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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2023年11月


架空の県を舞台にした連作小説集
「黒蟹とはまた、微妙ですね」
微妙、などと言われてしまう地味な県は全国にたくさんあって、黒蟹県もそのひとつだ。
県のシンボルのようにそびえたつのは黒蟹山、その肩に目立つ北斎が描いた波のようにギザギザの岩は、地元では「黒蟹の鋏」と呼ばれ親しまれている。県庁や裁判所を有し、新幹線も停まる県のビジネス拠点としての役割を担う紫苑市と、かつての中心地で歴史的町並みや重要文化財である黒蟹城を擁する灯籠寺市とは、案の定、昔からの遺恨で仲が悪い。空港と見まごうほどの巨大な敷地を持つショッピングモールの先には延々と荒れ地や牧草地が続き、廃業して解体されてしまって今はもう跡地すらどこだかわからない百貨店に由来する「デパート通り」はいつまで経っても改称されず、同じ姓を持つ住民ばかりの暮らす村がある。
 つまり、わたしたち皆に馴染みのある、日本のどこにでもある「微妙」な県なのだ。
この土地に生まれ暮らす者、他県から赴任してきた者、地元テレビ出演のために訪れた者、いちどは故郷を捨てるもひっそり戻ってきた者、しばしば降臨する神(ただし、全知全能ならぬ半知半能の)。そういった様々な者たちのささやかでなんてことないが、ときに少しの神秘を帯びる営みを、土地を描くことに定評のある著者が巧みに浮かび上がらせる。


                     (文藝春秋HPより)




黒蟹県は架空の県だけれど、巻頭に地図が載っているので、読みながらその
地図を眺めて風景を想像。

最初の話は、仕事で黒蟹営業所に異動で引っ越してきた三ケ日 凡(なみ)の話。
退職する雉倉が引き継ぎとして、取引先へ挨拶がてら周辺地域を車で廻り
土地のことなどを教わる。

話は連作で、前に出てきた人も再登場したりして、楽しい。

そして「神」。
ある時は、普通の中年男性として、蕎麦屋に現れ、そこで会話もする。
また別の日は、逃がしてしまったセキセイインコを見つけて飼い主に届けたり
お弁当コンテストの審査員をしたり・・・・
なかなかチャーミング・・・^m^


人々の暮らしぶりも平和的で読んでいて楽しかった。



神って・・・案外、こういう風に存在しているのかも。




                       ★★★★
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発行年月:2020年11月


お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか?
人生に悩む人々が、ふとしたきっかけで訪れた小さな図書室。
彼らの背中を、不愛想だけど聞き上手な司書さんが、思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で、後押しします。
仕事や人生に行き詰まりを感じている5人が訪れた、町の小さな図書室。「本を探している」と申し出ると「レファレンスは司書さんにどうぞ」と案内してくれます。
狭いレファレンスカウンターの中に体を埋めこみ、ちまちまと毛糸に針を刺して何かを作っている司書さん。本の相談をすると司書さんはレファレンスを始めます。不愛想なのにどうしてだか聞き上手で、相談者は誰にも言えなかった本音や願望を司書さんに話してしまいます。
話を聞いた司書さんは、一風変わった選書をしてくれます。図鑑、絵本、詩集......。
そして選書が終わると、カウンターの下にたくさんある引き出しの中から、小さな毛糸玉のようなものをひとつだけ取り出します。本のリストを印刷した紙と一緒に渡されたのは、羊毛フェルト。「これはなんですか」と相談者が訊ねると、司書さんはぶっきらぼうに答えます。 「本の付録」と――。
自分が本当に「探している物」に気がつき、


                    (ポプラ社HPより)



司書の小町さゆりさんが、お薦めしてくれる本が、それぞれの人の気持ちを前向きに
してくれる。


<一章 朋香21歳 婦人服販売員>
今の仕事にやりがいを見つけられず、転職も考える朋香。
食堂で一緒になった眼鏡売り場の桐山くんにそんな話をする。
パソコンを習得したほうがいいのかな?に公民館とか区民センターのような
ところでも学べるよと。
調べて向かったのは近くの小学校に併設されている集会所。
そこのパソコン教室に通い、そこにあった図書室でパソコンの本を借りようと
向い司書の小町さゆりからお薦めの本とおまけの羊毛フェルトのフライパンを
貰う。



<第二章 涼 35歳 家具メーカー経理部>
会社の人間関係に不満。上司の尻ぬぐいばかりさせられている。
自分にはアンティークの店を持つという夢がある。
恋人の比奈(25歳)は、シーグラスでアクセサリーづくりをしている。
比奈の誘いで小学校のコミュニティで「鉱物とあそぶ」という講演会に参加。
図書室の存在に気づき、アンティークの本でも探そうと。
そして小町さんに会いお薦め本と羊毛フェルトのキジトラ(猫)を貰う



<三章 夏美 40歳 元雑誌編集>
37歳で娘を出産。
産後3か月で職場復帰するが編集部から資材部への異動となりショック。
週末、娘を連れて小学校内のコミニティハウスへ行ってみる。
キッズスペースもあり絵本の棚も。
司書の小町さんからは絵本と占いの本、羊毛フェルトは地球。



<四章 浩弥 30歳 ニート>
イラストの勉強がしたいと高校卒業後は、デザイン学校に通ったが
就職につまずきニート状態。
自分の絵は受け入れられないのか?
母親からのお使いでコミュニティハウスを訪れ、好きな漫画の本もあるかな?と
図書室に。
小町さんとは漫画の話が弾む。
薦められた本を持ち帰るのはお使いの品があり重たいなと思っていたら
「読みにくれば?」と。
羊毛フェルトは小さな飛行機。



<五章 正雄 65歳 定年退職>
コミュニティハウスで妻がパソコンのインストラクターをしている。
囲碁でも習ったら?と勧められ通うことに。
囲碁の本でも借りようかな?と図書室へ。
司書の小町さんの机に自分が勤務していた
呉宮堂のハニードームの箱があることが嬉しく話しかけ会話が弾む。

囲碁の本3冊のほかに「げんげと蛙」という本を薦めてもらう。
羊毛フェルトは蟹。




みんな小町さんとの会話から良い方向へ向かう。
お話の主人公たちが少しずつリンクしているのもいい。




                       ★★★★★



発行年月:2024年10月


作家人生の集大成
嫌な気分は何もかもノートにぶちまけて、言葉の部屋に閉じ込めなさい。
 尊敬するセミ先生からそう教えられたのは、鬼村樹(イツキ)が小学五年生の梅雨時だった――
「架空日記」を書きはじめた当初は、自分が書きつけたことばの持つ不思議な力に戸惑うばかりの樹だったが、やがて生きにくい現実にぶち当たるたびに、日記のなかに逃げ込み、日記のなかで生き延び、現実にあらがう術を身に着けていく。
そう、無力なイツキが、架空日記のなかでは、イッツキーにもなり、ニッキにもなり、イスキにもなり、タスキにもなり、さまざまな生を生き得るのだ。
より一層と酷薄さを増していく現実世界こそを、著者ならではのマジカルな言葉の力を駆使して「架空」に封じ込めようとする、文学的到達点。
担当編集者より
星野智幸さんの3年ぶりの新作『ひとでなし』は、新聞連載時より話題を呼んだ大作です。
小説の始まりは1976年、主人公の鬼村樹は小学4年生、著者と同じ1965年生まれです。そこから2023年まで、この世界に実際に起こったさまざまな出来事に翻弄されながら、樹は、人間とはどういうものなのかと考え続けます。
樹とともに長い年月を歩んだとき、この小説のタイトルに籠められた著者の強い思いが、きっとあなたを鼓舞するでしょう。


                     (文藝春秋HPより)



主人公・鬼村樹(タツキ)の小学校5年生から大人になっておじさんと呼ばれる年
までを描いた長い話。
新聞で連載していたのは、知っていて、挿絵が可愛らしいなと思っていた。



小学校5年生で、担任になったセミ先生が、その後のタツキにも関わりをもつのは
良かったな。
小学校~高校に入ったくらいまでのタツキは、「この子このまま大人に
なって大丈夫かな?」と思うようなかんじだったけれど、出会う人たちが
個性的で、イツキの個性も尊重してくれる人たちでよかった。

時に危ない道に行きそうになったりするけど、阻止してくれる友達がいたり。


プロの女子サッカー選手になった人がいたり、国会議員になった人がいたり


イツキの生まれが1965年ということで、年齢的に近いので、時代背景として
書かれる出来事も思い出しながら読んだ。


表題の「ひとでなし」の意味はイマイチ、よく分からなかったけれど
長い物語を楽しめた。


セミ先生からすすめられて書き始めた架空日記は、子どもの頃の日記のほうが
面白かったな。


挿絵はやはり、可愛かった(少し不気味なのもあったけれど)。




                    ★★★



発行年月:2023年11月


射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。
平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり(「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとは――
ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5篇。


                   (角川書店HPより)



直木賞候補の作品。
この作家さんの名前は候補になってから知った。


図書館で家族が借りたので、気になっていたものだったし読んでみた。

主人公の射守矢真兎(高校1年生)が成り行きで、色々なゲームに臨むことになる。


最初は、<地雷グリコ>
学校の階段46段を使っての<グリコ>。
でも、それに独自のルールが追加される。
それぞれが階段内に3つの地雷を仕込み、相手が仕掛けた地雷の箇所で
止まれば、10段下がらなければならない。
自分が自分の地雷を踏んでもミスということでペナルティはなし。
ただし、相手に地雷の場所がばれてしまう。
なお、0段と46段には地雷は置けない。


これ、なかなか面白いゲームだな。
実際、やってみたくなる。


ゲームは他には、坊主めくり、じゃんけん、
だるまさんがころんだ(だるまさんがかぞえた)、ポーカー。

独自にルールを追加したりしている。

ポーカーは元々、よく知らないゲームだったし、ここでの独自の設定も
結構、複雑だったりして、読んでいてもチンプンカンプンで飛ばし読みを
した・・・・(^^ゞ


でも、よく考えたなぁ~。


最後は、射守矢真兎といつも真兎を応援しそばにいる鉱田ちゃんと別のエリート高に
進学した雨季田絵空がゲームの場で再会し、真兎と絵空の対決。
お互いのことをよく知っている者同士の対決は、最後の最後まで
結果がわからず、ポーカーのこと知らなくても二人の言動だけでも面白かった。


これを機に親交が深まるのか?
大人になったら、どんな風になるんだろ?


青春小説としても、まあまあ楽しめた作品だった。




                      ★★★





発行年月:2024年9月


屈するか
逃げるか
農と自由と民の物語。
武士と悶着を起こして村を出奔した
若者・杜宇が迷い込んだのは、不思議な地。
自由経済で成り立ち、誰の支配も受けない
「青姫」の郷だった。
頭領・満姫のもと、生死を分つ選択さえも
籤で決められる。それが天意だからだが、
満姫はとんでもない気まま娘、
口も意地も悪い。
杜宇は命拾いするも米作りを命じられ、
田を墾くことから始めねばならなくなった。
生きるために「農」の芸を磨き、
民にも馴染んでゆくが、
郷には秘密の井戸がある。
そしてある日、若い武士が現れた――
「米を作れ!
わらわは姫飯が食べたい」


                   (徳間書店HPより)



今回の作品は、ファンタジーの要素もあったかな?
でも面白かった。


主人公は杜宇(通り名で、とう)年は20歳前。
甲斐国の高柳村で一人の武士・土井久四郎と悶着を起こし、竹刀で打ち合い
無礼な言葉を言い捨て逃げる。
そのまま逃げて気づいたら、知らない場所で倒れていた。
その地は「青姫の郷」という。
そして、そこの姫・満姫とその護衛・朔に連れられ、その郷で米作りをせよと
命じられる。

初めての経験で試行錯誤を繰り返す。
決められた米を年貢として納めれば、この地を去ってもよし残ってもよしという。
1年目は、大した収穫はならず、2年目に入る。
そこに他所から来た男が何やら全身が腫れた状態で倒れているのが発見される。
男の介抱を命じられ、仕方なく世話をして、その男は久四郎と気づく。
互いに相手に対しての恨みはあるが、協力して米作りをする。

お米を作るのって本当に大変なことなんだなと、思った。
感謝してお米はいただこう!

米作りをしながら二人は仲間のようになっていくが・・・・



杜宇と久四郎が会ったことが物語の始まりであり、その出会いが後々の杜宇の生き方
にまで影響していく。
不思議な風習のある「青姫の郷」と呼ばれる地での暮らしは
なかなかのどかなかんじもしたが、他所者が入って来たことで滅びることに
なってしまった。
青姫と朔は、どうなったのか?何処かで生きていてほしいけれど・・・。

自分の生まれた地に戻った杜宇は家がなくなっていたことに呆然とする。
自分の罪が家を滅ぼしたわけだから・・・。


最後の章では、杜宇が孫といる場面。
いろいろあったが、最後は、平穏な暮らしを出来たのかな?と



                        ★★★
   
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;

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