発行年月:2005年5月
元気で、元気で! けして急がず、泥の流れていくようにゆっくりとお行き! 500年ぶりの土砂降りは、少年ポーを濁流にのせて、どこへ運ぶのか――。魂をゆすぶる圧倒的長篇!
あまたの橋が架かる町。眠るように流れる泥の川。太古から岸辺に住みつく「うなぎ女」たちを母として、ポーは生まれた。やがて稀代の盗人「メリーゴーランド」と知りあい、夜な夜な悪事を働くようになる。だがある夏、500年ぶりの土砂降りが町を襲い、敵意に荒んだ遠い下流へとポーを押し流す……。いしいしんじが到達した深く遥かな物語世界。驚愕と感動に胸をゆすぶられる最高傑作。
(新潮社HPより)
不思議なお話。
ポーとは何者だったのか??
うなぎ女を母に持ち、ほかのうなぎ女たちからも可愛がられて育つ。
泥川のなかを自由に這いながら毎日、遊ぶ。
そして、あるとき500年ぶりの土砂降りによって、町は水浸し。
ポーは小舟に乗って、天気売りとともに下流へと向かう旅に出る。
旅の先々で知り合う者たちとの交流が愉快。
埋め屋の夫婦の元で暫く暮らす二人。
妻の趣味は鳩レース。
鳩の世話を毎日、することになった天気売りだけど、出火が原因で天気売りは
鳩と共に焼死(?)。
しかし、ポーのズボンのなかに女人形の姿に変えて現れる。
不思議なことの連続だけど、そこによく出てくる言葉が、<つぐない>
女人形の姿になった天気売りの声が語る
「いきているうちがつぐないです。まちがわないでいきていくのがほんとうの
つぐないです」って言葉が特に印象的。
ポーは最後、海に還ったのか?
そしてまた川を遡り、うなぎ女たちの元に戻った?
読む人によって、いろいろな解釈が出来そうな話ですね。
童話のような、神話のような、哲学書のような・・・
色々な要素が盛り込まれた物語。
なかなか、独特な雰囲気で、それが好きな人には素敵な1冊になるでしょう。
★★★★
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発行年月:2004年7月
不思議な色のパーカを着た少年との出会いにより、
変化のない日常に流れ込んできた過去の時間。
そんな中、10年前タイムカプセルとして埋めた「自分への手紙」が届く。
文藝賞受賞後第一作!
(河出書房新社HPより)
なんとなく図書館棚から選んだ本。
表紙の絵に惹かれて・・・
タイムカプセルと表題があるけれど、女子大生むつ美の日常を描いている物語。
実家から離れて一人暮らし。
1つ上の従姉妹・桐子は就職活動中で、自分の下宿先より、むつ美の下宿先の方が
就活には便利と度々、泊まりに来る。
むつ美は、ある日、大学内で深緑色のパーカーを着ている男子学生が何となく
以前、見たような気がして気にかかる。
その後、それは地元の親友・佐野の弟だと判明。
やがて、言葉を交わすようになる。
佐野の弟は、最後まで名前わからず・・・・。
でもそんな佐野弟とみつ美の関わり方がなんだか楽しかった。
桐子の就活は、思う様に進まず、この後、何処かに内定を貰ったのか?
何事も収束することなく物語は終わる。
でも、それがいい。
日常のある期間を描いただけというかんじで・・・
特に感動するような物語ではないけれど、面白かった。
文学賞受賞の作品も読んでみたい!
★★★
発行年月:2005年8月
どうやら本当のこととは、こういうことであるらしい
一番素敵な旅がある、おいしい料理がある
女の感性を描いて現代随一の作家が『水霊』のタイトルで新聞に連載した本当の「大河小説」
かおり 16歳、高校生。演劇部所属。“
幼なじみ”室田剛と“転校生”服部至の間で揺れる青春真っ只中。
詩子 49歳、小学校の栄養士。
地元の特産物を使った料理の「試食会」を主催。13年前に夫・昭彦と死別。
ひな 76歳、華道教師。39年前に夫・孝二郎と死別。
20歳の嫁入り以来、浮久町に住み、上げ舟を守る。
祖母はここに嫁ぎ、母はここから出たことがない そして、私は――
母娘3世代、本当の大河小説
(講談社HPより)
主にかおりの日常を描いているけれど、祖母のひな、母の詩子の思い出話も
それぞれ、良い。
木曽川と長良川の堤防に囲まれた地域に住んでいる。
過去にあった伊勢湾台風での水害の様子もひなや詩子の記憶として語られる。
かおりの家の梁に舟が吊るされている。
それを幼なじみの室田剛と横浜からの転校生・服部至が見に来て
ひながその話をする。
昔から水害が多かったその地では、舟を持っていたとか。
詩子の夫・昭彦は、ウナギを釣りにいき、転倒し、水死している。
哀しい出来事だけれど、父親が遺してくれた物語が宝物のかおり。
ちょっとそれは不思議な蛇の話だけれど
後で出てくるうなぎと通じるものがある。
かおりと室田剛と服部至の3人の関係が清々しくていいなぁ~。
ず~っとこのままの関係が続くといいけれど・・・。
3人の女性たちと関わる周りの人々が温かい。
昔からよく知っている者同士の気安さがいい。
表題の還流は、横浜から来た至が、町をあちらこちら散策して
治水タワーにのぼり見た川が流れる景色を見たとき
「川は海と山を結ぶ巨大な還流装置なんだと気づいた。別の言い方をすると
海と山を結ぶことができるのは川だけなんだ」と、かおりと剛に言う場面。
木曾三川をタワーからちょっと実際に見てみたくなった!
ウキィペディアで調べたら・・・・
愛知県一宮市に木曽川が見られるタワーがあるらしい。
138タワー(138はいちのみやを数字にしたとか)
愛知県出身の著者だから書けた物語かな?
★★★★★
発行年月:2014年12月
「握っていなければならぬ貴重な手がふと離れてしまうとき、あたりにたちこめるとりとめのない時間は、甘美な苛酷さへとまがまがしく変容する。その一瞬に立ちあった者の心の乱れは、容易にはおさまるまい。『九年前の祈り』は傑作である。」─蓮實重彦氏絶賛!!幼い息子をつれて海辺の小さな集落に戻ってきたシングルマザーのさなえ。痛みと優しさが胸を衝く〈母と子〉の物語。
(講談社HPより)
2014年下半期の芥川賞受賞作ですね。
長編かな?と思って居たら・・・・4つのお話で・・・「あれ?短編集?」と
思いながら読み進むと、これはやはりひとつのお話なんじゃないかな?と
思えたちょっと不思議な構成の小説でした。
最初は、表題作の「九年前の祈り」
主人公の安藤きみえ(35歳)は、東京から実家のある大分県のとある海辺の集落に
息子の希敏(ケビン4歳)と共に帰ってくる。
元旦那は、カナダ人。
実家の母親から、元旦那と知り合ったキッカケになったカナダ旅行に一緒に行った
渡辺ミツ(みっちゃん姉)の息子が重い病気で入院中と聞く。
きみえには、忘れられない情景があり、それはカナダの教会でみっちゃん姉が
祈っていた姿。結構何かを長い時間かけて祈っていたその姿をきみえは今も
深く心に留めている。
ほかにも幾つか、みっちゃん姉の言葉を思い出す。
そんなみっちゃん姉の息子さんのお見舞いにケビンと共に出かける。
ケビンは時々、手が付けられないほどの癇癪を起こし周りの大人たちを困らせる。
次の話は<ウミガメの夜>
大学生たちが旅行中、浜辺で3人ウミガメの産卵を眺めている。
大分県は大学生のうちの一人の故郷。
一人は入院中の母親のことが心にあり、祖父とも以前、ウミガメの産卵を見にきた
ことを思い出す。
<お見舞い>
昔から憧れていた日高誠(マコ兄)。
東京の大学に進学し、卒業後、地元に戻り役所勤務をしていたけれど
10年前くらいから体調を崩し、その様子が気になる首藤寿哉(トシ)。
海辺に居た見知らぬ大学生3人が借りていたレンタカーが動かなくなったと
困っていると聞き、なかの一人が病気で入院中の母親の容態が悪くなったので
東京に戻らなきゃならないと聞き、車で空港まで送る。
兄によく虐められていたトシがちょっと虐めた、幼なじみが入院している
大学病院へ今度はマコ兄と一緒に見舞いに行こうと大学生たちを車に乗せながら
考えるトシ。
<悪の花>
千代子は、渡辺ミツの息子のことを思う。
ヘルパーとして働くミツの息子とは、老人たちが集まる、ふれあいサロンで知り合った。
自分の代わりに墓参りにも行ってくれて、そこに咲く繁茂する悪の花を取ってくれた。
ミツの息子が入院したと聞き、悪の花を取らせたのがいけなかったんじゃないか?と
申し訳なく思う。
読みながら、この話のこの人は、この話のこの人と同一人物?
などと考えながら読みました。
同じ集落の人たちの物語で、抱えている病がそれぞれの人たちを悩ませている。
けれど、九年前のミツの祈りは、それぞれの人たちを不思議な糸で結び
やがて、何かしら救いの手が差し伸べられる?
さなえの息子・ケビンもこの集落に呼び寄せられた?
救いの手に引き寄せられて?
なんて、勝手な自己解釈かな?
小野正嗣さんの本は、以前「マイクロバス」を読んで、何か暗く重い
けれど、不思議な魅力を感じ読み終えた後、余韻が残るような話だと記憶していますが
これも似たような印象でした。
ほかの本も読んでみよう!
★★★★
発行年月:2014年7月
「結婚おめでとう」虚ろな一言をなんとか書き終える。
サークルの同期が結婚するたびに行われるメッセージアルバム作りだ。
けれどカフェの店内に陣取る華やかな衣装に身を包んだ一団の中で、私は落ち着かない。だって、私は彩音から招待状をもらっていない。
他のみんなは式に呼ばれているのに、どうして私だけ……。
もうすぐ始まる、招かれていない結婚式に出席して、一体何をしようとしているのだろう――。(『届かない招待状』)
OL、ママ友、中高生……。さまざまな年代、立場の女性の友情に隠された想いを情感あふれる筆致で描ききる!
注目度ナンバーワンの新鋭が贈る連作ミステリ。
(東京創元社HPより)
短編集なのに、どれも内容が濃い!
凄いなぁ~、この作家さん!
<届かない招待状>
大学時代のサークルの親友の結婚式に自分だけ招待状が届かない。
悩みながら、招待状がないまま式に出席。
そして、その理由を知る。
<帰らない理由>
中学の同級生・くるみが交通事故死。
親友だった瑛子と、彼女の幼馴染で最近付き合い始めた僕が彼女の部屋に居る。
お互いがお互いを早く帰ればいいのに・・・・と思いながら。
<答えない子ども>
4歳の娘が描く絵を毎日、誉め写真に撮るのが日課。
ある日、アトリエ教室で知り合った、そうくんママの家を娘と訪ねる。
常々、そうくんママのガサツさが苦手だった。
家に帰ってきて娘の描いた絵がないことに気づき・・・
<願わない少女>
中学入学後に知り合った悠子は漫画家志望。
自分もそれに合わせるように漫画家志望と言ってしまうが、悠子は相談なく
漫画家の夢を捨てた。
<正しくない言葉>
老人ホームに夫婦で入居した澄江。
ある日、同じホームの親しい孝子の息子夫婦が何やら孝子のことを話しているのを
聞いてしまう。
どれも登場人物たちの心情が巧く表現されていて、ちょっと重苦しい状況も
最後は、丸く納まるという話たち。
特に最後の話は、これから迎える老年期を考えさせられたなぁ~。
ある程度、元気なうちに澄江夫婦のような選択をするのもいいか?とか
思ってしまった^^;
そこで、孝子みたいな友人が出来たら最高!
子どもに親として「年を取るのも悪くないわよ~」と示すことが出来る
親でずっと居られたら素敵だなとこの話を読んで思った。
★★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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