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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2025年5月


第173回直木賞候補作! 傑作社会派小説
 首相暗殺テロが相次いだあの頃、インターネット上にもう一つの爆弾が落とされていた。ブログに突如書き込まれた【宣戦布告】。そこでは、SNSで誹謗中傷をくり返す人々の名前や年齢、住所、職場、学校……あらゆる個人情報が晒された。
 ひっそりと、音を立てずに爆発したその爆弾は時を経るごとに威力を増し、やがて83人の人生を次々と壊していった。
 言葉が異次元の暴力になるこの時代。不倫を報じられ、SNSで苛烈な誹謗中傷にあったお笑い芸人・天童ショージは自ら死を選んだ。ほんの少し時を遡れば、伝説の歌姫・奥田美月は週刊誌のデタラメに踊らされ、人前から姿を消した。
 彼らを追いつめたもの、それは――。
* * *
■宣戦布告■
よく聞け、匿名性で武装した卑怯者ども。
SNSなんてなくなればいいのにな。えっ、ダメ? 余計なこと言うなって? そうだよなぁ。やっとおまえら権力者になれたもんな。炎上させて誰かが何かを諦めたときに、社会を変えてやったと実感できるもんな。そうやって表面的な正義感で研いだナイフで、悪意の塊でつくった毒で世直ししてるもんな。
やっぱり俺は週刊誌とおまえたちを赦せない。
だからやってやるよ。俺には俺の、ケジメのつけ方ってもんがあるんだよ。
これから重罪認定した八十三人の氏名、年齢、住所、会社、学校、判明した個人情報の全てを公開していく。
八十三なんて数字は氷山の一角に過ぎない。だが、図に乗ってると、次はおまえの番になるから肝に銘じておけ。
明日にはおまえたちの人生はめちゃくちゃになっている。
奥田美月や天童ショージのように。
せめて今日を楽しめ。あばよ。 


                   (文藝春秋HPより)


面白かった!

音楽プロデューサーの瀬尾政夫がブログで芸能人(芸人の天童ショージと
元アイドル歌手の奥田美月)に対して酷い誹謗中傷コメントを書いた
83人の実名や個人情報を公開する。


実名を晒されて自分自身が窮地に立たされ動揺するコメントした者たち。
自分の社会的地位をなくし自死してしまうものも出てくる。
正直、可哀想とは思えなかった。


瀬尾が天童ショージと奥田美月とどういう関わりがあったのかがわかってくると
より一層、瀬尾のやったことが意味あるものだったんだとわかる。
瀬尾自身は自分のやったことの罪を受け入れる覚悟があってやっている。
誹謗愁傷した者たちには、それによって、どうなるかまで全く考えず
やっている。


天童ショージは不倫を週刊誌に暴露されて、ネット上で叩かれた。
こういうことはよくワイドショーとかでもみる。
でも天童の妻・静香は「放っておいてほしかった」と。
奥さんが可哀そう、子どもが可哀そうと言いながらの誹謗中傷は
その奥さんや子どもも傷つけていることに気づいていない。
そっとしてあげるのが一番いいのに・・・


奥田美月はスタッフへの暴言テープが晒されネット上で叩かれる。
そうなったわけを知らず、バッシング。
誰でも声を荒げたくなる状況はあるのに・・・。


美月の生い立ちは壮絶なもので、最後の場面で、色々あったけれど
美月がちゃんと歌を歌い続けていたことがわかって救われた。


瀬尾との再会もジーンとした。


読み応えあり、今の社会の闇みたいなものに小説の力で考えさせてくれた
いい物語だった。

直木賞あげてほしかったな・・・と個人的には思った。



                     ★★★★★
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発行年月:2025年6月

図書館勤務の20代女性・麦本三歩。
少しずつ成長しながら、
変わらない日常を過ごしていくと
思いきや、まさかの岐路に!?


                (幻冬舎HPより)



三歩・・・良い子なんだけど、ちょっと変わっていて大丈夫か?このこ?
と1冊目を読んだときは思っていた。

でも職場(図書館)の先輩たち、後輩、図書館にくる学生たち。
みんな三歩の良いところを認めていて、良い人間関係が築けている。


職場以外にも、美容室のマスターとの関わり方とか
恋人とのこと、友人たちとの会話。
どの場面も、ほんわかしていていい。


言葉を噛み過ぎなのがちょっと気になるけれど、誰からも愛されそう。


あと、勉強ができるのは大きな武器になっていた!
忘れていたけど、三歩は優秀なんだった!
TOEIC925点なんだ~!!\(◎o◎)/!

図書館司書以外のことも始めるようなことを言っていたけれど

その後、どうなったんだろう?
憧れていた仕事とはいえ正職員として働かないと、やはり勿体ないよなぁ~



家庭教師を頼まれ、その男子高校生が志望大学合格して、結婚して、こどもも

産まれて・・・・
とサラッと書かれていたけれど、その間の三歩のことも
詳しく知りたいところ。
三歩も結婚してこどもが産まれているのだろか?
どんな妻、どんな母親になっているのか?
興味あるんだけれど・・・・


これでシリーズはおしまいなんだろうか?


ゆる~く楽しませてもらいました(^^)



                       ★★★



発行年月:2025年2月


絵師の一念、憂き世を晴らす。
仏画、絵巻、浮世絵――美に魅了された人々の営みを描いた歴史小説集
六十路を越した老境の絵師・喜平治(宮川一笑)は、肉筆美人画の名手・菱川師宣の曾孫である姉弟と知り合う。絵描きを志す弟の伊平の面倒を見ることになった喜平治は、幼いながらも確かな筋の良さに感嘆するが、折しも町絵師の宮川一門と表絵師の狩野家の間で諍いが起きてしまい……。(表題作「しらゆきの果て」)
鎌倉、戦国、江戸、幕末
時代と歴史を超えて、
人々を狂わせ、神仏さえも惑わせる、
あらゆる「美」の真髄を描く5つの物語


                    (角川書店HPより)




5つのお話、どれも読みごたえがあった。
表題作は、ちょっと絵師の世界の派閥争いみたいなものが激しくて
恐ろしかったなぁ~。


<さくり姫>
絵師の詫間為久は、代々絵師の家の3男。
源頼朝が亡き父・義朝の菩提を弔う寺を建てその後御堂に壁画を描くよう
命じられ長兄の代理で寺へ。
そこで出会ったしゃくり(さくり)をする美しい女性。
それは頼朝の妹・有子だった



<紅牡丹>
9歳の苗は人質として松永久秀の城に。
同じように人質として暮らす3人の男子たちとも打ち解け
何不自由なく暮らすが、そのうちの一人は父親が裏切ったということで処刑。
もう一人は父親が良い働きをしたとして家に帰される。
そして一番年上の藤松は戦へ
東大寺に火か放たれ城は混乱。その隙に逃げることを決意する苗。
苗が大切に育てていた牡丹は苗に優しくしてくれた老僧・勝源が
引き継いで育てると。
老僧から聞いた焼けてしまった巨勢金岡(こせかなおか)という画人が
描いた極楽図の美しさ。


<輝ける絵巻>
左近中将の四辻季賢は歌会で知り合った豪商の宗蓮から
白河院の源氏絵巻を手に入れたというが
それは既に焼けてしまったとされている絵巻?



<しらゆきの果て>
亡き菱川師宣を師としている宮川長春。
長春の弟子・喜平治は師匠がずっと気になっいる師宣の息子のこと。
菱川の家は師宣亡き後、あっという間に落ちぶれ息子は筆を置いてその後は
行方がわからなくなってしまった。
が、ある日、その息子を長春の息子・長亀が見つける。

長春の師に対する想いはすごい。
そしてそんな長春を慕う喜平治もまた師を思い・・・

壮絶な話だった。
この時代の絵師の派閥争いみたいなものは命がけだったのか?




<烏羽玉の眸>
天子さまのご下命により寺を地元の村人たちによって壊されることが決まって
いる内山永久寺。
住職の亮珍は、200名の僧侶を集め、寺男・八太吉に用意させた鹿汁を皆に
振舞い、これを食べて寺から去れという。
そして亮珍は5年前に殺された絵師・岡田式部のことを思い出す。
寺が滅茶苦茶になる前に、その絵師。冷泉為恭の描いた画帖を持ち出してほしいと
八太吉に頼む。



どれも、そのまま長編でじっくり読みたいと思える内容だった。
知らない絵師の名前も出て来る。

一番好きだったのは<紅牡丹>
人質として出て行く娘・苗に母親が持たせた牡丹の苗。
その意味を教えてくれた老僧。
苗が無事に親元に帰り、牡丹の花を勝源が咲かせる未来があってほしい




                      ★★★★








発行年月:2022年7月


高校生の茜寧は、友達や恋人に囲まれ充実した日々を送っている。しかしそれは、「愛されたい」という感情に縛られ、偽りの自分を演じ続けるという苦しい毎日だった。ある日、茜寧は愛読する小説の登場人物、〈あい〉にそっくりな人と街で出逢い――。 いくつもの人生が交差して響き合う、極上の青春群像劇。


                     (双葉社HPより)



誰からも愛されたいと、本音を隠して、好意を感じて貰える発言や行動をする茜寧。
そして愛読書である「少女のマーチ」のなかに出て来る人物が自分そのものでは
ないかと思い、その物語の主人公<あい>にそっくりなイメージの人を偶然
見つけて思わず声を掛ける。
その人物は<宇川逢>偶然、<あい>と言う名前であることに運命のようなものを
感じてしまう茜寧。
しかし、宇川逢は女性に見える容姿だったけれど、男性だとわかる。

なぜ、声をかけてしまったのかを説明する茜寧。
茜寧のことを変わっている子だなと思う反面、嫌なかんじはなく求められるまま
友達として時々、会う。

宇川逢が、理性のある大人でよかった。
茜寧の頼みに付き合ってあげたり話を聞いてあげたり・・・

けれど、本のなかの<あい>とは違うとわかって絶望したり・・・
なかなか厄介な子。

他にも女性バンドグループに所属している後藤樹里亜。
宇川逢の働くライブハウスで歌うこともあり、顔なじみ。
樹里亜も本当の自分を隠しファンが求めるカッコいい女の子を演じている。


こんな風に悩んでいると生きづらいだろうな・・・・。

茜寧は宇川逢に出会えてラッキーだった。
救われているんだと思うから。



登場人物たちの心理描写が細かくて、なかなか読むのに時間がかかった。

住野よるって作家は、なかなか独特な世界観を持っているな。




                         ★★★



発行年月:2024年7月


【全冊著者直筆サイン入り!】
延暦19年。駿河国司の家人・鷹取は、軍馬を養う官牧で己の境遇を嘆く日々を送っている。ある日、近くの市に出かけていた鷹取は、富士ノ御山から黒煙が噴き上がるのを目撃し、降り注ぐ焼灰にまみれて意識を失う。一方、近隣の郷人や遊女などの避難民を受け入れた牧は、混沌とする。灰に埋もれた郷では盗難騒ぎが起こり、不安、怒り、絶望がはびこるなか、京から坂上田村麻呂による蝦夷征討のための武具作りを命じられる。地方の不遇に歯噛みする鷹取は――
平安時代、富士山延暦噴火。大災害に遭った人々の苦悩と奮闘の日々を描く、歴史パニック長編。


                     (光文社HPより)



著者のサインには感動・・・・全冊直筆って凄い!


登場人物が次々と出て来るので、慣れるまでちょっと難儀した。
でも、それぞれのキャラクターが魅力的で、起きていることは大災難なんだけど
そこにいて、奔走する人たちがただ恐れ慄くだけではなく
凄く生き生きしていた。

そこは、やがて軍馬として活躍する馬を育てている地だったため、
自分たちの命よりまず、馬を守るために色々な知恵を出し避難させる場所を
決めたり、実際に移動させたりと必死。


主人公の鷹取(30歳)は、生まれは貧しい賤民。
京都から主に従って駿河の地へ。
着いた早々、馬を一頭、逃がしてしまい、新たな馬を貰い受けて来いと
岡野牧へと出向く。
そこで、遭遇した富士ノ御山の噴火騒ぎ。
そのままその岡野牧にとどまる。

そこで、出会う人たちとも次第に親しくなっていく。
身分の低いことにずっと引け目を感じていた鷹取だったが、ここではそれを
次第に感じなくなる。


噴火したあとの暮らしも大変だけど、皆、黙々とやるべきことをやっている。
そして再びの噴火。

時代は坂上田村麻呂が東北を制覇する頃。
東北の地のリーダー・阿弖流為は(アテルイ)囚われの身として
田村麻呂と共に岡野牧へ
寄る。
その時、二人の関係討伐した側の大将とそれに敗れた者という
だけではないのでは?と感じる鷹取が田村麻呂に自身の疑問を問う場面が
いい。
そして、かつては自分と似た身分だった小黒が出世して田村麻呂に仕えて
いたんじゃないか?と思えるところも。


災厄に逃げ惑う人の物語だと辛いだけだけど、そんな中でも逞しく生きている
人たちの物語は、読んでいて心地よかった。



                       ★★★★★
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