発行年月:2013年7月
「青葉おひさまの家」で暮らす子どもたち。
夏祭り、運動会、クリスマス。そして迎える、大切な人との別れ。
さよならの日に向けて、4人の小学生が計画した「作戦」とは……?
著者渾身の最新長編小説。
直木賞受賞後第一作!
(集英社HPより)
いろいろな事情で児童施設に入所している子どもたち。
「青葉おひさまの家」の1班のメンバーたち。
班のまとめ役は、中学3年生の佐織里。両親が離婚し体の弱い弟は親戚が面倒をみているが入院中。
淳也(小3)と麻利(小1)は、兄妹。
美保子(小2)は、母親から虐待を受け、一時避難。
太輔(小3)は両親が交通事故死で伯母夫婦に引き取られたが、そこで虐待を受け施設に入所。
入所前にいろいろな困難に遇っているが、施設内では皆、明るい。
兄弟姉妹のように仲もいい。
物語はそこから三年後に途中で変わる。
高校3年生になった佐織里は、大学受験を目指す。
模試の結果はA判定だったけれど、事情で進学が難しい状況に。
淳也と麻利は、それぞれ学校生活に同じような悩みを持っている。
美保子は、母親が再婚の予感。
太輔は、伯母が再び一緒に暮らしたいと願っていると知る。
それぞれが岐路に立たされ、自分の考えで今とは違う場所に向かおうと
決断する者も出てくる。
幼いうちから苦労して来た子達だけど、施設のなかで共に生活しながら
心を許しあえる仲間に出会えたことは幸せだったんだろうな~。
いつまでもそこに居られるわけではないと悟り、それぞれの道を進む子どもたち。
みんな頑張れ!!
彼らが、心の優しい強い大人として成長しますように・・・・。
朝井さん、書くものの幅が広がって来そうですね。
次回作も期待します(^^)
★★★
発行年月:2013年2月
彼らは希望を運ぶのだ――。鎮魂と再生への祈りをこめた痛快な航海記。

失恋目前のトモヒロが乗り込んだ瀬戸内の小さなフェリーは、傷ついたすべての者を乗せて拡大する不思議な「方舟」だった。双頭の船は北へと向かい、さまざまな乗客を大きな腕で抱きかかえるようにして停泊する。やがて500戸の仮設住宅の建設が始まって、新しい町と新しい家族が誕生し……。祈りと希望にみちた長篇小説。
(新潮社HPより)
何の前知識なしに読んだので、最初の「ベアマン」を読み終え次の「北への航路」が
全く違ったお話に感じて・・・短編集なのか??と思ってしまいました^^;
しかし、段々とこれは長編小説だとわかり、どんどん面白くなる展開。
最初の話に登場のベアマンも後ほど再登場。
動物を愛する優しい人でした。
そして、最初で出てきた語り手のわたしも千鶴という名前だと途中から分かる。
ちょっとファンタジ-の要素があるものの、3.11の被災地がやがて舞台となって
被災地以外から船でそこに向かった人たちと被災者の人たちが共に暮らす
新しい集落を船のなかに形成し、未来を描いていく話。
船のなかには、元々のリーダーの梶船長がいて、
そこに新たに加わった被災地での指導者的立場に立つ荒垣源太郎。
2人の性格は少し違うけれど、巧く人々をまとめていく。
双頭の船とは、この2人のリ-ダ-を指しているのかな?
被災地の人々のリアルな気持ち。
亡くなった人たちの思い。
それから亡くなった動物たちのこと。
いろいろ考えさせられました。
船のなかで暮らした人たちは、やがてそれぞれの考えで、そこから分かれて暮らす。
陸に留まりたいと思う者。
そこから離れて行きたいと思う者。
どこで暮らそうと、彼らには明るい希望があるのだと思えるラストは
良かったなぁ~。
ベアマンと千鶴はどこでどう暮らしているのかな?なんて想像したり・・・。
3.11が元にあるお話ですが、重くなり過ぎず、良いお話でした!
★★★★★
好評を博した『珈琲屋の人々』続編。東京は下町の商店街にある『珈琲屋』。主人の行介はかつて、ある理由から人を殺していた……。心に傷を負った人間たちが、『珈琲屋』で語る様々なドラマを七編収録。情感溢れる筆致が冴える連作集。
(双葉社HPより)
続編を待っていました!!
商店街にある珈琲屋の店主・宗田行介は、過去に殺人を犯した前科持ち。
けれど、その殺人は、正義感ゆえ。
そして、その罪を服役を終えたあとも一人背負い、自らの罰を右手に与え続け、
その手は火傷で痛々しい。
寡黙だけど、珈琲屋を訪れる人々が困っていれば助ける、行介は格好良い。
そんな行介を昔から知る商店街の幼馴染・島木と冬子。
度々、珈琲屋に顔を出し、行介と会話する場面は、ちょっとほのぼの。
ほかのお客が持ち込むちょっとした厄介ごとを行介がアドバイスしたり実際に自ら危険を冒しながらも解決に
導いていく。
短編連作形式で、7つのお話が語られる。
表題の「ちょっぽけな恋」は、中学2年生の千明と同じく中学生の男子・芳樹の恋を応援する話。
母子家庭の千明と父子家庭の芳樹。
家族ぐるみのお付き合いに発展したら楽しそうだなぁ~(^^)
ちょっと重たい話が多いなかで、唯一ほっこりしたお話でした。
ずっと行介を想い続けた冬子の気持ちが、罪の重さから頑なにその気持ちを受け入れずにいた
行介の気持ちを変化させたラストの急展開は、なんだか嬉しかった。
この続きはあるのかなぁ~?
続きが気になったのは他にも
「大人の言い分」の勇樹は、包丁であのあと母親を刺したのか?
DV夫から逃れ息子と2人で暮らしたのに、苦しい生活にイライラすることが多くなり、息
子の勇樹に手を上げてしまう日々。
反省するのに、また同じように子どもを殴ったり蹴ったり
しかし、勇樹は泣かずに耐える「お母さんが好きだから・・・」と
可哀想過ぎて、泣けて来たけど、最後の勇樹の行動には驚いた!
どうなったの?あのあと!?
いつか2人が笑顔で暮らす話が読みたい!
中学2年の男子生徒が部室棟の屋上から転落し死亡した。
事故? 自殺? それとも他殺なのか……?
やがて生徒がいじめを受けていたことが明らかになり、
小さな町に波紋がひろがり始める。
朝日新聞朝刊連載時から大反響の問題作
(朝日新聞出版HPより)
凄くリアリティある物語でした。
中学2年生の男子・名倉裕一が校内で転落死の場面から始まる。
なぜ、彼は死んだのか?
事故?自殺?事件?
彼と同じ部活で、よく一緒にいた4人の同級生が警察から事情聴取を受ける。
14歳の藤田一輝と坂井瑛介は、逮捕。
13歳の金子修斗と市川健太は児童相談所へ。
しかし、名倉裕一の死が彼らと直接関わるとの証拠はなく、立件されず、彼らは釈放となる。
彼の死の真相を追うとともに、名倉裕一の生前の様子が、いろいろと語られる。
いじめがあったのは事実だと最初に彼らの自供でわかったけれど・・・
いろいろな状況で、明らかにされるクラスの様子、部活内での様子を見ると、亡くなった名倉くんは
気の毒だけれど、皆から疎まれてしまったのも仕方ないと思えてしまう。
どうして、こんな性格になってしまったんだろう?
虐めの首謀者とされてしまった体格の良い坂井くんは、みなの虐めがエスカレ-トしそうになると
止めていたり、場の雰囲気を考えて自分が犠牲になる行動を取っていた。
ちゃんと庇ってくれる者もいたと言うのが救いでもあった。
死の真相は、ある程度、最後の方でわかったけれど
ここに関わった多くの生徒たちには、重い罪の意識が一生消えないんだろうな・・・・
と考えると辛い。
最初から最後まで一気に読ませる凄い話でした!!
耳を澄ませば、彼らの声が聞こえるはず----。
「文藝」掲載時より口コミで話題を呼び、かつてない大反響に。
著者16年の沈黙を破る、
生者と死者の新たな関係を描き出した心に深く響く物語。
(河出書房新社HPより)
いといせいこうさんが小説、書くんだ?と思ったので、手に取りました。
本の内容には、何ら前知識なく読みました。
なので、途中で「え?そういう話だったんだぁ~!?」と驚きました。
でも、それが良かった!
なので、もしここを読んでいる人で、まだこれから読まれる人は、これより先は読まないで欲しい。
先入観なしで読むほうが絶対に良いと思うので・・・・(^^)
物語の主人公・芥川冬助は38歳。
杉の木のてっぺんになぜか居て、そこから想像ラジオを発信している。
彼のラジオを聴くリスナ-はどんどん増えていく。
メ-ルをよこしたり、電話をくれたり・・・・想像力で成立しているラジオ番組。
5つの章から成り、第2と第4は、リスナ-側の物語。
ア-クの元に時々、様子を見に来る、父親と兄。
「下の降りて来いよ」と言いながら、自分では降りられないというア-ク。
しかし、最後は、リスナ-たちの助けでア-クは別の場所に旅たつことが出来た!
ア-クの喋りは飄々としていて悲壮感とかあまり、ないんだけれど、
物語を読んでいると、3.11で亡くなった人たちの物語と気づき、哀しさでいっぱいになる。
第2章は、福島に援助物資などを届けた5人が、東京に帰る車中での場面。
彼らは生きている。
が、ふとした拍子にア-クの声が聞こえた者が、
かつて日本にも同じように苦しんで亡くなった人がいたと話す。
広島、長崎、東京、神戸、そして東北。
苦しみを体験していない、わたしたちには、彼らが亡くなった哀しみや悔しさや苦しみは理解のしようがない。
人を想うには、想像力が必要なんだ。
想像力を持って、彼らの哀しみ、辛さを共有してあげることが、供養に繋がるのかな?
う~ん、凄い小説だ!
感動したというより、衝撃的でした!
★★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;