発行年月:2002年8月
医学ジャーナリストが描く迫真のミステリー
ウィルス研究医・仲沢葉月は、ある晩、外科医の夫・啓介と前妻との間の子が誘拐されたという連絡を受ける。しかし夫は別の女からの呼び出しに出かけていったまま音信不通、幼子は焼死体で発見された。痛み戸惑う気持ちで夫の行方を捜すうち、彼女は続発する幼児誘拐殺人事件の意外な共通点と、医学界を揺るがす危険な策謀に辿りつく----。医学ジャーナリストが描く、迫真の医療サスペンス! 第1回小学館文庫小説賞受賞作
今回は誘拐事件から始まり、その児童の遺骨が母親の元に届けられるという衝撃的な出だし。
最初からミステリ-の予感。
最初から、それがどう医療の話と繋がっていくのか?期待感いっぱい。
事件の真相を追うのは、外科医・啓介の妻・葉月。
感染症研究所のウイルス研究部門に勤務している医師。
誘拐事件と共に行方不明の啓介を探しつつ、亡くなった啓介の先妻との子ども・宏がかつて外国で臓器移植手術を啓介も関わるなかで行なわれていた事実を知る。
いろいろな謎を追う葉月。
医師としての知識、人脈を頼りに、明かされていく真相。
そこには、また衝撃的な事実が・・・あ~もうペ-ジをめくる手が止まらない!
面白かった!と同時に、臓器移植の実態は果たしてどうなのか?ここに書かれていることは実際にもあり得る事?
医師・啓介はここには登場してこないのですが、欲を言えば彼の苦悩した心情などの過程がもう少し描かれていたら良かったかな?
哀しい辛い決断をしたんだなぁ~と想像すると胸が詰まります・・・(/_;)
医師であり、医療ジャ-ナリストとしての著者の作品はいつも考えさせられる事が多く、
読み応えも十分!!
遊牧民のように京都に漂着し、留学生活を始めた僕は、対面朗読というボランティアを通じて、美しい盲目の女性・京子に出会い、恋に…。格調高くうたう官能的恋愛小説。第20回すばる文学賞受賞作。
(集英社HPより)
著者のプロフィ-ル
1962年、スイス、ジュネ-ブ生まれ。
ジュネ-ブ大学中退、同志社大学文学部卒。
1998年、テレビ朝日退社後、執筆活動に専念。
文章が綺麗。
読みやすく、外国の方が書いたとは思えないほど。
物語は、スイス人留学生が京都で大学生活(日本文学を専攻)を送るなかで、出会った盲目の女性・京子との恋愛を描いている。
かなり官能的な箇所はあるけれど、いやらしさはなく自然。
最後は、ちょっと切ないけれど、その途中にある二人の会話などは微笑ましく素敵。
京都というある意味特殊な環境で暮らす外国人が感じる戸惑いなどが随所に出て来て、なるほどそういう風に感じるんだ~なんて興味深かった。
そのひとつ・・・外国人を見つけると、わけのわからない英語(ヤンキ-・モンキ-・ト-ク)で話す日本人にはうんざりは、著者本人が感じていることかな?
盲目の京子との付き合いは、そういう戸惑いを感じさせない物だったけど、それは京子が盲目だったからかな?
性格的なものの方が大きい気がするけど・・・。
ほかにも幾つか出版されているようなので、ほかのものも読んでみようかな?
人形の名は りかさん
過去ある人形たちの声がきこえる。
ようこは自分の部屋に戻り箱を見た。お人形のおいてあった下には着替えが幾組かたたんであり、さらにその下のほうにもう1つ箱のようなものが入っている。開けると和紙にくるまれた、小さな食器がいくつか出てきた。「説明書」と書かれた封筒も出てきた。中には便せんに、おばあちゃんの字で、つぎのことが書いてあった。
『ようこちゃん、りかは縁あって、ようこちゃんにもらわれることになりました。りかは、元の持ち主である私がいうのもなんですが、とてもいいお人形です。それは、りかの今までの持ち主たちが、りかを大事に慈しんできたからです。ようこちゃんにも、りかを幸せにする責任があります』・・・・・・人形を幸せにする?・・・・・・どういうことだろうってようこは思った。どういうふうに?
(本の帯文より)
雛人形に関係ある人形のお話。
物語はある日、ようこのおばあちゃん(お父さんのお母さん)から、お人形のりかさんが送られてくるところから始まる。
ようこは「リカちゃん人形のリカちゃん」が欲しいと言う意味でおばあちゃんにリカちゃんが欲しいと言ったのに・・・とがっかり。
でも、すぐに、りかさんがようこの大切な存在になってくる。
お人形には魂が込められているとかよく聞くけど、それを裏付けるような物語でもあります。
ようこの元に送られて来た、りかさんはおばあさんとの長い時間を供に過ごし、その時の記憶を持って、ようこにいろいろと話して聞かせます。
人形が喋るというとちょっと不気味な感じもするけど、ここではごく自然な成り行きなので、不気味さは不思議と感じなかった。
りかさんは、ほかの人形の生い立ちなども教えてくれる。
お友達の登美子ちゃんの家で何やら悲しそうなお人形・汐汲みが気になり、真相を探るとずっと汐汲みが守ってきたアビゲイルという西洋人形の存在を知る。
歴史的な意味のあるアビゲイルの物語は切なかった。
日本にある使命を持って渡ってきたアビゲイルなのに、戦争によって酷い体験をした気の毒なお人形。
物は言わないけど、さぞ辛かったでしょう。
りかさんとようこによって、魂は少し穏やかなものになったかな?
ようこのおばあさんが話す事もとても心に沁みるものでした。
例えば・・・人形は吸い取り紙のように感情の濁りの部分を吸い取っていく。その技術が未熟だと人間の生気まで吸い取ったり、濁りの部分だけを持ち主に残してどうしようもない根性悪にしてしまうことがある。とか
人形遊びをしないで大きくなった女の子は癇が強すぎて自分でも大変。積み重ねてきた思いがその人を蝕んでいく。など
この本は図書館の児童書コ-ナ-で見つけましたが、大人が読む方が理解し易い本かも?と思いました。
とても素敵な本でした。
文庫本では、また違う話が収録されているそうなので、そちらも読んでみたいな。
梨木さんの本は(わたしにとっては)ハズレがないな。
昭和から平成にまたがる、女たちの宿命の物語
雪ぶかい地方で、高度経済成長時代に青春を過ごした2人の母親。
彼女たちの娘が停滞の次世紀に家庭を持った時、親族殺人が起きる
(文芸春秋HPより)
最初は、1980年代の話から始まる。
わたしにも懐かしい、ピンクレディ-とか出てきたり、キャンデ-ズや山口百恵なども次々解散やら引退などをした時代。
そういう話が出ると、その時期を自分の歴史のなかで振り返りやすくこの物語の背景にあるものもんあとなく想像できた。
最初はある少女たちの日常を主体に描き、途中から、その少女たちの母親たちが青春を送った1960~70年代に話が移る。
同じく日本のその時の政治や社会現象などを交えて少女たちの母親の結婚するまでの過程が淡々と描かれる。
話はあまり正直面白くもない。淡々とどこにでもあるような物であるし・・・
でも、なんとなくちょっとイヤな雰囲気。
暗いような・・・闇のような・・・不穏なかんじが付きまとうような。
そして、結末には、殺人事件。
何処にでもある日常を送っていた人達でも、積もり積もった何かがあって、こういう悲劇って起こるのなかな?
なんて、過去にあった事件を思い出したりしました。
読後も後味悪いのですが、物語としてはなかなか面白かった。
表題の「橋」のもつ意味も深いものかも。
いろいろにこの「橋」は解釈できる。
★★★
クラスで一番地味な道子は、高校2年生で初めて携帯電話を手に入えた。クラスの女王様から紹介されたSNSサイト“アバQ”に登録した日から道子の毎日は一変し、自らの分身“アバター”に夢中になっていくが-----!
(角川書店HPより)
娘たちが先に読み「結構、面白かったよ」と言っていたので、表紙も可愛いし、読んでみようと。
イジメとかあるけど、途中までは、まあまあなんとか面白く読みました。
携帯サイトのゲ-ム(?)、アバタ-を作り、自分でどんどん進化させていく事に夢中になる高校生たち。実際の高校生にもこれに似た現象はあるのかなぁ?
そう思うと、どんどんエスカレ-トしていく物欲や、クラスのみなより優位に立ちたいと願う心理に段々、不気味さを感じ・・・・やはりこの作家は、こういう展開になるのか?
と予想通りの結末にやや嫌悪感を抱きました。
物語としては、面白いのかもしれないけど、やはりこういう展開は嫌だなぁ~と個人的には感じます。
でも、同時に若者たちがこれを面白いという気持ちもわかるような・・・・。
変な感想ですが・・・・^^;
次女の周りでも既に読んだ子たちがいて学校で読んでいたら結構、みなの感想が聞けたそう。
「あそこまでやったら、ちょっとヤバイよね?」とか「表紙が無駄に可愛すぎだよね?」などなど・・・
内容的には結構問題ありだけど・・・まあ、なんとか楽しめたので★3つかな?
★★★
01 | 2025/02 | 03 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | ||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;