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読んだ本の感想あれこれ。
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38a4590c.jpg発行年月:2009年8月

筑後川の水を一年中、折桶する伊八と元助。川には沢山の水があるが、そうしないと田畑は涸れる。一方、大雨による増水時には田畑は水浸し。この川に必要なのは堰だ!先代からの苦労をここでなんとしても止めなくては・・・・。その思いに賛同した5つの村の庄屋が立ち上がる。

自身の命を賭けても、成さねばならないという強い決心で・・・。

 

時代は・・・・島原の乱で家族を亡くした話が出て来るので・・・・江戸時代1640年以降~?

筑後川流域に生活している伊八と元助が川から汲んだ水を桶で田畑に続く溝に流す作業(これを打桶というらしい)に励む姿から始まる。

川からの水が途絶えれば、作物は枯れるが、逆に大雨の後の被害では、田畑が流される。大雨の被害で稲がダメになっても年貢は納めなければならず、百姓たちは、自分たちが食べていくのにギリギリの暮らし。食い扶ち減らしの為に、年寄りが生まれたばかりの赤ちゃんと共に山に向かいそこで亡くなったり・・・

ついに5つの村の庄屋たちが、立ち上がり、先ずは藩に嘆願書を提出し、自分たちの声悲痛な思いを伝える。5人の庄屋たちの気持ちが凄い。

村人の代表として、命を賭け、財産も全て投げ打つ覚悟。

藩の役人もそんな5人の意気込みに心を打たれたようで、上巻の終わりは、一大工事の始まりか?と明るい兆しが見えてホッとした。

でも、反対する者も・・・。

下巻はどうなるんだ!?

帚木さんの文章は綺麗。

ちょっと馴染みのない言い回しが多いのですが、物語の面白さがそんなことは気にさせない。

むしろ、現代とは違う時代のお話なんだと、その雰囲気に浸れます。

 

★★★★

 

 

 

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efcc91be.jpg発行年月:2005年8月


父が遺した古いアパ-ト「扇荘」を管理している宗像時子。
入居者は、いろいろな事情を抱えているが、分け隔てなく接する時子。

二度の結婚に破れて、結婚はこりごりと思っていたが、新たな入居者として現れた男性・有馬生馬に、少しずつ惹かれていく。

心、温まる恋愛小説。


帚木さんの作品は、病院を舞台にしている作品ばかりを読んでいたので、この恋愛長篇に、興味が沸いて図書館から借りてきました。

表紙の絵も可愛いお花。
よくみる花ですが、これが千日紅、別名で千日草ともいうそうです。

物語は、中盤まで、「これがどう恋愛に発展するのかな?」というかんじ^^;
古いアパ-ト「扇荘」の入居者は、ちょっと変わった人が多くて・・・。
普通の大家さんなら追い出しちゃうんじゃないのかな?という人も結構いるのです。

洗濯物をみなの共用スペ-スに干す人や、派手な夫婦喧嘩が度々起こる人たちや精神科に通っていて何やら時々、不審な行動をする一人暮らしの人やら・・・・

しかし、管理人の時子は、追い出すのは簡単だけどと、それぞれの事情をよく把握したうえで注意するところは注意し、自分が何か手助けが出来る事があるのなら、請け負う、実によく出来た人。


子ども達から見放されたかんじの老夫婦の夫が亡くなったときには、葬式の手配まで進んでやってあげたり・・・・・勿論、そうするまでにちょっとした迷いはあるのですが、読んでいてその辺は誰でも思う迷いなので、結果的に、やってあげた事がエライ!と思いました。


そして、途中から登場のまたまた、良い感じの男性。

2人が幸せになるといいなぁ~なんて思って読んでいました。
そして・・・・・・

ラストは期待通りでよかったぁ~。

千日紅の花言葉a08774b3.jpg
<恋の希望> <不滅の愛>だそうです。


この花、かわいいなぁ~とずっと思っていましたが名前は知りませんでした。
なんだか、今まで以上に好きな花になりました!


帚木さん、恋愛小説も素敵でした!
また、こういうかんじの話も書いて欲しいな。

★★★★
082fb134.jpg   発行年月:2008年8月


   「ひとは男女である前に人間だ」。
   インタ-セックス(男女どちらでもない性器官をもっていること)
   の人々の魂の叫び。
   高度医療の聖地のような病院を舞台に、医療の錯誤と人間の尊厳を問う。

                            
(集英社HPより)


以前読んだ「エンブリオ」の続編という作品。
今回の主人公は34歳の女性医師・秋野翔子。

翔子が、「エンブリオ」での主人公・岸川医師が経営し、自身が院長を務めるサンビ-チ病院に転勤することから物語が始まっていく。

「エンブリオ」のときにもいろいろな専門知識を学び勉強になりました。
そのなかでの岸川には、医師として優れた才能を持ってはいるが、独りよがりな行動は好きじゃないなぁ~の感想を持っていたので、この作品の中では、意外と良い医師の顔が描かれていて、「え?この人こういう人だったの?」と先ずは少々、戸惑いました。

でも、後半部分で「エンブリオ」の中で起こした岸川の罪の部分に翔子が気づいたあたりから、またまたエゴむき出しのような面が出てきて・・・・。
でも、最後の最後に、自己中心的な面を自身も自覚していて、後悔していたのかな?なんて思えて、岸川のした事は許せない事だけど、その心理のようなものが少し理解出来たかな?というかんじでした。
罪を犯さず、成功することは出来なかったのか!?残念で仕方ない結幕ではあり、少しやり切れない思いが残りましたが・・・・。


一方、翔子は優等生過ぎるくらいのよく出来た医師。
まだ若い彼女がそこまで「インタ-セックス」の患者のために自分の人生を全て賭けたような行動をするのが最初から不思議でしたが、これも最後の方で、納得しました。

物語の中に性器の名前やらセックスという言葉も頻繁に出てきますが、厳粛な印象だけが残るのは、この著者の文章が清潔なかんじだからでしょうか?
まるで医学書を読んでいるかのようですが、その説明は分かり易く、医学知識がない者でも自然と理解できる内容でした。

わたしは、元看護師なのでインタ-セックスは学生の頃「半陰陽」ということで講義を受けました。
スライドで実際の画像を見たときのショックは今でも鮮烈に覚えています。
世間ではあまり知られていない特別な人たちの様ですが、実際には、結構な割合で生まれているという事もその時、まだ若かったわたしは、将来、自分の子どもがそうだったら?などと心配もしたりしました。

この物語の中でも、発現率は100人に1.5人の割合とか。
想像より多い発現率には驚きでした。

この書の至るところで、これは医師でもある著者自身の考え方かな?という部分がありました。

人を「男」と「女」の二つの性で区別するだけでいいのか?
第三の性もあって良いではないか?
第三の性を排除してしまおうとする社会規範(戸籍や常識)を改める方向にいっても良いのでは?
などなど。

なるほどなぁ~わたしもそう思う!という部分が多かった。

こういう小説を通して、一人一人の認識が変わっていったらいいな。

帚木さんの小説を読んでいると、何か熱いものがこみ上げてきます。

きっと医師としても、素晴らしい方ではないかな?と想像します。

★★★★★


65d5d168.jpg発行年月2002年7月

 九州の小さな海岸の町。
贅沢な施設と高度な医療で知られるサンビ-チ病院。
不妊治療に福音をもたらし患者たちに「神の手」と慕われる院長の産婦人科医、岸川卓也のもう一つの顔。
男性の妊娠、人工子宮、胎児からの臓器移植・・・・・。
生殖医療の無法地帯に君臨する医師の狂気がひらくとき。
生命の尊厳と人間の未来を揺るがす書き下ろし長編小説。
(本の帯文より)
 

エンブリオとは・・・受精後8Wまでの赤ちゃん。それ以降は胎児と呼ばれる。

少し前に読んだ「風花病棟」(短編集)では、真摯な態度で医療に向き合う医師たちを描いていて感動しました。
この作品の主人公の医師・岸川は、ある意味では研究熱心で高度医療を行う素晴らしい医師ですが、違う側面から見たら悪魔とも言える非常にアクの強い人物という印象。
途中までは、不妊治療で思うような効果が得られず、悩む夫婦には神様的な存在で、倫理的には反発も多いだろうその治療方法もそれで救われる人たちがいるのなら・・・・・と受け入れながら読んでいました。
が・・・段々にエスカレ-トしてゆく医師の行動に怖くなりました。
ラストは、うぅ~凄いね!この医師。
そこまでやりますか!?という感想。
でも最後まで楽しませていただきました!
こういうちょっとワルい医師を描くのもなかなかいいな。
文章も上手いし!

物語の中には、今の生殖医療でも、そこまではやってないはずよね?という事が多々出てきます。
知らない人が読むとこの治療を受けたいと駆け込みたくなる人も居るかもなんて、余計な心配をしてしたりして・・・。

例えば、5歳の息子に重篤な心臓疾患があり予後不良で命の危険があるとの診断。
母親は妊娠中。
お腹の中の子どもの心臓を取り出し、5歳の子どもに移植するという治療。
または以前、不妊治療で体外受精させた卵の分割したスペアを使って再び妊娠させるという治療。

他にもいろいろ。


今は、体外受精も珍しい治療とは言えない時代。
代理母問題は、少し前にメディアでも取り上げられましたが、生殖医療の研究はどんどん進んで技術的には、もっといろいろな事が可能になってくるでしょう。
本の中に出てきた人工子宮も実際にも研究は進んでいるようですし。


兎に角、いろいろな問題提起がされている内容でした。


この物語主人公・岸川医師については、著者の新刊「インタ-セックス」でも登場するようなので、そちらも読むのが楽しみです。

★★★★


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