忍者ブログ
読んだ本の感想あれこれ。
[510]  [511]  [512]  [513]  [514]  [515]  [516]  [517]  [518]  [519]  [520
518f9957.jpg   発行年月:2010年5月

昭和6年、若く美しい時子奥様との出会いが長年の奉公のなかでも特に忘れがたい日々の始まりだった。女中という職業に誇りをもち、思い出をノートに綴る老女、タキ。モダンな風物や戦争に向かう世相をよそに続く穏やかな家庭生活、そこに秘められた奥様の切ない恋。そして物語は意外な形で現代へと継がれ……。最終章で浮かび上がるタキの秘密の想いに胸を熱くせずにおれない上質の恋愛小説

                            (文藝春秋HPより)


2010年 第143回直木賞受賞作品ですね。
中島さんの作品は、結構好きなので受賞は嬉しかったなぁ~(^^)


この物語は、タキが女中奉公をした時代の回想録のような話で進みます。
昭和5年に尋常小学校を卒業し、先ずは小説家の小中先生の家に女中として入り、その後、小中先生の知り合いの娘さんの居る平井家に女中として住み込み。
その平井家での事が主に語られる。
奥様の時子は穏やかで優しい人柄。
恭一坊ちゃんも可愛らしく素直。
二人とも女中のタキを信頼し、家族の一員のように接していて、読んでいて心地いい。
昭和の時代のレトロでお洒落な上流階級の暮らしを垣間見るかんじ。

しかし、時代は、段々と戦争を背景にした穏やかでない情勢へと変化していく。
史実に基づいた事件、昭和11年の2.26事件やらも語られ、そのときの話で、暗殺を逃れた岡田首相を助けたのは、女中たちの機転だったという話は、事実かどうかさておき、タキの気持ちになって読んでいたので、ジ~ンとした。

タキの記す回想録を時々、読んでは矛盾を感じる箇所に文句をつけるタキの甥の次男の健史が、後々、重大なことを成し遂げるのだが、それは読んでる途中には予想出来ない事で、
最後の方で登場したときには、前に書かれていた多くの事が少しずつ繋がっていたんだと気づき衝撃的だった。

タキが女中として平井家に仕え、奥様の時子やその周りの人達と接するなかで気づいたある秘密。
それは他言はしてはないないこと。

ラストの方で、語り手がタキから他の者に変わり、その秘密の真相が明らかになり、今までのタキが語った回想録を再び最初から読み返したくなった!

タキが抱えていた秘密を良い形で明らかに出来て、皆がそれを知り当時の事を懐かしく思い出す。
年月が経てば秘密も公にした方が、良いこともあるんだなぁ~。

読後感は、なんだか幸せな気持ちになれるお話でした。

表紙の絵も、読み終えてみると違った感動がありました。

★★★★★


PR
7f0f51cb.jpg発行年月:2010年5月

美しい少女との目眩く日々。歪んだ愛の代償は?
気鋭の作家・近藤史恵が描く、禁断の長編ゴシック・ミステリー!

施設で育った内気な少年・博人は、進学への援助を得るため、同い年の樋野と陸の孤島にある屋敷で働き始めた。整った容姿の樋野には壮絶な過去が。博人は令嬢の小夜に恋心を抱くが、陰惨な事件で穏やかだった生活は一変する。それは悪意が渦巻く屋敷で始まる、悲劇の序章に過ぎなかった------。

真実はつねに、だれかの傷と繋がっている。もし、触れられて痛む傷を持たない者ならば、それを暴くこともできるかもしれない。――<本文より>

                               
(講談社HPより)

面白かった!
最初から不穏な空気が少しずつ後ろから迫ってくるかんじの物語。

物語は事故で5歳のときに両親を亡くした鈴原博人の回想録のような形で始まる。
実業家で金持ちの光林家の別荘に住み込みで働くことを条件に3年後には大学4年間の学費と生活費を負担してくれるという話に乗った博人。
そして同じように屋敷に住み込むことになった博人と同年17歳の樋野薫。
二人の過去には共通のものがあった。
理不尽で冷たい視線に晒されることに慣れてしまう哀しい過去。

どうして二人が光林氏に選ばれたのか?
その目的は何?
疑問は二人の少年にも常にあり、読んでいるわたしにも常にある。


そして最初の殺人事件が起こり、その後も事件が起きる。
犯人は誰なんだろう?と予想しながら・・・
段々に登場人物の過去の暮らしが明かされ、もしかして犯人はこの人かな?と
予測がつくのだけど、物語自体はどういう結末になるのか?は全く予測出来ず、最初から最後まで楽しめました。

そして、ラストは衝撃的!


残された者たちは、一見それぞれ満足の暮らしぶりでしたが、果たして本心から幸せだろうか?
自分の本当の気持ちを偽ってはいないか?
などなど読み終えても尚、いろいろな思いが残る物語でした。

この作家さん、前に読んだかなぁ?
覚えが無いけど、ほかの作品も是非、読んでみたいと思った。


★★★★
51KaGJDKu3L__SX230_.jpeg    発行年月:2010年7月

   夏の甲子園の圧倒的な空気に魅せられ、
   中学で本格的に野球を始めた瑞希。
   しかし、地元の小さな中学校では先輩たちの卒業に伴い
   エ-スピッチャ-がいなくなってしまう。
   このままでは、地区大会すら絶望的だ。
   そこに幼なじみでチ-ムメイトの良治が飛び込んでくる。

   「ピッチャ-、見つけたぞ!」
   しかし透哉というその少年は、心に傷を負っていて-------。

                                          (本の帯文より)


あさのさんの有名な野球小説「バッテリ-」から5年後の再び野球に打ち込む少年たちを描いた爽やかな青春小説。

「バッテリ-」は未読ですが、この話は、まだ新たな野球チ-ムが動き出したばかりの物語で、冒頭の中学生の地方大会で優勝したシ-ンから始まる。
そして、その場面から遡り、チ-ムの要であるピッチャ-の透哉と二人の少年・キャッチャ-の瑞希とファ-ストの良治の出会いから語られる。

瑞希と良治は幼い頃からの友達で、二人の会話が楽しい。
明るくて物怖じしない良治と物事を冷静に捉えて行動する瑞希。
性格は違うけど、二人との優しい。

そんな二人がワケありで転校してきた透哉と出会う。
透哉も優しい子。それゆえ、前の学校で辛い経験をしていて、母親の実家で一人暮らしの祖母・美沙子の元に一人で来ている。
学校にも行けず他人と話すのが苦手。

透哉に接し、透哉の心を少しずつ開いていく瑞希と良治。
その過程が自然で優しく、ジ~ンとした。
友達の存在って偉大だ!

まだ、始まったばかりのこのチ-ムが地区大会優勝まで辿った詳しい経緯も書いて欲しいな~。

夏のこの時期にピッタリの青春小説でした!

挿画は佐々木こづえさん。
この挿画も好き♪

★★★★

              

     
deddfb69.jpg   発行年月:2010年7月

   「毎日が宝なのだ!」
   うれしい時にはいつも家族がいた。
   四人家族綿貫さんちの愛おしい日々。


自信満々の別の自分を空想する長女・真美。友人たちと揺れる40代
を惑う母・春子。転校生にピッチャーの座を奪わそうな長男・健介。
係長なのに全然やる気の出ない父・明弘。

四人家族の綿貫さんち、
それぞれの悩みや不安の日々から生まれる、ささやかだけれど大切なもの。
どこか懐かしくて元気が出る、あなたと同じ普通の家族が光り輝く物語。

                                        (光文社HPより)

綿貫家の物語。
長女の真実の「ダリアの笑顔」が最初で、順番に家族が語る。
真実は、真面目で良い子。
家族の様子をよ~く観察していて、新しい家を買いたいために、無理をして働いているような母親のことや、そのために両親の喧嘩が頻繁に起こることを憂いている。

次の話は母親・春子の「いいんじゃないの、40代」。
真実の話では、ちょっとどうなの?と良い印象がなかった春子だけど、
この話を読むとそういう気持ちわかる!っていう親近感が沸いてきて、春子が好きになった!
ハ-ゲンダッツのクリスピ-サンドが食べたくなった^^;

それから長男・ 健介の話「転校生」では、健介の学校のこと、所属する野球のリトルリ-グのことなどが語られる。いつも元気いっぱいの明るい健介にも、それなりに大変なことはあって、でもちゃんと自分の力で克服するし、周りの友達との関係も微笑ましかった。

そして最後は、お父さん明弘の話「オタ繊 綿貫係長」。
オタザワ繊維株式会社 総務部経理課係長の役職を持つ明弘。
自分の会社での微妙な地位に誇りを持てぬ毎日。
でも、あるきっかけから、インラインスケ-トを習うことになってから、新たな人間関係も生まれ気持ちの持ち方まで変わってくるという話。


綿貫家の4人が皆、なんだかいいな。
どこにでも居そうな家族なんだけど、どこの家庭もこんな風に、気づかないけれど、それぞれ支え合っているんだろうなぁ~。
家族っていいじゃない!と気づかせてくれた物語でした!


★★★
 


d03ee7d9.jpg   発行年月:2010年2月

   この村の秘密をしゃべってはいけない。

直木賞作家、乱心!?
父親の定年を祝ったハワイ旅行の帰りに飛行機事故に遭った坂木龍馬。
目が覚めると、そこはド田舎の村。
電気・ガス・水道なし! 車すら走っていない。
そこで暮らすのは、金太郎に、桃太郎。おまけに弥勒菩薩像の仮面をかぶった男まで現れる始末。
田おこしや年貢、人身御供に仇討ち? なんて言葉まで聞こえてきて
本当にどうする俺?
そして、主人公を待ち受ける究極の問いとは?


                                         (小学館HPより)
 

167cm124kgの相撲体型の主人公・坂木龍馬が飛行機事故で墜落し、気づけばド田舎の昔話のような世界に迷いこんでしまう。
最初から、面白そう!と思わせてくれました。
そして、実際、おもしろい。
笑える!昭和のことを知ってる大人なら、随所にあるギャグに思わず、にっこりしちゃうでしょう。

朱川さんって、こんな物語も書くんだなぁ~と嬉しい意外性。
今までは、結構、不思議で切なくてちょっと怪しいかんじの物語が多かったから・・・。


今まではオタク生活にどっぷり浸っていたような龍馬が、太陽の村で暮らすなかでは、違ってた。
最初は海坊主に間違えられて、悲惨な目にあったけど、村長さんに温かく迎えられ、やがて村人たちからも認められる人物になっていく過程は楽しかった。

でも終わり付近で、明かされる衝撃の事実!
え?そういう事だったわけ?
結構、びっくり!予想外の展開。

でも、それまでの話がありえないでしょ?と思いながらも笑えて楽しかったので、こういうラストでも違和感はないかも。
著者の日本(環境問題だったり、若者の生き方だったり)に対する考え方かな?という話もあったり、なかなか深い内容なのかも。


兎に角、最後まで楽しく読めました。

わかりやすいから、子どもが読んでも面白いかも。


                                                ★★★

 


カレンダー
06 2025/07 08
S M T W T F S
1 4 5
7 8 9 11
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
メ-タ-
kyokoさんの読書メーター
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[09/20 kyoko]
[05/23 のぶ]
[09/15 kyoko]
[09/14 ひろ]
[03/06 kyoko]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
kyoko
HP:
性別:
女性
自己紹介:
台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;

バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
フリーエリア

Copyright (c)本を片手に・・・ All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  image by Night on the Planet  Template by tsukika

忍者ブログ [PR]