無活用ラテン語で記された小説『猫の下で読むに限る』。正体不明の作家を追って、言葉は世界中を飛びまわる
帽子をすりぬける蝶が飛行機の中を舞うとき、「言葉」の網が振りかざされる。希代の多言語作家「友幸友幸」と、資産家A・A・エイブラムスの、言語をめぐって連環してゆく物語。
現代言語表現の最前線!
第146回芥川賞受賞作
(講談社HPより)
芥川賞受賞の作品「道化師の蝶」のほかにもう1編「松ノ枝の記」が収められている。
どちらも難解ですが、独特の世界観のなかに惹き込まれて、なかなか愉快なかんじでした。
やはり、「道化師の蝶」の方が、好きかな?
よくわからない事だらけですが、そんななかにもファンタジックなかんじもあって・・・・
謎の多言語作家「友幸友幸」を探しながら、いろいろな物語が繰り広げられる。
飛行機のなかで、いろいろな人の着想を捕らえるのだというA.Aエイブラムス氏も不思議な人でした。
捕虫網で氏が捕らえるという架空の蝶の話は、面白かった。
この話だけで広げてくれたら、楽しくて分かりやすいのに・・・・・
話は、どんどん、またわからないところに飛んでいき・・・・・
話の行き先がどこなのか???
しかし、わからないけど、読んでいる間は、楽しかった。
いやはや不思議な物語だ。
話としては、次の「松ノ枝の記」の方が分かりやすいけれど、道化師の蝶には、変な魅力があった!
時間があったら、もう一度読み返してみたい。
★★★★
「月の街」「山の街」と呼ばれる韓国の貧民街に住む、何も持っていなくても心に愛を持つ人々が織りなす、ささやかだけれども幸せを運ぶ実話集です。
翻訳出版にあたり数冊に及ぶ原作からストーリーを厳選して抜粋・収録。
時代や国境を越えた感動を呼ぶ物語が凝縮されています。
(ワニブックスHPより)
本書の著者・イ・チョルファンは韓国では有名な作家さんらしいです。
その著者が、「月の街、山の街」という貧しい暮らしをする人たちが集まっている街の出身で、そこで暮らす人たちから聞いた話をまとめて本にしたものだとか。
お話は、ひとつひとつ短くて29編。
どの話も心を温かくしてくれました。
そこに登場する人たちは、貧しく、また健康でなかったりですが、他者に対する思いやりの心はとても豊か。
日本の終戦直後を思わせるような雰囲気もあるなかで、でもやはり、日本とは違う場所の話なんだと感じながら読みました。
一番、心に残ったのは「優先席」。
1ペ-ジちょっとのとても短いお話でしたが・・・
おなじような話を聞いたことがあったので、この話のなかの足の不自由な女性の気持ちを考えたら切なくて・・・
見た目で判断して「若者なのに・・・・」と席に座ったままの人を非難の目で判断するのは自分もやめようと思った。
人を非難することは、極力控えて、ただ人のために自分が出来ることだけに心の目を向けて生きて行けたらいいな。
道徳の教材になりそうなお話ばかりだなぁ~と思ったら、実際、韓国では国語の教科書に著者の作品は多く載せられているそうで、納得!
草彅さんの訳もよかったし、挿絵も素敵でした。
★★★★★
いつかどこかの国の、王や王女たちのお伽話集。
まじめで滑稽で愛すべき彼らを時にシニカルに描く─
何かを気づかせてくれる七話。
(理論社HPより)
どのお話もつづきが気になり、サクサク読める。
今まで知っているお話にちょっと似ているけれど、全く別のお伽噺。
「おめざめですか、お姫様」
朝、起きて別の人になって違う生活を体験したいと願うお姫様のはなし。
「バカなんだか利口なんだか」
つりをしていたら、小人が釣れた。
愛馬を亡くしたことを嘆く若者に小人がくれたにんじん。
それは金と銅とふつうのにんじんだった。
「きみの助言」
ふたごが忌み嫌われることから森のきこりの元で暮らしたふたごの妹姫。
優しく賢い姫だが、お城で暮らす姉姫はわがまま放題。
あることがおき、再びお城に連れ戻された妹姫は、ふたごのたまごの亡霊と出会う。
「魔法のパン」
痩せた土地ゆえ作物が上手く実らない国の若い女王。
町に出て人々の様子を窺うと悪口を言っている者が多いことに気づき
悪口禁止令を出す。すると病人が続出。
栄養失調によるものかもしれないと識者から言われ悩む。
そしてある日、行商人からパンの実を譲り受け、国中に、その実をわける。
「ウミガメの平和」
几帳面な王子は、まん丸のウミガメのたまごを食べたがる。
そして、一日の過ごし方は、予め書いた日記の通りにしないと気がすまない。
そしてある日の日記。それはウミガメのたまごを食べる為にいっぱいとると決めた前の日の日記。
「呪われた王子たち」
美しさと強さを手に入れた奇跡のような王子。
しかし、それを一番知っているのが当の本人というところがまずかった。(本文より)
「木霊が住む谷」
魔物が住みつく場所だから入ってはいけないと村人たちが言っている森のなかで迷子になった少年。
そして、そこにいた人たちと出会い、仲良くなる。
村人たちに彼らのことを理解して欲しいと思うが、事態は逆の方に。
どの話もよく出来たお話。
ブラックなユ-モアもあり、クスッと笑えるユ-モアもあり、次はどんなお話だろうか?と1話ごとに期待しながら読みました。
特に気に入ったのは「きみの助言」。
ちょっと切なくなったけど、良かったのは最後の「木霊が住む谷」。
この著者の「頭のうちどころが悪かった熊のはなし」も良かったなぁ~。
表題にもセンスの良さを感じる。
ほかの本も読んでみよう。
★★★★★
鎌倉の四季の中に綴られた女性の人生の哀歓。
鎌倉の美しい四季の中、女盛りが過ぎようとする女性の心情と良き時代を生きた老女の生涯を描く、名エッセイストの瑞々しい小説デビュー作。悲しいほど儚い生だから、命は輝き、老いさえ愛しい。
(集英社HPより)
初読みの作家さん。
図書館棚から、長女が手に取り「これ、おかあさんには面白いかも」と。
長女がよんだわけじゃなく、単なる勘で選んでくれたそうで・・・^^;
期待せず読んだら、これがすごい深い話でした!!
物語に登場する二人の老年にさしかかる年代の女性達。
信子と菊子。
若い頃から仲良くしている友人同士で、それぞれ既婚者。
物語の最初は、二人がお花見をする描写。
菊子のおば夫婦が住んでいた家で、その庭にある桜の花を見に行く。
おじは既に亡くなっているが、日本が皆、貧しく慎ましやかな暮らしをしていた時代、豊かな洋風文化のなかで気楽に暮らし、ドイツ人との交流もあった人。
そのためおば・逸子も年老いた今もどこか夢見がちで気位が高い。
おばは病気療養中で入院しているが、なにかと姪である菊子を呼び、あれこれ用事を言いつけ、自分の身元保証人になってほしいとも言われている。
そして、菊子の夫・讓二も堅実な暮らしから離れているかんじで、外国骨董を買い占めて楽しんでいる。
おじの遺したドイツの人形も非常に価値のある物だと知り、自分のものでもないのに、喜んだり・・・。
対して、信子は平凡だけれど、良識ある夫・亮吉と安定した暮らしをそているかんじ。
何度か膵炎で入退院を繰り返したが、胆のう摘出により健康を取り戻した。
菊子と信子は度々、会い、いろいろな話をする。
信子からすると菊子は、若い頃から華やかなイメ-ジのなかで暮らす存在だったけど、菊子からは
「私の欲しいもの、全部持っている・・・・・・あなたはきっと死ぬまで幸せよ」と言われる。
そして、終盤、そんな菊子の言葉の通り、菊子には辛いことが重なって起きていく。
それを傍らで心配しながらみている信子も辛そう。
年老いて生きていくと、こういうことは誰の身にも起きていくことなんだろうな。
辛いな・・・イヤだな・・・・とちょっと気持ちが沈んでしまった。
けれど、生きて死んでいくってこういうことなだろうな。
それは公平に誰にでも訪れることなのだから、そうなったらそうなったで仕方ない。
物語の最後の
「いずれ死ぬことが、今生きているということだ」には、妙な潔さを感じて、不思議とその言葉に素直に共感できた!
うん、なかなか本でした!
ただし、若者が読んでもこの良さは、わからないだろうなぁ~。
自分もこういうものの良さがわかる年代になってしまったか?^^;
舞台が鎌倉で、丁度旅行をしてきた後だったので、出てくる地名やら、景色の描写が頭に浮かんできて楽しかった♪
世田谷区、松陰神社前駅から徒歩15分。
女性専用の下宿「タマヨハウス」には、年ごろの三人の女が暮らしていた。
弁護士を目指す涼子、アパレルのデザイナーとして働く撫子、
そして不条理なリストラに遭い、人生にも道にも迷い続ける柊子。
幸せでも不幸せでもない日常を過ごしていた彼女たちだが、
春の訪れとともに現れた真面目だけが取り柄の臨時管理人の過干渉によって、
少しずつ「足りない何か」が浮き彫りになっていく。
(ポプラ社HPより)
表紙から子どもが主人公の児童書?と思ったけれど、違いました。
そして、なんとなく哀しい話かな?と勝手に想像して読みましたが、それもハズレでした。
女性専用の下宿屋「タマヨハウス」に暮らす3人と、管理人のタマヨがアメリカの友達(恋人)の看病のため渡米し、代わりに管理人として来たのは、トモミ。
トモミはタマヨのいとこ。そして、男性だった!
でも、タマヨが今までやっていた通り、朝、晩の食事の用意から細々した日常のことを完璧にこなしてくれる。
そして、思ったことをズバズバ言う。
下宿人の3人の女性たち
涼子(26歳)・・・・弁護士を目指す司法浪人生
撫子(36歳)・・・・アパレルデザイナ-、24歳の上堂薗くんに結婚を迫られている。
柊子(34歳)・・・・前の会社で横領の濡れ衣を着せられリストラ後、就職活動中
3人には、それぞれに父親とのことで、抱えている想いがある。
表紙の絵は、柊子が幼いときの記憶。
それは父の葬儀に参列したときの記憶。
よくわからないけれど、黒い服を着せられ、なぜか不機嫌な母親に連れられ姉とともに葬儀会場に向かった幼い柊子。
雨が降っていたので、持っていた赤い傘をさして、先を歩く母を必死で追う。
表紙の絵から、何か悲壮感が漂ってきましたが、実際には、父親の記憶は乏しく、姉から後にそのときの状況を聞く柊子。
ほかの二人も父親との関係には、ちょっとした確執があるのだけれど、管理人のトモミさんからのアドバイスだったり、タマヨハウスに集う人たちによって、その確執が少し和らいでいく。
自分の心の中で悶々としていることも、こうして良い方向に向かうことって、良い人間関係のなかに居る人にはあるだるだろうなぁ~。
こういう人と人との関わり方、いいなぁ~。
素敵なお話でした♪
ほかの本も読んでみよう!
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;