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読んだ本の感想あれこれ。
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2015年6月


 やっかい…だけど、温かい!

朝は三女の喫茶店、昼は次女のうどん屋、夜は長女のスナック――
可笑しくて、ホロリとしみる、商店街の人情ドラマ


お年寄りの多いラプンツェル商店街で、「ル・ジュール」が再開店した。時間帯によって出すものが変わるその店は、街の人に「三人屋」と呼ばれているが、店を営む三姉妹は、そのことを知らない。近所に住むサラリーマンは三女にひと目ぼれ、常連の鶏肉店店主は出戻りの幼なじみにプロポーズ、スーパーのイケメン店長の新しい恋人はキャバ嬢で!? ひとくせも、ふたくせもある常連客たちが、今日も飽かずにやって来る……。心も胃袋もつかむ、おいしい人情エンターテインメント!

「三人屋」の一日
6:00~11:00は、三女・朝日の喫茶店。
メニューは、コーヒーと焼きたてパンのセットで390円。パンは、そのままもトーストも、バターもジャムも、塗るものもお好みで、おかわり自由。

11:30~14:00は、次女・まひるの讃岐うどん屋。
香川の有名店から空輸で取り寄せた麺を食べさせる本格派。かけもぶっかけも390円で、数種の天ぷらを置く。細かく刻まれた芽ネギ、旬のすだちと、薬味にもこだわる。

19:00~26:00は、長女・夜月のスナック。
豆腐一丁、おからどんぶり一杯、分厚いふろふき大根など、大胆な突き出しが魅力。ボトルを入れて飲んで、〆に炊きたてのご飯を食べて2、3千円と良心的。

                      (実業之日本社HPより)



三姉妹が時間帯別で切り盛りするお店「ル・ジュール」。
商店街の人たちは「三人屋」と呼んでいる。


三姉妹の長女と次女にはある確執があった。
その理由が段々とわかり、姉妹の背景にある人間関係もわかってくる。

そこに三姉妹をよく知る、イイジマスーパーの跡取り飯島大輔が絡む。
三姉妹の歴史と大輔は切り離せない。
大輔はチャラ男だけど、人としてはいいな。


他に最近、常連になったサラリーマンの森野俊生や、商店街の仲間たちの
話が短編連作で登場。


三姉妹のなかで唯一の既婚者だった、まひるだが、夫が愛人を作り別れを切り出されて
離婚。
この夫・桜井勉は、どうしようもないダメ男だった。
さっさと別れて正解でしょう。


色々あったけど、三姉妹が仲良く協力していくであろうラストは良かった。


                         ★★★

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発行年月:2015年3月


 定年を迎え、滋賀から上京した妙子。目的は10年前に消えた亭主の行方。
<谷根千>にある近江寮で、うまいものを提供しながら、食べること、生きること、進むこと、を考える。

≪滋賀県が誇る「近江料理」あれこれ≫
熟れたうまみと匂いは高級チーズに匹敵「琵琶湖の鮒寿司」
将軍も赤穂浪士も切望した彦根藩の献上品「近江牛の味噌漬け」
嫁いだ娘の農繁期を案じた風習から生まれた「焼き鯖そうめん」
派手好みの織田信長に染められてしまった「赤こんにゃく」
うますぎて室町時代の天皇が歌にまで詠んだ「日野菜の漬物」
たんぱく質と鉄分豊富で食感はもっちり「丁子麩の酢味噌和え」
琵琶湖にしか生息しないコクのある身は幻の品「瀬田しじみ」

                  (光文社HPより)


面白かった!
以前読んだ「もじゃもじゃ」も良かったけど、この話も温かい気持ちに
させてくれる物語でした(^^)


東京に居るらしい夫を10年待って、意を決して探しに来た寺島妙子。
上京間もなく、財布を失くし途方にくれる場面は、こちらまで心細くなって
この先、どうなるの~?と思ったら・・・・

うまい具合に親切な人たちに助けられ、財布も無事に手元に。
そして、財布を拾った鈴木安江と出会ったことが、この物語のはじまり~。


タイトルを見たとき、学生さんが沢山下宿している寮の話?と思いましたが
少し違ってました。
元々は学生寮だった場所が滋賀県人公認宿泊施設として運営されているのは
東京近江寮。
安江は、そこの管理責任者。
そして、妙子は、そこで食事を作る手伝いをすることになる。

滋賀県の郷土料理がいろいろ登場。
赤こんにゃくは食べたことあるけれど、そのほかの物は未知。
ぜひ、食べてみたいなぁ~。


寮の常連さんたちとの交流話は、温かい。
食べることの大切さも改めて感じるお話でもある。


最後、妙子さんとご主人が再会するであろうところで終わっていますが
きっと二人はこの後、10年分のお互いの話をするんだろうなぁ~。
続編あるといいんだけどな。


                          ★★★★



発行年月:2012年12月

シナリオ作家、小説家、エッセイストとして華々しい活躍をしていた最中に不慮の飛行機事故で世を去った向田邦子。彼女が人気ドラマ「寺内貫太郎一家」のシナリオを書いていた頃、そして大病をへて記念碑的第一エッセイ集『父の詫び状』を発表する70年代半ばから81年の事故直前までのエッセイ三十五編を採録する。幼いころのしんみりする思い出を描いた名品「ゆでたまご」「お弁当」、誰もが我も、と思い当たる節のある失敗談「ポロリ」、納得の男性観察「パセリ」など、身の回りの出来事が切れのよい文章で切り取られ、ほのかに哀切な読後感を残す。今読んでも、何度読んでも、日本人の琴線に触れる傑作随筆ぞろいです

                     (文藝春秋HPより)




図書館棚で見つけた、小池真理子さんが選んだ向田邦子さんの随筆集。

どの話も素敵でした!

向田さんの作品、若い頃幾つか読んで・・・飛行機事故で亡くなったときは
驚いて哀しくて・・・(T_T)。

「寺内貫太郎一家」も大好きで見ていた!
そんなお話が最初にあって、凄く懐かしかった!
ドラマ、また見たくなっちゃったなぁ~。


子どもの頃の家族の話も、以前、ドラマで見ていたので、厳格なお父様と
それを和らげる優しいお母様の様子が、昭和の茶の間にあって、ほんわか。

大病をされたり苦労もあったと思いますが、こちらの随筆集には、明るい気持ちに
させてくれるものが多い。

特に笑ったのが<ポロリ>。
つい、心で思ったことが口に出てしまった失敗談を披露されていて
チャーミングな方だなぁ~と感じた。

<ヒコーキ>も事故で亡くならなかったら、笑い話で済んだ話でしょうけれど、
悲運にも飛行機事故で帰らぬ人となったと知って読むと、泣けてくる話に
なってしまった。

向田さんの作品、また読み返してみたくなった。


                     ★★★★★
 



発行年月:2015年5月

第153回直木賞受賞作!
選考会は前代未聞の満票決着。
「20年に一度の傑作。とんでもない商売敵を選んでしまった」(選考委員・北方謙三氏)
「私は何度も驚き、ずっと幸福だった。これほど幸せな読書は何年ぶりだ?」(選考委員・伊集院静氏)

何者でもなかった。ゆえに自由だった――。
1975年、台北。偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。
内戦で敗れ、追われるように台湾に渡った不死身の祖父。なぜ? 誰が?
無軌道に生きる17歳のわたしには、まだその意味はわからなかった。
台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。歴史に刻まれた、一家の流浪と決断の軌跡。

                  (講談社HPより)



凄い物語だったなぁ~。
ノンフィッションっぽい。

主人公の葉 秋生は、蒋介石が亡くなった1975年のすぐ後で何者かに
室内で殺された。
誰が何のために?
その謎をずっと抱えた秋生が大人になって、自らその謎を解くまでの物語。


舞台は台湾。
あまりよく知らない、中国との関係がこの物語によって少し理解出来ました。
元々は中国人だったのに、国民党員たちは、共産党員に追われ台湾に逃げて来た。
秋生の祖父・尊麟も山東省出身だが、逃げのびてきた一人。

同じ中国人でも憎み合い殺し合った過去がある。

しかし、長い年月を経て変わる人の気持ち。

ラストの尊麟がかつて多くの村人を凄惨な方法で殺した村を訪ねる秋生の場面は
ドキドキした。
祖父を殺した者もわかり、その背景にあった事実もわかった。

憎しみを相手に向けると必ず返って来る。
それを受け止めまま鎮めることは難しいけれど、とても大事なことだな。

秋生を温かく迎え入れてくれた宇文叔父さんを秋生も幼い頃から親しんだ叔父さんと
して懐かしい気持ちで会えて良かった。


著者は日本名ですが、調べたら台湾の方でした。
著者だからこそ、書けた物語でしょうね。


歴史小説でもあり、青春小説でもあり、ちょっとミステリーの要素もあったりで
読み応え十分の素晴らしい1冊でした!!


                         ★★★★★

 



発行年月:2015年5月


 帰り道は忘れても、難読漢字はすらすらわかる。
妻の名前を言えなくても、顔を見れば、安心しきった顔をする――。

東家の大黒柱、東昇平はかつて区立中学の校長や公立図書館の館長をつとめたが、十年ほど前から認知症を患っている。長年連れ添った妻・曜子とふたり暮らし、娘が三人。孫もいる。

“少しずつ記憶をなくして、ゆっくりゆっくり遠ざかって行く”といわれる認知症。ある言葉が予想もつかない別の言葉と入れ替わってしまう、迷子になって遊園地へまよいこむ、入れ歯の頻繁な紛失と出現、記憶の混濁--日々起きる不測の事態に右往左往するひとつの家族の姿を通じて、終末のひとつの幸福が描き出される。著者独特のやわらかなユーモアが光る傑作連作集。

                    (文藝春秋HPより)



年を取って、段々と記憶をなくしていく病。
東 昇平が認知症を患ってから10年の家族の様子を描いている物語。

娘たち3人は、それぞれ別の所に住んでいる。

長女の茉莉は、夫の仕事の関係でアメリカ在住。息子が2人。
次女の菜奈は、夫と息子と割と近くで暮らしている。
三女の芙美は、独身でフードコーディネーターとして多忙な日々。


曜子は、介護ヘルパーや、訪問入浴、ディサービスなどを使って何とか夫の介護を
ひとりで頑張ってきたけれど、自身も網膜剥離で手術をしなければならなくなる。

三姉妹は、それぞれの暮らしを何とか工面しながら、父親の介護に協力し合う。

娘たちが協力的でいいなぁ~。

認知症の昇平が、メリーゴーランドに子供だけでは乗れないことを困っている姉妹の
頼みを聞いて、一緒に乗ってあげる場面は、ほっこりした(^^)
子どもが困っていたら、助けてあげるのは、教師生活が長かったからか、
元々、優しい性格だからでしょうか?


介護って大変だし、辛い部分も多いけれど、この物語のなかには、昇平を大事に思う
家族の優しさが溢れていて、読んでいても悲壮感がなく良かった。

自分の親も配偶者もそして、自分自身も、この物語のような状況を
間違いなくいつか迎える。

なかなか難しいけれど、この東家の人たちのような、大らかさを持ち続けられたら
いいな。

昇平は最期まで、幸せだったでしょうね。


                          ★★★★
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