自分の力ではどうにもならない衝撃的な事件に見舞われたあと、人はどんな道を歩んでゆくのか。恋人、夫婦、家族たちに訪れた人生の転機を温かな眼差しですくいとった7編。人々の再出発を予期させる結末にはひとすじの希望の光が射しこみ、感動を呼ぶ。
(双葉社HPより)
先日、読んだ「ぴしゃんちゃん」がとても好きな文章だったので、期待して読みました。
7つの短編集。
それぞれ立場は違うけれど、9.11の同時多発テロが物語の中に出てくる。
日本で、ただニュ-スを見ながらの者あり、ニュ-ヨ-クに住み、身近な人を亡くした者あり、その関わり方は様々でしたが・・・・。
著者の経歴をみると、現在、ニュ-ヨ-ク在住とのこと。
きっとこの事件への思いは、日本でテレビ画面であの二機の飛行機がビルに突っ込む映像をまるで映画のCG撮影をみるような気持ちで見ていたわたしとは違うのだろうなぁ~。
物語は、どれもラストが良い。
幸せばかりの人生じゃないけど、何かの機に、少しずつ今までと違った良い方向に向かってゆくんだな~と感じる物語たち。
表題作「犬のうなじ」は3番目に登場。
10年前、バイクに乗ったまま何処かに行ってそのままの恋人・ロクロ-を密かに待っているナミエ。
9.11の犠牲者追悼のセレモニ-の公園内で
首輪の付いた犬に出会い、そのタグには名前らしいFangの文字。
もしも飼い主が現れたら返さなきゃならないので、頭文字の「F」と呼び可愛がる。
「F」のうなじは惚れ惚れするほど白くなめらか。
どこかロクロ-の目とダブる眼差し。
情景が目に浮かぶような物語で7作品中、一番気に入った!
ラストは少し、哀しいような気もするけど、きっと新しい一歩を踏み出すんだろうな~と予感させる明るさも感じて良かった。
短編集だけど、全部良かった!
長編もあるかな?
もっとこの著者の書く物語が読みたい!
そんな風に思いました。
★★★★
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やさしくて少し怖い、家族のほころびと再生
占いで生計を立てる志津、OLの真奈美、日雇い労働をする俊。3人が暮らす家の庭には、家族だけの秘密が・・・・。
新鋭作家の新境地
(文藝春秋HPより)
この著者の作品は、過去に「とりつくしま」 「薬屋のタバサ」と読んだ記憶。
ふたつとも、ちょっとココとは違う世界が混じったような不思議な話だったなぁ~。
今回のは、何処にでもありそうな現実の世界の話。
両親が亡くなり、三人のきょうだいで暮らす家。
年齢は・・・次女の真奈美を40過ぎたのに・・・と言い、弟は、更に次女から10歳ほど年が離れたということからして、中年以降の三きょうだいということがわかる。
若いきょうだいとは違い、そこの過程に至るまでのこの家族の歴史も気になる。
次女・真奈美に離婚歴があったり、一番下の、俊は、なにやら精神的に少し弱い部分がある様子で、家族の暮らしは平凡で淡々としているのだが、なにやらザワザワするような居心地の悪さを感じながら読みました。
会話の中に度々、登場の「らいほうさんの場所」とはなんなんだろう?とず~っと気になりながら・・・・。
最後の方で少し、その事に触れるけれど、結局、確かめられることなく・・・・・
読み終えても、ザワザワ感が尾を引きました。
占いを過去に志津からしてもらったと言い、3歳の娘・うららと登場の女性が不気味でした。
こんな風に度々、自分の生活のなかに踏み込んで来られたら・・・と想像するとゾッとする。
占い稼業もこんな苦労あるんだなぁ~。
楽しい話ではなかったけど、やはり不思議な魅力がこの作家さんの書くものにはあるな。
次回作も楽しみにしよう。
★★★
わけあって25歳にして窓際族になった僕の仕事は、会社所有の豪邸の管理人。その豪邸に、いつの間にか集まったのは、なぜか丑年ばかりで-----。
この家は、みんなの居場所。
(ポプラ社HPより)
牧場が舞台の話かと思ったら、集まる皆が丑年だからなんですね~(^^)
楽しいお話でした。
一人一人は、抱えている問題、結構深刻なんだけど、人と人が出会い、一緒に時を過ごすうちに、そんな問題が、解決の方向に向いて行き、最後は、皆が幸せになれたかんじ。
主人公の畔木朋(クロ)は、会社で上司を殴ってしまったらしい。
詳しい経緯は明らかにされていないけど、他の人を庇っての行為だったようす。
阪神大震災を経験し、知り合いを15人亡くしている。
辛い経験から学んだことは、自分に関わりある人たちとは、ちゃんと向き合って行かなきゃダメって事。
自分の家の前で、行き倒れ状態だった美咲を助け、一緒に暮らすようになり、やがては無くてはならない大切なパ-トナ-へ。
美咲がどういう経緯で行き倒れ状態になったかは、やや説明不足だったような気もしたけど・・・
わたしの読み落としかな?^^;
管理人の仕事をしながら住み込む豪邸に、集まる面々も、悩みを抱えている。
相川無人(74歳・丑年)・・・・元天才手テニスプレ-ヤ-。息子家族と同居しているが思うところあり、ボケたふりをしている。
野島ふうか(13歳・丑年)・・・無人の知り合い。ピアノが抜群に上手く、将来はピアニストになりたいと思っているが、家の経済状態を考えると、無理な話。自分の才能を封印している。
坂城部長(49歳・丑年)・・・デキル男。だが、若い頃、サ-ファ-当時、友達に自分のせいで怪我を負わせしまったことを悔いている。
クロ・美咲も丑年生まれという偶然から「COW HOUSE」と豪邸を名づけ看板まで作って掲げる。
単に皆が楽しく集う場所と思いきや、もっと大きな意味のある場所に変化していく過程も楽しかった。
そして、更に人が集まり、人と人の繋がりが広がっていく。
こんなに人が集まったら、一人くらい嫌な人が出てきそうなんだけど、ここには居ない。
みんな個性的で素敵!
読んでいて、とても楽しかった。
みんなが、どんどん幸せになっていく物語。
やや都合よく出来すぎかもしれないけど、明るく希望が持てる話は好き。
★★★
三姉妹が慕う、母親の妹のるり姉は天真爛漫で感激屋。周りの人々を楽しい気分にさせてくれる天才だ。だが、そんなるり姉が入院した。季節を巡り、三姉妹や母親、るり姉の夫の視点から、元気だったるり姉との愛おしい日々が語られる。
連作家族小説。
(双葉社HPより)
母親の妹を「るり姉」と呼んで慕う、三姉妹の様子が微笑ましい。
こんな叔母さんいたら、楽しいだろうなぁ~。
三姉妹には、一番上のお姉さんという存在。
三姉妹がそれぞれ語るるり姉からも素敵な女性だとわかるけど、夫になった開人が語るるり姉が一番、好き。
開人もなかなか魅力的。
るり姉の3つ年下だけど、結婚するまでは、押しまくっていたんですね~。
三姉妹が開人のことを「カイカイ」って呼ぶのもかわいい。
家族の繋がりがとても温かくていいなぁ~。
看護師の母親も、なかなか面白い。
ちょっと天然キャラで、可愛いかんじ。
ほのぼのム-ドをやや壊すように、るり姉入院の時には・・・もしかして・・・
皆が語ってるこの事は、故人を偲んだ思い出話?なんて心配になりました。
が・・・・最後の最後にホッ!
楽しい気持ちで読み終えられてよかった(^^)
★★★
僕たちはあの街で出会い、そして別れる。
次の街へ行くために--------。
彼女が暮らす街まで電車の経路を、ずっと頭の中で考えている。その街に彼女しか存在しないように感じ、その街に自分だけが存在しないような感じ----十年の歳月をかけて書きためた、「忘れられない場所」をめぐる短編集。『パレ-ド』から『悪人』まですべてのエッセンスが詰めこまれた、ファン必須のマスタ-ピ-ス!
(新潮社HPより)
10の短編集。
ほのぼのしたかんじの作品あり、闇のようなくらいイメ-ジの作品あり。
この著者の作品は、あまり沢山、読んではいませんが、ハ-ドボイルドなものは、まだ未読。
これから、過去作品のそういう類のものも読んでみたくなりました。
でも、この10編では、最初の話と次のがすき。
最初の「日々の春」は新入社員の立野くんをちょっと気になる先輩の私。
ちょっとこの後日談を想像して、楽しんだ。
二番目の「零下五度」は、韓国旅行の女性が旅先で見かけたある状況。
お粥屋の前で自転車に取り付けた警報機を鳴らしてしまうおじさん。
それをお粥屋から覗きに出てきた客と思われる韓国人男性が手助けする。
同じ場所に居合わせただけの全く他人で何ら接点もない二人なのに、ある共通の疑問を持っているというのが面白かった。
こういう話、大好き(^^)
表題作「キャンセルされた街の案内」は一番最後で、ちょっと長い作品。
故郷から東京の自分のアパ-トに突然、住みついた兄。
最初は疎ましく思うのだが、居ると安心したりもする。
「ぼく」は小説を書きながら、今は無人島と化した軍艦島を案内する仕事をすることになる。
「ぼく」の書く小説が、よくわからなかったなぁ~^^;
でも、なんだか不思議な魅力みたいな物を感じた作品でもあって、好きじゃないけど、一番印象に残ったかも。
軍艦島・・・・ちょっと前にテレビでもやってたけど、わたし行きたくないな。
なんだか、不気味なかんじで・・・。
文中にもあったけど、「いるべきものがいない時の恐怖と、いるはずのないものがいた時の恐怖とでは、一体どちらが不気味だろうか?」
う~ん・・・両方不気味だけど、いるべきものがいない方が、わたしは怖い。
ササッと読めて、なかなか面白い本でした。
★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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