発行年月:2009年1月
人を殺した人間はどう「生きる」べきか。二件の殺人犯の生い立ちと罪の意識とは。驚愕の獄中記。

「殺人」という大罪は償えるのか。人を二人殺めた著者は今、罪が重く刑期が十年以上の者が収容される「LB級刑務所」に無期懲役囚として服役している。十数年にわたる服役期間に自分の行為を反芻し、贖罪とは何か、人の命を奪った身でどのように残りの人生を「生きる」べきかを考え続けてきた。自身の半生と罪の意識、反省の欠片もない周囲の服役囚について考察した驚愕の獄中記。
(新潮社HPより)
著者のことを知ったのは、先に読んだ『女子高生サヤカが学んだ「1万人に1人」の勉強法』で、女子高校生家族と文通をする受刑者として登場したから。
そのなかの文章からは殺人を犯すような人には思えず
彼が罪を犯した経緯のようなものがわかれば・・・と本書を手に取った。
最初は、事件を起こす前のこと、
子ども時代のこと、家族環境などが書かれていた。
父親が少し変わっている。極端な思想の持ち主。
例えば・・・・
・1番以外は2番も100番もくずだ
・喧嘩に負けたら勝つまで諦めるな
・言ったらやれ、やれないなら言うな
などをよく父親が著者に言っていたそう。
そんな父親の元で育った著者は、元々の知能も高かったんでしょうが
いつも1番の成績だったとか。
そして、殺人を犯してしまうのだけど・・・イマイチそのなぜ殺人を犯すほどの怒りを
抱いたのか?がわからなかった。
被害者家族の心情を考えて詳しく書けないのかもしれないけれど
それが一番知りたかったことなので、ちょっと肩すかしなかんじ。
でも、ふつうの感覚では理解できないところに怒りの原因があったのかも。
淡々と殺したときの状況は書かれている。
気分が塞ぐような描写。
2人を殺めたというので、最初は、同時期にと思ったら、全く違うときだったのには驚いた。
1人を殺し、そのあと、捕まることもなく居て最初の事件とまた違うところで
また人を殺したということ。恐ろしい。
捕まらなかったら・・・と思うとゾッとする。
収監され、同じような重い罪の人を観察し取材記録のようなものを書く著者。
本当に罪の重さを反省している者は少ないと知り、ショックだった。
途中、何か読むのが嫌になってきた。
著者は罪の重さに気づかされたような書き方をしているけれど、やはりこれもある意味
自分を正当化しているのかもと思ってしまった。
「女子高生サヤカ・・・・」で出てきた美達のイメージが良かったので
ああ、やはり犯罪者だったんだと気づかされてしまったかんじ。
興味深い記述もあったけれど、評価するのは難しい書。
表題の「人を殺すとはどういうことか」については・・・正直よくわからなかった。
というか、著者の気持ちが文章から伝わってこなかった。
表題が合ってない気がする。
殺人犯の告白だけで十分じゃないかな?
★★
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発行年月:2014年4月
昭和の初め,南九州の離島(遅島)に,人文地理学の研究者,秋野が調査にやって来た.かつて修験道の霊山があった,山がちで,雪すら降るその島は,自然が豊かで変化に富み,彼は惹きつけられて行く.50年後,不思議な縁に導かれ,秋野は再び島を訪れる──.歩き続けること,見つめ続けることによってしか,姿を現さない真実がある.著者渾身の書き下ろし小説.
(岩波書店HPより)
ロマン溢れる物語でした。
南九州の離島・遅島に調査のため滞在している秋野。
亡くなった主任教授がやり残した調査を引き継ぐため。
ウネ婆さんと嘉助爺さん宅に居候させて貰い、生活を共にする。
なんとも情緒たっぷりの暮らしぶり。
船を漕いで湯治場に仲良く向かう二人を見送る秋野の場面は幻想的なかんじだった。
居候させて貰っている地域は龍目蓋(たつのまぶた)という場所。
そこから、毎日調査に出かける秋野。
影吹で、西洋館を見つける。ウネ婆さんの話では山根さんという人が住むという。
後日、山根さんを訪ね、話が弾み、いつでも泊まって良いと言う言葉に甘え
そこから出かけた方が近い場所の調査にはそこを拠点とさせてもらう。
島の歴史をあれこれ知る。
かつては、寺院があり、修験道の島でもあったという。
しかし、明治の政府の神仏分離宣言を機に寺院は一瞬で壊されてしまった。
神道を国体の基盤とするため神と仏が融合したものは引き離すこととなり
長年、仏教より下に見られていた神道の関係者がここぞとばかりに暴走し潰したとか。
また当時は民間宗教=モノミミも島に広がっていて、それらも排除の対象にされた。
西洋館に住む山根さんの父親は寺院で修業する僧侶だった為、その混乱時島を脱出したという。
そして父親が持っていたという寺院の見取り図を見せてもらう。
昔そこで暮らしていた人たちの生活の様子を、人や残されたものから探るって面白そう。
人文地理学って興味あるなぁ~。
ウネ婆さんが語る雨坊主の話もちょっと怖いけれど面白かったし。
波音(はと)に出かけそこに住む梶井さんと知り合ったことも調査をしていく上で
とても大事な出会いだった。
梶井さんと共に歩き、語らう場面も素敵だった。
そんな素晴らしい夢のようだった隠島での生活から50年後に終盤切り替わる。
秋野が島を訪れたのは昭和初期。
その50年の間には、戦争があって、多くのものをなくす。
なんとも辛い。戦争はやっぱり得るものがない。
秋野はその間、結婚し、子どもが出来た。
そして息子が偶然、隠島の開発事業に関わっていると知り、島を50年ぶりに訪ねる。
自然を壊し近代化していくのはある程度必要なことかもしれないけれど
なんだか空しい。
壊すのなら、そこがどんな土地だったのか、残すものが必要かも。
読みながら、いろいろ考えさせられた。
梨木さんの物語には、植物や生物が多く登場する。
それを後で調べるのも楽しい。
今回気になってどんな植物か調べたのが以下の2つ。
ミツガクワク・・・氷河期の生き残りかと言われる植物だとか。
ハマカンゾウ・・・ヤギが食べつくしてしまったと書かれていた植物。
そんなに美味しいんだろか??
ああ、美しく儚い夢のようなお話でした。
★★★★★
発行年月:2014年4月
私の呪いを解けるのは、私だけ――。すべての女子を肯定する、現代の『赤毛のアン』。

「大穴(ダイアナ)」という名前、金色に染められたバサバサの髪。自分の全てを否定していた孤独なダイアナに、本の世界と彩子だけが光を与えてくれた。正反対の二人だけど、私たちは一瞬で親友になった。そう、“腹心の友”に――。自分を受け入れた時、初めて自分を好きになれる! 試練を越えて大人になる二人の少女。最強のダブルヒロイン小説。
(新潮社HPより)
ダブルヒロイン、ダイアナと彩子。
ダイアナの本名は矢島大穴。名前のせいで嫌な目にいっぱい遭ってきた。
父親はダイアナが生まれてすぐに遠くへ行ってしまったと母から聞いている。
そして母親は、キャバクラで働きいつもドギツイファッション。
本当は有香子というのにお店での呼び名ティアラと呼ばせる。
そんな家庭環境のため、友達を作ることもせず孤独に過ごしていた。
唯一の楽しみは本を読むこと。
そんなダイアナと神崎彩子が出会ったのは小学3年生のクラス替え後。
彩子はお嬢様で皆が憧れる存在。けれどダイアナになぜか興味を覚え二人は
すぐに仲良しになる。
まさに現代の赤毛のアンです・・・^m^
ダイアナの母親も変わっているけど憎めないし、彩子の母親も気取ったかんじはなく
優しそう。
そしてダイアナのことが好きなお肉屋の息子・武田くん。
口ではいつもダイアナをからかったりしてるけど、肝心なときには頼りになる。
中学生になりお互い高校は別の道へ。
そして絶交という二人が少し離れてしまう時期があって・・・
再び高校卒業後に再会。
表題の「本屋さんのダイアナ」になったダイアナ。
まだ今はアルバイト店員の身分だけれど、今後夢の本屋さんを自分で持つのかなぁ~?
ハチャメチャなかんじのダイアナのお母さんのことも後半わかり
行方知れずの父親が実は・・・・という真実も発覚して
「え?そうなの?」ということが立て続けに起き
読んでいて楽しかった。
続編あっても面白くなりそうな話でした♪
★★★★
発行年月:2014年3月
201×年――新型ウイルス『バベル』が蔓延する近未来の日本。そのウイルスに感染して発症した人間の大半は言語に障害を来たし、場合によっては意思の疎通まで不可能になる。感染拡大を恐れた諸外国は日本との貿易・渡航を制限、日本経済は大打撃を受けた――。その後日本政府は巨大な壁「長城」を建設、「長城」の内と外で感染者と非感染者を隔離する政策を推進する。日本は一種の鎖国状態に入る。
その後感染者の中には隔離政策に抵抗、破壊活動や「長城」に侵入しようとする集団が発生する。その一方で「言語を伴わないコミュニケ―ションの可能性」をさぐる新しい動きも胎動してきて――。しかし日本政府はその可能性を否定するように、非感染者だけを収容する「タワー」を建設、一層の隔離政策をとるように。さらには「バベル」感染者がインフルエンザに感染すると死に至るケースがあることから、インフルエンザウイルスを使った悪魔的な計画を実行しようとするが……。
ウイルスとは何か? 新しいコミュニケーションの可能性とは? 福田和代にしか描きえないバイオクライシスノベル。
(文藝春秋HPより)
福田さんの書く物語は、いつかこんな事、起きるかもしれないというものなので
こんな状況になったら、自分ならどうする?とつい考えながら読んでしまう。
今回の話は、新種のウイルスによって脳症を起こす致死率の高いバベルが流行する
話。
発症後、命は助かっても後遺症として言語を失うという。
国は日本の言語、文化を後世に残すため優秀な教師数百人と優秀な子どもたち
(4歳~17歳)を集め高層建築物(タワー)に隔離する計画を実行する。
そして、非感染者と感染者を分けて住まわせるためコンクリートの塀を設ける。
さらに恐ろしい計画を実行しようとするが・・・
主人公の如月悠希は、物書きとして情報収集をする。
兄の直巳は、ウイルスを研究しバベル撲滅のため奮闘する。
ほかにも真実を伝えようとする外国人ジャーナリスト・ウィリアムや
自身も感染した野村医師。
一生懸命、人の命を救おうと奮闘する人たちの姿は素晴らしい。
でも国(総理)の考える事って恐ろしい。
国民のある程度の犠牲は仕方ないという考え方。
犠牲になるに値する命なんてないはずなのに・・・。
なんか、今の集団的自衛権を推し進めようとする総理の姿とダブって見えてしまった。
そういう意図が著者にあったのかはわかりませんが・・・
ラストはどうなる?と思ったら、よくわからないうちにウイルスは終息した?
めでたしめでたしの終わりと考えていいのか???
ま、経過がハラハラドキドキだったので、楽しめましたが。
★★★
発行年月:2014年1月
首折り男は首を折り、黒澤は物を盗み、小説家は物語を紡ぎ、あなたはこの本を貪り読む。

胸元えぐる豪速球から消える魔球まで、出し惜しみなく投じられた「ネタ」の数々! 「首折り男」に驚嘆し、「恋」に惑って「怪談」に震え「合コン」では泣き笑い。黒澤を「悪意」が襲い、「クワガタ」は覗き見され、父は子のため「復讐者」になる。技巧と趣向が奇跡的に融合した七つの物語を収める、贅沢すぎる連作集。
(新潮社HPより)
短編連作集?
前の話で出てきた人が次の話でも出てきたりする。
首折り男ってちょっと怖い殺人者だけど、読んでいるうちにあまり怖くなくなる。
理不尽な目に遭ってる人を放って置けない人がいるって救われる。
それが関係ない人からみたら、酷いやり方と思われるかもしれないけれど。
いじめにより理不尽な目に遭っている少年の話は辛かった。
でも一人で孤独に戦っている状況から誰かがそのことを知って見守っていると
わかるだけで救われるのかな?
最初の話<首折り男の周辺>では見知らぬ男に窮地を救われた少年。
<人間らしく>では、なんだかわからないけど虐めていた首謀者が突然の大怪我で
少年は虐めから解放。その後、成人して医者になった。
悪い者が罰せられ、我慢して耐えていたものが救われるのは読んでいて気持ちいい。
ほかの話にもそんなかんじのがあって、伊坂作品は安心して読める。
いつかこの状況は変わるんだ、きっとと思えるから。
探偵なのか?盗人なのか?よくわからない黒澤もいいキャラクター。
黒澤主役の長編があったら読みたいなぁ~。
バラバラに書いたものが、少し手を加えたらつ繋がりのある物になったって
あとがきに書いていたけれれど・・・伊坂さんの才能って凄いな。
★★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
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★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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