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読んだ本の感想あれこれ。
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b0e31ff1.jpg発行年月:2009年6月


私ねえ、欲望の愛弟子なの。

4人の少年少女たちの、生と性の輝き。
そして、いつもそこにある、かすかな死の影。

山田詠美の新たなる代表作

                      
(本の帯文より)

タイトルの「学問」から連想すると・・・堅苦しいお話?とも思いますが、
帯文の「欲望の愛弟子」を見ると・・・・官能っぽい?

そして、読み始めると、最初にあるのは、雑誌掲載された一人の女性・香坂仁美の死亡記事。
享年68歳。

その後の文では、ガラッと雰囲気が変わって、仁美が東京から転校し、静岡県のとある場所にある小学校の同級生たちとの日常が描かれる。
大人からも子どもからの人気者の心太(ところてんとも読むから・・・てんちゃん)
心太のことを好きな千穂(チ-ホ)
病院の跡取り息子で食いしん坊の無量(ムリョ)

ほかにも可愛くて、頭も良いけど、ちょっと自己中心的な素子やら、学校の先生たちとの関わりも。
彼らが1962年生まれという事、静岡県ということで、私自身との共通点がある為、
おやつの うなぎパイやら源氏パイとか彼らが話す方言「~だら」「~じゃん」「ひずるしい」などを読むと自分の小学生時代とだぶりました(笑)

そんなのんびりした日常の中で、ふとした瞬間に気づく体の奥深くで感じる「得体のしれないもの」。
仁美の視点で性に目覚める少女のリアルな様子が新鮮。
大人の「性」にまつわる話にはない、不思議なかんじ。
男の子のそういう話(書きにくいなぁ~^^;)は、意外と今までも読んだ事あるけど、女の子の・・・仁美自身もそれをなんと言っていいのか分からず「儀式」と呼んでいました。
彼女の言葉を借りて。。。。その儀式の様子がリアルに書かれているわけです。

子どもなので、それがどういう意味があるのか?不思議で心太に話したり、みんなで考えたり・・・その事を知ってる大人にとっては、赤面しちゃうような言葉だったりするのですが、子ども達は、純粋な気持ちで「なんだろね?」と言ってる。


物語は彼らの小学生~中学生~高校生の出来事を断片的に追ってゆくのですが、途中で一人ずつ冒頭の仁美ような死亡記事が載ります。
亡くなった年齢もバラバラですが、経歴などを見ると、大人になり、それぞれが、立派な社会人に成長したことがわかるものです。

多くの事を学びながら、きっと有意義な人生を歩んだんだなぁ~と思えました。


最後の最後、仁美と心太の子どもの頃に戻っての会話が、なんとも言えず良かった!

山田さんの作品、「風味絶佳」以来、久しぶりに読んだけど、やっぱりいいな!

★★★★★

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86332184.jpg   発行年月:2006年10月(第1刷)


   米原万里 全書評1995-2006
   
   絶筆となった壮絶な闘病記(「私の読書日記」週間文春)を収録した最初で最後の書評集。

   第一部 私の読書日記
   第二部 書評 10年間に執筆した書評140編を収録!

                                     
(本の帯文より)

主人から「本好きなら、凄く面白いと思うよ」と薦められて読みました。

米原真里さんは、テレビで何度か見たことがあり、頭の良い方だなぁ~という印象でしたが、2006年5月に亡くなっていたのは、この本を読むまで知りませんでした。

そして、この書は、闘病生活を送りながらも書き続けていた読書日記と140編の書評から成っています。
「読書日記」を読むと、米原さんと言う方の人柄がよく伝わります。
読んだ本に関するちょっとしたエピソ-ドもあり、結構、お茶目でユ-モアのある方だったんだなぁ~などと新たな発見もありました。

「打ちのめされるような・・・・」と表題がありますが、友人が、ある本(海外の作家)を大絶賛し薦めるので、それを読んだ後、確かに、面白いけど、これに似た感じでもっと凄いのが日本にはあるじゃない!
と逆にその友人に「これを読んで打ちのめされなさい!」という逆にある本を薦める場面が印象的!

その米原さんが「打ちのめされなさい」と仰った本は・・・丸山才一の「笹まくら」

恥ずかしながら、作家さんの名前すら知りませんでした。
米原さんの言う「過去の名著を顧みない若者が多い」と叱咤されちゃう一人です・・・^^;

近いうちにこれは読まなくては!とメモしました。
他にも何冊か、メモをしてあるので、そのうち読みます!!

本の事以外にも、ロシア通訳者ということで、難しいロシア情勢についての話、当時の小泉政権に関する厳しい批判なども書かれていました。


兎に角、この書は勉強になることばかり。
手元に置きたい!
文庫本も出ているようなので、購入しよう!
そして、付箋を貼りまくろう!!赤ペンでチェックしながら・・・・再読しよう!
そんな本でした。

でも、癌に侵され、闘病の日々を綴った部分もあり、なんとも切ない気持ちになりました。
こんな知識と素晴らしい筆技を持ちながら、56歳で逝ってしまったとは!
すごく残念です。
ご本人が一番、無念だったでしょう。


素晴らしい本でした。
この本、そのものが 打ちのめされるすごい本でした!

★★★★★
757f7712.jpg   発行年月:2009年1月


   私はまだ“本当の自分”と出会っていない

   女として人生が終わる前に性愛を極める恋がしてみたい。
   35歳脚本家・高遠奈津の性の彷徨が問いかける
   夫婦、男、自分自身

                        
(文藝春秋HPより)


発売当初から話題の書でしたね。
図書館予約でも結構、待ちました。

表紙写真(?)に、まずはビックリ!
これは人前で読むときには膝に表紙を置いて読まなきゃ^^;

肝心のお話は、脚本家の奈津は元ドラマ制作に関わっていた夫・省吾と子どもは居ないが二人で仲良く暮らしていた。
今は家庭の雑事を全て引き受け、仕事に没頭出来るようにしてくれる夫には感謝しつつも奈津の書き進める脚本については、昔同様、一番にチェックし、厳しい評価を下すのが常で、それについて不満がある。
しかし、争い事を抱えるのがイヤで夫に管理され束縛されることに辟易しているのも関わらず、穏やかな夫婦関係を保とうとしている。

そんな葛藤のなかで、自身の師と尊敬する、演出家の志澤一狼太と会話(メ-ルが多いけど)するうちに、やはり自分はこのままではダメだ。
志澤に言われた
「穏やかな生活を続けるうちは、大した作品は生まれない」の通りなのでは?と
ついに夫に本音をぶつけ、夫の元を出奔。

それからの奈津は凄かったなぁ~。

志澤との性愛シ-ンもかなり激しかったけど、これは激しすぎて、逆に色っぽくなかった^^;
でも、その後、大学時代の先輩・岩井、元精神科医の僧侶・祥雲、俳優の大林
と次々に・・・・

村山さんの作品は、過去に数冊読みましたが、どちらかというと清純物語。
こういう作品は書かない人だと思っていたので、驚きです。

主人公の奈津は脚本家。
どうしても著者本人の経験によるもの?主人公=著者のイメ-ジを読み手は頭に浮かべてしまう。
そういう事を勿論、覚悟のうえでの作品なのだと思うと、その事に対して敬意さえ覚えてしまう。


奈津のように、次々と性愛を求める女性について、共感出来ないけど卑下する気持ちは全くないです。
奈津も自分自身のなかにある覚悟を持って行動している事ですから。
潔さみたいなものも感じました。


いや~恐れ入りましたというかんじです。

賛否両論ありそうですが、わたしはこの作品、すごく良いと思いました!
これからの作品も今まで以上に期待したい!


★★★★
bf85488a.jpg発行年月:2009年3月


開業医として働く月川夏子は、大手出版社社長の智之と結婚して7年。
夫の前では、愛されるしっかり者の妻を、智之と亡き先妻との娘・りえの前ではおおらかな継母として頑張ってきた。
しかし、ある日、りえの親友の兄という青年・旬に出会い、自らの心の中を見つめ直すことになる。
読売新聞掲載小説



結構、厚い本でしたが、読み始めたら一気に読み終えました。
主人公の夏子は45歳。
先妻との娘・りえは大学院生で、婚約者がいる。

娘が婚約者と、最近仲良くなった女友だちとその兄を連れて家で家族が集まる場面からスタ-トする物語。
たわいもない楽しい会食のなかで、ちょっと変わった雰囲気を漂わせる娘の親友の兄・旬。
美しい容姿だが、どこか寂しげな影のようなものを感じる。

予想どおり、この物語はやがて、旬と夏子の関係に焦点が置かれて行くわけだけど、その周りの家族にもやや不穏な展開が・・・・。

旬という青年の育った生い立ちには、切ないものがあり、自分の中にどこか空虚感を抱いている。
夏子は、当初、そんな旬の様子に警戒感を持つが、言葉を交わすうち、自分のなかにある封じ込めていたような思いに気づかされた様子。

夫の亡くなった先妻と、その娘の存在。
自分の家庭でありながら、どこか自分の本当の居場所とは違うような違和感を時々、感じること。
そんな気持ちを旬には見透かされているような恐れ。

旬の起こす行動は、途中から異常なものになるけど、それも本人にとっては、切実な対処方法だったのか?と考えると、ちょっと母性本能を刺激されちゃう面もあったり・・・。

夏子と同年代のわたしには、彼女の行動などが理解出来るものであったので、最初から最後まで感情移入しちゃいました^^;

でも、今回のお話は、新聞の連載小説だったせいか、性描写はとても控えめ。
それもかえって良かった!


★★★★
4e1398ae.jpg発行年月:2008年2月


地方都市の映画館でアルバイトを始めた恵介。そこで出会った映写技師の杉本ルカは、外に一歩も出ることなく映写室で生活しているらしい。バイト採用の条件は不可解な三つの約束を守ることだった。
一、ルカの過去について質問してはいけない。
二、ルカは月曜日になると神経質になるから、そっとしておくこと。
三、ルカとの恋愛は禁止。

         
             (本の帯文より)

先日読んだ、「空をつかむまで」が良かったので、同じ著者のほかの作品も読みたくて、図書館の棚にあったのを借りてきました。

主人公の恵介は、教師になる夢を持つ、大学生だが、学費が払えなくなる事情により一時休学として学費を稼ぐためアルバイトを始める。
時給1500円という魅力的な金額で決めたアルバイトは、映画館の映写技師の手伝いをするものだった。
その映写技師は、自分と同じ年齢21歳のルカ。
他の従業員の話では、3年間、外に出ず、映写室で生活をしているのだとか。
彼女の過去には何が?疑問に思いつつも最初の約束項目にあるので、聞けず・・・。

映写技術を少しずつ学ぶ恵介。
ルカとの関係は、いろいろ指導してくれるルカに対しては「技師長」と呼び好意を持ちつつも節度ある態度の恵介。
その真面目で、人を思いやる気持ちの良さが心地よく、ルカも仕事面でも人間としても信頼をおくようになる。
そして、ルカも恵介に対して好意を抱く。

でも・・・そんな良い感じのところで、ルカを傷つけたウルシダレイジが登場。
この男が、嫌な人で・・・・
外見はモデル並で頭も悪くないそうですが・・・最低な人なのです。
思い出しても怒れる!

ちょっとワケ分からないうちに存在が薄くなったのは、嬉しいけど
「あれ?」って少々思いました。
執念深い奴なら、今後また現れるんじゃないかとドキドキしていたのに・・・。
ま、いいか?出てこられると腹立つし(笑)


ルカが最後、劇的な嬉しい変化を見せてくれたところは、感動でした!

恵介が言ったように
この人とだけはわかり合いたいと思って、必死に手を伸ばしたからこその行動なんでしょう。

ハッピ-エンドでよかった♪

★★★

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