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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2022年3月


隠れキリシタンの島で起きた、密室殺人の謎
相続鑑定士の三津木六兵の肩には人面瘡が寄生している。毒舌ながら頭脳明晰なその怪異を、六兵は「ジンさん」と呼び、頼れる友人としてきた。
ある日、六兵が派遣されたのは長崎にある島、通称「人面島」。村長の鴇川行平が死亡したため財産の鑑定を行う。島の歴史を聞いた六兵は驚く。ここには今も隠れキリシタンが住み、さらに平戸藩が溜め込んだ財宝が埋蔵されている伝説があるという。
一方、鴇川家にも複雑な事情があった。行平には前妻との間に長男・匠太郎と後妻との間に次男・範次郎がいる。だが二人には過去に女性をめぐる事件があり、今もいがみ合う仲。さらに前妻の父は島民が帰依する神社の宮司、後妻の父は主要産業を統べる漁業組合長である。
そんななか、宮司は孫の匠太郎に職を継ぐべく儀式を行う。深夜まで祝詞を上げる声が途切れたと思いきや、密室となった祈祷所で死んでいる匠太郎が発見された。ジンさんは言う。「家族間の争いは醜ければ醜いほど、派手なら派手なほど面白い。ああ、わくわくするなあ」戸惑いながらも六兵は調査を進めるが、第二の殺人事件が起きて――。
毒舌人面瘡のジンさん&ポンコツ相続鑑定士ヒョーロク、今度は孤島の密室殺人に挑む!

                   (小学館HPより)


2作目とは知らなかったけど、これだけ読んでも特に困らない。
事件の起きるのが、仁銘島という離島で、人の顔のように、真上から見ると見える
ことから人面島とも呼ばれている島。


そして、そこの村長が亡くなったことで島にやってきたのが、三津木六兵という
相続鑑定人。三津木の右肩には人面創があり、意思を持って話す。
三津木と人面創のじんさんのやり取りが愉快。

鑑定人として島に来たのに、次々起きる、亡くなった村長の身内の死。
どれも他殺。
三津木とじんさんは、その真相も追うことに・・・・。


警察官もいるけど、ほぼじんさんのお手柄かな?
三津木だけじゃ全然、解決しなかっただろうな~。


犯人は、もしかしたら・・・・と途中から予想がついたけど
犯人の今後は、どうなっていくのか?その方が気になった。


離島が舞台の事件は、よくあるものだけど、まあまあ楽しめた。


                       ★★★
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発行年月:2022年10月


親子とは、なんであろうか。誕生とは、どの瞬間をさすか。なぜ多くの夫婦が、実子に拘るのか。養子ではいけないのか。子とは、両親の遺伝子を運ぶ船であり、親が子を助けるのは、自らの遺伝子を載せた方舟を無事に船出させるためだ。そうとまで言い切る学者もいる。自分の犯した罪を忘れたいがためなのか、この世に産声をあげた子らは、すべからく何れかの親を持つ天からの贈り物である、と今ここにいる老人は信じます。――本文より

                       (光文社HPより)



赤ちゃんの取り違えが題材の物語は幾つか読んだり、映画で観たり
していたけれど、生殖医療が進んだ時代では、こういうことも起こりうること?と
ちょっと怖くなった。

取り違えは、受精卵を培養するためのシャーレの取り違え。
別のひとの受精卵をお腹のなかで育て、出産している2人の母親とその子ども。
どちらも女の子。
そして日本人と韓国人。


そのうちの一人、宮本菜々子は、医大生になっている。
ある日、血液型の検査を受け、両親が共のO型なのにB型の判定。
不思議に思い、自ら家族のDNA検体を集め、遺伝子検査をする。
自分は両親のどちらでの子どもでもないことがわかる。
同級生の韓国人・ジヒョンが偶然、同じ時期に菜々子の産まれた産院で
生まれていたことがわかるが、別の韓国人夫婦の子どもが菜々子と入れ替わって
いることまでわかる。

菜々子は、本当の両親に会うため、韓国へ。



事実は判明した後も変にパニックにならず冷静に行動する姿は好感が持てた。
医師を目指している人だからか?
自身が母親に感じていた、違和感の原因がわかったことに納得し、
それまでより逆に良い関係が築けていけそうなのもよかった。


しかし、間違いのもとを引き起こした医師・高山は、ちょっと許せない。
間違いに気づいたタイミングも割と早い時期だったのに、隠したまま。
でも、もし、気づいた時点で打ち明けていたら、どうなっただろう?
2人の女性が入れ替わっても、それぞれの両親のもとで健康に平穏に
生活できていたから、後から知ってもそれほど、混乱が起きなかったのは幸い。


読みながら、色々、考えさせられる内容だった。



                      ★★★



発行年月:2022年2月


「あのときのメンツ、今みんなこっちにいるみたいだぜ」「まさか、スイ子か? なんでまた?」スイ子こと、山際彗子が秦野市に帰ってきた。手作りで太陽系の果てを観測する天文台を建てるというのだ。28年ぶりの再会を果たした高校時代の同級生・種村久志は、かつての仲間たちと共に、彗子の計画に力を貸すことに。高校最後の夏、協力して巨大なタペストリーを制作した日々に思いを馳せるが、天文台作りをきっかけに、あの夏に起きたことの真実が明らかになっていく。それは決して、美しいだけの時間ではなかった。そして久志たちは、屈託多き「いま」を自らの手で変えることができるのか。行き詰まった人生の中で隠された幸せに気付かせてくれる、静かな感動の物語。

                   (角川書店HPより)



高校3年生の夏、文化祭の出し物として、空き缶でタベストリーを制作した
仲間が45歳になって、再び集い、天文台を造る。

秦野市に戻ってきた、山際彗子は、国立天文台の研究員として働いていたが
自身で天文台を造るために辞職。

それを高校時代の友人たちが知り、手伝う。
高校のとき、一緒にタペストリー(オオルリがモチーフ)を作成したのは主に6人。
彗子の他は・・・

種村久志・・・・実家の薬局を継いで、同じく薬剤師の妻と小学生の男子二人の
        父親   

勢田 修・・・東京の番組制作会社を辞め、弁護士を目指し、司法試験を控える
       バツイチ

伊東千佳・・・公立中学で理科を教える教師。夫は英語教師
       高校生の娘と中学生の息子の母親

梅田和也・・・実家に引きこもって3年

槙 恵介・・・高校時代は明るく運動も出来き、ハンサム
       けれど、高校卒業後に自殺


最初は、久しぶりの仲間が集まって、天文台を造るという前向きなストーリー
だったけれど、それぞれの高校卒業後のことが判ってくると、みんな色々
あったんだね~という感じ。

特に、彗子と亡くなった恵介のことは、仲間も知らなかったことらしく
驚いた。
一人で逝かせてしまったという後悔が皆の胸に重くのしかかる様子は
読んでいて辛かった。

引きこもった和也に少し、明るい変化があったとことは、良かった。


ラストは、完成した天文台でジャコビニ彗星を観測するという場面。
1972年10月・・・・
ああ、そんな彗星の話、あったような気がする。

松任谷由美のジャコビニ彗星の日 という歌は知らなかったなぁ~。


ロマンありの素敵な物語だった。
オオルリという鳥も綺麗な鳥だと初めて知った。



伊与原さんの作品は、いいな。


                    ★★★★


発行年月:2022年6月


昭和三十八年、三井三池炭鉱の爆発と国鉄事故が同日に発生。「魔の土曜日」と言われたその夜、十二歳の黒沢百々子は何者かに両親を惨殺された。なに不自由のない家庭に生まれ育ち、母ゆずりの美貌で音楽家をめざしていた百々子だが、事件は重く立ちはだかり、暗く歪んだ悪夢が待ち構えていた……。著者畢生の書下ろし大河ミステリ。

                 (新潮社HPより)



昭和38年の11月9日にふたつの大きな事故があり、この物語の冒頭の事件も
その同じ日に起きている。

そのためか、最初から最後まで、凄い緊迫したリアリティを感じた。
冒頭の事件では、ある夫婦が殺害される。
犯人は、少し読み進めれば、わかる。
では、なぜ?そうしなければならなかったのか?と疑問を抱えながら読み進め
犯人の一途過ぎる思いがなんとも辛い。

犯した罪は大きいけれど、不思議と嫌悪感みたいなものは感じなかった。

両親を殺された百々子は、当時、私立の裕福な家庭の子が多い学園の初等科6年で
事件の日は、学校の1泊2日の合宿に出かけていた。

百々子を支えたのは、当時担任だった美村。事件を知り、合宿先から百々子を
東京まで送り届け、その後も何かと気遣う。

百々子の両親が懇意にしていた家政婦の石川たづと多吉夫妻が、百々子を預かり
日常を共にする。
その家の子どもの長男・紘一、長女・美佐も百々子の良き話し相手となる。



ここからネタバレ含みつつ・・・

一番、百々子のことを心配していたのは、百々子の叔父(母親の弟)・沼田左千夫。
彼は、百々子を最初に見た時から、百々子のことしか感がえられなくなっていた。
叔父という立場から見れば、異常でしか、ないけど、その想いは純粋で
百々子に自分から触れることもなく、精一杯、自制していた。

そのことが、姉夫婦を殺害することになってしまったのは、左千夫自身も
本意ではなかったと思う。
万全に隠し通すべきだった思いを姉に知られてしまったのは、偶然だった。
思いを目に見える形で残すべきではなかったとは思うけれど・・・
一人暮らしの寮の管理人(妻)が親切心で姉を留守宅に入れたために
知られてしまった。

姉に強く非難され、追い詰められてしまった。


百々子が両親を殺害した犯人が、いつも優しかった叔父だと知り、ショックで
その後は強い憎しみと嫌悪感を抱くのは当然だと思う。
けれど、60歳を過ぎた百々子が、過去のことを思い出し語る終盤では、
叔父に対して、少し違った思いを語っている。
そこには、憎悪よりも憐れみの気持ちの方が勝っていたと思う。
そのことに、少しホッとした。

左千夫の最期が、本当に辛そうで、胸が痛くなるものだったから。
こんな風にしか、生きられなかった左千夫に、憐れみの気持ちでいっぱい。
泣ける・・・(ノД`)・゜・。



小池さんは、これを書くのに10年という歳月がかかったそう。
その10年の間には、自身がケガをしたり、お母様が病気で亡くなり、
ご主人も闘病生活の末、亡くされたとか。
ご自身の生活も大変なときに、このような凄い物語を書き上げたのは
本当に、凄いとしか言いようがない。

色々な作品を読ませて貰ったけれど、間違いなく、一番の作品だと思う。


                     ★★★★★



発行年月:2022年7月


ちょっぴりつらい今日の向こうは、光と音があふれてる。
『幸福な食卓』本屋大賞受賞作『そして、バトンは渡された』に連なる、究極に優しい物語
私は、ぼくは、どうして生まれてきたんだろう?
大学生の梨木匠は平凡なことがずっと悩みだったが、中学3年のときに、エスパーのように人の心を読めるという特殊な能力に気づいた。ところが、バイト先で出会った常盤さんは、匠に心を開いてくれない。常盤さんは辛い秘密を抱えていたのだった。だれもが涙せずにはいられない、切なく暖かい物語。

                 (講談社HPより)



瀬尾さんの書く物語は、外れなく、優しく温かい。

主人公の梨木匠(19歳)は、本当に神様から選ばれた人なんじゃないか?
彼の言葉にどれだけの人が救われているんだろう。

最初にその能力を発揮したのは、中学3年生のとき、転校生の女子・三雲さんへの
ナイスフォロー。

それから大学生になった三雲さん(苗字が河野さんに変わっていたことが
後でわかるけど・・・)が声を掛けてあげて欲しいと匠に頼んだ香山くん。

匠のバイト先(美味しいオムライスのお店)の口も態度も悪い店長・大竹。
バイトに加わった看護学生の常盤さん。


心を読める匠でも、全然、読めない相手が常盤さん。
でも、常盤さんから聞こえる常盤さんのことを見守っているらしい女の子の声。


みんな、それぞれ心に抱えているものがあって、それでも何とか頑張っていて・・。
梨木くんは、みんなのことをいつも考えていて、だれとでも等しく
優しい。

それゆえ、自身の恋愛がうまくいかないというのは、気の毒だけど。。。

常盤さんから聞こえる声の主のことが、わかったときは、ちょっと切ない気持ちに
なったけど、これから常盤さん、変わっていくかな。


付録のアフターディは、楽しかった。


                     ★★★★★
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