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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2021年12月


「あなたは、この世界に生まれてきたいですか?」
子どもを産むためには、その子からの同意が必要となる世界を舞台にした衝撃作。
『彼岸花の咲く島』で芥川賞を受賞した著者による、芥川賞受賞第一作。


                    (朝日新聞出版HPより)



先日、読んだ芥川賞受賞作とは、また違う話で衝撃的だった!
未来の日本の法律「合意出生制度」。

胎児が生まれて来たいか否かを調べて、その結果、生まれてきたくないと
診断されたら、強制的に堕胎しなければならないという。
恐ろしい制度だな・・・と最初は思った。
そもそも、その診断結果って、正しいのか?と。
そして、その診断結果に反して出産した場合、それがわかると犯罪者とされて
しまう。
合意出生公正証書を親は子供が成人するまで保管しないといけないが
それが提示されない事実があった場合、出産したものとその配偶者は処罰される。


物語の彩華と佳織は、妊娠手術を受けて彩華が妊娠。
2人の子どもの出産を心待ちにしている。

が・・・まさかの胎児が出生拒否。

どうする?という物語。

それぞれの意見が一致しないと本当に大変だ。

まあ、最後は同一の意見で法律に従うことにした二人だけど
この世の中ならば、仕方ない決断だろうな。
次回の妊娠では無事に合意出産できるといいけど。


読みながら、色々と考えた。
最初は、酷い法律だと思ったけれど、同性同士の結婚が認められ、子どもを
持つことも手術が可能になったこの時代、子どもにとっても生き難さを
計る生存難易計測なんていう数値まで出てくると、考えちゃう。
例えば、生まれても虐待される可能性があるとか、そうなると生まれない方が
いいと判断するのは真っ当だと思ってしまう。
また児に何らかの身体的障害があるとか。
親は生まれたら愛情をもって育てると覚悟しても、児が拒否する場合は
諦めがつきやすいのかな?など。


なかなか、凄い小説だった!
今後の作品(過去のも)も読んでみたい作家さん。





                     ★★★★★

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発行年月:2020年11月(単行本は2018年4月)


小国ナスミ、享年43。息をひきとった瞬間から、彼女の言葉と存在は湖の波紋のように家族や友人、知人へと広がっていく。命のまばゆいきらめきを描く感動と祝福の物語。2019年本屋大賞ノミネート作。

                  (河出書房新社HPより)




表題では気づかなかったけれど、NHKで放送したドラマ「富士ファミリー」の

関連本だったのか!

ドラマはナスミが既に亡くなって時間が経っていたけれど、これはナスミが亡くなる
少し前のことも描かれている。
ナスミって色々な人に影響与えて来たんだなぁ~。
優しくて豪快で、凄い魅力的な人。


小国家の人たちも温かい。

俳優さんの顔が浮かんで来ちゃうけど、
ドラマではナスミの旦那さんが再婚して、その再婚相手の愛子が仲里依紗で
ドラマの中で、ちょっとナスミに似てるなぁ~と思っていたけれど
この小説読んだら、愛子とナスミは知り合いだったんだ!
愛子はナスミに憧れてナスミになりたいと思っていたんだとわかり
なるほど!と腑に落ちた。


物語の最後は、ナスミの旦那・日出男と愛子の子ども・光ちゃんが63歳に
なっている。

ああ、命はこうして繋がっていくんだなぁ~と思った。

木皿泉さんの作品、ドラマも良いけど、活字で読むのも楽しいな。
ほかの作品も読んでみたい。


                       ★★★★★




発行年月:2021年9月


過熱する親の心情を余すところなく描いた、凄まじき家族小説。
専業主婦、有泉円佳の息子、翼は、小学二年生。興味本位で進学塾の全国テストを受け、中学受験に挑戦することになる。最大手の進学塾「エイチ」に入った翼は、男子四天王といわれる難関校を狙う。中高一貫校を受験した経験のある夫真治と、それを導いた義父母。中学受験にまったく縁のなかった円佳が、塾に、ライバルに、保護者達に振り回され、世間の噂に、家族に、そして自分自身のプライドに絡め取られていくーー。

                     (光文社HPより)


小学生が中学受験のために、こんなにも追い込まれた生活を強いられるのか?
恐ろし過ぎて・・・都会に住んでいなくてよかったぁ~と思った。

周りの環境が、受験するのが当たり前みたいな中で、子どもは親の示す道を
進むしかない。
そして期待に応えようと必死で。
その必死さが段々、痛々しく思える。

母親の方は、ちょっとこのやり方は子どもを追い詰めているだけなのでは?と
思ったりするけれど、父親は自分も同じように親にされてきて今があると
思っているので、これが正しい親の姿だと信じ切っているのがまた
なんとも辛いところ。


結果、翼君自身が決めた進路で何とか落ち着いたけれど
最初から最後まで息が詰まった。


はぁ~疲れた。


実際、リアルな受験戦争のなかにいたら、もう少し違う感想だったのかな?



                       ★★★



発行年月:2020年11月


イラストレーター井出ちづる。夫は若い女と浮気をしている。嫉妬はまるで感じないがそんな自分に戸惑っている。早くに結婚して母となった岡野麻友美。自分ができなかったことを幼い娘に託し、人生を生き直そうとする。帰国子女で独身の草部伊都子。著名翻訳家の母のように非凡に生きたいと必死になるが、何ひとつうまくいかない。三人は女子高時代に少女バンドを組んでメジャーデビューをした。人生のピークは十代だったと懐かしむ。三十代となったこれからの人生に、あれ以上興奮することはあるのだろうか……。
「これは、私たちにとってやり遂げなくてはならない何かなのだ」

                       (光文社HPより)



高校時代、バンドを組んでメジャーデビューまでした経験を持つ3人が
35歳になっての話。


結婚している者、既婚だけど子どもを持たない者、独身者。

たまにあっても環境が違っていると共通の話題がないというのはよくわかる。
なぜ、それでも時々、会うのか?
本音を出したくてもつい見栄を張ったりして。


終盤、独身で母親にずっと支配されてきたと思っている伊都子の母親が
病に倒れ、余命が短いという状況で、結束する彼女たち。
伊都子の母・芙巳子の言葉をそれぞれが、自分の言葉として受け入れ
前に進むラストは、良かった。


3人の女性たちが、凄く魅力的に感じられた。
この先は、そんなに会う機会が減るのかもしれない3人だけれど
それはそれで。
今は連絡の取り方はいろいろあるしね。


久しぶりに読んだ角田さんの作品だったけど、やはり読みやすい。
新刊も読みたいな。


                      ★★★



発行年月:2021年6月


【第165回 芥川賞受賞作!】
記憶を失くした少女が流れ着いたのは、ノロが統治し、
男女が違う言葉を学ぶ島だった――。
不思議な世界、読む愉楽に満ちた中編小説。


                 (文藝春秋HPより)



芥川賞にしては、わかりやすい物語だったなという印象。

架空の島だろうけれど、日本と中国、台湾などが出て来て、言語も日本語っぽい。

舞台になる島に流れ着いた少女(ウミ)を見つけたのは島の少女・ヨナ。

ウミの話す言葉と少し違う言葉で聞き取れない箇所もある。
ウミの言葉は<ひのものことば>
島の人たちは話すのは<ニホン語>
そして、島の歴史を伝承していく女たちだけに許されている言語<女語>。

なぜ、女にしか歴史が伝承されないのか?

少年・タツも歴史を学びたいと内緒で女語を習得している。


歴史を伝承する者はノロと呼ばれ、島の最高指導者は大ノロと呼ばれる。

ヨナとウミは、女語の習得に励み、試験を受けて二人はノロになることを許される。
そしてウミは、大ノロから秘密を打ち明けられる。

島の歴史も。

どんな時代にもどんな世界にも人が人を殺して自分たちの欲を満たそうとしている。
それは男たちが政治を動かしているからなのかなぁ?

今、連日、報道されるロシアとウクライナの戦闘をどうしても考えてしまう。


大人になったヨナとウミが島の平和のために奮闘する未来がみたい。
少年・タツも二人を手助けする存在であればいいな。


しかし、彼岸花という花は、やはり哀しいな。



                       ★★★
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