五つの謎と一つの恋
恋と占いと謎解きの連作短編集!
カメラマン耕太郎は占い師の桜子の仕事場によくいる。心配性の彼女を思って、客の不幸を的中させないように動くのだ。二人の未来は?
第一話 守りたかった男
第二話 翼のない天使
第三話 ミツオの帰還
第四話 水曜日の女難
第五話 桜の咲かない季節
(講談社HPより)
主人公・乾耕太郎はフリ-の報道系カメラマン。
占い師の深沢桜子(七ノ瀬桜子が仕事上の名前)とは、父親同士が親しくしていた。
耕太郎が中学3年のとき、父が病死し母親の実家のある地に引越しを考えた際、深沢家に下宿の話が進み20歳を機に深沢家を出た。
カメラマンとして独り立ちし、再び深沢家のそばのアパ-トを借りて住んでいる。
桜子の父は天山と名乗り、占いをしていたが、取材で訪れていたインドになぜか合流し、強盗により胸を刺される。
一命を取りとめ帰国はしたが、怪我の後遺症で襲われてから1年後に亡くなった。
桜子と耕太郎は以前から好意をお互いに持っていた。
耕太郎は桜子をいつも見守るかたちでよく【占い処七ノ瀬】に顔を出している。
占いの客に降りかかる災いを感じアドバイスをする桜子を影からみて、その客のその後を追跡したり・・・。
最初の二つは、占いに来たお客の話。
三番目<ミツオの帰還>は12年前のホ-ムレス襲撃事件の犯人と噂されていた当時の素行不良の少年・光男と桜子のこと。
なんだか後味が悪い話でした。
四番目の<水曜日の女難>は留守番中の占い処に来た女性・笹森陽子は、耕太郎にしつこくアタックしてくる。スト-カ-まがいの行為をしたり怪しいかんじだったけど、その理由は、復讐だったという話。
陽子にとっては不運では済まされない耕太郎の撮った写真。
最後は表題作<桜の咲かない季節>
桜子と耕太郎の関係が進展したかんじのラスト。
二人は新たな生活をスタ-トさせるのかなぁ~という思わせぶりなラスト。
う~ん、続編があるといいのにな・・・・。
ちょっとしたミステリ-ありの連作短編集。
なかなか良かった♪
戦争を忘れても、戦後は終らない……
16歳のマリが挑んだ現代の「東京裁判」を描き、
朝日、毎日、産経各紙で、“文学史的”事件と話題騒然!
著者が沈黙を破って放つ、感動の超大作。
(河出書房新社HPより)
独特の雰囲気で、ちょっと難解な部分もありましたが、興味深い内容で一気読み出来ました。
主人公の真理は、15歳でアメリカに。
自分の意志ではないようで・・・気づいたらアメリカに居たというかんじ。
学生生活のなかで、友人たちとも楽しく会話していたり、まあ普通の留学生生活?と思ったら・・・・・
突如30年後の自分と交信したり・・・
級友たちと森に入りヘラジカと遭遇し、そこで意思の疎通を感じたと思ったら・・・・級友が持参の猟銃でシカは捕らえられ、みなでその肉を食す。
現実と幻想が入り乱れる。
そして現在と過去が交錯する。
実に難解な物語で・・・???の連続なのに、不思議と惹き込まれる物語。
そして表題にもなっている「東京プリズン」。
それは巣鴨プリズンに通じる東京裁判で裁かれた者たちを考えさせる。
最初、この本を手に取ったとき、その東京裁判に関係する物語なのかと思ったのだけど、途中からその予測が少し当たってくる。
マリは高校の授業の一環で、ディベ-トの議題「日本の天皇には戦争責任がある」を主張しなくてはならない役割に当てられる。
しかし、役割を忘れて天皇を弁護する意見をつい述べてしまいスペンサ-先生から注意を受ける。
アメリカ人の認識の「A級戦犯」が多くの日本人が理解しているものとは違うことが
ちょっとビックリだった!
マリと同様、「A級」というと罪が重いように、考えていたけれど違うらしい。
単なる種別分けで使われるABCだそうで、罪の重さは関係ないのだとか。
ほかにも「へ~そうなんだ~」と言うことがいろいろ。
日本の国に居ると不思議に思わなかった天皇という存在を改めて自分なりにあれこれ考えてしまう物語であった。
なかなかほかに読んだことがない物語で、新鮮なかんじがした。
こういう物語はキライじゃない。
面白かったとは言い切れないので、あまり人には薦めないけど・・・^^;
★★★★
父は何を背負っていたのか。行き違いと苦い思い……。時代小説界の次代をになう新鋭の江戸市井小説。

伊佐次は老舗の薬種問屋「鳳仙堂」を継ぐはずが、勘当され、いまや浅草寺裏の賭場を預かっていた。あれから十年、父は変わり果てた姿となっていた。丁稚から主人に上り詰めた父は何を一人で背負っていたのか。寄合いを仕切る大店に嵌められたのか、それとも……。謎解きが悔恨と感涙に変わる。家族の絆を問いかける傑作長篇。

(新潮社HPより)
最近、時代小説のよさに目覚めたようで、お友達が読んで良かったと言っていた作家さんを
わたしも読んでみた。
いろいろ出されているみたいだけれど、通っている図書館に丁度あった本書を先ずは読んでみた。
薬問屋に婿に入った父親・利兵衛と
その長男・利一郎の物語。
利一郎は、長男として家督を継ぐ予定だったが、反発し家出。
荒れた生活の末、伊佐次と名前も変えて賭場を仕切るようになっていた。
反発して飛び出した家でも父親のことは何処かで頭にある。
一方の利兵衛も同じ気持ちであった様子。
親子ゆえ素直に歩み寄れず月日は流れ・・・・・
再会したのは利兵衛が謎の死を遂げたあと。
それぞれの気持ちが痛いほど伝わってくる。
特に父を亡くした後の伊佐次の気持ちが切ない。
しかし、父の死をキッカケに伊佐次の気持ちにも変化が起き、疎遠になっていた弟・栄次郎とは
兄弟の絆を深めていけそうなラストに少しホッとした。
なかなか面白かった!
ほかの作品も順々に読んでいきたいと思える作家さんです。
樺太は半島か島か------。
極寒の地・樺太の探検に情熱を注ぐ松田伝次郎と間宮林蔵。
二人の苦難の行程と葛藤を描き、両者の人物像を活写する力作!
表題作のほか「東韃靼への海路」「遥かなる氷雪の島」を収録。
3つの話からなる書ですが
最初の話「北夷の海」と「東韃靼への海路」は、ひとつの話と言ってもいいかも。
当時、樺太が島なのか、地続きの半島なのかわからず、それを調べることが正しい地図を作るうえで必要なことだった。
松田伝次郎がその検分を託され、間宮林蔵は従者として同行する。
限られた時間で効率よく検分するために二つのル-トに分かれて進もうと言う伝次郎。
伝次郎の隊は西ル-ト。林蔵は東ル-トを行くことに。
自分のル-トの方が困難だと判断した林蔵は伝次郎より早く出発し、先に半島か島かを突き止めようとするが・・・・
3つめの話「遥かなる氷雪の島」は主人公が変わる。
主人公は近藤重蔵。
先の伝次郎や林蔵と同じように、国後(クナシリ)や択捉(エトロフ)島などの北方の探検をした人物。
晩年、息子の犯した罪の責任で幽閉の身となる。
そんな身で語る若き日の探検の苦労話。
よく知らなかった人たちですが、国のためにわが身を犠牲にしてまでも、国の行く末を思って困難に立ち向かい自分の意志を貫き通した精神力は凄いな~と感嘆する。
林蔵にも重蔵にもそんな姿をみて協力する人が現われる。
一生懸命、事を成し遂げようとする人には自然と大きな助けが集まってくるのかも?
あまり知られていないけれど(わたしが無知なだけかも?^^;)、凄いことを成し遂げた人たちの話でした。
歴史文学大賞受賞作品、ほかにも読んでみたくなった!
因みにこの書は先に読んだ同じく歴史文学大賞受賞の葉室作品「乾山晩秋」の巻末に
紹介があったので知りました。
稀代のストーリーテラーが集めた「泣ける」話
冲方丁が出会った人々から集めた実話を元に創作した、
33話の「泣ける」ショートストーリー&エッセイ集。
2009年から3年間に亘る、
小説すばるでの人気連載を一冊に凝縮!
(集英社HPより)
ひとつひとつの話が結構、短いのでアッと読めていいです。
そしてどの話もちょっと泣ける。
実際にもらい泣きはしなかったけど・・・・・・^^;タイトルとしてはいいと思う。
33の話の中で結構、グッと来たのは・・・
「教師とTシャツ」
厳格な元教師の父親が内心では疎ましく、実家から離れて暮らす。
社会人になり父の意外な一面を知る話。
こういう不器用だけれど実は娘のことを思っている父親の姿って・・・ちょっと泣ける
「地球生まれのあなたへ」
天体観測が好きな妻が夫に贈ったのは、星に夫の名前をつけてのプレゼント。
星なんて興味ない夫だけど、妻は震災で亡くなって・・・・
妻の残したバ-スディカ-ドの言葉にグッと来た。
「先に行きます」
駅の掲示板に書かれた言葉。それと一緒に描かれた落書きは自殺を予告するものだった。
しかし、そこにどんどん他者が書き込みしていく。
何とかして一つの命を救いたいと思う人々の気持ちが温かくて泣ける。
ほかにも著者のあとがきの後に公募作品が幾つか載っていた。
それも結構、ジ~ンと来ました。
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;