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読んだ本の感想あれこれ。
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5deffa32.jpg発行年月:2009年2月


12歳のおふくは、江戸・深川の料理茶屋「橘屋」に奉公に出る。
仲居頭のお多代に厳しく躾られ、おふくは仲居として成長していく。

橘屋に関わりのある人々の生き様を書いた連作7つの物語。




自分の与えられた仕事を誇りをもって真剣に取り組むことの大切さを感じました。

この時代の話は、ほかの小説でも読みます。
12歳くらいになると、よほど裕福でない限り、子ども達は親元を離れて、奉公に出る時代。
そして奉公先での苦労話。


おふくも12歳で慣れない場所に来て、仲居頭の、お多代に厳しく躾けられ、時には涙することも。
しかし、自分の居場所は、ここしかない!ここで頑張るしかないのだ!という気持ちが常にあるかんじ。
お多代のことも、厳しいなとは思ってもイヤだなとは思わない。

どんなに厳しくても、一生懸命に仕事に励む姿が、周りで働く人々やお多代にも認められます。

7つの連作短編ですが、舞台は、料理屋「橘屋」なので、違う話でも、おふくやお多代が登場し、橘屋の様子をずっと覗き見しているような気持ちで読めて楽しかった。
厨房の料理をする様子も見えるよう。
包丁のトントンという音が聞こえて、何かを煮込む鍋から湯気がたちのぼる。
お客さんに膳を運ぶ、仲居の廊下を忙しく行き交う姿。
そんな物を自然に頭に浮かべるかんじ。

おふくの成長も頼もしかったのですが、厳しくしながらも、きちんとその成長ぶりを認めている、お多代が素晴らしい。
こんな上司の下でなら、どんな苦労も厭わず、部下は働けるんだろうなぁ~なんて現代に置き換えたりして。
おふく以外の仲居たちへの指導も的確で、実に格好いいのです!
女性として憧れるちゃいます。

しかし、そんな格好いいお多代も時代的には、とても苦労していて、最後の方で20歳になった、おふくとお多代の会話は、感動しました。

現代でいうと、上司と部下みたいな関係だったのが、信頼し合う友、いやそれ以上かな?
信頼し合う姉妹みたいな雰囲気で、良い感じ!
なんだか、泣けました。

表紙の絵にある鳥は、百舌(モズ)で花は橘でしょう。物語のなかにも登場していました。


切ない恋もあり、この時代ならではの、しっとり落ち着いた雰囲気がいい。

児童書、青春物、そして時代物・・・・何を書かせても上手い作家さんだなぁ~。

★★★★

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4264b41b.jpg発行年月:2009年1月


リストラ寸前の中年サラリ-マンは、ある日「今日が自分のサ-ビスデ-」なのだと知らされる。神様が世界中の人間に与えているサ-ビスデ-。

表題のほかは「東京しあわせクラブ」 「あおぞら怪談」 「気合入門」「蒼い岸辺にて」の5つのお話。



どれも面白かった。
何処かで読んだことあるような、聞いたことあるようなお話が多いけど、朱川さんの語り口がすきなので楽しく読みました。

表題作の「本日、サ-ビスデ-」では、冴えないサラリ-マンが主人公。
リストラ寸前のサ-ビスデ-の登場で、大逆転の予感。
でも、自分の願いが何でも叶う局面で、ふと考える。
リストラされない状況が果たしてベストなのか!?

苦しい状況や辛い状況でも、考え方を変えたら、違う明るい未来が開けることもあるということかな?
なかなか良いお話で、最初から爽やかな読後感。


「東京しあわせクラブ」は、ちょっと不可解なクラブの話で、少し不気味。
あまり関わりたくないわ~
これだけ、ちょっとほかの作品にはない、雰囲気でした。

「あおぞら怪談」は、題名のように、ちょっと爽やかな怪談話。
幽霊の女性を大事に接する大学生の優しさが良かった。

「気合入門」の主人公は、小学1年の男の子。
いつも自分をバカにしてるような3つ年上のお兄ちゃんに、なんとか認められようと、一人、ザリガニ釣りに奮闘する様子が可愛くて・・・。
そういえば、わたしが子どもの頃、男子はザリガニ釣りやっていたっけ。
うちの弟も大きめの空き缶に、いっぱいザリガニを入れて泥だらけで夕方、帰宅してきた昔を懐かしく思い出して、楽しかった。

最後の「蒼い岸辺にて」は、自殺してあの世に来た女性がそこの門番みたいな者と接するうちにもう一度、やり直したい!と思う話。
寿命まで生きないまま、自分の命を絶つと、その後、関わるはずだった人の将来まで変えてしまうことになるという話は、なるほど!と思いました。


生きていれば、いろいろあるけど、気持ちを常に前向きにして歩いていけたらいいな。


★★★★
6f2ee3d5.jpg発行年月:2006年2月


できたてのセカイと、憂鬱なわたしたちの物語。

いま、最も鮮烈な7人の書き手がおくる
青春文学ベスト・トラック集  

                       (本の帯文より)


角田光代  あの八月の、
有川 浩   クジラの彼
日向 蓬   涙の匂い
三羽省吾  ニ-ト・ニ-ト・ニ-ト
坂木 司   ホテルジュ-シ-
桜庭一樹  辻斬りのように
森見登美彦  夜は短し歩けよ乙女




以前、読んだ作品は 「クジラの彼」と「夜は短し歩けよ乙女」は、文句なしによかった!
何度読んでも、いいなぁ~(^^)
ほかの作品は、今回はじめて。
全く初めて読む作家さんは、日向さんと三羽さん。


以前、読んだ作品は、大好きなので、もう一度読みたくて。
そしてほかの作品も読んでみたかったものが多かったので読み始めから期待度が大きかった書。

読後その期待は、外れることなく、大満足の1冊でした!
アンソロジ-は、なかには好みじゃないのもあって普通ですが、これは、どれもいい。
あくまでもわたしの好みには、ドンピシャ!だったというわけですが・・・・。


初めて読む、日向さんの「涙の匂い」は、中学生時代、少しだけ住んだ東北の町の様子を思い出したように書かれた話。
ほのぼのとした暮らしの中で起こる、出来事。
甘酸っぱい初恋。
懐かしいような不思議なかんじがしました。

そして、やはり初めて読む三羽さんの「ニ-ト・ニ-ト・ニ-ト」あまり明るい現実ではないですが、登場人物たちのやりきれない感情が伝わってくるようで、なかなか興味深かった。


アンソロジ-で初めて読んだ作家さんの作品が気に入ると、その方の他の作品を読みたくなります。
自分にとっての新しい作家さん、発掘にはいいですね~♪


この表紙写真もちょっと今の季節っぽくて好き!


★★★★
b40ca7d4.jpg発行年月:2009年6月


西洋名画に秘められた恐るべき怨念・冷酷・非情を、歴史の裏の裏まで知り尽くした著者が、鮮やかな筆致でとき明かす、知的でスリリングな美術エッセイ。「絵ってすごい」と各メディア、シリ-ズ大絶賛!

「もっと読みたい」との読者の期待に応え、さらに怖い、待望の第三弾!


                         
(朝日出版社HPより)

シリ-ズ完結編らしいですが、わたしは、これが最初。

絵画は好きでよく美術館にも行きますが、ちゃんとした解説をいつも聞かず、自分の感性のみで見ていました。

が、この著者の解説を読むと、今まで自分が見て感じていたことは、薄っぺらだったんだ!と思います。

本書で紹介されている絵画は20作品。
見たことある絵も幾つか。全く初めてみたものも多かったです。

「怖い絵」とありますが、見たからに怖い絵は意外と少なくて、この表紙のフュ-スリの「夢魔」も怖いですが、ほかには、ル-ベンスの「メドュ-サの首」くらいかな?

ほかは、多少不気味なものもありますが、そんなに絵そのものには怖さはないのです。

一番最初のボッティチェリの「ヴィ-ナスの誕生」は、有名なので、多くの方が見たことあると思いますが、これの何処が怖いの?とわたしは思いました。貝殻の中央に立つヴィ-ナスも綺麗だし、周りの風景も明るめで花が舞ってる。
でも、解説を読んでビックリ!
何度も解説文と絵を交互に見ながら・・・へえ~なるほど~と感嘆!

著者は西洋史に詳しい方なので、絵画の書かれた時代背景や、絵画を描いた画家の境遇などにも触れて、その絵の持つ隠れた意味を解き明かしてくれます。


憂いを含んだ可愛い少女の笑顔が何となく哀しげで惹かれた「ベアトリ-チェ・チェンチ」という絵の真実を知ったときは、なんとも言えない気持ちになりました。

絵の中の可愛い少女が父親殺しの罪で斬首される前の表情だと書かれていて・・・。
父親を殺さなければいけなかったその境遇も可哀相だが、父親を殺したのだから斬首されなければならないというその当時の考え方が怖い。
その斬首の場面の記載も・・・・ゾゾッ~

兎に角、こういう解説を読むと、今のこの時代にこの国で生きていることをありがたく思います。


ひとつ、ひとつの絵画、解説を読むと・・・ものすごく怖かった。
絵画なんてあまり興味がないという方にもお薦め!

怖いもの見たさで、1と2も読んでみようかな?

また、この著者のほかの書物にも興味が沸きました。

★★★★★
7032f6b2.jpg発行年月:2009年1月


「珈琲屋」の主人・行介は、人を殺した。行介の恋人だった冬子は、別の男と結婚した。行介が刑期を終えたとき、冬子は離婚した。そんな二人の間には、時だけが静かに流れていた------。商店街で暮らす人々が「珈琲屋」で語った人間ドラマを七編収録。読み終わる、きっとあなたにも熱い珈琲が飲みたくなる・・・・。人間の微妙な心理を描き、じんわり温かい読後感があなたを包む。連作短編集。

                             (双葉社HPより)



以前、「真夜中の運動会」を読み、この著者では2作目に読んだ本。

商店街の古い珈琲屋を舞台に、そこを訪れる人たちの話が連作で7つ。
店の主人は、かつて、この商店街を悪質な方法で地上げしていた男を殺した罪を背負っている。
みなが恨む男を殺した為、刑期を終えた行介を商店街の住人は皆、以前と変わらず接してくれる。

かつての恋人、冬子も度々、店にお客として通い、そこに来るお客(多くは商店街の人々)の話に、必要なら、自分も関わる。

二人の静かな落ち着いた関係は、大人の雰囲気で好ましかった。


訪ねてくる人々の話は、介護問題あり、浮気問題あり。
笑って聞ける話というより、一緒に悩んじゃうような物が多いが、それゆえ、考えさせられる部分も多かった。

2編目の「シャツのぬくもり」は、クリ-ニング屋の夫婦の話で、妻が夫の浮気に気づくのだが、夫の言い分を知ったとき、ちょっとショックでした。
なるほど・・・・こういう事が浮気に走った原因だったのね?と。

浮気をした方を責めたくなるけど、妻としては、わたしもちょっと考えを改めなければいけないかな?なんて少し思いました。


話自体は地味ですが、こういうのは、ある程度の経験を積んだ大人なら、そこに登場する人々の話に共感したり、反感を抱いたりと、楽しめそう。


ラストは、行介と冬子の将来に明るいものがありそうで良かった。

でも、冬子さん、こんなに行介が好きなら結婚しなくて待てばよかったのに・・・・。
出所に合わせて、離婚したなんて、ちょっと都合良過ぎかも・・・・。
この部分だけ、最後まで引っかかりました。


この表紙の絵は、物語を読み終えてみると、雰囲気出てる絵だなぁ~と思います。

今は夏で蒸し暑いし、元々コ-ヒ-は苦手なのですが、アイスカフェオレが飲みたくなった^^;


★★★★
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