近くて遠い異国で、彼女たちは何を見る?
北京、台湾、上海。
刻々と変化する隣国を訪れた3人の女達が未知の風景の中で出会う、
未知の自分。飄々とした異国情緒溢れる中篇集
(文藝春秋HPより)
北京、上海、台湾・・・・行ったことないけれど、読みながらなんだか旅をしているような気分になれた。
<北京の春の白い服>
中国服飾美容出版社に唯一の日本人スタッフとして招聘された夏美。
この国で初めてのファッションマガジンを現地スタッフと作り上げるべく働く。
日本式のやり方をバンバン要求し、スタッフたちを圧倒させる夏美。
ふと、自分のやり方は現地スタッフには不快かも?と思ったりする。
休日、偶然知り合った北京で留学しているというコ-ジと共に出かけ、露天のおじさんに言われる
言葉が「マンマン・ゾウ」=慢慢走=のろのろ歩け=のんびり行け
この言葉、なんかいいな。
<時間の向こうの一週間>
夫の赴任先の上海に一緒に住むための家探しに日本から来た亜矢子。
一緒に家探しをする予定だったのに、夫は武漢に1週間の出張になってしまったと言う。
一人で過ごす上海での1週間。
夫が案内人の女性を頼んであるからと言ったが現われたのは男性。
親切にあちらこちらの物件を案内してくれるけど、本当は彼の元恋人が頼まれたことだったらしい。
夫が居なくても結構、面白い一週間だったんじゃないのかな?
お見合い広場が興味深かったなぁ~。
<天鐙幸福>
亡き母親の思い出の地・台湾。
生前、母親が言っていた「美雨には台湾に3人のおじさんがいるのよ」。
そしてそのうちの一人らしいおじさんから台湾に誘われ会いに行く。
電車のなかで、通訳をしてもらったことから現地の青年・トニ-仲良くなり一緒におじさんを訪ねる旅をする。
最後にやっと連絡をくれたおじさん宅へ。
そこで知る母親の台湾でのこと。
みんなが温かく主人公の美雨を受け入れてくれる様子が微笑ましい。
辛い時代もあったというおじさんたちがトニ-と美雨が仲良くしてくれると嬉しいという言葉が
印象的だった。
どの話もよかったなぁ~。
中国とは政治的にいろいろあるけれど、仲良く歩み寄っていけたら最強になれそうなんだけど・・・。
なんてふと思った。
★★★★
発行年月:2012年1月
世界はもう、かつてと同じ場所ではない。
2011年の静謐と小さな奇跡を切りとった、「東京」短編集。
もの悲しくも優雅な、東京タワ-とスカイツリ-の往復書簡
(本の帯文より)
最初の 眺望よし【往診】は、スカイツリ-が語り・・・・
最後の 眺望よし【復診】では、東京タワ-が語る。
それを挟んで、二つの塔が見下ろす世界での人々の暮らしがあれこれ8つの話で描かれている。
面白い手法だな・・・(^^)
東京に住んでいる人には、より楽しめるのかも。
新しい時代をこれから見つめていくスカイツリ-。
過去の東京を見つめ続けてきた東京タワ-。
こんな風に人々の暮らしを見守ってきたのか~と思ったら最後の東京タワ-の語りは、なんだかジ-ンとしたなぁ~。
新しいスカイツリ-にもエールの気持ちをこめていう言葉がまた良かった!
立っていれさえすれば人々は、わたしたちを見上げて安心し、明日を生きる活力を身に
蘇れらせることができるのです。
なかに挟まれた人々の暮らしの物語は、切ないものだったり、ちょっと変だったりで
ひとつひとつの話がいろんな雰囲気で、これまた面白かった。
スカイツリ-からの眺望、いつか見に行こう!
恋情、妄想、孤独、諧謔…中島京子ワールドへようこそ
女の部屋の水漏れが、下に住む男の部屋の天井を濡らした。女が詫びに訪れたのをきっかけに二人は付き合い出し、やがて男は不思議な提案をするが…。(「天井の刺青」)。直木賞作家が紡ぐ珠玉の7篇。
(集英社HPより)
7つの短編集。
植物園の鰐
シンガポ-ルでタクシ-を拾うのは難しい
ゴセイト
天井の刺青
ポジョとユウちゃんとなぎさドライブウエィ
コワリョ-フの鼻
東京観光
過去5~6年の間にいろいろな媒体に発表済みの作品を集めたものだそう。
わたしにはコワリョ-フの鼻以外は初めての作品でした。
ちょっと不思議なかんじで始まった「植物園の鰐」。
次の「シンガポ-ルで・・・」は結婚5周年の記念旅行にシンガポ-ルを訪れた夫婦の可笑しなお話。
「ゴセイト」は、放課後にだけ現れる男子生徒との思い出を語る話。
とSFチックだったり青春小説風だったりといろいろ。
いろいろなテイストだけど、どれにもクスッと笑えるユ-モアがあり読んでいると楽しい♪
既読だけど、「コワリョ-フの鼻」は、やはり面白い!
夫婦の会話が、漫才みたい。
表題作の「東京観光」もよかったなぁ~。
会社の研修で東京に3日間滞在した主人公が、滞在先に選んだ格安ホテルで知り合った外人のマリアナとのこと。
ちょっと変わった東京観光だけど、気持ちが通じ合う人と出会えたのが最高の思い出でしょう。
表紙の絵(挿絵)も素敵。
これがデビュ-作の木版画作家の千原博美さんだと、あとがきに紹介ありました。
次は長編がまた読みたいな。
昭和の香り漂うアパートで、へんてこな住人に面食らい、来し方を振り返っては赤面、行く末を案じてはきりもなし……。40代シングル女子の転機を描く、ほのぼの笑える長篇小説。
(中央公論新社HPより)
楽しいお話でした。
主人公の花村茜は43歳、独身。
15年前に母が逝き、その後一人暮らしの父・桃蔵は、老後の支えにアパ-ト「花桃館」を経営していた。
その父も亡くなり、茜はアパ-トを相続することに。
古いアパ-トで取り壊したいと思うが、壊すにもお金が掛かる。
そこの住人たちを立ち退かせるのも厄介そうだと、最初は渋々、引き受けたアパ-ト経営の様子が、空いている部屋101号室に住み込み、住人たちと接するなかで、起きる諸々のことが愉快。
103号室の住人・雨宮季華からは父の知らなかった生前の様子を聞かされたり
201号室の住人・妙蓮寺一家は父子家庭(3人の男の子あり)ゆえ、母親みたいな助けもしたり
302号室の住人・玉井ハルオにはウクレレ演奏の場を同級生・尾木の経営するバ-に紹介したり
まだまだいろいろな関わりのなかで、生まれる新たな人間関係。
全体にほのぼのしていて、とても楽しい物語でした。
★★★★
女子大生・瑛は、恋人から逃れて、南の町のホテルにたどり着いた。そこで、ホテルの部屋の電話機に残されたメッセージを聞く。「とても簡単なのですぐわかります。市電に乗って湖前で降ります。とてもいいところです。ボート乗り場に10時でいいですか? 待ってます」そして、瑛とニノは出会った。ニノもまた、何者かから逃げているらしい。追っ手から追いつめられ、離ればなれになってしまう2人。「1人で行っちゃだめ。私も行くから」
(講談社HPより)
21歳の瑛は、恋人の元から南の町に逃げてきた。
そして出会った、寡黙な少年・ニノ。
灰色の人から逃げて来たと語る。
ニノは、日本人の父とフィリピン人の母を持つらしいが、母親は自分を出産後祖国に帰ったとか。
そして父親は行方知れずで、施設で育った。
灰色の人は、ニノを外国に住まわせようとしているらしい。
二人の逃げている者同士が出会い、一緒にあちこち住む場所を変えていく。
最初、南の町というのは、沖縄か?と思ったけど・・・・読んで行くと
辛子レンコンやら、ざぼんやら出てきたので、これは九州なんだ!と気づく。
でも、なんだか異国っぽい描写もあったりして不思議。
二人の逃避行の話も面白いけど、途中途中に語られる逸話も面白かった。
最初に二人が出会った子守町で、瑛は最初、ホテル暮らしをしていたが、その後おばあさんが一人で店を開いている石松砂糖販売で暮らすようになる。
子守町に伝わる子守地蔵の言い伝え。
日本に砂糖が伝わった話。
なるほどなるほどと思いながら本筋の話をちょっと置いといて語られる話がその後も沢山!
こういう書き方面白い(^^)
「森のくまさん」の歌詞の不思議も言われてみれば、妙だと気づく。
逃げる瑛の話とこういう風に繋がるとは・・・感心しちゃいました!
瑛とニノは、逃げたままじゃいられない。どうなるのかな?と心配しながら読みましたが、
最後は、ホッと出来る結末だったのも良かった。
★★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;