。
若い頃はカフェ-に勤めていたから、秋葉原のメイドカフェに来ると、懐かしい昔を思い出すのだとか。
昔はメイドと言えば・・・・亀井戸の私娼窟のことだったと、すみ子の解説。
すみ子に言わせると、アキバのカフェに居るのはメイドじゃなくて女給というらしい。

ヒモ男を嫌だと思いながらも、女に金を要求する手紙を代筆してやったり、奥さんが西洋人でわがまま娘が一人いる館に女中として通ったり、変わり者だと言われる物書き先生が一人暮らしの洋館に住み込みで働いたり。

すみ子さんは、いろいろな人と関わるけれど、深く立ち入った関わり方をしない。
薄情とは違うかんじで、変に慣れたりしない。
一人暮らしの物書きのところに住み込みで・・・と自分から言ったけれど、単にその方が便利だからかな?
作家の方もまた似た様な人みたいで、二人の男女としての関係はどうにかなるのか?なんて少々期待したりもしたけど・・・何もなく・・・・^^;
でも、なんだか、こういう関係が羨ましい。
変わり者同士だからか、お互いが居心地良さそうで。

女中だから・・・・と変に卑屈にならず、自分の思う事は述べるし、思ったように行動する、すみ子はなんだか格好いいな~なんて思って、読んでいて楽しかった。

最後は、ちょっと見方によっては、気の毒なのかもしれないけれど、彼女は別に不幸でもなかったんじゃないかな?

もっとすみ子さんの話が聞きたい!!
3つの話だけじゃ、物足りない!なんて思ってしまいました。

元作品も気になるなぁ~。
探して読んでみようかな?

★★★★

8245e185.jpg発行年月:2008年12月


「ハブテトル」とは備後弁で
「すねている、むくれている」という意味。
「ハブテトラン」は否定形。

東京の小学校に通う5年生の大輔は、あることがキッカケで一学期途中から学校に行けなくなっていた。
両親は相談し、母親の故郷である広島県福山市松永の祖父母の元で二学期の間は、そちらの小学校に通わせてみようと決める。


中島さんの本はこれで何冊目かな?
これは、一応、一般書なのかな?
でも、大輔と同年齢の子どもが読んでも楽しめる内容だと思います。
大輔目線のおはなしなので。

東京(行けなくなった学校)から離れ、両親とも離れた大輔。
祖父母やその周辺の大人たち、松永の小学校の同級生たちとの関わりの中では、とても生き生きしている大輔の暮らしぶり。

その中には、暗い影はあまり感じない。
周りの大人も子ども達ともすごく仲良く、楽しく関わっていて、読んでいても楽しかった。


でも、ちょっとした違和感。

松永の暮らしは、大輔には快適とも感じられるものだったけど、この後、東京に再び戻っても大丈夫なのかな?
大輔の留守中、両親は、再び東京の学校生活に戻るわが子の為には、何をしていたのかな?
が、わたしの中にありました。
東京の担任、クラスの子どもたちは、大輔が他の地で学校生活を送ることになった事をどう受け止めているのかな?

児童書として読めば、「良い思い出」を胸に東京でもがんばれ!と言えばいいのかもしれないけど、現実問題では、そう単純には行かないかも・・・・と考えてしまうのは考えすぎかな?^^;


大輔は、とっても素直で人の気持ちがわかる子。
こんな良い子が、再び、東京に戻ったとき、辛い目にまた合わないように、両親や周りの大人たちがもっと頑張って欲しい!!東京の大人たち、松永の大人たちに負けるな!
なんて思いました。
大輔は、もう十分、頑張ってるんだから!



★★★
 

 



 

df2c2085.jpg発行年月:2003年5月


「蒲団?あの、変態の先生が女弟子のフトンに顔をうずめて泣く話?」
田山花袋「蒲団」の書き直しを図る中年アメリカ人と愛人の日系女子学生。
95歳の曾祖父の戦後史と現在。
知的ユ-モア溢れる書下ろし長編!

                            (本の帯文より)


図書館の棚をブラブラしながら眺めていて、これが目につきました。
以前、「平成大家族」がとても面白く、これは、確か中島さんのデビュ-作で話題になってた書と記憶にあったので、借りてきました。

物語は、ちょっと変わった進み方。
アメリカの大学で教鞭をとり田山花袋の文学を研究中のデイブが自身が書き進める花袋の「蒲団」の打ち直しというかたちで書く小説も現代の物語FUTONと共に進行してゆく。

デイブは46歳で妻とは協議離婚が成立していて、息子を週3日預かる約束ごとを守っている。
そして、自身が教える日系アメリカ人のエミとは深い関係。
エミには、日本にユウキという別の恋人がいる。
そしてエミのおじいちゃん・タツゾウ72歳、ひいおじいちゃん・ウメキチ95歳も日本人でウメキチがやっていたそば屋「三州屋」をタツゾウがアメリカ資本のサンドイッチチェ-ン店「ラヴウェイ・鶉町店」として営業している。

エミが日本から来た恋人と一緒に日本に遊びに行ったのを追いかけるように来日するデイブは、自身が打ち直しとして書き進めている小説の中の女弟子に恋する小説家の行動とだぶる部分があって可笑しい。

花袋の「蒲団」は読んだことがないですが、これを読んだら本家のそれが読みたくなりました。

デイブの書く「蒲団の打ち直し」では、花袋の「蒲団」ではあまり登場しないらしい小説家の妻・美穂の視点で書かれていて、弟子に恋心を抱き、それが元で時々、不機嫌になったり乱暴になったりする夫を冷静に見つめている様子は、なかなか面白かった。
弟子には、恋人がいて、自身の恋は叶うものではないと知り、今度はそれを応援するという形で常に側で主導権を握ろうとする夫の滑稽さを半分は、同情、半分は嫌悪する美穂の気持ちの表し方が上手い!
アメリカ人のデイブじゃ到底こうは書けないでしょうけど・・・・^^;

日本で暮らすエミのひいおじいちゃんは95歳の高齢に似合わない元気さで普通のヘルパ-には介護の必要なしということで援助してもらえない状況。
そんな時、知り合うイズミ。
若者のワルが集まる場所で若者たちに、今まさに殺されちゃう?という状況を覗いていたイズミ。
若者の誰かが「100年も生きてるんだからロウスイさせてやろうぜ」と言ったことから難を逃れたウメキチ。
それが縁で、ウメキチの元に介護に通うようになる。
イズミはなかなか良い子だが同じくイズミに頼まれ介護に通うケンちゃんも良い子。
ちょっと訳ありの二人の関係も微笑ましいかんじ。


日本にエミを追っかけてきたデイブがイズミと知り合う場面もなかなかよかった。
エミからウメキチの辛い体験を聞き、自身が研究する花袋の生きた時代と今を繋ぐ人物がここに存在する不思議を実感する。
東京には、花袋の時代から現在まで、壮絶な歴史があったことを再確認するデイブ。
それは、わたしたちにも日本の歴史を再確認するものでもありました。

デイブの書き進めていた「蒲団の打ち直し」の世界と、デイブ自身が存在する今とが重なったような瞬間をも感じました。

ラストは皆が、またこれから先に向かって明るく歩み始めるかんじで爽快!

おもしろかった!!
中島さん、素晴らしい!!

わたしにとって今までの作品、全部制覇したいと思わせる作家さんになりました。


★★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
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