魔法のように『失われた時間』が浮かびあがる------
絶賛された、川端康成文学賞受賞作。
都会で働き続けることに不安を抱き始め、志摩半島の一角に小さな土地を買い、家を建てて、新しい生の感覚を見いだしてゆく40代後半の女性を主人公に、人を救い再生へ向かわせるものを瑞々しく描き、「光る比喩」 「正確で細密な描写」 「静かな戦慄」と絶賛された川端賞受賞作「海松」、その続編「光の泥」 ほか2編。
(新潮社HPより)
主人が知人が「面白い」と言っていたので興味を持ち、先に読み「なかなか面白い」という事で、わたしも読みました。
4つの作品が収められていますが、表題作の「海松」と「光の泥」は、同じ主人公で、
「海松」では、東京で仕事をする自立した彼女が、母親と妹と訪れた志摩半島に魅せられて、そこに土地を買い、家を建て、東京とその家とを行き来するまでの経緯。
「泥の光」は、半島の家に行き来してから7年の歳月が過ぎたが、それまでの自身の身辺の出来事を思い出しながら、自身を見つめなおすようなかんじ・・・かな?
女性が40代後半ということもあり、自分の今の立場とは、かけ離れたものではあるものの共感できる部分もありました。
あまり人が多く登場するわけでもなく、静かな物語なのですが、周りの自然の描写がリアルで頭の中に情景が浮かんでくるようでした。
土地のいたるところにはびこったフユイチゴ・・・それを摘んでジャムを作る。
あ~ステキなんて思うと、蛇の抜け殻、窓や洗面所の排水管から侵入するムカデなどもいて、わたしにはムリだ~なんて思いましたが・・・^^;
切り立った絶壁の上にあるような家で、周りの人からも「なんであんな場所に家なんか・・・」と呆れられながらも彼女はその場所を気に入っていて・・・
東京に居るときには、遠くの恋人を想うように半島の家の事を想う。
家のそばを手入れしていて見つけた「沼」を見ながら、そこで早くに亡くなった友を想う場面は
なんだかジ~ンとしました。
上手く説明できないけれど・・・・
言葉の使い方、物ごとの表現がちょっと今まで読んだことの無いようなものでわたしにとっては新鮮でした。
表題になっている「海松」は ミルと読みます。
海藻の一種で、松の枝みたいな形をしているから、こう呼ばれ、万葉の歌にもこれを詠んだものがあり「海松色」とはオリ-ブグリ-ンのような色で昔から着物の色になっていたり昔から親しまれていたものだとか。
知らなかったなぁ~。
4作中、先の2作がやはりとても良いですが、他二作「「桟橋」 「指の上の深海」も良かった。
ちょっと過去作品も読んでみたい!と思いました。
★★★★★
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同族会社社長の誕生祝い。だが、主役である新之助が死亡し、華やかな宴は一転して次々と人が死ぬ惨劇の場へと変わっていく。
ベストセラ-『氷の華』の著者が描く、愛憎渦巻く一族の悲劇。
(幻冬舎HPより)
冒頭のエピロ-グに書かれた事を頭に置いて読むと、事件の犯人は「この人だろうな~」と予測がつきます。
けれど、一族とその関係者十数人が集まる場で、実際、誰が犯人なんだ!?は最後の方まで絞りきれない。
誰なんだ!?と思いつつ、読み進めるわけですが・・・・・事件の真相までは、なかなか辿り付かず・・・・途中、睡魔が襲いました^^;
がんばって読んで、真相が明かされたのは、最後の方。
しかも事件を追っていた警察関係の人でなく、一族の側の解説で・・・・??
はっきり言うと、真ん中へんは、読まなくてもいいかも・・・
半分眠い目をこすりながら(長女の塾、迎えがあったので)読んだ為あまり頭に入らなかった部分が多いにも関わらず、最後の方(今朝、読みました)で、もやもやしていた事件の真相がわかりましたから。
犯人がわかれば、この表題「目線」の意味がよく理解できます。
犯人像などは、最後の最後まで明かされないので、途中の段階で犯人を言い当てるのは不可能かも。
わたしは、ちょっと勘違いしてました^^;
この辺は、著者の狙いでしょうけど・・・・。
しかし、犯人には、同情しちゃいます。恨み心を抱くのもわかる気がする。
だからって、殺人はダメですけど。
著者のデビュ-作『氷の華』は、とても評価が高いので、読みたいのですが図書館での蔵書数が少ないみたいで、さほど予約者居ないのに、かれこれ8ヶ月も順番待ちです(/_;)
未だ手元には来ず・・・もう1年待ちも覚悟かなぁ~?
本書後ろの<著者紹介>を見ると
1946年生まれ。『氷の華』は2006年自費出版からスタ-トし、2007年単行本として出版。
文庫化もされ、35万部のベストセラ-となる。
ドラマ化もされ、62歳の大型新人として注目を浴びた。
と記されています。
う~ん早くデビュ-作が読みたいです!!
★★★
「珈琲屋」の主人・行介は、人を殺した。行介の恋人だった冬子は、別の男と結婚した。行介が刑期を終えたとき、冬子は離婚した。そんな二人の間には、時だけが静かに流れていた------。商店街で暮らす人々が「珈琲屋」で語った人間ドラマを七編収録。読み終わる、きっとあなたにも熱い珈琲が飲みたくなる・・・・。人間の微妙な心理を描き、じんわり温かい読後感があなたを包む。連作短編集。
(双葉社HPより)
以前、「真夜中の運動会」を読み、この著者では2作目に読んだ本。
商店街の古い珈琲屋を舞台に、そこを訪れる人たちの話が連作で7つ。
店の主人は、かつて、この商店街を悪質な方法で地上げしていた男を殺した罪を背負っている。
みなが恨む男を殺した為、刑期を終えた行介を商店街の住人は皆、以前と変わらず接してくれる。
かつての恋人、冬子も度々、店にお客として通い、そこに来るお客(多くは商店街の人々)の話に、必要なら、自分も関わる。
二人の静かな落ち着いた関係は、大人の雰囲気で好ましかった。
訪ねてくる人々の話は、介護問題あり、浮気問題あり。
笑って聞ける話というより、一緒に悩んじゃうような物が多いが、それゆえ、考えさせられる部分も多かった。
2編目の「シャツのぬくもり」は、クリ-ニング屋の夫婦の話で、妻が夫の浮気に気づくのだが、夫の言い分を知ったとき、ちょっとショックでした。
なるほど・・・・こういう事が浮気に走った原因だったのね?と。
浮気をした方を責めたくなるけど、妻としては、わたしもちょっと考えを改めなければいけないかな?なんて少し思いました。
話自体は地味ですが、こういうのは、ある程度の経験を積んだ大人なら、そこに登場する人々の話に共感したり、反感を抱いたりと、楽しめそう。
ラストは、行介と冬子の将来に明るいものがありそうで良かった。
でも、冬子さん、こんなに行介が好きなら結婚しなくて待てばよかったのに・・・・。
出所に合わせて、離婚したなんて、ちょっと都合良過ぎかも・・・・。
この部分だけ、最後まで引っかかりました。
この表紙の絵は、物語を読み終えてみると、雰囲気出てる絵だなぁ~と思います。
今は夏で蒸し暑いし、元々コ-ヒ-は苦手なのですが、アイスカフェオレが飲みたくなった^^;
★★★★
昭和39年夏、オリンピックに沸きかえる
首都東京。
開催妨害を企む若きテロリストと警視庁刑事たちの
熱い戦いが始まる---------。
(本の帯文より)
奥田さんの社会派の小説。
読む前から期待していました。
図書館から借りて、手に取り、その本の厚さ、中は二段書き。字がビッシリ!にはちょっと驚き。
これは読了までに時間がかかりそうだなぁ~と覚悟して読み始めました。
読み始めたのが丁度、週末だったので、予想通り読了までに時間はかかりましたが、面白くて長さは全く気になりませんでした。
時間さえあったら一日で読み終えられる面白さ!
でも、内容は真面目。リアル感もありました。
昭和39年東京オリンピック開催の年。
戦後の貧しかった日本がここ東京に限ってはもはやウソのよう。
ビルが建ち、首都高速が走り・・・。
これでオリンピックが無事に開催されれば、日本も世界に認められた一等国になれる!
が、その裏には、それを実際に造っている数多くの貧しい日雇い人夫たちの壮絶な働きがある事を多くの豊かな暮らしをする者達は知らない。
東大で経済学を学ぶ島崎国男の兄もそんな人夫のひとりとして、過酷な労働に日々追われる生活を強いられていた。
国男は秋田の貧しい農家の生まれ。
早くに父親を亡くし、兄が一家を養うために出稼ぎで仕送りをしてくれていた。
自分が学問を学べるのは兄の犠牲があるから。
そんな兄が突然、東京の仕事先で亡くなる。
死因は心臓病ということらしいが、本当にそうか?
疑問を感じながら、国男は兄が同じ出稼ぎ人夫として働いていた飯場を訪ね、兄と同じように働きたいと言う。
東大の学生が物好きに・・・と最初は浮いた存在だったが、真面目な働きぶりや、実家は秋田の貧しい農家で兄の代わりに自分が送金してあげなくてはならないなどの話から次第に周りの労働者たちにも受け入れられる。
しかし、仕事はとてもキツイ。
それを紛らすためにヒロポンに手を出す。
もはやそれは人夫たちの間では珍しくないこと。
皆、その力を借りない限り続けられない労働の過酷さ。
富める者と貧しい者は、いつの時代にも存在するという不平等さ。
そして、東京は、その富める者たちが暮らす都市。
自分の故郷との格差にもやり切れなさを痛感する国男。
東京だけが富と繁栄を享受している事に怒りを覚え、ついにオリンピックを阻止しようと大胆な結論に達する。
開会式の10月10日の前に、何度か爆破事件を起こす。
が・・・・不思議なことに報道されない。
事件の真相を明かすことは、オリンピックを前には出来ない。
なぜなら、日本は国の治安においても一等国と国際社会にアピ-ルしなくてはならないときだから。
犯人と警察の度々の交渉は、リアルでハラハラドキドキ。
国男を手助けする東大の学生運動に力を注ぐものたちや、スリの男の生活は、今にはないその時代背景が感じられて興味深かった。
互いに不平等な資本主義に向う日本に対しての反感を抱いていることで仲間意識を持つ。
ある意味、真面目に社会のあり方を考えている彼ら。
ラストは、意外とあっけない結末。
しかし、それも仕方ないか?と思わせるそれまでの流れ。
そして、現在の日本の状況を考えたら、この結末は、闇に葬られた事実として、逆にリアリティあるかもなぁ~とも思いました。
犯人が警察に送る犯行声明文の名前が「草加次郎」。
ん?ちょっと聞いたことあるなぁ~と少し調べたら、実際の連続爆弾事件の犯人が名乗っていた名前なんですね?
こちらは、迷宮入りなんだそうですが・・・。
東京オリンピックの頃の日本にタイムスリップしたような感覚(まだわたしは生まれて数年ですが・・・^^;)にもなりました。
★★★★
さびれた商店街の、父と息子だけの小さな中華料理店。味気ない日々を過ごす俺たちの前に現れたテンンしのような女・純子。あいつは線香花火のように儚い思い出を俺たちに残し、突然消えてしまった。
表題作「夕映え天使」をはじめ6編の短編を収録。
特別な一日の普通の出来事、日常の生活に起こる特別な事件。
人生至る所にドラマあり。
(新潮社HPより)
有名な作家さんだけど、意外とあまり読んでないです^^;
映画化された「椿山課長の七日間」を読んだくらい。
あの物語は面白かった!
この短編集は、文芸誌にあったか、何かで読んで良さそうだったので、図書館で借りてみました。
でも・・・・・わたしには、うまく読めなかった。
面白くないわけでは、ないけど・・・・なんだろ?不思議な読後感。
表題作「夕映え天使」が一番最初にあって、表題作で、しかも最初にあるのだから・・・と期待し過ぎたのが悪かったのか?
読み終えて・・・う~ん。何が言いたいのやら??
父子で地味に営む中華店に住み込みで働いていた純子が半年経ったある日、忽然と姿を消し、どうしているのやら?と父子でたまに話をしたりしていると、警察から電話。
純子の身元確認の手助けになれば・・・と警察にいく息子。
なんだか、切なかったけど・・・。後味がよくなかった。
次の「切符」は、時代は東京オリンピックの頃。
これまた切ない話。
三番目の「特別な一日」は、最後にえぇ~っ!?の驚きの展開でしたが、なんだかスッキリしない。
次の「琥珀」は、訳あって逃げてる男が以前、バ-だった店「琥珀」でコ-ヒ-店(喫茶店かも?)を営んでいる。男の背景にあるものが不吉。
次のが一番、印象に強く残ったかな?
「丘の上の白い家」。
家が貧しく高校で奨学金を貰っている、僕と清田。
清田は、僕と正反対で成績優秀で全国模試でも県で1番の成績。先生には期待され、貧乏でもきっと奨学金でエリ-トの大学にも進めるだろう。
だが清田のその後は、あまりにも不憫。
清田が可哀相で仕方ない。
最後の「樹海の人」は、自衛隊の演習中に体験する不思議なこと。
極限状態に陥ると人は現実と非現実の区別がつかなくなるのかな?という怖さを感じました。
大した感想がないので、結局、全部の簡単な説明しちゃいました(笑)
これ、書いてなかったら、本を閉じた瞬間に記憶からなくなりそうな短編集でした。
やや辛口評価でごめんなさい。
単に、わたしの嗜好に合わないだけかも・・・・^^;
★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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