長崎の出島を舞台に、シーボルトに仕えた
若き庭師の奮闘物語。
土と草花を通して、日本の素晴らしさを実感できる
人情時代小説。
(徳間書店HPより)
長崎の出島にオランダの商館医として過ごしていたシ-ボルト。
その館に15歳のとき、園丁として出された熊吉が主人公。
日本の草木に興味を示し、館の庭に薬草園を造るよう、熊吉に命じる。
当初はどうしていいかわからず右往左往の熊吉だったけど、いろいろ調べて、薬草を集め
シ-ボルトも納得の薬草園を造り、信頼を得る。
日本で知り合った妻の滝も熊吉を信頼し、
また、通詞の名門に生まれて兄につきながら通詞見習いをしている吉岡忠次郎とも親交を深める。
万事うまくいっていたけれど、その後、起きたシ-ボルト事件。
幕府禁制の日本地図を隠し持っていた罪に問われるシ-ボルト。
そして、その罪は、熊吉たち周りの者にも影響してくる。
その辺は読んでいて辛かった。
シ-ボルトを守ろうと思う熊吉の苦悩が痛々しい。
実際、シ-ボルトは日本地図を持ち出して、どうしようとしていたのか?
日本を愛していたと信じたいから、真意を知りたい。
しかし、終盤、そシ-ボルトと滝の子ども・以祢(いね)が成人し、熊吉と再会の場面で
いろいろあったけれど、それぞれが幸せにその後を過ごしていたんだと知れて良かった。
初めて読んだ作家さんでしたが、なかなか面白かった。
ほかの書も読んでみたいと思った!
ギョ-カイお仕事コメディ。
あたしが編集長!?一体どうしたらいいの!?
27歳経理部、高沢久美子の生活が一変。
多忙な仕事と恋の板挟みに!?
(詳伝社HPより)
主人公の久美子は、社内恋愛の学・31歳と結婚を考えた付き合いをしている。
交際期間3年。
出版社勤務の久美子だけど、勤務するのは経理部。
編集のことなど、さっぱりわからない。
そんな久美子の企画書が社長の目に留まり、新しい雑誌の編集長として勤務することに
なったから一大事!!
最初は、ダメダメなかんじで
久美子のほか4名の部員たちのリ-ダ-であるべきなのに何をしていいのかオロオロ。
その4名の部員のなかに学もいるのが心の支え。
仕事面でも頼りっぱなし。
しかし、途中で、学の進める仕事はちょっと違うと気づき始め、意見を述べ
自分のやりたい方向に持っていく。
当然、学との関係はギクシャク。
でも、仕事の方は、部員のなかの年長者・白沢の人脈から良い方向に進み出し
学との関係も久美子の妊娠発覚により元通り。
そして、驚いたのは、学の決断。
いやはや、すべてがウマく行きすぎですが・・・・
ま、楽しく読めたのでいいでしょう(^^)
★★★
五つの謎と一つの恋
恋と占いと謎解きの連作短編集!
カメラマン耕太郎は占い師の桜子の仕事場によくいる。心配性の彼女を思って、客の不幸を的中させないように動くのだ。二人の未来は?
第一話 守りたかった男
第二話 翼のない天使
第三話 ミツオの帰還
第四話 水曜日の女難
第五話 桜の咲かない季節
(講談社HPより)
主人公・乾耕太郎はフリ-の報道系カメラマン。
占い師の深沢桜子(七ノ瀬桜子が仕事上の名前)とは、父親同士が親しくしていた。
耕太郎が中学3年のとき、父が病死し母親の実家のある地に引越しを考えた際、深沢家に下宿の話が進み20歳を機に深沢家を出た。
カメラマンとして独り立ちし、再び深沢家のそばのアパ-トを借りて住んでいる。
桜子の父は天山と名乗り、占いをしていたが、取材で訪れていたインドになぜか合流し、強盗により胸を刺される。
一命を取りとめ帰国はしたが、怪我の後遺症で襲われてから1年後に亡くなった。
桜子と耕太郎は以前から好意をお互いに持っていた。
耕太郎は桜子をいつも見守るかたちでよく【占い処七ノ瀬】に顔を出している。
占いの客に降りかかる災いを感じアドバイスをする桜子を影からみて、その客のその後を追跡したり・・・。
最初の二つは、占いに来たお客の話。
三番目<ミツオの帰還>は12年前のホ-ムレス襲撃事件の犯人と噂されていた当時の素行不良の少年・光男と桜子のこと。
なんだか後味が悪い話でした。
四番目の<水曜日の女難>は留守番中の占い処に来た女性・笹森陽子は、耕太郎にしつこくアタックしてくる。スト-カ-まがいの行為をしたり怪しいかんじだったけど、その理由は、復讐だったという話。
陽子にとっては不運では済まされない耕太郎の撮った写真。
最後は表題作<桜の咲かない季節>
桜子と耕太郎の関係が進展したかんじのラスト。
二人は新たな生活をスタ-トさせるのかなぁ~という思わせぶりなラスト。
う~ん、続編があるといいのにな・・・・。
ちょっとしたミステリ-ありの連作短編集。
なかなか良かった♪
戦争を忘れても、戦後は終らない……
16歳のマリが挑んだ現代の「東京裁判」を描き、
朝日、毎日、産経各紙で、“文学史的”事件と話題騒然!
著者が沈黙を破って放つ、感動の超大作。
(河出書房新社HPより)
独特の雰囲気で、ちょっと難解な部分もありましたが、興味深い内容で一気読み出来ました。
主人公の真理は、15歳でアメリカに。
自分の意志ではないようで・・・気づいたらアメリカに居たというかんじ。
学生生活のなかで、友人たちとも楽しく会話していたり、まあ普通の留学生生活?と思ったら・・・・・
突如30年後の自分と交信したり・・・
級友たちと森に入りヘラジカと遭遇し、そこで意思の疎通を感じたと思ったら・・・・級友が持参の猟銃でシカは捕らえられ、みなでその肉を食す。
現実と幻想が入り乱れる。
そして現在と過去が交錯する。
実に難解な物語で・・・???の連続なのに、不思議と惹き込まれる物語。
そして表題にもなっている「東京プリズン」。
それは巣鴨プリズンに通じる東京裁判で裁かれた者たちを考えさせる。
最初、この本を手に取ったとき、その東京裁判に関係する物語なのかと思ったのだけど、途中からその予測が少し当たってくる。
マリは高校の授業の一環で、ディベ-トの議題「日本の天皇には戦争責任がある」を主張しなくてはならない役割に当てられる。
しかし、役割を忘れて天皇を弁護する意見をつい述べてしまいスペンサ-先生から注意を受ける。
アメリカ人の認識の「A級戦犯」が多くの日本人が理解しているものとは違うことが
ちょっとビックリだった!
マリと同様、「A級」というと罪が重いように、考えていたけれど違うらしい。
単なる種別分けで使われるABCだそうで、罪の重さは関係ないのだとか。
ほかにも「へ~そうなんだ~」と言うことがいろいろ。
日本の国に居ると不思議に思わなかった天皇という存在を改めて自分なりにあれこれ考えてしまう物語であった。
なかなかほかに読んだことがない物語で、新鮮なかんじがした。
こういう物語はキライじゃない。
面白かったとは言い切れないので、あまり人には薦めないけど・・・^^;
★★★★
父は何を背負っていたのか。行き違いと苦い思い……。時代小説界の次代をになう新鋭の江戸市井小説。
伊佐次は老舗の薬種問屋「鳳仙堂」を継ぐはずが、勘当され、いまや浅草寺裏の賭場を預かっていた。あれから十年、父は変わり果てた姿となっていた。丁稚から主人に上り詰めた父は何を一人で背負っていたのか。寄合いを仕切る大店に嵌められたのか、それとも……。謎解きが悔恨と感涙に変わる。家族の絆を問いかける傑作長篇。
(新潮社HPより)
最近、時代小説のよさに目覚めたようで、お友達が読んで良かったと言っていた作家さんを
わたしも読んでみた。
いろいろ出されているみたいだけれど、通っている図書館に丁度あった本書を先ずは読んでみた。
薬問屋に婿に入った父親・利兵衛と
その長男・利一郎の物語。
利一郎は、長男として家督を継ぐ予定だったが、反発し家出。
荒れた生活の末、伊佐次と名前も変えて賭場を仕切るようになっていた。
反発して飛び出した家でも父親のことは何処かで頭にある。
一方の利兵衛も同じ気持ちであった様子。
親子ゆえ素直に歩み寄れず月日は流れ・・・・・
再会したのは利兵衛が謎の死を遂げたあと。
それぞれの気持ちが痛いほど伝わってくる。
特に父を亡くした後の伊佐次の気持ちが切ない。
しかし、父の死をキッカケに伊佐次の気持ちにも変化が起き、疎遠になっていた弟・栄次郎とは
兄弟の絆を深めていけそうなラストに少しホッとした。
なかなか面白かった!
ほかの作品も順々に読んでいきたいと思える作家さんです。
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;