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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2024年8月


「愛の行方」を書きながら、そもそも「愛」ってなんなのだろうとずっと考えていました。 自分にとって大切な小説になりました。                               井上荒野 「姦通」していた男女が熊に殺された—。 閑静な別荘地で起きた事件は、愛に傷ついた管理人の男女と、6組の夫婦に何をもたらしたのか。 愛の行方の複雑さを描く傑作長編! 運命の人からきらわれたり捨てられたりすることもある。 「このふたりは姦通していた」何度読んでも笑ってしまう。まるで私宛の手紙みたいだ。                               —小林七帆 伽倻子と七帆はひと続きなのか? 結局俺は、伽倻子を愛したときから、ずっと同じことをしているだけなのか?                               —小松原慎一 そりゃあそうよね。男と女のことなんて、全部間違いみたいなものよね。                               —柊レイカ ふたりはとんでもなくうまくいっている、幸せな夫婦なのだから、相手の挙動の変化には敏感なのだ。みどりはアトリエに忍び込むことになった。そして知った。                               —神戸みどり テントの外には熊が、人食い熊がいるのだ。だが純一は、再び愛の体に没頭する。そう、愛に没頭するのだ。                                                             —野々山純一 装丁 大久保伸子 装画 杉本さなえ



                   (発行/春陽堂書)


別荘地でクマに殺された男女は、互いに既婚者で不倫関係にあったらしい。

衝撃的な事件があったけれど、その後は、穏やかな日常が続く。

別荘地に暮らしている人たちは、他からの移住者たち。


そこの管理会社の社員として
小松原慎一(28歳)独身。
そして熊騒動のさなか、東京から新たに赴任してきた小林七帆(25歳)。

二人の関係が、段々と近づいていく様子もよかった。
ちょっと似た者同士のかんじ。


住人たち
柊恭一&レイカ夫婦(70歳前後?)・・・・以前は二人で鍼灸院をやっていたが、ここで鍼灸師として働いているのはレイカのみ。
実は夫婦仲は最悪なのに、周りにはおしどり夫婦と思わせている。


扇田充琉&圭夫婦・・・東京から移住したばかりの新婚1年3か月。妻は妊娠中。
夫は広告代理店勤務。妻は<ワンダホー田舎暮らし>というYouTubeチャンネルをもつ。


井口文平&萌子夫婦・・・妻は東雲萌子として名が知られた作家。夫も元は作家だが最近は全く売れていないし執筆活動もしていない。


小副川孝太郎&小百合夫婦・・・夫婦で散歩が日課。仲がいい老夫婦。
夫は、すい臓癌で余命は短い。


野々山純一&愛夫婦・・・夫50歳、妻48歳。ペンション「愛と山」を経営。愛犬、レノン。
息子が大学進学と共に家を出て夫婦二人。妻は夫のギラギラし始めることが
嫌でスマホゲーム・テトリスに逃げる


神戸武生&みどり夫婦・・・60代半ば。週2~3回、ペンションのカフェコーナーに
訪れる。二人とも元は教師で夫は油絵、妻は染色を教えていた。



五味・・・熊に妻を殺された夫。トルコ料理店<kokkai>店主。




仲良し夫婦に見えても、離婚寸前の夫婦だったり、夫には言えない気持ちを抱えていたり・・
人には色々な事情があるものだな。
色々な人のいろいろな心のなかのことが巧く表現されていて面白い。

ちょっとしたいたずら心でクマに襲われた二人をのぞき見していた小副川夫妻が
可笑しい。
癌末期なのに、悲壮感がないのがいい。
病院で入院して迎える最期より、きっと幸せだろう。


突然、亡くなってしまったレイカには、びっくり。
人はいつ何が起きるかわからない。
日々を大切に生きなきゃな・・・と思う。



なかなか面白かった。
本の装丁も素敵!



                         ★★★★
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発行年月:2024年3月


「ワぁ、ゴッホになるッ!」
1924年、画家への憧れを胸に裸一貫で青森から上京した棟方志功。
しかし、絵を教えてくれる師もおらず、画材を買うお金もなく、弱視のせいでモデルの身体の線を捉えられない棟方は、展覧会に出品するも落選し続ける日々。
そんな彼が辿り着いたのが木版画だった。彼の「板画」は革命の引き金となり、世界を変えていくーー。
墨を磨り支え続けた妻チヤの目線から、日本が誇るアーティスト棟方志功を描く。
感涙のアート小説。

                   (幻冬舎HPより)




雑誌に載っていたゴッホのひまわりの絵を見て絵に魅せられ、自分もその世界へと

飛び込んでいく棟方志功。

青森で偶然、出会った赤城チヤと、偶然、弘前の百貨店内で再会し、チヤは
下宿先である父の古い知人夫婦の家での食事に誘う。

この出会いもなかなか奇跡的。
二人は結婚するけれど、まだ一人食べていくのに精一杯の棟方とは別々に暮らす。
チヤは出産のため、青森の実家へ戻り、棟方が東京に呼び寄せてくれるのを待つ。
けれどいつになるやら・・・・まだ1歳の子を連れ棟方の元へ。
そのまま3人で棟方の親友の家の一部屋で居候生活。
その親友夫婦も良い人たちで・・・・。

棟方の人柄なのか、悪い人は誰も出て来ない。
ストレスなく読める・・・笑


貧乏生活なんだけど、目的があるから、それもなんとなく楽しそう。

世に出るキッカケも、偶然の出会い。
運がいい!

少しずつ、名前が売れて生活も徐々に楽になっていく。


物語は棟方志功が亡くなって12年の1987年。
妻のチヤが夫の話を語っていくというかんじ。

チヤさんがとてもチャーミング。


最終章では夫婦でフランスへ行った話。
憧れのゴッホが最期のときを過ごした小さな村を訪れ、お墓にもお参りするはなし。


本当に、似たお墓を造ったんだ・・・と後で調べてわかりました。

表紙の版画も表情が柔らかくてなんだか親しみが湧くかんじでいいな。





                        ★★★★



発行年月:2024年5月


人気女性作家6人による、心に沁みるアンソロジー
人気女性作家6人が競作! 
『隣に座るという運命について』中島京子
文芸サークルで偶然に出会ったエイフクさんは幽霊? 
『月下老人』桜庭一樹
家事を出した台湾料理屋が探偵屋の1階に転がりこんできて……。
『停止する春』島本理生
勤続15年目のある日、会社を休んだ。次の日もその翌日も。
『チャーチャンテン』大島真寿美
1997年夏の香港でお腹のなかにいたあの子は、2022年に東京で……。
『石を拾う』宮下奈都
わたしの身体の中には活火山があって、ときどき噴火する。
『猫はじっとしていない』角田光代
1年前にいなくなった愛猫のタマ子が、夢の中に出てきて……。
あの街の空気が呼びおこす遠い記憶と、かすかな希望、そして――
文庫オリジナル  珠玉のアジア・アンソロジー


                   (文春文庫HPより)



なんと贅沢な短編集なんでしょう!!
好きな作家さんばかり!!


全部、それぞれよかったなぁ~
でも最初の中島さんの<隣に座るという運命について>が、よかった。
大学生として新生活をスタートさせた真智が、同じ授業で、たまたま隣にすわった
子(よしんば・・・笑)と仲良くなり、誘われた文芸サークルに参加しようと
遅刻して行った先で、同じく遅刻したというエイフクに会って・・・

永福颯太の話が面白い。
こういう話なら初対面でもすぐ打ち解けて会話が弾みそう♪

フエイフクという台湾人の小説家(巫永福)の「首と体」という短編小説
ちょっと読んでみたくなった。


次の桜庭さんの<月下老人>も愉快だったな。
ドタバタなかんじがなんとも可笑しけれど、温かい人間関係でいい雰囲気。


島本さんの<停止する春>は、ちょっと暗め。主人公の女性の辛そうな
日常がなんとも・・・。
でも、頼れる後輩がいてよかった。
少しずつ前を向いていけるといいんだけど・・・

大島さんの<チャーチャンテン>は、25年前、香港で知り合いの妹さんのお腹にいた子
をお腹の上から触った。
その子が日本で働くことになったからと訪ねてきて、一緒に香港料理を
食べに行きながら会話するはなし。


宮下さんの<石を拾う>は、時々、どうしよもない衝動(マグマが爆発と表現)が
沸き起こり、突飛な行動をしてしまう小学生(もうすぐ6年生)のナルミ。
近くに住む台湾人の王さんにそのことを話す。
王さん、良い人だな。
ナルミの相談相手に今後もなってくれそう。


最後の角田さんの、<猫はじっとしていない>は愛猫のタマ子が亡くなり
哀しみに暮れているサナエ。
夢のなかでタマ子が「わたしは台湾にいる」と。
ネットで探して台湾の「猫村ホウトン」という場所に猫が沢山いると知り、そこに行く。
結局、それらしい猫には会えなかったのだけど、少し吹っ切れたかな?



アッいう間に読み終えてしまったけど、やはり好きな作家さんばかりの
短篇集は楽しい♪




                        ★★★★★



発行年月:2024年3月


50年前の幼友達3人が同じ長屋で暮らすことに⁉
泣いて、笑って、喧嘩して……婆たち3人、人生ここからが本番!
直木賞作家が描く痛快時代小説!
あらすじ
名主の書役として暮らすお麓の閑居へ、能天気なお菅と、派手好きなお修が転がり込んできた。ふたりとも、いわば幼馴染である。お麓は歌を詠みながら安穏の余生を送ろうとしていたのだが――。ある日、お菅が空地で倒れた女と声が出せない少女を見つけてきた。厄介事である。お麓にとって悪夢のような日々が始まった。
3人揃えば、騒がしさも厄介も3倍。されど、喜びも感動も3倍⁉


                        (潮出版社HPより)




お麓、お菅、お修、三人それぞれ個性的でいい。

長屋でそれぞれ暮らすようになり食事をたびたび一緒にしている。

そんなところに訳ありの親子(貧しい身なり)の世話をすることになり・・・・

母親と思われた女性は、もともと、体が弱っていて、亡くなってしまうが
遺された女の子(8歳くらい?)は、口がきけない。
名前がわからず、おはぎ長屋だからと、お萩と呼ぶことに。

お菅が家事を、お修が町案内、お麓が手習いをそれぞれ担当し、お萩の相手をする。
家事は全くやったことがない様子。
少し、着飾ると上品な姫さまのよう。
そして、手習いを受け負った、お麓だが、和歌に興味がある、お萩は元々
手習いを受けていた?


お萩は、もしかすると、いいところのお嬢様かもしれない。

そして、わかって来た真実は、なかなか重たい話だった。

長屋に途中から来た建具職人の糸吉は、若く目鼻立ちが整った男だが
その男を気にする様子の、お萩。


亡くなったお萩の母親と思われていた人は、糸吉の妹・お篠だった。
そして、お萩は瑠璃という名の姫でお篠は世話役としてそばにいたという。
水落忠晃という男の元へ嫁ぐことになっていたのだが、その男がとんでもない
悪人でそれに気づいた、お篠は自身が楯になり、瑠璃を守って折檻を受け続けて
いたのだという。



ああ、なんという!!
でも、最後はすっきり解決してよかった。

お篠には生きていて欲しかったけれど・・・・



三婆といっても60とちょっと。
今の60代とは雰囲気がだいぶ違うな・・・。

3人の話、また別で読みたいな。




                      ★★★★



発行年月:2024年10月


耳の中に棲む私の最初の友だちは
涙を音符にして、とても親密な演奏をしてくれるのです。
補聴器のセールスマンだった父の骨壺から出てきた四つの耳の骨(カルテット)。
あたたかく、ときに禍々しく、
静かに光を放つようにつづられた珠玉の最新作品集。
オタワ映画祭VR部門最優秀賞・アヌシー映画祭公式出品
世界を席巻したVRアニメから生まれた「もう一つの物語」
「骨壺のカルテット」
補聴器のセールスマンだった父は、いつも古びたクッキー缶を持ち歩いていた。亡くなった父と親しかった耳鼻科の院長先生は、骨壺から4つの骨のかけらを取り出してこう言った。「お父さまの耳の中にあったものたちです。正確には、耳の中に棲んでいたものたち、と言えばよろしいでしょうか……」。
「耳たぶに触れる」
収穫祭の“早泣き競争”に出場した男は、思わず写真に撮りたくなる特別な耳をもっていた。補聴器が納まったトランクに、男は掘り出したダンゴムシの死骸を収める。
「今日は小鳥の日」
小鳥ブローチのサイズは、実物の三分の一でなければなりません。嘴と爪は本物を用います。
残念ながら、もう一つも残っておりませんが。
「踊りましょうよ」
補聴器のメンテナンスと顧客とのお喋りを終えると、セールスマンさんはこっそり人工池に向かう。そこには“世界で最も釣り合いのとれた耳”をもつ彼女がいた。
「選鉱場とラッパ」
少年は、輪投げの景品のラッパが欲しかった。「どうか僕のラッパを誰かが持って帰ったりしませんように……」。お祭りの最終日、問題が発生する。


                    (講談社HPより)



補聴器のセールスをしていた男の死から始まり、生前の男の様子が語られていく。
最後は、少年の頃のはなし。


最初の<骨壺のカルテット>では、骨になり骨壺に納まっている男の骨をとりだし
中から耳のなかに棲んでいたものたちを4つだけ取り出し、息子に渡す
耳鼻咽喉科の院長。
亡くなった男と仕事を通じて知り合い、親交があった。
息子も子どもの頃から、その耳鼻咽喉科には通ったことがある。



色々な人との関わりが、なかなかユニークなんだけど
結婚した女性の話などは出て来ない。
<踊りましょうよ>の彼女ではないよなぁ~?
大学生でアルバイトとして介護助手の仕事をしていて知り合ったそうだけど・・・・
男によると、とても素晴らしい耳を持っている女性らしい。


<今日は小鳥の日>は、ちょっとグロテスクだった。
小鳥ブローチの会に招かれた男が、聞くその会の亡くなった会長のことを聞く。
小鳥のブローチを作る過程がなんとも・・・( ゚Д゚)
そして会長は自死だというが、その方法が、また・・・・( ゚Д゚)
映像になったらホラーだ。



最後の男が少年の頃の話も、物哀しい雰囲気が漂っていた。
母親と二人、鉱山会社の社宅に住み、母親は会社の社員食堂で働いていた。
近所で祭りがあり、輪投げの景品のらっぱが欲しく、毎日、通って
誰かの手に渡りませんようにとみている。
祭りの最終日、輪投げを仕切っているおばあさんが突然、倒れ、人々は
救急車を呼ばなきゃとか移動させた方がいいか?など混乱している。
少年はそんななか、散らばった景品のなかから、欲しかったラッパを
掴み家に持ち帰る。
でも、一度も吹かず、五線紙に星座を描き、ラッパのなかに入れ
母親と引っ越すとき、押し入れの天袋の奥に押し込む。



男の家族を持つまでとその後のことを少し知りたかったけれど、
そうするとこの何か不思議な話が日常の平凡な話に隠れてしまうかな?


薄い本なので、あっという間に読めてしまい、もう少し浸りたかったな・・・。



                     ★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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