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読んだ本の感想あれこれ。
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ac1ef961.jpg発行年月:2010年1月


みんな一番大切な人のことだけを考えた。
一番大切な人が一番傷つかない方法を考えた。


穏やかな石垣島の浜辺で、杉下希美と安藤望は運命的に野崎夫妻と出会った。その出会いはある悲劇への序曲だった----。二年前の秋、台風による床上浸水をきっかけに、同じアパートに住む杉下、安藤、そして西崎真人の三人は親しくなる。それぞれに屈折とトラウマ、そして夢を抱く三人は、やがてある計画に手を染めていく。すべては「N」のために。タワーマンションで起きた悲劇的な殺人事件の真相を、モノローグ形式で抒情的に解き明かす、著者渾身の連作長編。『告白』『少女』『贖罪』に続く、新たなるステージ。

                                         (東京創元社HPより)


話の運び方が巧い!
先ずはじめに野口(貴弘、奈央子)夫妻が殺害されている事件が起き、そのとき、そこに居合わせた4人の事情聴取が行なわれる。


杉下希美22歳
高校生のとき、父親が愛人を連れて来て母親と弟と共に家を追い出される。
母親はお嬢様育ちで、金銭感覚が以前のまま。
父親からは毎月、生活費を貰っていたが、浪費が絶えない母親に苦労していた。
大学は東京へ。
「野バラ荘」に暮らし、そこで西崎真人と安藤望と知り合う。
野口夫妻とは、安藤望と一緒に行った沖縄で知り合う。


西崎真人24歳
作家志望の大学生。
幼い頃、母親から虐待を受けていていた。
野口奈央子が希美をアパ-トに訪ねて来たとき、留守で困っていたところに声をかけ知り合う。


安藤望23歳
学生時代に「野バラ荘」に住んでいたが、卒業後はM商事営業部勤務。
野口貴弘の部下でもある。


成瀬真人22歳
希美と同じ島の出身で同じ高校の同級生。
島の実家は料亭を営んでいたが、人手に渡ってしまう。
大学進学時に奨学金を受ける制度のことを希美から教わり東京の大学に進学。
バイトでレストラン「シャルティエ・広田」のケイタリングを担当している。
野口貴弘からケイタリングの注文を受け、事件当日、野口家に足を運ぶ。



登場する人たちに共通なのは・・・イニシャルが「N」

表題の「Nのために」は、誰かが誰かのためにを想像させますが、それが単数ではないところが面白い。
野口夫妻殺害の真相は、案外普通なのですが、その事件に関わったこの4人のその事件当日、その場に居合わせるまでの過程が面白かった。
結構、重く暗い話もあったのですが・・・湊作品ではもう慣れました^^;

事件の起きた10年後に飛んで、その当時をそれぞれが回顧する場面もはさまれ、4人それぞれの事件に関わるまでの過程なので、同じ場面が繰り返し出てきたりするのですが、こういう繰り返しは、前の作品にもあったような?


誰かが誰かの事を思い、自己を犠牲にする行動に出る。
その誰かが、その行動に出なければ、何かもっと違う結末になっていたかも?

高校時代からの希美と成瀬の関係が、ちょっと切なかったなぁ~。


西崎真人が書いたいう物語が、途中に出てくるのですが、なんとも不気味な話で、
この物語そのものより、なんだか強く印象に残った。


しかし、まあ、湊さんって次々、凄い話を書きますね~。


これは、今まで読んだなかでは読後感が、悪くなかった・・・・かな?

★★★
 
PR
4d39dd79.jpg   発行年月:2010年7月


   「本当に大切な風景は想像の目で見るものなんだ」
   転校先の中学で出会った変わり者の教師の一言で、
   少年は鳥の目で世界を見たいと願う。
  
   伝書鳩を育てる新聞部の少年を描く長野まゆみの最高作。



                            (河出書房新社HPより)


野川とは、ウィキペディアによると東京都を流れる多摩川水系多摩川支流の一級河川だそう。
まだ見たことないけど、これを読んでいたら、その川に沿って歩いてみたくなりました。

最初のペ-ジから、川べりの風景が頭のなかに自然に浮かんでくるような描写で、
「あ~いいなぁ~」と思いました。

主人公の井上音和は、中学2年生。
両親が離婚し、父親とともに都心のマンションから父親の実家のある都心から少し離れた町のボロアパ-トに引っ越して、学校も転校。

転校した学校で、先ず出会ったのが3年生の吉岡。
そして、担任の河井先生。国語の教師。

この二人との出会いが音和には、大きな転機になったよう。

吉岡が部長を勤め顧問が河井の新聞部に入部することになり、すぐに新部長となる音和。

ここの新聞部の活動は、紙面を活字で埋めることではなく、通信手段として昔から使われていた鳩を訓練することが主。
伝書鳩は知ってるけど、実際に訓練するって、面白そう!
野川に沿って歩き、目的地から鳩を放つ。
鳩は決まったル-トで学校の鳩舎に戻る。

どうして鳩は、元に戻れるのか?
顧問の河井先生の話もとても興味深かった。

受験に役立つかどうかは、わからないけど。。。。と前置きしながら話してくれる事が、ホントに面白い!
こういう先生が居たら、きっと人気者になるだろうなぁ~。
もっといろいろ聞かせて欲しい!と思ってしまったほど。

音和の父親のこと、吉岡先輩のお兄さんのこと、ちょっと辛いことを経験した二人も
前に向かって進んで行くんだなとわかってよかった。

都心から越して来た頃の様子と音和自身も、なんだか逞しくなった様子。
良い人間関係があると人は、つらい現実があっても前に進んでいけるんだな~と
再認識できたかんじの物語。

清々しい読後感でした!

★★★★
5e537119.jpg発行年月:2010年5月


少年剣士の凛々しさが眩しい時代青春小説

山河豊かな小藩、少年剣士たちは兄の死や身分の葛藤を越え成長してゆく。子供と大人の境にある一瞬の美しい季節を瑞々しく描きだす


                     (文藝春秋HPより)

あさのさんの時代小説。
道場で日夜、強くなりたいと剣術の稽古に励む少年たちが生き生き描かれる。

新里林弥は12歳のとき、尊敬していた兄を何者かに惨殺されている。
剣術に長けていた兄が刀も抜かぬまま背後から斬られたとは、信じられない。
なぜ?誰が?
その疑問を抱えたまま成長し、二年後、兄から剣術を学んでいたという樫井透馬が現れる。
透馬の父親は筆頭家老。
いずれは透馬も父親の役目を継ぐ者かと思われたが、妾の子であり、父親の正室には息子もいるのだとか。

林弥の道場仲間である源吾や和次郎を加えての少年たちの会話は、時代は違っても興味のあることは同じとみえて、ちょっと微笑ましい。
遊女に通う源吾は、お調子者で憎めないキャラクタ-だったけど、後半、ある事件に巻き込まれ悲しいことに。。。。(/_;)

その事件が、林弥の兄を惨殺した事にも繋がっていて、驚きの事実もありで、お役目とはいえ、そんな事が出来るのか!?しなくてはならないのか?と、なんとも言えない虚しさを感じた。


明るく爽やかなだけでなく、その時代の酷な部分も描いていて、読み応えがありました。

それぞれの家の要となるべき少年たちのこれより少し先の話も読みたいな。


★★★★

a7566a67.jpg発行年月:2010年8月


8時09分、瑞希は決まらない髪型に悩み、
10時24分、貴大は里中さんを好きになる。

野間児童文芸賞・坪田譲治文学賞受賞作家が描く、中2思春期、やっかいだけど輝いている、それぞれの事情。


                      (講談社HPより)


この表題通り、2年C組の生徒達の10月19日月曜日の1日を追う物語。
最初に座席表があり、次に時間割表。
そして、先ずは生徒・川口麻衣の6時47分の話。
夢の中で起きた幸せな時間が、一変に現実の朝の慌しさでかき消される。

鏡の前で髪型が決まらず悪戦苦闘する女の子の話は
うんうん、わが家にも中学生女子がいるので、この光景は見慣れたかんじと思った。

そんな風に生徒が順番に登場し、1日が流れていく。
一人一人の話は短いけれど、そこにちゃんとその生徒の置かれた環境。考えていることなどが描かれていて、椰月さんの少年少女の描き方って、凄いな~と感心しちゃう。

初恋に悩む者あり、失恋に落ち込む者あり、
またはクラスからイジメを受けてる女子、それを見ながら何も出来ない事に胸を痛めて居る子あり・・・・

教師はあまり登場しないけど、保健室の矢吹先生が良かったな~。
52歳の先生が言った言葉、ここに書き留めておこう!

「年を重ねてるごとにどんどん自由になっていく気がするのよ・・・・大人になって自由を満喫しなさいって言いたいわ。死んだりする子いるけど、ほんとにもったいないわ・・・・・もっともっと世界は広くて、いくらでも手足を伸ばせるのよ・・・・・・これから先が明るいことを知っていれば、なんでもへっちゃらよ。つらいことあったら保健室にいらっしゃいよ。おもしろい話いっぱいあるんだから」


こんな風に明るく言える先生が保健室にいたら、子ども達には心強いだろうなぁ~。


とある1日の学校の様子だけど、そこに居る生徒の数だけ物語があるんだなぁ~。
当たり前のことだけど、なんだか新鮮なかんじがした!
こういう展開の物語を始めて読んだからかな?

★★★★



179aa654.jpg発行年月:2010年6月


ワーキングマザーのPTA奮闘小説!
出版社勤務の陽子は、息子が小学校に入学して初めてのPTA役員決め保護者会で空気を読めず、早速「敵」を作ってしまう。(「女は女の敵である」)…等、働くママと7人の敵との戦いを痛快に描く。


                      (集英社HPより)


面白かったなぁ~。
仕事をフルタイムでこなし、旦那より高学歴、高収入の主人公・山田陽子。
息子の陽介が小学校に入学し、クラスの役員決めの場面から物語は始まる。

小学生以上の子どもを持つ親なら、この役員決めは逃れられない。
それぞれの学校で、独自の決め方があるでしょうけど、すんなり決まらないのは同じかも。

陽子は、疑問に思ったことは大勢の前でも意見を述べることが出来るタイプの人。
羨ましいなぁ~こういう人。

子どもを介した役員って、ホント、親には大きな負担なんだよね~。
ついこの前まで専業主婦してたので、「時間あるでしょうから~」と幾つかの役が廻って来て、介護する家族も居ないと、役を断る理由がなく、なんとなく「ま、いいかっ」と引き受けて来たけど^^;

フルタイムで働いていたり、母子家庭だったり、本当に無償のPTA活動に時間を割ける事が難しい家庭もあって、平等な役員決めってホント、難しいと思う。

誰もが少し変だなと思っていたことを陽子みたいに皆の前で「おかしいと思う」と言える人の存在が、少しずつ皆が納得するPTAのあり方に変えていくのかも。
なんて思いながら読んでいました。

ママ友、義母、男、夫、子供、先生、PTA会長と七人の敵が出て来ましたが、
本当に憎むべき敵は先生だけかな?
あの先生は、わたしも「キモイ」と思いました(笑)

他の敵とは、少しずつ譲歩しながら、上手く付き合っていってる様子に変化するのが良かった。

PTA活動って、新たな人間関係を築くキッカケになるんだなぁ~と実体験を踏まえてしみじみ思ったお話でした♪


★★★

 
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