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読んだ本の感想あれこれ。
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3de5130d.jpg発行年月:2009年8月


林芙美子、吉屋信子、永井荷風が描いた女中小説を一直線に繋ぎ、21世紀のAKIHABARAを閃光でつらぬく、昭和モダン異聞。

失業男とカフェ-メイドの悪だくみ・・・「ヒモの手紙」
令嬢と女中は戒厳令の夜に・・・「すみの話」
インテリ文士と踊り子は洋館で・・・「文士のはなし」

                 
(本の帯文より)


元の作品は全く知りませんが、面白かった。
以前読んだ、「FUTON]も田山花袋の「蒲団」を現代版風に打ち直しして書かれていましたが、これも現代版に。

90歳を越えている、老女・すみ子が語る女中回顧録というかんじで、物語が進む。
若い頃はカフェ-に勤めていたから、秋葉原のメイドカフェに来ると、懐かしい昔を思い出すのだとか。
昔はメイドと言えば・・・・亀井戸の私娼窟のことだったと、すみ子の解説。
すみ子に言わせると、アキバのカフェに居るのはメイドじゃなくて女給というらしい。

ヒモ男を嫌だと思いながらも、女に金を要求する手紙を代筆してやったり、奥さんが西洋人でわがまま娘が一人いる館に女中として通ったり、変わり者だと言われる物書き先生が一人暮らしの洋館に住み込みで働いたり。

すみ子さんは、いろいろな人と関わるけれど、深く立ち入った関わり方をしない。
薄情とは違うかんじで、変に慣れたりしない。
一人暮らしの物書きのところに住み込みで・・・と自分から言ったけれど、単にその方が便利だからかな?
作家の方もまた似た様な人みたいで、二人の男女としての関係はどうにかなるのか?なんて少々期待したりもしたけど・・・何もなく・・・・^^;
でも、なんだか、こういう関係が羨ましい。
変わり者同士だからか、お互いが居心地良さそうで。

女中だから・・・・と変に卑屈にならず、自分の思う事は述べるし、思ったように行動する、すみ子はなんだか格好いいな~なんて思って、読んでいて楽しかった。

最後は、ちょっと見方によっては、気の毒なのかもしれないけれど、彼女は別に不幸でもなかったんじゃないかな?

もっとすみ子さんの話が聞きたい!!
3つの話だけじゃ、物足りない!なんて思ってしまいました。

元作品も気になるなぁ~。
探して読んでみようかな?

★★★★
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63f5ed67.jpg発行年月:2009年3月


スラム、物乞い、ストリ-トチルドレン、売春婦の生と性・・・・・

1日1ドル以下で暮らす人々と寝起きを共にした
気鋭のノンフィクション作家が語る

第一部 スラム編
スラムの成り立ち、人々の暮らしと性・・・

第二部 路上生活者編
物売り、路上の犯罪・・・

第三部 売春編
売春形態と地域、性の国際化・・・

                                   (光文社HPより)

お友達がブログで紹介していて、興味を持ち、わたしも読みました。
「絶対貧困」という言葉の意味も恥ずかしながら、初めて知りました。
1日1ドル以下で生活する人だそうです。

路上に寝泊りして、少しマシになると屋根のあるところに寝泊り、その後、小屋のようなところと段階があるそうです。
著者は、ちょこっと見てきたというのではなく、実際に生活を共にしながらの取材というのが凄い!
危ない目にも遭うのですが、どこかユ-モラスで冷静に考えたら、怖かったりするのに、笑っちゃう場面も多々ありました。

「貧困」というだけで暗い影のようなイメ-ジで胸が痛くなるような悲惨なこともあるのですが、この文章に救われるかんじで最後まで興味を持って読めました。

大人も子どもも貧しいなかで苦労しているのですが、やはりストリ-トチルドレンが一番、どうにかならないものなのか?と考えちゃいました。
こんな平和な国に居て、彼らからしたら、天国のような環境にいる、わたしが何をどうしたらいいのか?なんて考えてもどうにもならない事なのに・・・。

ストリ-トチルドレンでは
幼いときに受けたことによるトラウマが大きな問題とか。
物心ついたときから、強姦されたり暴力を受けたり、親が目の前で殺されたり・・・・そんな大きな心の傷を抱えて孤独に生きる子達が、戦争が始まると、自分から兵士になって危険な最前線の戦地に赴く場合も多いそう。
何故なら・・・兵士になれば、一人の人間として必要とされるから。それが嬉しいんだと・・・(/_;)

第三部の「売春宿」の女性とその子ども達の様子には、ちょっと驚きの事実がありました。

こんな平和な暮らしをしている自分の価値観、モノの見方で考えたら違う事ってあるんだな。

こういう本は、多くの人が読むべきかも。

子どもには、いろいろな意味でちょっと刺激が大きい箇所もありますが・・・^^;

多くの事を学ばせてもらいました!


★★★



 
68885499.jpg発行年月:2009年9月


神の手を持つ医者はいなくても
この病院では奇跡が起きる。

夏目漱石を敬愛し、ハルさんを愛する青年は、
信州にある「24時間、365日対応」の病院で、今日も勤務中!


                
(本の帯文より)

著者もこの物語の主人公・栗原一止と同じく、信州の一地方都市の病院で働く現役の医師。

物語は、著者の経験した事を基に、地域医療に携わることの必要性など、自身の置かれた立場からの考えなどを記しているのかな?

堅苦しくなく、病院の患者さんと接する場面を見てもとても温かいものを感じました。
最先端技術を駆使した医療機械を使い、高度医療を日々行う医師も勿論、必要ですが、ここではちょっと違う。

病気を治すのは勿論ですが、病気そのもの以上に患者さんを一人の人間として診ている医師の姿がありました。

末期癌の安曇清子さん(78歳)との関係は、ホント、医師と患者の理想の姿でした!
泣けます!
ここまで医師を信頼する患者さんと、ここまでその人の一番望むものは何か?と考えての治療をする医師の姿。
読む人に、「あ~こんなお医者さんに自分も最期を診て欲しい!」と思わせます。


主人公の医師の病院を離れた場所での人間関係も素敵で、可愛い奥さんと、同じアパ-ト内の住人たちとの関わりがユ-モラスで温かいのです。
ちょっと変なんだけど・・・それも含めていいかんじ♪

夏目漱石を敬愛する主人公の為、物語の文はクラッシック。
きっと著者本人がそうなのでしょう。
著者の名前からしてね・・・・(^^)

初投稿の本作品で第10回小学館文庫小説賞を受賞だそうです。


続編もありそうということで、今後が楽しみな、お医者さまの作家さんがもう一人誕生しました!


★★★★

2e2c9880.jpg発行年月:2009年8月


筑後川の堰梁工事が始まった。
村人たちが総出で水門造り、溝梁造りに励む。
しかし、工事に不都合が生じたら、5人の庄屋たちは見せしめの為、磔になる。
土手にはいつの間にか5つの磔柱も同時に立てられていた。



いよいよ、一大工事が始まり、現場は活気付く。
しかし・・・川の土手に立つ、磔柱は不気味である。

そんな十字の磔柱を、見方変えて、庄屋の5人があそこで見守ってくれていると考えればいいんだ!という声で、皆の気持ちが楽になる。

ここでは、上下関係にある庄屋と百姓が互いを信頼している。
庄屋たちは、莫大な工事費用を集めるのに苦労し、百姓たちは、懸命に働く。

工事は順調に進むが、やはり起こってしまった事故。
5人の庄屋たちは、覚悟を決めるが・・・・・

そのときは、読みながら・・・予想はしていたことですが、辛かった。

ここでもやはり、上に立つものが下を庇う行為があり・・・・その決断は、辛いけれど、素晴らしいものでした。
泣けます。
遺した長い手紙の一字一字に想いが込められていて、涙なくしては読めませんでした。


最後は、工事の完成を祝うもので、嬉しい出来事もあり、満足感いっぱいでした!


筑後川の治水工事の歴史はこの後も長くあるようですが、この物語はそれを最初に始めた昔の人たちを描いた史実に基づいた物語のようです。

昔の人のこういう苦労があっての自分たちの暮らしが、ここに限らず日本各地にはあるのでしょうね。


新潮社のHPで知ったのですが・・・
帚木さん、これを執筆中に、白血病の診断で、治療していたとか。
ビックリしました。
入院生活(無菌室での治療)をしながらも筆をとっていたんですね!
今はお元気だそうで、安心しましたが。

★★★★★

38a4590c.jpg発行年月:2009年8月

筑後川の水を一年中、折桶する伊八と元助。川には沢山の水があるが、そうしないと田畑は涸れる。一方、大雨による増水時には田畑は水浸し。この川に必要なのは堰だ!先代からの苦労をここでなんとしても止めなくては・・・・。その思いに賛同した5つの村の庄屋が立ち上がる。

自身の命を賭けても、成さねばならないという強い決心で・・・。

 

時代は・・・・島原の乱で家族を亡くした話が出て来るので・・・・江戸時代1640年以降~?

筑後川流域に生活している伊八と元助が川から汲んだ水を桶で田畑に続く溝に流す作業(これを打桶というらしい)に励む姿から始まる。

川からの水が途絶えれば、作物は枯れるが、逆に大雨の後の被害では、田畑が流される。大雨の被害で稲がダメになっても年貢は納めなければならず、百姓たちは、自分たちが食べていくのにギリギリの暮らし。食い扶ち減らしの為に、年寄りが生まれたばかりの赤ちゃんと共に山に向かいそこで亡くなったり・・・

ついに5つの村の庄屋たちが、立ち上がり、先ずは藩に嘆願書を提出し、自分たちの声悲痛な思いを伝える。5人の庄屋たちの気持ちが凄い。

村人の代表として、命を賭け、財産も全て投げ打つ覚悟。

藩の役人もそんな5人の意気込みに心を打たれたようで、上巻の終わりは、一大工事の始まりか?と明るい兆しが見えてホッとした。

でも、反対する者も・・・。

下巻はどうなるんだ!?

帚木さんの文章は綺麗。

ちょっと馴染みのない言い回しが多いのですが、物語の面白さがそんなことは気にさせない。

むしろ、現代とは違う時代のお話なんだと、その雰囲気に浸れます。

 

★★★★

 

 

 

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