自分の知性をひた隠し、アパルトマン管理人の典型を生きようとする未亡人ルネ。大人たちの世界のくだらなさに幻滅し、自殺を志願する12歳の天才少女パロマ。二人は並外れた感性と頭脳を持ちながらも、世間との係わりを拒み、自らの隠れ家にこもっていた。しかし、ミステリアスな日本人紳士オヅとの突然の出会いによって、二人の未来は大きく開かれるのだった-----哲学、映画、音楽、絵画、文学、そして日本文化へ自由自在に言及しながら、パリの高級アパルトマンに住む人々の群像をユニ-クに描き上げ、今世紀フランス最大のベストセラ-を記録した感動物語
(本の解説文より)
文芸誌に載っていて、今世紀最大のベストセラ-というので、ちょっと読んでみました。
舞台はパリの高級アパ-ト。
主人公は、そこの管理人。
前に読んだ、物語も偶然にもアパ-トの管理人が主人公だった!
こちらの主人公・ルネもとても常識的な人。
最初、自分をひどく卑下する言葉で自己紹介的な文がありますが、それは謙遜だと、読み進めていく段階で理解できます。
しかし、その生い立ちや結婚生活(夫は若くして癌で亡くなった)から負った諸々のことが彼女を本来の彼女の良さを、表面に出さないことで守ろうとしていたかんじ。
主人公はルネだと思いますが、アパ-トの住人のうち12歳のパロマがもう一人の物語の語り手として、登場します。
彼女は、優秀な頭脳の持ち主ですが、両親や姉、周りの人たちに対して、幻滅しています。
そして、日にちを決めて、その日に自殺しようと自身の日記に記します。
彼女が多くの人に対して、幻滅しているのですが、管理人のルネに対しては「優雅なハリネズミ」と形容しているあたり、二人には、何やら通じるものがありそうと予感させます。
優雅なハリネズミ=外見は棘でおおっていても心は高貴 とパロマの予想。
そして、二人があるとき、出会い、会話をする場面は、ジ~ンとしました。
ルネ54歳。パロマ12歳。
二人は親子以上の年の差ですが、友情には年齢なんて関係ないのだ!と思わせてくれました。
自分を理解し、認めてくれる人の存在が心を明るくする。
パロマの自殺願望が少しずつ薄れていく様子は、爽快。
そして、更に、日本人男性、オヅ氏の登場。
ルネは、いろいろな知識が豊富な人で、日本の映画、小津安次郎の作品「宗方姉妹」のファンであったことから、すぐにオヅ氏にも興味を持ちます。
オヅ氏は小津安次郎とは無関係な人なのですが、日本のいろいろな話を二人でして盛り上がる様子は楽しい。
著者自身もルネ同様、その映画が好きだそう。
わたしは、まだ、見ていない作品ですが、ちょっと見てみたくなりました。
人間関係に稀薄だったルネとパロマに更なる友人の登場で、ちょっと楽しくなってきたのに・・・
終盤あたりで・・・・えぇ~っ!?という事件!
なんだか、読んでいたわたしまで、ショックでした。
なんで、こんな展開にしちゃうのぉ!
でも・・・・・よく考えたら、これもありかな?
自殺願望を持ち、本当に死のうとしていたパロマが、生きるということに今度は力強く向き合うためには、こういう事も物語的には必要だったのかも。
最初は、やや難しい哲学的な話などで始まった物語でしたが、読んでいるうちに段々と引き込まれて行きました。
おもしろかったです!
父が遺した古いアパ-ト「扇荘」を管理している宗像時子。
入居者は、いろいろな事情を抱えているが、分け隔てなく接する時子。
二度の結婚に破れて、結婚はこりごりと思っていたが、新たな入居者として現れた男性・有馬生馬に、少しずつ惹かれていく。
心、温まる恋愛小説。
帚木さんの作品は、病院を舞台にしている作品ばかりを読んでいたので、この恋愛長篇に、興味が沸いて図書館から借りてきました。
表紙の絵も可愛いお花。
よくみる花ですが、これが千日紅、別名で千日草ともいうそうです。
物語は、中盤まで、「これがどう恋愛に発展するのかな?」というかんじ^^;
古いアパ-ト「扇荘」の入居者は、ちょっと変わった人が多くて・・・。
普通の大家さんなら追い出しちゃうんじゃないのかな?という人も結構いるのです。
洗濯物をみなの共用スペ-スに干す人や、派手な夫婦喧嘩が度々起こる人たちや精神科に通っていて何やら時々、不審な行動をする一人暮らしの人やら・・・・
しかし、管理人の時子は、追い出すのは簡単だけどと、それぞれの事情をよく把握したうえで注意するところは注意し、自分が何か手助けが出来る事があるのなら、請け負う、実によく出来た人。
子ども達から見放されたかんじの老夫婦の夫が亡くなったときには、葬式の手配まで進んでやってあげたり・・・・・勿論、そうするまでにちょっとした迷いはあるのですが、読んでいてその辺は誰でも思う迷いなので、結果的に、やってあげた事がエライ!と思いました。
そして、途中から登場のまたまた、良い感じの男性。
2人が幸せになるといいなぁ~なんて思って読んでいました。
そして・・・・・・
ラストは期待通りでよかったぁ~。
千日紅の花言葉
<恋の希望> <不滅の愛>だそうです。
この花、かわいいなぁ~とずっと思っていましたが名前は知りませんでした。
なんだか、今まで以上に好きな花になりました!
帚木さん、恋愛小説も素敵でした!
また、こういうかんじの話も書いて欲しいな。
発行年月:2009年2月
船戸高校新聞部1年の瓜野君は、頻発する小規模な放火事件にある共通項を発見し、独自に調査を開始する。一年間の放火魔追跡の果てに現れた真実は?
シリ-ズ怒涛の第3弾!
(東京創元社HPより)
「春期限定いちごタルト事件」 「夏期限定トロピカルパフェ事件」に続くシリ-ズ物。
いちごタルト事件は昨年読んだかな?
表紙の絵が可愛いのが、長女のツボを刺激して、娘が読んだあとに読ませてもらっています^^;
今回は、新聞部の新入生瓜野君が、ありきたりの校内新聞を変えよう!と提案し、丁度、身近で頻発している放火事件を新聞片隅にコラムとして載せたことから起こるあれこれ。
一年生なのに、今までの新聞部の紙面づくりに問題ありと言っちゃうあたり、結構、強気。
ほかの部員たちは、そんな彼を疎ましく思いつつも部長の堂島君は、なかなか良い子だな。
一人暴走ぎみの瓜野くんの抑止力になりつつ、認めてあげるべきことは素直に認めてあげていたし、穏やかにことを治めようとする姿は部長らしくて良かった。
新聞部の瓜野くんとは、違う話で、部長の堂島君の友人である小鳩君の話が平行して進んで行く。
小鳩君は、推理好き。
突然、女の子・仲丸さんから放課後呼び出され、付き合いが始まったのだが、2人で居る間に起こる、ちょっとした事にもすぐ推理を始めてしまうのが可笑しかった。
バスの中で降車ボタンを今、押したのはこの中の誰か?とか。
仲丸さんのお兄さんの部屋に空き巣が入ったときもその不可解な犯人の行動を解き明かそうとしたり・・・。
上巻では、まだ放火事件の真相は明らかにされなかったけど、この謎解き名人の小鳩くんがどう関わってくるのかな?
早く、続きが読みたい!!
でも、考えたら・・・トロピカルカフェ事件、まだわたし読んでないかも??
話がちょっと見えない箇所あったりしたので、そちらを先に読むべきかも。
ま、大抵は理解出来ましたが。
高校生らしいコイバナもちょっとあったりで中高生が読めば、もっと楽しいでしょうね。
★★★
鈴音と和歌子、上条姉妹の前に現れた謎の女、御堂吹雪。
鈴音と同じ能力を悪用して他人の秘密を暴き、恐喝の種にしている。鈴音への憎しみに満ちたまなざしに秘められた理由とは?
大好評『わくらば日記』に続編登場!
(角川書店HPより)
『わくらば日記』は2005年の発行。
わたしも確か、その年に読んだと思います。
昭和の懐かしい時代を描いたような、なんともノスタルジックな雰囲気が好みでした!
そして、今回も不思議な力を持つ、鈴音と、その妹の活躍。
鈴音は、人や物の過去の思い出を見る力があり、前作でも、いろいろな事件解決にその力を発揮していました。
ただ、鈴音自身は、とてもおっとりした性格で、自ら進んでその力を使おうとは思っていないところも好感が持てました。
妹の和歌子(ワッコ)は、お転婆な感じで姉を時には庇ったり、姉の言い難い心中をズバリ代わりに言ったり・・・・そんな姉妹の絶妙なコンビネ-ションが今回にも活きていて楽しかった。
登場人物で気になる存在の薔薇姫(御堂吹雪)の登場で、今回は、この同じような力を持つ者同士の話かな?と思いきや・・・意外と出番が少ない薔薇姫。
やや肩透かしの感を否めないのですが、ま、先へのお楽しみということでしょう・・・^^;
薔薇姫以外の話もなかなか面白かったので、今回の追慕抄もわたし的には大満足。
昭和20年の東京大空襲や、昭和29年の青函連絡船沈没事故などを体験し、その後も心の傷を抱えて生きている人たちの話は切なかった。
それらの人の心を優しく思いやる鈴音の特殊能力の使い方は好き。
薔薇姫は、その点、ちょっと乱暴で、真実のみを伝えるだけの横暴さ。
この書の中では、2人の何やらありそうな因果の部分も明かされず、第3弾が待ち遠しい!
薔薇姫は、鈴音をすごく恨んでいる様子なのも、どうして?
それと、これは、和歌子が成人して、かなりの年になってから、昔を回想する形になっていますが、鈴音は若い時に亡くなったとも。
そのことも気になります。
兎に角、気になることだらけで、終わってしまって・・・・
また来週~と良いとこで終わるドラマみたい。
朱川さん!記憶が薄れないうちに、ぜひとも続きを早く書いてください!!(笑)
★★★★
恋人を弔うために東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった。-------はずだった。
ところが、気づけば見慣れた金沢の街中にいる。
不可解な想いを胸に自宅に戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられた。
どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。
(本の解説文より)
軽快なかんじで書かれていますが、よく考えると重い状況。
崖下に転落し、「死」を覚悟した主人公・リョウ(高校1年生)が気が付いたら、見慣れた地元の街中に戻っていて、自宅に帰った先で、遭遇したのが自分の世界では存在しない「姉」。
お互いに、別の世界の第2子なんだと理解し、それぞれの家庭の状況や学校の友達関係のことなどを教えあう。
そんななかで、リョウは、自分のいる世界より、こちら側にいる皆が平和そうだと気づく。
ちょっとそれって、切ないなぁ~。
自分の世界では、事故で死んだ兄も、やはり事故で死んだ好きだった女の子も生きている。
両親の関係も、明らかに姉の存在している世界の方が、円満そう。
自分がいるより、姉がいるほうが良いということか?
表題の「ボトルネック」の意味も本文中にあったけど、ボトルネックは自分なのか!?
と、悩んじゃうリョウが気の毒。
救いがないじゃない!?可哀相過ぎる・・・・。
ラストはどうなる?と思ったら、元も自分の世界に戻るのだけど、この先どういう気持ちで生きていくんだろ?と想像したら、胸が痛くなっちゃった。
あまり後味よくないわ~。
話としては、なかなか面白いのだけど・・・・。
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;