家族とは、愛とは、赦しとは・・・・。
過去の事件を現代の視点から追う、
迫真のサスペンス!
あの夏、わたしは希望をもらった。
(本の帯文より)
初めて読む作家さん。
図書館の棚を眺めていたら・・・何となく目に留まりました。
そういうのは、大抵わたしにとっては当たり!
そして、この本も、わたしにとっては、かなり当たり!
物語は、主人公・杉原美緒が小学6年生の頃から始まる。
弟・充は小学3年生で、父親は家を出て行き、母親と3人で暮らしている。
母親はアルコ-ル依存症。入退院を繰り返し、その間、美緒と充は母親の従姉妹である薫の元で暮らす。
薫は夜はお酒も出す喫茶店を経営していて、そこの客である元検事の永瀬丈太郎と美緒も顔見知りになる。
永瀬は、随分前に娘。瑠璃を誘拐されていてその真相は未だ掴めていない。
そして、薫は瑠璃と幼稚園が同じで彼女が連れ去られるのを目撃している。
未解決の誘拐事件の真相は?と気になりつつ、美緒の成長に合わせて永瀬との心の交流が深まっていく様子が物語の軸みたいになっていて、親子以上に年は離れた美緒と永瀬の会話などから、お互いの過去の傷が癒される相手なのかなぁ~?なんて思いながら読んでいました。
後半では、美緒も社会人になり、自分の足で永瀬の娘の事件の真相を追うようになり、わかってくる事実にドキドキ。
そして、わかった真相は、なんとも切ないものでした。
美緒の過去にあった辛い事の真相も同時にわかり・・・・ど~んと気分は落ち込みました。
真実を知るって、辛いことでもあるんだな~。
それによって新たな人を恨みたくもなりそうですが・・・・
美緒の弟・充が「人を恨みつづけることは疲れる・・・・忘れよう」という場面が印象的。
充が一番、辛い思いをしたんだと思ったら・・・たまらなかったけど、この言葉で救われた。
そしてこの表題の「七月のクリスマスカ-ド」がどういう意味かわかるラスト部分では、感動しました。
サスペンスにしては、地味だと思うけどなかなか読み応えがありました。
こういう作品、結構、好み(^^)
ほかの作品も読んでみたくなった!
とても静かな、食うか、食われるか。最新作品集
見知らぬ女からもらった朝顔の種を育てるうちに
呼び起こされる、先輩医師の記憶。
山の自然のうつろい、生と死を見つめる3つの作品
(文藝春秋HPより)
初めて読む作家さん。
過去作品には映画化もされた「阿弥陀堂だより」などあるそうです。
この本は文芸雑誌に紹介されていたのを見て、図書館から借りました。
表題作の「先生のあさがお」のほか「熊出没注意」「白い花の木の下」の2編の作品が収められていて、その共通の主人公は初老の医師。
信州に住んでそこの総合病院の医師として勤務している。
二人の息子は、独立して家を出て、今は夫婦で暮らす日々。
読みながら、この医師は著者自身の事なのか?
全部が事実とは言い切れないような気もするし・・・・・と不思議な感覚でした。
読んでいると、この医師は、診療に疲れ、パニック障害、うつ病と診断され精神科入院も勧められた過去があるとあるが、これは事実なのか??
まあ、それは置いておいて・・・・
話は、病院でのことや家のこと、奥さんとのことなどいろいろ。
夫婦仲は、結構良さそうで二人で過ごす時間の描写が、のんびり、ほんわかしている。
一緒に温泉旅館に出かける最初の話「熊出没注意」からそんな印象を受けました。
次の話「白い花の木の下」では、患者である老婆から貰った山菜のあるという場所の地図を頼りに夫婦で探しに行く話もほのぼの。
最後の表題作「先生のあさがお」は、かつてお世話になった先輩の先生が育てたあさがおの種を貰い育てる話でしたが、どの話にも共通なのは「死」。
その「死」は、忌み嫌うものでは決してなく、誰の元にも必ず訪れるもので、自然なことだと改めて気づかせてくれるかんじ。
「白い・・・」で夫婦と訪れた山のなかで過去に検視依頼で訪れた場所だと気づく場面は、ちょっとゾッとしたけれど。。。^^;
なかなか渋くて、独特の雰囲気がある物語(?)でした。
著者経歴を最後に見たら・・・1951年生まれとあり、え?意外と若いじゃない?と思いました。
読んでいる最中、この作品中の主人公は70代後半くらいの医師かなぁ~?なんて思っていたので、
やはり、これは、著者自身の経験を元にしたフィクションだったのかな?
映画化された阿弥陀堂だよりも気になるな~。
過去作品も読んでみようかな?
★★★
みんな一番大切な人のことだけを考えた。
一番大切な人が一番傷つかない方法を考えた。
穏やかな石垣島の浜辺で、杉下希美と安藤望は運命的に野崎夫妻と出会った。その出会いはある悲劇への序曲だった----。二年前の秋、台風による床上浸水をきっかけに、同じアパートに住む杉下、安藤、そして西崎真人の三人は親しくなる。それぞれに屈折とトラウマ、そして夢を抱く三人は、やがてある計画に手を染めていく。すべては「N」のために。タワーマンションで起きた悲劇的な殺人事件の真相を、モノローグ形式で抒情的に解き明かす、著者渾身の連作長編。『告白』『少女』『贖罪』に続く、新たなるステージ。
(東京創元社HPより)
話の運び方が巧い!
先ずはじめに野口(貴弘、奈央子)夫妻が殺害されている事件が起き、そのとき、そこに居合わせた4人の事情聴取が行なわれる。
杉下希美22歳
高校生のとき、父親が愛人を連れて来て母親と弟と共に家を追い出される。
母親はお嬢様育ちで、金銭感覚が以前のまま。
父親からは毎月、生活費を貰っていたが、浪費が絶えない母親に苦労していた。
大学は東京へ。
「野バラ荘」に暮らし、そこで西崎真人と安藤望と知り合う。
野口夫妻とは、安藤望と一緒に行った沖縄で知り合う。
西崎真人24歳
作家志望の大学生。
幼い頃、母親から虐待を受けていていた。
野口奈央子が希美をアパ-トに訪ねて来たとき、留守で困っていたところに声をかけ知り合う。
安藤望23歳
学生時代に「野バラ荘」に住んでいたが、卒業後はM商事営業部勤務。
野口貴弘の部下でもある。
成瀬真人22歳
希美と同じ島の出身で同じ高校の同級生。
島の実家は料亭を営んでいたが、人手に渡ってしまう。
大学進学時に奨学金を受ける制度のことを希美から教わり東京の大学に進学。
バイトでレストラン「シャルティエ・広田」のケイタリングを担当している。
野口貴弘からケイタリングの注文を受け、事件当日、野口家に足を運ぶ。
登場する人たちに共通なのは・・・イニシャルが「N」
表題の「Nのために」は、誰かが誰かのためにを想像させますが、それが単数ではないところが面白い。
野口夫妻殺害の真相は、案外普通なのですが、その事件に関わったこの4人のその事件当日、その場に居合わせるまでの過程が面白かった。
結構、重く暗い話もあったのですが・・・湊作品ではもう慣れました^^;
事件の起きた10年後に飛んで、その当時をそれぞれが回顧する場面もはさまれ、4人それぞれの事件に関わるまでの過程なので、同じ場面が繰り返し出てきたりするのですが、こういう繰り返しは、前の作品にもあったような?
誰かが誰かの事を思い、自己を犠牲にする行動に出る。
その誰かが、その行動に出なければ、何かもっと違う結末になっていたかも?
高校時代からの希美と成瀬の関係が、ちょっと切なかったなぁ~。
西崎真人が書いたいう物語が、途中に出てくるのですが、なんとも不気味な話で、
この物語そのものより、なんだか強く印象に残った。
しかし、まあ、湊さんって次々、凄い話を書きますね~。
これは、今まで読んだなかでは読後感が、悪くなかった・・・・かな?
「本当に大切な風景は想像の目で見るものなんだ」
転校先の中学で出会った変わり者の教師の一言で、
少年は鳥の目で世界を見たいと願う。
伝書鳩を育てる新聞部の少年を描く長野まゆみの最高作。
(河出書房新社HPより)
野川とは、ウィキペディアによると東京都を流れる多摩川水系多摩川支流の一級河川だそう。
まだ見たことないけど、これを読んでいたら、その川に沿って歩いてみたくなりました。
最初のペ-ジから、川べりの風景が頭のなかに自然に浮かんでくるような描写で、
「あ~いいなぁ~」と思いました。
主人公の井上音和は、中学2年生。
両親が離婚し、父親とともに都心のマンションから父親の実家のある都心から少し離れた町のボロアパ-トに引っ越して、学校も転校。
転校した学校で、先ず出会ったのが3年生の吉岡。
そして、担任の河井先生。国語の教師。
この二人との出会いが音和には、大きな転機になったよう。
吉岡が部長を勤め顧問が河井の新聞部に入部することになり、すぐに新部長となる音和。
ここの新聞部の活動は、紙面を活字で埋めることではなく、通信手段として昔から使われていた鳩を訓練することが主。
伝書鳩は知ってるけど、実際に訓練するって、面白そう!
野川に沿って歩き、目的地から鳩を放つ。
鳩は決まったル-トで学校の鳩舎に戻る。
どうして鳩は、元に戻れるのか?
顧問の河井先生の話もとても興味深かった。
受験に役立つかどうかは、わからないけど。。。。と前置きしながら話してくれる事が、ホントに面白い!
こういう先生が居たら、きっと人気者になるだろうなぁ~。
もっといろいろ聞かせて欲しい!と思ってしまったほど。
音和の父親のこと、吉岡先輩のお兄さんのこと、ちょっと辛いことを経験した二人も
前に向かって進んで行くんだなとわかってよかった。
都心から越して来た頃の様子と音和自身も、なんだか逞しくなった様子。
良い人間関係があると人は、つらい現実があっても前に進んでいけるんだな~と
再認識できたかんじの物語。
清々しい読後感でした!
少年剣士の凛々しさが眩しい時代青春小説
山河豊かな小藩、少年剣士たちは兄の死や身分の葛藤を越え成長してゆく。子供と大人の境にある一瞬の美しい季節を瑞々しく描きだす
(文藝春秋HPより)
あさのさんの時代小説。
道場で日夜、強くなりたいと剣術の稽古に励む少年たちが生き生き描かれる。
新里林弥は12歳のとき、尊敬していた兄を何者かに惨殺されている。
剣術に長けていた兄が刀も抜かぬまま背後から斬られたとは、信じられない。
なぜ?誰が?
その疑問を抱えたまま成長し、二年後、兄から剣術を学んでいたという樫井透馬が現れる。
透馬の父親は筆頭家老。
いずれは透馬も父親の役目を継ぐ者かと思われたが、妾の子であり、父親の正室には息子もいるのだとか。
林弥の道場仲間である源吾や和次郎を加えての少年たちの会話は、時代は違っても興味のあることは同じとみえて、ちょっと微笑ましい。
遊女に通う源吾は、お調子者で憎めないキャラクタ-だったけど、後半、ある事件に巻き込まれ悲しいことに。。。。(/_;)
その事件が、林弥の兄を惨殺した事にも繋がっていて、驚きの事実もありで、お役目とはいえ、そんな事が出来るのか!?しなくてはならないのか?と、なんとも言えない虚しさを感じた。
明るく爽やかなだけでなく、その時代の酷な部分も描いていて、読み応えがありました。
それぞれの家の要となるべき少年たちのこれより少し先の話も読みたいな。
★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;