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読んだ本の感想あれこれ。
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8effb621.jpg   発行年月:2010年10月


   夏目清茂74歳、本日脳梗塞により昇天いたしました

   74歳のある日、脳梗塞で亡くなったブリキ職人の夏目清茂。
   葬儀に集う人々のさまざまな人生が、清茂の死を中心にして交錯する

                            (文藝春秋HPより)



74歳の清重の若い頃から亡くなるまでの人生を描く物語かと最初は、思いましたが、もっと沢山の人の人生が交錯しながら描かれていました。
清茂を中心にした家族の歴史のようなお話。

最初に清重の両親のこと。
清茂の父親は、再婚し、その再婚相手には、息子が二人。
連れ子の次男の政夫は、清茂と同年だった。
政夫の方が勉強もよく出来たので、跡取りは政夫という自然の流れに異存なく家を出て金物屋で働きやがて独立し「夏目ブリキ店」を営む。

その後、結婚し、娘・素子と息子・直が生まれる。

若い頃の清茂は、近所の学校に行きたがらない子ども達の面倒を見たり、その子達がやりたがった野球のチ-ムも作り、非常に面倒見が良い。
子どもたちにも慕われていた。

けれど・・・・妻との関係は、その後ギクシャクした様子で、別れる。

物語は、清茂が亡くなり、葬儀の支度をするあたりから、いろいろな人が登場してくる。
74歳で亡くなった清茂の息子・直も45歳。
喪主になり始めてづくしの葬儀にあたふたしながらも、父親の昔を思い出しながら物語が進む。

清茂の娘・素子は父親が亡くなったことを直からのメ-ルで不倫相手と夜を明かしたホテルで知る。
かつて父のほかに愛した男が出来た母親を嫌悪した自分だが、自分もまた同じ状況にいる。

葬儀の当日、清茂に関わりのあった人々いろいろな想いを持ちながら集う。

子ども、孫、故人に生前、世話になった者。
そして、別れた妻。

バラバラに暮らしていた人たちを集まらせるのは、故人の力でしょう。

夏目家の人たちが、この集まりを機会に、また違う繋がりでこの後も絡みあっていくのかな?

葬儀の段取りについても結構、勉強になりました。


★★★
PR

c199cac6.jpg発行年月:2010年10月

「それは、世界でたった1人の人にしか、聴けないオルゴールなんだ。」
隣にいる、大切な人の心の声が聴こえてくる物語-------

全国各地で大きな反響を得た、直木賞作家渾身の新聞連載、
待望の書籍化!

奇跡の、そして感動のクライマックス!
「実は前から、ハヤ坊に頼みたいことがあってなぁ」東京に住む小学生のハヤトは、トンダじいさんの“一生に一度のお願い”を預かり、旅に出る。福知山線の事故現場、父さんの再婚と新しい生命(いのち)、そして広島の原爆ドーム。見るものすべてに価値観を揺さぶられながら、トンダじいさんの想い出のオルゴールを届けるため、ハヤトは一路、鹿児島を目指す。


                                           (講談社HPより)

 

この前に読んだ朱川さんの「鏡の偽乙女」とは、ガラッと違う物語。
今回のは、現代のお話でリアルな現実に向き合った物語でした。

主人公のハヤトは、もうすぐ小学5年生になる。
両親は離婚して、母親との二人暮らし。
ふざけあうような友達はいるけど、実際に気が合うのは、クラスでは、ちょっと浮いた存在のシンジロウ。
クラスの仲間の手前、シンジロウの存在を少し疎ましく思いながらも、本心はシンジロウと相通じるものを感じている。

ハヤトは優しくて人の気持ちがわかる子なんだろうな~と最初から思いました。

そして、近所の顔見知りのトンダじいさんから頼まれ事を引き受けてしまう。
おじいさんが亡くなり、その約束をいつかは果たさなければならないことに少し重責を感じ始める。

学校は、春休みに入り、その間、大阪の父親の元で過ごそうと決めたハヤト。
おじいさんから托されたオルゴ-ルも持っていく。

大阪の父親には、新しい家族が出来ていて、最初は戸惑うハヤトだが、そこから、いろんな人と接することになり、おじいさんとの約束を果たすため、鹿児島にも出かけることになる。

ハヤトが出会う人たちは、皆、過去に辛い経験がある。
阪神淡路大震災で家族を亡くしたもの、福知山線脱線事故で友人を亡くしたもの、

そして、鹿児島まで一緒に行く事になった、父親の新しい奥さんの友達・サエと一緒に訪ねる
広島、長崎。
それぞれが原爆による被害を受けた地。
原爆ド-ムや平和記念資料館を見てハヤトが感じること。

九州の鹿児島でも、知覧特攻隊のことが出て来て、戦争と平和についても多く考えさせてくれる。


ハヤトの旅を通じて、読み手もいろいろな事を考えさせられる内容でした。

そして、約束を果たす最後の場面も感動しました。

良い物語でした。

児童書として考えてもいいかもしれない内容。
大人も十分楽しめる内容ですが、子どもたちにも読んで欲しい本です!

いや~朱川さん、次々、いろんなジャンルで楽しませてくれますね~(^^)


                                             ★★★★★

 

2560a197.jpg発行年月:2010年8月


画家志望の青年と謎の美青年の大正怪奇探偵譚
大正3年、画家を志して裕福な家を出た功次郎は、穂村江雪華と名乗る青年と出会い、不思議な出来事に遭遇するように。実在の事件を織り込みながら、怪奇で耽美な物語が展開する傑作連作短編集。


                        (集英社HPより)



絵で身を立てたいと、家出して下宿生活を始める主人公の青年・槇島功次郎。
不思議な青年・雪華と名乗ると出会い、彼の暮らす下宿で暮らすことに。
その下宿屋<蟋蟀館>もなんだか怪しい。
功次郎の住む部屋には、幽霊が居るし・・・^^;

怪しいものが出てきたりの奇妙な話が短編連作という形で続く。
お話は第一段「墓場の傘」
第二段「鏡の偽乙女」
第三段「奇談みれいじゃ」・・・ほんとは奇談の「奇」の左に「田」が付く漢字ですがパソコンで出ず^^;
第四段「壷中の稲妻」
題五段「夜の夢こそまこと」

この世では、もう死んでいる者たちが時々、登場。
普通に考えたら怖いんだけど、ユ-モアもあるので、怪奇話というより、大正という時代背景もあったりでどこかロマンチックなかんじもした。


出てくる人物たちが、この世に生ある人間なのか、この世に未練を残し仮の姿で存在する「みれいじゃ」なのか?混乱するけど、皆、魅力的。

話としては、表題作の「鏡の偽乙女」が好きだった。

大正初期の史実も少し登場し、その辺も「あ~歴史的に、そういう時代なんだ」と納得したり
なかなか面白かった。

続きも出るのかな?
あまりはっきり明かされなかった雪華の正体も、ちょっと気になるとことであるし・・・

続きは出たら読みたいけど、この余韻のまま終わるのもまた良いか?


★★★
 



4e07918d.jpg   発行年月:2010年9月


   きっと生涯忘れない、子供たちとカミサマの物語

   「ヤドカミ様、僕の願いを叶えて」。
   行き場のない思いを込めた他愛ない儀式がやがて……。
   子供たちの切実な心が胸に迫る俊英の傑作!

                            (文藝春秋HPより)


舞台は鎌倉市にほど近い海辺の町。
小学5年生の慎一は、父親の会社倒産を機に両親と共に2年前、祖父の暮らすこの町に越してきた。
父親が亡くなり、今は祖父と母の3人暮らし。
祖父は、しらす漁をしていたが、海に投げ出される事故で片脚を切断している。

友達がなかなか出来ない慎一だが、唯一仲良くしているのはクラスメイトの春也。
春也も転校生。
酒癖の悪い父親の暴力に耐えている。

そして、クラスで最初に声を掛けてくれた鳴海。
鳴海の母親は、慎一の祖父の事故の際に、亡くなっている。


それぞれの子どもたちが抱えているものが重く暗い。
子ども同士の会話には、子どもらしいものはあるが、閉塞感が始終ある。

慎一と春也の二人の遊びは、ヤドカリを二人の秘密の場所で、神様に見立てて願いを叶えてもらう儀式めいたもの。
少々、残酷な方法だが、二人にとっては、それが抑圧されたものを解き放つ行為なのか?

仲良く一緒に居る二人だが、本音の部分では、お互いに抱く気持ちは、複雑。
途中からこの儀式のような遊びに鳴海が加わったことで、よりそれぞれの気持ちにザワザワしたような不穏な空気感が漂う。

子ども達の心理描写がすごく巧く表現されていた。

慎一たちの親たちの関わりもまた複雑に絡み合っていて、
それが更に慎一たちの心を乱す。

こんな環境に居なければ、きっと楽しい毎日を笑って暮らせていただろうに・・・・
なんだか苦しくなるような話でした。

ミステリ-の要素は、弱いし、道尾さんに期待する伏線が最後に見事に結びついて、アッと驚く結末はないけど、こういう作品も凄くいいな!

最近は、ラストに大どんでん返しのミステリ-から少し離れた作品が続いているけど、いろいろな作品をこれからも読ませて欲しい。


★★★
afadf80c.jpg発行年月:2010年10月


四人の直木賞作家の書き下ろしアンソロジー。
井上荒野=ピエモンテ州(イタリア)、
江國香織=アレンテージョ地方(ポルトガル)、
角田光代=バスク地方(スペイン)、
森絵都=ブルターニュ地方(フランス)を舞台に描く「食と愛」の物語。

                         (ホ-ム社HPより)


NHK BSハイビジョン 「プレミアム8」 番組中ドラマの書き下ろし原作とか。

あ~見たかった!!

4人の作家さんが描く、ヨ-ロッパの田舎の雰囲気が素敵。
お話もそれぞれが良かった!

特に好きだったのは、最初の角田さんの話。
「神さまの庭」・・・・レストランを営む父親と、何かというと食事会と称して集まる親類たちに、辟易している主人公・アイノアの話。
母親が病に倒れ、その病状を知らせるときにも、食事会を開いた父が理解出来ない。
母親は一人病院のベッドで食事もままならず闘病生活を続けているのに、食事会なんて、まるでお祝いのようと。

母親はその後、亡くなり、家から遠ざかって生活をするアイノア。
でも、ある日、ふと気づく。
そして、理解出来ないと思っていた父親の事も見つめ直す。
そして、父のいる家に再び戻る。


井上さんの「理由」は、
主人公・アリダの夫は、30歳も年上で入院中。
夫と先妻の娘・エリヴィラは、自分と同い年。
夫とは生徒と高校の英語教師としての出会い。
過去のことを思い出しながら、現在のアリダの日常を描く。

杭が理由に似ているという言葉は、ちょっと、わたしには理解できなかったけど・・・^^;


3番目は、森さんの「ブルノワ-ル」
パリの二つ星レストランで修行中のジャンの元に絶交中の母親が危篤の連絡が入る。
母親との確執の原因は、先祖からの伝統的ル-ルに反発したため。

母親が亡くなったが、死の直前に「おまえを認めるときは、姿を変えて知らせる」の言葉通りの物をある日、見つける。

う~ん、これはジ~ンとする話でした。


ラストは江國さんの「アレンテ-ジョ」
男性二人が、3泊4日の旅行に出かけ、その先での出来事があれこれ。
男同士は恋人同士?
独特の雰囲気でしたが、明るいかんじで良かったかな?



4つのお話、それぞれに描かれる愛。そして食事の風景が印象的でした。
写真も白黒ですが綺麗でした!

★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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