発行年月:2014年6月
デビュー以来、奇想天外な発想と破壊的なモチーフを用いて、人間の根源的な悪をえぐるように書いてきた吉村萬壱が満を持して放つ長篇。
B県海塚という町に住んでいる小学五年生の恭子。母親と二人で古い平屋に暮らすが、母親は神経質で隣近所の目を異常に気にする。学校では担任に、市に対する忠誠や市民の結束について徹底的にたたきこまれる。ある日亡くなった級友の通夜で、海塚市がかつて災害に見舞われた土地であると語られる――。
「文學界」に掲載後、各紙誌で絶賛され、批評家を驚愕・震撼させた、ディストピア小説の傑作
(文藝春秋HPより)
とっても不思議な読後感。
すでに大人になった大栗恭子が子どものころのことを回想する話。
語り手は小学校5年生の恭子。
淡々と送られる日常のなかに、だんだんと不穏な空気感が大きくなっていって
すごく不安ななんとも言えないいや~な気持ちになってくる。
海塚という町にかつて起きた大きな災害が背景にあるようですが
詳しくは語られない。
その災害を機に町は復興を目指して結束を固めてきたけれど、そんな風景に
ある種の違和感みたいなものを感じる。
恭子の通う小学校のクラスのなかでも、事件が起きる。
なんだったんだろ?
亡くなった級友・木村アケミちゃんの死もなんだか不可解だし、
担任の先生が突然、来なくなった理由もよくわからず・・・・
わからないまま、終わった物語でした。
でも、すごく強烈な不安感みたいなものが残って、その余韻がしばらく持続。
不思議な小説でした。
表題の「ポラード」とは、文中にも出て来ましたが、船を繋ぎとめておく柱のこと
だそうです。
「ポラード病」・・・・なるほど、読んだあとから考えると
なんとなくしっくり来る表題です。
この表紙の写真も、物語にマッチして、不気味です。
よくわからないけれど、凄い小説でした!
★★★★
発行年月:2014年3月
「とても疲れている」と感じているあなたに。
きっと気持ちが落ち着くわよ。
坐ってみてどう変わるか、自分で確かめるしかないでしょう───
「恋愛」「容姿」「家族」……尽きせぬ煩悩に効く物語
本当の自分が見つけられない30代無職女子、
悩みを捨てきれぬ40代女流作家の不思議な出会い。
「特に女性にとって恋愛はストレスなのよ。知っている? 女は男の二倍も恋愛でストレスを感じるのよ。うまくいっている時はいいけれど、およそあんなに疲れるものはないわね。そこに、仕事や家族の悩みが加わってごらんなさいな、老(ふ)けこむに決まっているわ」
「悩む。そうね、あなた方はどういうことを悩むと呼んでいるのかしら。多くの場合、恋の悩みは相手が自分の思い通りにならないことでしょう。相手が自分の望むことをしてくれない、相手が自分を好きになってくれない、だから苦しいのではないかしら」
(祥伝社HPより)
二人の女性が、坐禅を通じて過去の自分と向き合う話。
作家の羽鳥ようこは、3.11から1年後、ささやかな慰霊祭を東京の知人のお寺で開催する。
そこに参加していた松下りん子。
慰霊祭が終わった後も会場に残っていて、「助けてください」とよう子から離れず
仕方なく自宅に連れ帰る。
そして、居候生活スタート。
よう子の知り合いのアイリーンが来日し、座禅会を開くというので、そこに、りん子も連れて参加するよう子。
3日間の坐禅会。
アイリーンは日本人とアメリカ人のハーフ。
ニューヨーク在住。
坐禅の意味を説きながら、坐禅をするよう子とりん子の問いかけにアドバイスする。
二人とも過去に重苦しいものを抱えている。
それに坐禅をすることで、素直な気持ちで向き合い、これからの生き方を
前向きに考えて行く。
特に、りん子が自分から今後の生き方を決めた姿には「よかった!」と思った。
なるほど、坐禅とはこういうものなのかぁ~。
イヤイヤ、子どもの頃、体験したことはあるけれど、今やったら
何か心のなかで変わるものあるかな?
ちょっとだけ興味を覚えた。
★★★
発行年月:2014年7月
真島圭太(29) 律儀で真面目、振り回され上手なモラリスト
繁田 樹 (33) 上昇志向が空回りする、女好きバツイチ研究者
仲杉幸彦(28) チャラい言動で自爆しがち、人なつっこい営業マン
斎木 匡 (30) 人の気持ちをはかるのが絶望的に不得意なイケメン
仲良くもなく、友だちでもない四人の青年。
ひょんなことから連れ立った旅先に、それぞれの人生の答えがあった!……のか?
(光文社HPより)
4つの章からなる連作集。
<敬語で旅する四人の男>の言葉通り、四人での会話はずっと敬語。
最初の話は、表題と同じで、四人が初めて知り合う話。
佐渡の居る母親に11年ぶりに会いに行くことに聞けた馬島圭太。
先輩の斉木が、一緒に行くよと言い、斉木と同じ大学出身の繁田、その繁田の
飲み友達である仲杉も佐渡行きに同行することになる。
11年ぶりに会った母と息子。
案外普通の再会で、これからは交流も頻繁にありそうなかんじ。
<犯人はヤス>
離婚した元妻と息子が暮らす京都に真島以外の3人で向かう。
元妻・花江は、実家で息子と共に暮らしていて、その実家というのが
地元の名士らしく、ちょっと気位が高い人たち。
空気を読まない斉木先輩の花江家族への言葉が痛快でした!
繁田と息子との関わりがこれからも続くといいなぁ~
<即戦クンの低空飛行>
住宅設備メーカー勤務の仲杉くんの仕事場での話。
前の話まででは、明るい好青年というキャラでしたが、一番大変そうな
状況でした!
職場では、上司に虐げられ、顧客には謝罪の日々。
恋人の詩織とのこともちょっと重たく感じていて、息が詰まるかんじ。
そんな精神的ピンチの仲杉のことを思いやる真島。
連休に仲杉が行きたいという鳥取砂丘に二人で向かう。
何故か、砂丘で斉木登場!しかもラクダに乗って・・・・^m^
シチュエーションを想像して大笑い。
仲杉くんの抱えていたもの、少し軽くなったのかなぁ~?
良い青年だから幸せになってほしい!!
<匡のとおり道>
人の感情を読むのが苦手で、変わり者扱いの斉木匡。
職場も特別枠入社ということで、周囲の評価も仕事の能力はあるけれど・・・・と
いうかんじ。
そんな斉木が惹かれたのは、会社内の掃除をしている望月アルエ。
掃除をしている所作の美しさに魅せられて声をかける。
アルエも斉木に好意を持つ。
斉木の亡き母が遺した「匡くんマニュアル」の存在に亡き母の思いが感じられた。
斉木を理解するには、なかなか大変そうだけど、アルエなら
斉木の本質を理解してうまく付き合っていけそう。
四人の男たちのそれぞれの物語としても面白かった♪
四人の話がもっと読みたい!!
★★★★
発行年月:2014年7月
直木賞作家が描く、切なくて激しい純愛小説集。みつばち・金魚・トカゲ・猿・孔雀をモチーフにした恋愛を描きますが、甘い蕩けるようなものではない。重く・強い、読み手の心を鷲掴みにして離さない、たたきのめされるような短編集。
(双葉社HPより)
朱川さんらしい怪しい話が多かった。
どの話も恋愛話なんですが・・・ありふれた男女の愛とは違う世界。
<みつばち心中>
同性の指に欲望を感じる性癖を持つ女性。
<噛む金魚>
42歳主婦。夫は歯科医で恵まれた結婚生活を送っていると世間は見ているが、
実は処女のまま。自分を変えたいと出会い系サイトで一人の男性と知り合い
実際に会うことにする。
<夢見た蜥蜴>
蜥蜴のわたしは、サラと呼ばれ可愛がられている。
尻尾がなく、体中傷だらけのわたしをニンゲンの彼は優しく治してくれる。
<眠れない猿>
子どもの頃から「猿」と呼ばれて来た。
容姿からそれは仕方ないと諦めている。
けれど、自分に好意を示してくれる女性・尚美と知り合った。
<孔雀墜落>
弟のタケルが突然訪ねてくる。
ホルモン注射のため、見た目は女性になっている。
わたしには、8年間不倫関係の男がいるが、タケルはその男に脅迫電話をかける。
最初の話は、ちょっと気持ち悪かった。
人の性癖っていろいろだけど・・・^^;
一番ホラーっぽいのは、<夢見た蜥蜴>かな?
文章から映像を想像すると結構、怖い(;O;)
<眠れない猿>と<孔雀墜落>は、切なく哀しい。
どれもそれぞれ面白く読んだ。
★★★
発行年月:2014年4月
余命一年で知った、本当の人生――
末期のすい臓がんで余命宣告を受けた53歳の出版社役員・菊池は、治療を放棄し、「病を癒す女」を探すため、神戸へ移り住む。
がんに侵されたのは、運命か必然か。未知の土地、これまでの生活とまるで異なる時間の流れに身を置き、菊池は体内にがんを生み出した「もう一人の自分」の声を聞く。
死に向かう人間の直感、思いがけない出会いの導きに翻弄されながら、偶然のひとつひとつが結びつき、必然へと姿を変えていく。やがて、彼の目の前に描き出される「神秘」の世界。その景色の中に求めていた答えを見つけ、男は新たな人生を歩み出す。渾身の最新長編小説。
(毎日新聞社HPより)
余命1年の宣告を受けた菊池三喜男53歳の物語。
がんと宣告され、余命1年と言われたら・・・・
大抵の人は、動揺し死期を待つしかないと諦めるでしょう。
抗癌剤治療の効果も期待できないほどの末期ガンということが幸いしたと
主人公は後で考えるが、なるほどね・・・・
医療にかかわることを放棄し、偶然、以前、電話で話をしただけの「山下やよい」を
探すことが自分の体を良い方向に向かわせてくれるという信念を持ち行動する。
やよいを探し出すまでの話で出会う人たちも後々、とても重要な意味をもつ。
人の出会いは、必然的なもの?と思える話で、
本当に神秘的な話でした!
菊池の別れた妻・藍子との離婚に至るまでの出来事が、後々、そこに隠されていた
真実を知ることで感動的な、また人と人との結びつきを知ることとなる。
面白かったぁ~。
よく考えられた話で、そんな偶然あるかな?と思う前に、
これは全部、必然的な人と人との出会いの物語なんだと納得させられてしまう。
分厚い本だけど、最後まで頁を捲るスピードは緩まない内容でした!
★★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;