発行年月:2007年1月
人生には4つの小さな学校(スコ-レ)がある。
家族、恋愛、仕事、そして---------
骨董品店の三人姉妹として生まれた麻子は、欲しいものを人と最後まで争ったことがない。すぐ下の妹、七葉のように欲しいものを人に渡さないほどの執着がない。親友のように仲のより七葉は美しい子で、そのため子供の頃から可愛さで勝負することはあきらめていた麻子だったが、骨董店で父親から美しいものを見せられて育った審美眼が認められ、繊細な感受性を持った女性に成長していく。
丹念に重ねられた日常の描写から立ち上がる瑞々しさに定評がある著者初の書き下ろし長篇。
(光文社HPより)
宮下さんの作品は前にも2つほど読んでいるかな?
心理描写がやはり上手い!
物語は4部制で、麻子の成長を順番に追う形。
NO・1では、中学生になったばかりの麻子。姉妹のなかでは大人しく、すぐしたの七葉のように強く主張したりは出来ない。なんだかどれを取っても七葉には負けている感が強い麻子。
一番下の妹、沙英とは年がかなり離れているので、いつも面倒を見てあげるべき子と思っている。
友達の好きな人と自分の好きな人が同じ!?と少々、複雑な心境になったり。
要するに、良い子なのです。麻子は。
そして長女らしい長女かな?
NO・2では、共学の公立高校に進学した麻子。
いとこの槇にちょっぴり恋心を抱いたり・・・・・でも妹の七葉も同じ気持ちなのだと気づいて、またまた複雑な心境に陥る。
NO・3では、国立大学の英文科に進学した麻子。
七葉から離れよう・・・いつまでも負け続けてしまうという思い。
初めて男子から「可愛い」と言われてもすぐに本気にせず・・・何十回目に同じように言われて初めて向き合い付き合うことに。
そうそう!男子がこのくらい強引なくらいじゃないとダメね、この子は・・・なんて思ったりして^^;
卒業後は、貿易会社に勤め、いつのまにか恋人は別の人に。
この男子も告白したみたいで・・・・あれれ?本人が思うのと違って、魅力のある子なんだ!と気づく。
しかし、週末も仕事でなかなか恋人と会えず・・・・「このままの状態が続くなら。。。仕事を辞めれば?」の言葉を境になとなく溝が出来たかんじで付き合いは消滅。
自分も好き!と強く思える相手には、まだ出会ってないんでしょうね・・・・。
現場を先ず学ぶの会社の方針で靴屋の販売員として2年働く。
職場の人たちに恵まれ、最初はうまく溶け込めないが少しずつ、仕事の面白さを実感していく過程が良かった!
NO.4では、会社の本社に配属が変わり、靴屋の現場から事務仕事に。
ここでも最初は要領を得ず、四苦八苦の日々。
しかし、真面目に取り組み、あるとき、イタリアの買い付けに同行することが決まり、上司たちとイタリアに。
彼女は靴の買い付けを任される。
不安いっぱいでの買い付けだったが、2年間靴屋で培った販売の経験が役立ち、途中からは、買い付けが楽しくて仕方なくなる彼女。
それを同行していた先輩が見ていて褒めてくれる。
自分のことを見ていてくれる。わかってくれていると思える男性がそばにいてくれるっていいな~。
初めて、麻子自身が好きだと思える男性かな?このまま上手くいけばいいのになぁ~と思いながら読んでいました。
そしてラストは、本当にステキ。
ず~っと読んでいると彼女の頑張りを見守り続けた応援者の気持ちになるので、彼女には、きっと幸せな未来が続いていくんだと思える感じは嬉しかった!
★★★★★
ねえ、覚えてる?空から蛇が落ちてきたあの日のことを---
本と映画と音楽・・・・・それさえあれば幸せだった奇蹟のような時間。青春小説の新たなスタンダ-ドナンバ-誕生!
(河出書房新社HPより)
楡崎綾音、戸崎衛、箱崎一、3人は高校の同級生。
高1の夏、授業である町の聞き取り調査をするが、そこで不思議な光景を目撃する。
上の方から蛇が落ち、下を流れていた川を泳いでいく光景。
やがて、彼らは大学に進学する。偶然にも同じ大学。
しかし、それぞれが別のサ-クルで活動し、会うのは、たまに。
物語は三部構成。
第一部は、綾音が一人称で語る。小説家になりたいと思う女の子。
第二部はジャズに打ち込む衛の話を第三者が語る。
第三部は卒業後は映画監督になった一がインタビュ-を受けるなかで思い出す学生時代の話。
それぞれの話のなかで、ほかの2人も出てきて、段々に3人の関係がどういうものだったのか想像できるのが面白かった。
表題の「ブラダ-・サンシスタ-・ム-ン」は、高校時代、3人が初めて一緒に映画館でみた映画の題名。
イタリアに12世紀に生まれた守護聖人、聖フランチェスコの若き日々を描いた映画だそう。
どんな映画でしょう。
綾音は見ながら怖がっていたみたいだけど。。。
学生時代の3人の暮らしぶりが描かれているだけの物語なので、他人から見たら取り留めもない物語。
でも、こういう取り留めのない日々の連続も過ぎたあと、振り返ると今の自分をつくる基になっていたりするのかも。。。
三部で映画監督になった一がインタビュ-を受けながら思い出す学生時代の日々の話を読みながら何となくそう感じました。
ここには、3人の学生時代、小説、音楽、映画に夢中になるそれぞれが描かれていましたが、これは著者の恩田さんの学生時代とも考えられます。
ファンの一人として、それを想像しながら読めたのは楽しかった!
1969年1月2日、悦子の二十歳の誕生日。
この書はその日から立命館大学の三年生に進級し、学生運動に参加した同年6月22日までの学生生活を主に綴った彼女の日記。
最後の日記を記した二日後、6月24日鉄道自殺。
もうかれこれ20年以上前にこの書を読んだ記憶。
そのときは、彼女の年に近かったので、同じような年齢なのに、随分、大人びた考え方をする人だったんだと感心すると同時に、綴られる言葉が独特の雰囲気で、高貴な感じすら覚え、ちょっと憧れた覚えもありました。
今年になり、大学ノ-トの様な表紙の新装版が発行されたのを知り、図書館で既にあるこの書を借りて読んでみました。
20数年前に読んだ時の感想とやや違う感じを得たことに、気づきました。
年を取ったということでしょうけど・・・。
今回は、本人の気持ちに寄り添うよりも、第三者的、母親のような気持ちで読んでいる自分がいて
こういう時代に生まれたが為に抱えた苦悩だったのか?
あまりにも繊細な自意識が彼女を追い込んでしまっている哀しさを強く感じました。
1960年代は、全国各地で学生運動がさかんに行われていた時代。
まだ幼かったわたしでも、なんとなくニュ-スで見ていたので、ヘルメットを被り、何やら捧のような物を持ち、機動隊に向かう学生たちの姿を記憶しています。
著者もその学生運動に参加するのですが、その活動を支持する側、そうでない側、どちらに行くべきか悩んでいる。
しかし、結局は、はっきりした態度を取らなきダメなんだ!と思い、前以上に運動に積極的に関わる。
運動そのものを支持するからというよりは、周りとの調和を考えての行動だったのか?
アルバイト先の男性と恋愛関係になるが、男性には、ほかにも恋愛関係の女性がいて、失恋。
日記には、その後も未練が残っているような事が記されている。
学生運動をしながら、社会に対して、人間関係に対してどんどん孤独を感じる彼女。
痛々しい。
若い頃、読んだときは、その部分にやや寛容に共感できた部分が今は、痛々しいとしか言えない。
彼女の選んだ自殺は愛してくれた家族を深い哀しみに陥れてまでする我がままな行為とするのは酷すぎるかもしれないけれど、この年齢で読むと、そんな感情が強く沸いてきます。
自分が2人の娘を持つ、母親という立場にいることが大きいと思いますが。
最後に遺した詩は、胸に響きます。
これは、若い頃にも同様に響きました。
本の最初に載っている、明るい笑顔を読み終えた後、再び見ると、泣けてきました。
素晴らしい詩を書く彼女の感性。
生きたまま、その感性を生かして、もっと沢山、違う物を書いて欲しかった。
自ら、死を選んだことが残念でなりません。
発行年月:2008年10月
慰めなんかいらない。
癒されなくていい。
欲しいのは、星の距離感。
これは天文部に集うスパイたちが、最前線で繰り広げた戦闘の記録。
(本の帯文より)
高校の天文部員4人
自分たちの集まりを、ほかでは決して結びつきそうにない組み合わせだということから、秘密の仲間、スパイみたいだという話になり、コ-ドネ-ムを考えよう!と。
以下はコ-ドネ-ムとその由来簡単な紹介です。
ブッチ=黄田川裕一(部長。体格が良い。家は農家。デリバリ-ピザのバイトをしている)
ギイ=安田朱美(どうみてもギャル。飲食店でバイトをしている。コ-ヒ-を淹れるのが得意)
ゲ-ジ=青山孝志(ア-ティスト(芸実家)臭い。個性的なラテン顔。言葉の最後に付ける言葉が特徴的)
ジョ--中島翠(ぱっと見お嬢様。ク-ル。女に学問など必要ないという父親に反発して勉学に励む優等生)
活動内容は、天体観測が主。
つまり、夜に不定期に集まって夜空を眺めるだけの緩い部活動。
毎日、会うわけでもないので、その他のときには、クラスも別々なので各自、別々の行動。
お互い、友達もほかに居たり。
でも、そんな彼らが集まれば、楽しい雰囲気が自然と出来る。
お互いが、抱えるちょっとした問題を近くに居る人には隠していても、ふと漏らしたり。
そして、その気持ちを共有してあげられる関係。
理想の人間関係。心地よい場所になってゆく。
そんな様子を読んでいて、いいなぁ~と思いました。
学校内で起きる、ちょっとした事件を仲間で推理し、解決するのも楽しかった。
そんな様子から、彼らの本当の姿が見えました。
天体観測をしながら、毎回、登場する夜食がまた美味しそうで・・・笑
なかでも小学校のとき、ボ-イスカウトで学んだというゲ-ジの作るリッツに火であぶったマシュマロと板チョコを挟んでアツアツを食べるのは、ちょっと真剣にマネしたくなりました(笑)
アメリカの子どものキャンプでは定番のおやつだそうですが、ゲ-ジ流には、塩気のあるリッツでアレンジしたとか。
美味しそう!!
最後は、高校を卒業した後の彼らの様子が出てきて、みんなそれぞれの道に向かって歩み始めた姿がわかったのも嬉しかった!
彼らのその後を応援する気持ちで本を閉じました。
大人が自分の学生時代を振り返りながら読むのも楽しいし、今、学生の人が読んでも楽しいお話だと思います。
★★★★
エネ研、ソ-ラ-カ-、大潟村 太陽の光に導かれて、
淡い恋が始まった------。
ソ-ラ-カ-レ-スにかける高専生たちの青春!
(講談社HPより)
毎回、いろいろな場面で青春を謳歌する学生たちの清々しい姿を描いてくれる濱野さんの作品。
今回は、高専生。さきたま高専の生徒たちの青春物語。
その高専生の部活動(エネルギ-研究会 ソ-ラ-カ-研究部)の話。
何人か生徒達が出てきますが、主人公は、澄川怜。
高専の3年。
頭も悪くないし、手先も器用。何でもあまり努力しないでそこそこ出来ちゃう。
羨ましいような気もするけど、本人はそれゆえ、何を将来したいのか?本当にやりたいものはナンなのか?わからないでいる。
彼の姉は、そんな彼を器用貧乏という。
そんな彼が、同級生(留年してるけど)に器用を見込まれて、手伝って欲しいと連れられた先でソ-ラ-カ-に出会う。
最初はただ友達の頼みだから・・・という受身的感覚だったのが段々、仲間と関わり、ソ-ラ-カ-のレ-ス出場に向かううちに自身も熱くなる。
そんな生活のなかで、自分の将来の道も少し見えてくるラストは、よかった。
太陽のエネルギ-で走るソ-ラ-カ-。名前は「レッドシャイン号」。
地球の環境問題、エコの話を彼らがするのも興味深かった。
悪い事じゃないし、考えることは必要だと思うけど、取り組んでいることには矛盾も結構あるよね?という話。
余裕のある人しか取り組めないようじゃ変だよね~みたいな箇所では
「そう!そう!」とうなずいちゃった。
高専って、あまり実態は知られてないかな?
わたしは、弟が、実は高専出身なので、学校内や寮生活の話を、たまに聞いていて少しだけ知っていたこともあり、その様子を垣間見られた感じが面白かった。
恋の話もちょっとあったりして、そちらも爽やかでいいかんじでした!
そういえば、弟が学生の頃は、ロボコンとか、ソ-ラ-ボ-トの大会の話も出たっけ。
ソ-ラ-カ-の大会の話はなかったけど、いろいろな大会があるんでしょうね。
今回は、主に男の子たちの青春を描いたものでしたが、女子でも楽しめるお話だと思います。
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;