発行年月:2011年8月
大人なら大人らしくしろ。
父親がいる家にはいたくない。セキコは苦しかった。
塾の宿題は重く母親はうざく妹はテキトー。世の中にまともな家はあるのか。
怒れる中学3年生のひと夏の物語。
(筑摩書房HPより)
中学3年生の飯田セキコ。
仕事を辞めた父(これで3度目)が家でゴロゴロ一日中しているので
家に居たくない。
図書館に閉館まで居てみたり・・・喫茶店で時間を潰したり・・・・
時は夏休みに入り、お盆休み前に、塾の宿題がたっぷり出て
同じ塾に通う友人たちの元に行っては答を写させて貰ったり、写させてあげたり・・・
ああ、中学時代の夏休みを思い出すわ~という内容。
セキコが一番親しくしている、ナガヨシが変わっていて面白い。
別に好きではないけれど、なぜか男子の大和田を尾行するのが趣味。
他にも英語だけ成績優秀なクレ(男子)。
塾ではいつもトップクラスの室田いつみ。
家族に不満があってもそこに留まるしかない年代。
独立するまでは、そのなかで生きて行くしかない。
もう1篇の話「サバイブ」は「まともな家に子供はいない」の登場人物が
リンクして登場。
また別の家族のはなし。
なんてことはない話なんだけど、ああ面白かったと思えた。
★★★★
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発行年月:2014年8月
クラス替えは、新しい人間関係の始まり。絵の好きな中学3年生のヒロシは、背が高くいつも一人でいる矢澤、ソフトボール部の野末と大土居の女子2人組、決して顔を上げないが抜群に絵のうまい増田らと、少しずつ仲良くなっていく。母親に反発し、学校と塾を往復する毎日にうんざりしながら、将来の夢もおぼろげなままに迫りくる受験。そして、ある時ついに事件が…。
大阪を舞台に、人生の入り口に立った少年少女のたゆたい、揺れる心を、繊細な筆致で描いた青春群像小説。
(文藝春秋HPより)
中学3年生の山田ヒロシ。
両親が離婚してから母親と祖父母と暮らす。
母親のお喋りが鬱陶しい。
本当は美術をやりたいけれど、進路として選ぶのはまだ早いか?
心のなかで、自問しながら悩み続ける姿がリアル。
クラス替えを機に仲良くなっていく矢澤徹也。
自分と同じく父親が居ない家庭。
クラスの中ではなぜか疎まれる存在。
女子とも次第に親しくなる。
ソフト部の野末と大土居。
自分のなかで絵についてライバル視している増田。
中学受験で私立の中高一貫校に進学した古野弥生とのやりとりも、なんだかほのぼの
していて良かったなぁ~。
淡々と過ぎる日常のなかで、起きる事件。
ヤザワが誤解によって皆から責められていること。
大土居の家庭内での問題。
ヒロシは、なんとか解決しようと奔走する。
優しい子だなぁ~。
こんな風に絆を強めても、それぞれ違った進路に旅立つ彼らたち。
それぞれの向かった先でまた同じように出会った友と絆を深められると
いいなぁ~。
この時期独特の心理描写が巧く描かれていて、読んでいて楽しかった。
みんな良い大人になってね~という思いで本を閉じました(^^)
★★★★
発行年月:2013年12月
芥川賞受賞作『ポトスライムの舟』5年後の物語。奈良のカフェ「ハタナカ」でゆるやかに交差する、7人の女性の日常と小さな出来事。明日への希望が胸に灯る、書き下ろし長篇
(中央公論新社HPより)
『ポトスライムの舟』・・・読んだようなきもするけれど、覚えてない(^^ゞ
物語の舞台は、奈良。
そこでカフェ「ハタナカ」を営む畑中芳夏。
27歳のとき、会社を辞めてカフェを始める。
そこに集うお客たちとの交流が描かれた物語。
表題の「ポースケ」は、ノルウェーの復活祭のような行事だそう。
それを「ハタナカ」でもやろう!ということになる。
何をしたらいいのかよくわからないので、各自自分の得意なことを披露する
場所にしようと決める。
カフェの常連客たちの日常の話もそれぞれ面白かった。
主な登場人物たちは・・・
<カフェ従業員>
・ヨシカ・・・34歳。カフェの経営者。
・ナガセ・・・『ポトムライムの舟』の主人公。皿洗いと掃除をするという約束で
夕食にまかないを食べて帰宅。ヨシカとは友人関係。
・とき子・・・50代半ばの主婦。コンビニのバイトと掛け持ちのため午後3時から勤務。
・竹井佳枝・・・28歳。主にランチ時間のバイト。勤務していた会社で挫折後身体的にも精神的にもダメージを受けている。
<カフェのお客>
・林冬美・・・37歳。ピアノを教えている。夫は作家。子どもは欲しいのに居ない。
・梶谷恵奈・・・小学校5年生。ヨシカの友人・りつ子の娘。
・そよ乃・・・34歳。ヨシカの友人。
ほかにもいろいろな面白い人。
ウミウシの写真集をカフェに置いていった、加藤のぞみとか
カフェそばの履き物屋のおばあさんとか。
カフェを中心にいろいろな繋がりがあって・・・
最後は、カフェで「ポースケ」が開催される。
お客や従業員がワイワイと食べ物を囲んで楽しそう。
ナガセが弾き語りでシンディローパの歌を歌ったり、ピアノの先生・冬美が
朗読をしたり。
こんなカフェの常連さんになりたいなぁ~(^^)
★★★★
発行年月:2008年2月
第138回芥川賞候補作
好きになったということを仮定してみる
郊外の倉庫管理部門に左遷された独身女性・イリエ(28歳)は日々のやりきれなさから逃れるため、同僚の独身男性・森川を好きになったと仮想してみることに……
(講談社HPより)
表題作を含む3編。
やはり表題作が一番面白かった。
<カソウスキの行方>
左遷された先の同僚の藤村を好きだと仮想してみるイリエ。
遊び半分で、森川の行動を細かく観察し兵馬桶のノートにメモしていく。
本当は何ら特別な感情なしだったのに、少しずつ気持ちが変化してる?
と思えるところがなんとも愉快。
実は離婚歴があって、成り行き上その元妻に会いに行くことになってしまうイリエ。
イリエは最後、左遷先から再び、本社に異動。
森川は中国に出向になり、離れ離れになるのだが、近くに居たときより
何やら接近したような終わり方がいい。
カソウスキの行方は・・・・ハッピィエンドということか?
ほかの2編もよかった。
<Everyday I write A Book>
市営地下鉄で導入されるICシステム。
そのカードデザインをしたのが鹿戸浩介。同い年のデザイナー。
シカドのことを好きだった時期もあったのに、彼は絵本作家兼ミュージシャンの
茉莉と婚約したと聞く。
そして茉莉のブログを毎日チェックする野枝。
<花婿のハムラビ法典>
結婚式当日の新郎・ハルオ。
新婦は郷美。
ハルオはサトミを付き合っているときその行動を数値化していた。
遅刻は8割。3回に1度はドタキャン。
そこで、ハルオは1回の遅刻には自分も1回の遅刻を
1度のドタキャンには1度のドタキャンをすることに決めた。
登場人物たちのちょっと笑っちゃう思考がいい。
津村さんの書く人物って面白いなぁ~。
感動するとかの話じゃないんだけれど、何となく好きです(^^)
★★★★
発行年月:2013年6月
じぶんではない、だれかのために祈るということ――。
人型のはりぼてに神様にとられたくない物をめいめいが工作して入れるという奇祭の風習がある町に生まれ育ったシゲル。祭嫌いの彼が、誰かのために祈る――。不器用な私たちのまっすぐな祈りの物語。
(角川書店HPより)
2つのお話が収録。
一つ目の<サイガサマのウィッカ-マン>
町の特殊な信仰。
サイガサマ・・・願いを叶える代わりに体の一部を奪っていくと言われている神様?
冬至のお祭りとして、人々は願いを叶えて貰った折に奪われて欲しくないからだの部位を
作り物でお供えする。
地元の中学生が大きな人形を作り、人々が作ったからだの一部を入れ
それを燃やす行事。
その祭りでお供えするからだの一部を作る申告物教室なるものを手伝うはめになった
男子高校生・シゲル。
バイトで公民館の清掃をしているのだけど、公民館が会場の申告物教室を
手伝うことになる。
内心では、気が進まない手伝いなのに、与えられた仕事はちゃんとこなす。
ちょっと気になる中学時代の元同級生の女子・セキヅカのことを優しく見守る
姿は凄く好感が持てた。
ひきこもりになった中学生の弟も、少し前に進むかな?
2つ目は<バイアブランカの地層と少女>
京都の大学生の十和田作朗は大学のガイドサ-クルに所属している。
実家から大学に通うことも可能だが、実家が活断層の真上にあることを気にして
以前から住みたいと思っていた嵐山に手ごろな物件を見つけたこともあり
塾の講師と実家からの月2万の仕送りで一人暮らしをしている。
ひょんなことからアルゼンチンに住むファナという少女と文通をすることになり
アルゼンチンはスペイン語だと知り、友人のエンド-の知り合いである
スペイン文化研究会のナカオさんを紹介して貰う。
作朗も1作目のシゲルと似てる。
真面目で人の気持ちを理解しようとしている。
アルゼンチン人の少女からのメ-ルを理解しようして、彼女のことを日々考えている。
2つのお話に共通するのは、自分の家族でも恋人でもない人だけど
その人が幸せであるように祈っているということ。
文章もユニ-クで飽きない。
読んでいると不思議な心地良さに浸れるかんじ。
過去の作品も、もっと読んでみたいな~と思わされた。
★★★★★
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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