昭和39年夏、オリンピックに沸きかえる
首都東京。
開催妨害を企む若きテロリストと警視庁刑事たちの
熱い戦いが始まる---------。
(本の帯文より)
奥田さんの社会派の小説。
読む前から期待していました。
図書館から借りて、手に取り、その本の厚さ、中は二段書き。字がビッシリ!にはちょっと驚き。
これは読了までに時間がかかりそうだなぁ~と覚悟して読み始めました。
読み始めたのが丁度、週末だったので、予想通り読了までに時間はかかりましたが、面白くて長さは全く気になりませんでした。
時間さえあったら一日で読み終えられる面白さ!
でも、内容は真面目。リアル感もありました。
昭和39年東京オリンピック開催の年。
戦後の貧しかった日本がここ東京に限ってはもはやウソのよう。
ビルが建ち、首都高速が走り・・・。
これでオリンピックが無事に開催されれば、日本も世界に認められた一等国になれる!
が、その裏には、それを実際に造っている数多くの貧しい日雇い人夫たちの壮絶な働きがある事を多くの豊かな暮らしをする者達は知らない。
東大で経済学を学ぶ島崎国男の兄もそんな人夫のひとりとして、過酷な労働に日々追われる生活を強いられていた。
国男は秋田の貧しい農家の生まれ。
早くに父親を亡くし、兄が一家を養うために出稼ぎで仕送りをしてくれていた。
自分が学問を学べるのは兄の犠牲があるから。
そんな兄が突然、東京の仕事先で亡くなる。
死因は心臓病ということらしいが、本当にそうか?
疑問を感じながら、国男は兄が同じ出稼ぎ人夫として働いていた飯場を訪ね、兄と同じように働きたいと言う。
東大の学生が物好きに・・・と最初は浮いた存在だったが、真面目な働きぶりや、実家は秋田の貧しい農家で兄の代わりに自分が送金してあげなくてはならないなどの話から次第に周りの労働者たちにも受け入れられる。
しかし、仕事はとてもキツイ。
それを紛らすためにヒロポンに手を出す。
もはやそれは人夫たちの間では珍しくないこと。
皆、その力を借りない限り続けられない労働の過酷さ。
富める者と貧しい者は、いつの時代にも存在するという不平等さ。
そして、東京は、その富める者たちが暮らす都市。
自分の故郷との格差にもやり切れなさを痛感する国男。
東京だけが富と繁栄を享受している事に怒りを覚え、ついにオリンピックを阻止しようと大胆な結論に達する。
開会式の10月10日の前に、何度か爆破事件を起こす。
が・・・・不思議なことに報道されない。
事件の真相を明かすことは、オリンピックを前には出来ない。
なぜなら、日本は国の治安においても一等国と国際社会にアピ-ルしなくてはならないときだから。
犯人と警察の度々の交渉は、リアルでハラハラドキドキ。
国男を手助けする東大の学生運動に力を注ぐものたちや、スリの男の生活は、今にはないその時代背景が感じられて興味深かった。
互いに不平等な資本主義に向う日本に対しての反感を抱いていることで仲間意識を持つ。
ある意味、真面目に社会のあり方を考えている彼ら。
ラストは、意外とあっけない結末。
しかし、それも仕方ないか?と思わせるそれまでの流れ。
そして、現在の日本の状況を考えたら、この結末は、闇に葬られた事実として、逆にリアリティあるかもなぁ~とも思いました。
犯人が警察に送る犯行声明文の名前が「草加次郎」。
ん?ちょっと聞いたことあるなぁ~と少し調べたら、実際の連続爆弾事件の犯人が名乗っていた名前なんですね?
こちらは、迷宮入りなんだそうですが・・・。
東京オリンピックの頃の日本にタイムスリップしたような感覚(まだわたしは生まれて数年ですが・・・^^;)にもなりました。
冒険ふしぎ美術館へようこそ。
ここは、謎に包まれたふしぎなできごとが起こる場所だ。
きみも、あのレオナルド・ダ・ヴィンチの人生や
アイデアについて、おどろくべき事実をいくつも
発見できる。
(本の表紙裏の解説文より)
先日、次女と映画「ダヴィンチ・コ-ド」を見て、気に入った様子だったので、図書館で次女の為に借りてきました。
早速、読んで「おもしろい!お母さんも読めば?」と言うので、読みました。
美術館見学にクラスの子どもと訪れた少年が、館長さんのトナテッリさんが怪しげな二人組みに何やら脅されているのを目撃するところから物語が始まります。
館内の宝を守るために暗号を解読しながら物語が進みます。
これは、ダヴィンチの数多い謎のいくつかを楽しめる本で、子ども用に分かり易く解説されたものなのですが大人でも十分、満足できる本でした。
既に知っている謎もありますが、鏡文字を解読しないと答がわからないようになっていたり、一工夫あるのが面白い!
あらためて、自分が既に知っていることを確認しながら、また時々「へ~そうなんだ?」みたいな知識も得ながら読み進めて行きました。
巻末にちゃんと付録で、鏡文字を解読する手助けになるアイテムが付いているので、字の読めるお子さんなら楽しく遊びながら解読できそう。
図書館で借りたものなので、実際は作れませんでしたが、工作の付録も付いていて、何倍にも楽しめる本だなぁ~という印象。
こういうのがキッカケでダヴィンチの絵画をより深く楽しみ、他の絵画にも興味が沸きそう。
ちなみに訳者の越前氏は、「ダヴィンチ・コ-ド」「天使と悪魔」(ダン・ブラウン/著)の訳者でもあります。
発行年月:2005年7月
「私が愛されたことの、
しるしが欲しい」
1964年サウスカロライナ。父親のもとを飛び出し、養蜂家の
黒人姉妹が住む家にたどりついた、
リリィ、14歳の夏・・・。
(本の帯文より)
映画では「リリィ、はちみつ色の秘密」でしたか?
ちょっと気になっていた映画で、見そびれたままだったので、図書館からその原作本を借りました。
4歳のとき、母親は事故で亡くなったと聞かされていた。
が、かすかな自分の記憶は・・・・銃が床にあり、母親が倒れていて、銃声も聞いた。
そして、その銃を自分も触った記憶。
お母さんを殺してしまったのは、わたしなの?その罪悪感から離れられないでいる。
母親が亡くなったあとは、父親と暮らしてきた。
だが、それは父と呼べるような人でなくリリィは「T・レイ」と呼んでいる。
リリィの面倒をずっと見てくれたのは、黒人のロザリン。
ある日、父親から「おまえを捨てたのは母親だ。死んだ日は、ここに荷物を取りに来ていた」と聞かされたリリィは、両親のどちらからも自分は愛されていなかったんだとショックを受ける。
その年、アメリカ大統領は公民権法を発効させると発表。
ロザリンは街に出て、黒人にもそれが適用されるのか?まずは選挙権登録をしようとする。
リリィは、一緒に連れて行って欲しいと頼み、父親にナイショで家を出る。
が、その先で事件が起こり、ロザリンは警察に連行されてしまう。
リリィが機転を利かせ、なんとかロザリンを警察の手からから連れ出し逃亡。
そして、行き着いたのが、黒人の3姉妹で暮らす養蜂家の元。
行き場がない事を話すと長女のオ-ガストが快く受け入れてくれる。
次女のジェ-ンは最初は冷たく接していたが、次第にリリィたちを受け入れてくれる。
三女のメイは、繊細なゆえ心を病んでいるがリリィたちには優しい。
他に、メイと双子のエイプリルが居たが、15歳のとき、黒人差別による無気力感からうつ病になり自殺している。
メイが心を病んだのは、エイプリルの死が原因。
そんな3姉妹と暮らしながら、蜂蜜づくりの手伝いに毎日、忙しく過ごすリリィ。
同じように蜂蜜づくりに関わる黒人少年・ザックとも心を通わせるが、黒人ゆえに哀しい事件に巻くこまれるザック。
まだまだ、不平等なアメリカ社会を痛感する出来事は哀しいが、逞しく立ち直る彼のその姿は感動する。弁護士になるのが夢だと、その夢に向かって進もうと強い意志をリリィに語る。
小説家になるのが夢と言ったリリィに綺麗なノ-トをプレゼントしたり、二人の様子が微笑ましい。
両親の二人に愛されていなかったと悲観するリリィだったが、偶然にも母親がこの地で暮らし3姉妹とも顔見知りであった事実が明かされ、自分の知り得なかった母親の事を知らされる。
そして嫌いだった父親にも以前とは違う気持ちで向き合えるようになったリリィ。
読み始めた最初は、重苦しい話かと思いましたが、最後は明るい終わり方で良かった!
リリィの家族以外は黒人が多いのですが、皆、前向きで、明るい。
辛いことが度々、起こるのですが、その度に皆で支えあう人たちには、何か勇気をもらったよう。
蜂についてのちょっとしたウンチク話も勉強になりました。
今度は映画をみてみようかな?
とても良いおはなしでした♪
★★★★
京都の大学から、遠く離れた実験所に飛ばされた男子大学院生が一人。
無聊を慰めるべく、文通武者修行と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。
手紙のうえで、友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れ--------
(本の帯文より)
森見さんの独特の世界観が大好きです!
他の作家さんにはない世界を今回もたっぷりと堪能させていただきました!
言葉の使い方本当に上手い!語彙力は、抜群です!!
今回は、可笑しい手紙の連続。
最初から最後まで、手紙のみ。
主人公の守田一郎が宛てた相手は・・・・
・小松崎友也・・・・・三枝マリに恋するマシマロ化(マシュマロが好物)した友
・大塚緋沙子・・・・・守田と小松崎の先輩で、類まれなき美人ながら怖いものなしの肝の太さで後輩いじめが趣味のような女性
・間宮くん・・・・・小学4年生で、かつて守田が家庭教師をしていた少年。
・森見登美彦・・・・学生時代、同じクラブに所属していた知り合い。
・守田薫・・・・守田の妹。高校三年生。
・伊吹夏子・・・・・守田が恋文の技術を駆使して綴る相手。
他にも、飛ばされた能登の研究所でクラゲのエキスパ-トとして守田を厳しく指導する谷口。
守田の手紙の中に登場するだけの↑のメンバ-なのに、それぞれの人の特徴が実によく表されていて人物像が自然と頭のなかに浮かんで来るのが面白い。
著者の森見氏が物語りに登場するのもなんとも愉快。
主人公の知り合いとして、手紙の相手で登場するのだが、守田が森見氏に書く手紙がまた可笑しい。
「どんな美女でも籠絡するような手紙の奥義を教えて欲しい」と送る守田に来た返事が「恋文を書く技術はない。ただ真心をこめて書くのみ」の返事を送ったという森見氏。
守田は、物書きのくせに・・・・と少しアテが外れた感を抱くのですが・・・・
わたしはこれ、結構、良いアドバイスじゃないかな?なんて思ったりして・・・・笑
そして、手紙を送る相手の女子たちが、揃いも揃って、森見登美彦氏の小説を愛読しているという設定もいいなぁ~。
もう、楽しんで書いてますね・・・・・笑
三枝さん、伊吹さん、守田の妹・薫で結成された「大日本乙女曾」という会。
わたしも入れていただきたい!なんて思ってしまいました^^;
能登にいる主人公ですが、手紙の相手は京都にいる。
そんなわけで、今回も京都のあれこれが出てきました。
気になる食べ物、今回も登場!
ぷくぷく粽、あじゃり餅、三嶋亭のすきやき、猫ラ-メン
どんなのでしょう?本当にあるものは?
そうそう、能登の天狗ハムも気になりました。
最後に守田が憧れる伊吹さんに書く恋文・・・・なんと其の9まであるのですが。
その失敗書簡集(特に其の四)は、笑えました。
こんなの要らん(特に其の四)!!(怒)とういうのもあったりして。
書いた手紙の後ろに【反省】があり、いちいち自分で書いたものについて突っ込み入れたり。
何か強い想いを相手に文章で伝えるって、本当に難しいのだと思います。
書いているうちに「あれ?こんなこと言いたいわけじゃないよな~」って思えて、もう一度書き直してそれでもやっぱり納得いかなくて・・・・。
今は便箋に言葉を綴って相手に送るなんて事はあまりなくなった時代だけど、自分が若い頃は、こんな思いしながら手紙を書いていたなぁ~なんて事も思い出したりして。
最後に守田が伊吹さんに送った手紙は、素直に思ったことを書いたものという事かな?
でも、ちょっと長いよ・・・・・^^;
兎に角、楽しいお話(お手紙)でした!
今まで森見さんの本、読んでみたけど、ちょっと入り込めなかったという方もこれは楽しめると思うけど。。。。どうでしょうね?
★★★★★
あたし、大西葵13歳は、
中学2年生の1年間で、人をふたり殺した。
(本の帯文より)
衝撃的な帯文!
中学2年生で殺人?しかも2人?
葵は、学校では明るくて、ひょうきん者。
それは意識してそうしているだけ。
家では、心臓病を患ってるのを言い訳に母の再婚相手(義父)が昼間から酒びたりで怪物のようにのさばっている。
葵の友達、颯太だけは以前から自分の苦悩を理解してくれている。
颯太の父親もアル中。
そしてとうとう、葵は義父を殺してしまう。だが、元々心臓が悪かったので、病死扱い。
だが同級生の静香は、事実を知っている。
静香が「わたしも殺したい人がいる」と告白し、葵と静香は、妙な連帯感を持つ。
学校では目立たない風貌の静香だが、実はそれも意識してそうしているだけ。
葵と静香、二人の家庭環境やら、育ってきた境遇は、普通とは違う。
人を殺したいと憎んで、本当にそれを実行する少女たちは残酷だが、淡々とした行動のなかには罪と感じていないような、変な明るささえあり、その辺が怖い。
人を二人殺すことは、特別なことだけど、二人の少女が育ったような環境でずっと何かに圧迫されるように生きてきたら、もしかして人は誰でもこんな風に思ったり、行動しちゃったりするのかも・・・。
少女たちの苦しみがよく描かれていました。
ラストも救いがあるのか?ないのか?分からないのですが、二人の少女はどこかでホッとしているかんじ。
罪なことをしてしまったという認識はあったのでしょうね。
やるせないかんじ。
殺人を犯す前に誰かが守ってあげられなかったのが可哀相。
重たい話です。本の表紙が爽やかなことだけが救いでした。
でも、物語としては、面白かった!
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;