発行年月:2021年11月(単行本は2015年5月白水社より刊行)
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1979年、台北。中華商場の魔術師に魅せられた子どもたち。
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現実と幻想、過去と未来が溶けあう、どこか懐かしい極上の物語。
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現代台湾を代表する作家の連作短篇。単行本未収録短篇を併録。
著者
呉 明益 (ゴ,メイエキ)
1971年台北生まれ。現代台湾を代表する小説家・エッセイスト。97年、短篇集『本日公休』でデビュー。おもな小説に、『眠りの航路』『複眼人』『雨の島』など。『自転車泥棒』で国際ブッカー賞最終候補。
天野 健太郎 (アマノ ケンタロウ)
1971年生まれ。翻訳家・俳人。台湾文学・文化を積極的に紹介。訳書に、呉明益『自転車泥棒』、陳浩基『13・67』、龍應台『台湾海峡一九四九』など。句文集に『風景と自由』など。2018年没。
(河出文庫HPより)
以前読んだ中島京子さんの「小日向でお茶を」に出てきた本書
気になって読んでみた。
1970年代の子ども時代に同じ場所で過ごした人たちが、そのころのことを回想する形で
進む短篇連作。
共通して出て来るのは、、貧しい身なりで歩道橋の上でマジックを披露している
魔術師の男性。
子どもたちは、皆、その魔術師のことを気にかけていて、ふとした時に会話をする。
最初の話は、靴屋の息子がみた魔術師が操る紙の黒い小人。
どうやっているのか?気になるが教えてはくれない。
ある日、雨に濡れた小人がぺしゃんこになって道路に張り付いているのを
拾うとして腕がちぎれてしまい「小人が死んじゃった」と叫ぶ。
魔術師はその後、新たな小人を作る。
こんな風に話のそれぞれに、「死」を子どもたちが感じる瞬間が出て来る。
魔術師に関わった子達は、そのことを大人になっても覚えている。
独特の雰囲気があって、面白かった。
文章も読みやすい。
きっと訳者もいいんだろうな。
最後に単行本では未収録の短編があったけれど、なんだか雰囲気が違う感じがした。
読み終えて最後にみたら訳者が違う人だった。
天野氏が訳した「自転車泥棒」も読んでみようかな?
★★★★★
発行年月:2014年8月
有人火星探査が開始されて3度目のミッションは、猛烈な砂嵐により
わずか6日目にして中止を余儀なくされた。
だが、不運はそれだけでは終わらない。
火星を離脱する寸前、折れたアンテナがクルーのマーク・ワトニーを
直撃、彼は砂嵐のなかへと姿を消した。
ところがーーー。
奇跡的にマークは生きていた!?
不毛の赤い惑星に一人残された彼は限られた物資、自らの知恵を
駆使して生き延びていく。
宇宙開発時代の傑作ハードSF
(ハヤカワ文庫/表紙裏の解説文)
NHKのドラマ「宙わたる教室」で、出てきた女子生徒の愛読書として
こちらの本を知る。
その前に、これを原作としての映画「オデッセイ」(公開は2016年)のことは
知っていたけれど・・・
著者が専門的な知識が豊富ということで、ちょっと理解不能な言葉の
羅列の箇所はあるので、その辺は飛ばし読み・・・(^^ゞ
それでも十分に楽しめた。
主人公のマーク・ワトニーが常に冷静でポジティブな考えかたをする人物で
命の危険が常にある深刻な状況が続くなかでも、ユーモアさえ感じる思考で
ドキドキハラハラというより、なんだかワクワクしながら読んでいた。
結末を分かっているというのもあるけれど・・・
映画は、知っているけど、ちゃんと見た記憶がないので
これを機会に映画もみてみたい。
★★★★★
発行年月:2021年10月
年末の帰省で母に紹介するはずだった恋人と大喧嘩した男が、代わりに移民の女性を連れてきた。だが、実業家を引退し孤独に暮らすその母は、すっかり塞ぎ込んでいる。そこで息子は、母とは正反対の性格の伯母を呼び寄せた。水と油の人々の化学反応は、クリスマスをどう彩るのか。英のEU離脱が背景の「四季四部作」冬篇。
(新潮社HPより)
ずっと読みたかった作品。
「秋」から始まると知ってはいたけれど、何処から読んでも大丈夫と知り
季節柄「冬」を読む。
クリスマス前に読めてよかった。
アーサー(呼称はアート)は、クリスマスイブに母の元へ恋人を連れていくと
連絡していたのだけど、その恋人・シャーロットと喧嘩別れしてしまう。
そして、バス停で出会ったラックスに自分の恋人として一緒に実家に行って
くれないか?と頼み、ラックスは3日間で1000ポンドの報酬で承諾。
シャーロットとしてアートの実家へ。
アートの母親・ソフィアは、特に歓迎するふうでもなく、母屋ではない場所で
寝るように言う。ラックスはそれを受け入れるけれど、伯母さん(アイリス)も
ここに呼んだら?という提案をアート。
そして母親との仲がこじれている伯母が、やってくる。
どうなることやら・・・案の定、姉妹の会話は嚙み合わず・・・
それでもラックスが仲介役になったりして、二人は子どもの頃の思い出話を
したり、姉妹で寄り添う時間も・・・。
でも再び、ののしり合いのような感じにはなるのだけど・・・。
でも明らかにクリスマスを一緒に過ごしたことで、姉妹の関係は少し修復
したんじゃないかな?と思う。
そしてアートも今まで聞いたことがない父親のことを母から聞く。
幼い時から父親と過ごした記憶は殆どないアートだったが、両親がお互いに
惹かれ合って自分が産まれたことを知れたのは良かった。
そして、ラックスは自分は、アートの恋人ではなく、ふりをしていただけなのだと
告白する。
このまま本当の恋人になってもいいんじゃない?と思ったのだけど・・・
途中、少し未来の話として、アートが子どもと会話している場面が出て来る。
誰と結婚するのかな?
四部作のこの話、繋がっていそうなので、先ずは「秋」を読んでみようかな?
★★★
発行年月:2021年3月
(飛鳥新社HPより)
確か、NHKの朝イチで紹介されていたと思う。
気になるな・・・と図書館で借りて読んだ。
意外と厚みのある本。
イラストレーターが書いたというので、絵は素敵なのは当たり前?
しかし、ことばが凄くいい。
難しいことばではない。
誰でも、そうだよ、うん、その通り!と思えることが書かれている。
けれど、当たり前のことなのに、改めて言われると、何か不思議な気持ち。
ここに出て来る、男の子はまず、モグラに会って、次にキツネに会って最後は馬。
出会った者が一緒に歩いていく。
モグラは無邪気なかんじ。キツネは寡黙。馬は物知りでみんなの疑問に答える
先生みたいなかんじ。
馬の言葉が一番、哲学的かな?
~~~馬のことば~~~
弱さをみせることができたとき
たすけを求めることは あきらめるのとはちがう
あきらめないために そうするんだ
あしたのことはわからない
みんなが愛し愛されていることをわかっていればいい
ぼくの質問「いままでにあなたがいったなかで いちばんゆうかんなことばじは?」
馬の答え 「たすけて」
3回くらい読み返した。
図書館返却まで、まだまだ読み返したい。
日本語の手書き文字は、書家の島野真希さん。
この文字もすごく好き♪
とても素敵な本だ。
★★★★★
発行年月:2022年2月
いくら悲しくても話を聞いてくれる家族も友人もいない。
頭をめぐるのは後悔ばかり。
「両親にも亡くなる前にもっと親孝行ができていたら」
「故郷に戻らなければよかった」
こぞって読んだことでも話題の、
(ハーパーコリンズ・ジャパンHPより)
図書館棚の上にお薦めとして置いてあったので読んでみた。
訳が浅倉さんというのも惹かれて・・・
主人公のノーラ(35歳)は、
・恋人のダンとの結婚を式の2日前に自ら取りやめた。
・仕事をクビになる
・バンドメンバーから抜けたことで一緒にやって来た兄との関係も壊れる
・ピアノのレッスンを受け持っている少年・レオのレッスンをすっかり
忘れたため、その母親に批難されレオ自身はピアノをもうやめたいと言っていると
・隣人の老人・パナジーさんから今まで薬を代わりに届けてもらっていたけれど
その必要がなくなったと言われる
そして・・・・可愛がっていた猫が道路脇で亡くなっていると友人の
アッシュ(外科医)が家を訪ねてきて教えてくれる
ノーラにとって、悪いことばかりが、重なり、自分はもう誰にも必要と
されていない。明日など迎えたいと思わないと「死」を考える。
そして、気づくと図書館に。
そこには、高校時代、図書館にいた司書・エルム夫人がいる。
よく一緒にチェスをした。
そしてエルム夫人が、説明する。
生と死の狭間には図書館があり、かつてあなたが違った選択をした人生が
この書架に並べられているのだと。
そして、ノーラは、かつて自分が選ばなかった人生を体験していく
・猫のヴォルテールがずっと家の中で飼われていた人生を
・・・・・けれど、ヴォルテールは家のなかで死んでいる。
・友人のイジーに誘われたのに一緒に行かなかったオーストラリアに
自分も行っていた人生を・・・しかし、そこでイジーは事故死。
ほかにも沢山の違った選択を生きるのだけど。。。。。
結局、どんな選択をしても後悔することにはなる。
エルム夫人が言う
人生を理解する必要なんてない。ただ生きればいいだけ
自分が今、生きている環境のなかで生き続けることが大事ということか?
なかなか、深い話。
でも、最後は、死にたいと言っていたノーラが、わたしは、まだ生きたい!と
強く思えるようになって、良かった。
浅倉さんの訳は、やはり読みやすかった♪
★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;