「私たちは、地下から湧き出る甘い水を飲むだけで生きのびている。」
ここはどこだろう。なぜここにいるのだろう。
見えない力に強いられ、記憶を奪われた女性の数奇な運命。
〈甘い水〉をめぐって、命とはなにかを痛切に描いた渾身の最新長篇小説。
椅子の部屋、地下通路、砂の街、十五番目の水の部屋……
閉ざされた奇妙な世界を行き来しながら、途絶えることのない感情のざわめきが、静かな輪唱のように、徐々に解き放たれていく――
現代を生きる私たちの寓話。
(リトルモアHPより)
いつもちょっと不思議な世界を描く、東さんですが、今回の話もまた不思議でした。
16の連作短編みたいなかんじですが、途中から皆、同じ世界のことだと気づきました。
タイトルの「甘い水」がいろいろな所で出てきます。
そこに居る人物たちは、別々の場所で暮らしていたりするようですが、同じ世界のことを知っていたり、そこで暮らしていたり・・・。
甘い水だけを飲んで地下で暮らす人たちがいて、過去にそこで暮らしたことをなんとなく思い出す人がいたり・・・
物語を説明するのは、ちょっと難しいのですが、文章はとても読みやすく、
書かれている内容は不可解なのに、不思議と癒されるようなかんじだして、
兎に角、この著者でなくては、この雰囲気は出せないだろうなぁ~。
この不思議な癒し効果のある文章、わたしは好き。
読んで「なんじゃこりゃ?」と言う人もいるだろうけど・・・・^^;
茉里、深雪、真吾、千博。
四人が出会えたことは、奇跡なのかもしれない。
藤平茉里、綾部深雪、苅野真吾、駒木千博。
中学に入学して同じクラスになった4人。
それぞれ家庭環境も違えば、性格も違う4人だったか、
夏休みの宿題で発表する年表作りを一緒にすることなってから、
次第にお互いの存在を認め合うようになるのだが……。
中学生と13歳だったあなたのために。
(光文社HPより)
青春小説のお手本のような物語です。
あさのさんの描く少年少女たちは清々しくていいなぁ~。
心の中では、嫉妬やら自信喪失やら家族内での問題やら思春期特有のモヤモヤしたものも抱えているけど、仲間が居るって素晴らしい!!
ちょっとした偶然で、仲良くなった男女4人の関係が素敵。
こんな友達関係が中学時代で出来たら、理想的だろうなぁ~。
夏休みの課題である自分たちの住む地域の年表づくりを共同制作する4人。
でも、出来上がった年表が元でクラス内である出来事が起きて・・・・どうなる?と思いましたが、
最後は、めでたく解決。
誰も悪い人が出てこない。
みんな優しい気持ちを持っている。
こういう小説は、ホント、心が洗われるわ~。
中学生の杏が出会った、風変わりな女性。
彼女と一緒に過去の事故を調べるうちに、
杏が見つけたものとは・・・・?
死って、案外、淡々としてて、とてもふつうなものだ。
誰にでもあることなので、日本中で毎日何百と起こっていることで、本人や遺族にはそれぞれ特別であるとしても、実際はとても平凡なものである、ってこと。
おとうさんが死んでも天地は裂けなかったし、おかあさんもあたしも発狂しなかった。朝がきて夜がきて、ごはんをたべないとおなかがすいたし、眠くなって眠って目がさめた。-----------本文より
(本の帯文より)
図書館の児童書の棚にあった本。
なんとなく目に留まり借りて来ました。
こういうふと目に留まる本は大抵、自分にとって、すごく良い本だったりするのが不思議。
この本もすごく良かった!
児童書なので、とても読み易い。
主人公の杏は13歳。
夏のある日、学校に行きたくないと思い、さぼる。
その日の出来事。
何故、学校に行きたくないのだろう?と疑問に思いながら、前の日の家のなかの出来事が少し最初に書かれていて、何か暗く重い問題が杏の家族に起こっているようだとわかる。
学校をさぼって向かった図書館で、出会ったちょっと不思議な女性・佐千代。
佐千代は図書館に過去のある事故について調べに来たと言う。
そして、成り行きで二人は実際の事故の現場を訪ねる。
最初、杏は佐千代に対して心を開かず無愛想なのですが、段々と一緒に居る時間を経て、自身の抱えているものについても話し出す。
佐千代の年齢は特に書いてなかったけど・・・1975年に小学生だったというのだから・・・
40歳代くらいかなぁ?佐千代の話す昔話の内容が、自分の小さい頃のこととダブるので、杏との年齢差も親子くらいかも。
年が大きく離れた二人だけど、短い時間のなかでお互いを理解し、絆のようなものが生まれ
人の縁ってこういう不思議なこと起すことあるかもね~なんて思いました。
佐千代が追う過去の事故。
それに同行しながら、杏が思い出を蘇らせる亡き父のこと。
物語の最後では、杏が17歳に成長し、佐千代に手紙を書きその内容が書かれている。
それを読むと、13歳の杏の周りの諸々の暗いことは、その後、明るいことに変わったんだなとわかりホッとしました。
人の死についても、ちょっと考えさせる話ありで、いろいろな意味で深い話で
ず~んと胸の奥に何か刺激を受けるようなお話でした。
上手く表現出来ないけど、こういう本は子どもたちにも読んでもらいたい。
あとがきを読んで、この物語は著者の実体験が元になっているんだと知り、物語を振り返り、なんだか胸が熱くなりました。
著者の実生活とリンクしている物語だったんですね・・・。
初めて読む作家さんでしたが、ヤングアダルトを対象にした本を多く出版されてるみたい。
過去の作品も読んでみようかな?
この表題と表紙絵も内容にピッタリで好きです(^^)
医師の話ではない。人間の話をしているのだ。
栗原一止は夏目漱石を敬愛し、信州の「24時間、365日対応」の本庄病院で働く内科医である。写真家の妻・ハルの献身的な支えや、頼りになる同僚、下宿先「御嶽荘」の愉快な住人たちに力をもらい、日々を乗り切っている。
そんな一止に、母校の医局からの誘いがかかる。医師が慢性的に不足しているこの病院で一人でも多くの患者と向き合うか、母校・信濃大学の大学病院で最先端の医療を学ぶか。一止が選択したのは、本庄病院での続投だった(『神様のカルテ』)。新年度、本庄病院の内科病棟に新任の医師・進藤辰也が東京の病院から着任してきた。彼は一止、そして外科の砂山次郎と信濃大学の同窓であった。かつて“医学部の良心”と呼ばれた進藤の加入を喜ぶ一止に対し、砂山は微妙な反応をする。赴任直後の期待とは裏腹に、進藤の医師としての行動は、かつてのその姿からは想像もできないものだった。
そんななか、本庄病院に激震が走る。
(小学館HPより)
前作の「神様のカルテ」も良かったけど、今度の話の方が感動した!
相変わらず、忙しい勤務医としての仕事。
現実の総合病院の勤務医の実態もこれに近いものでしょう。
主人公・栗原一止が勤める本庄病院。
ここで働く医師たちの志は高い。
そんな病院に一止の大学時代の友・進藤辰也が赴任してくる。
しかし、友は、以前と変わっていた。
勤務時間外の診療は一切せず病院からの呼び出しにも応じない。
受け持ち患者の臨終にも帰宅後は立ち会わない。
何かあったのか?
そこには、結構、深刻な事情があったんですね~。
医師にも家族があって、一人の人間。
家族と患者、どちらも大切であり、どちからを選ぶことは難しい。
辰也の妻・千夏も医師。
辰也が変わってしまったのには、千夏が病院の患者から受けたキツイ言葉が原因。
医師は患者をどんなときにも優先しなきゃならない・・・・・は当たり前のようだけどちょっと酷。
厳しい労働条件下で勤務する医師たちの苦悩が伝わってきた。
後半では病院の副部長である内藤医師が病に倒れてしまう話でしたが、ここでは泣けた。
内藤医師の人間としての素晴らしさ。
それを支えてきた千代夫人も素晴らしい。
二人の思い出話もロマンチックでした。
一止の妻・榛名(通称:ハル)は、相変わらず可愛らしい(^^)
「神様のカルテ」は映画化されるそうですが、ハル役は宮崎あおいさんとか。
ピッタリ!ですね~。
今回も現役のお医者さんだから、書ける話かな?
これはシリ-ズで、暫く続けて欲しいな~。
★★★★
川上弘美、第一句集220句
人気小説家である著者が、俳句を始めて16年。
恋愛、日常、食卓、旅…小説同様、なにげない日常の光景から、
男女の機微が浮かび上がる220句をまとめた初句集。
新たな川上ワールドの魅力が明らかに。
(集英社HPより)
川上さんの小説が好き。
どこか不思議な雰囲気があって・・・。
この俳句集もそんな川上さんらしさが表れていた気がするなぁ~。
短いことばの並びのなかに、ちゃんとその情景を浮かばせてくれて、クスッと笑っちゃうようなものもあったり、ちょっとエッチなものもあったり、すごく高尚なかんじのものもあったり。
楽しく最初の句から最後の句まで読ませて貰いました。
1994年~2009年までに作った作品が順番に載っていたけど、結構、最初の方のが面白かった!
1994年の
はつきりしない人ね茄子投げるわよ
この夏でバカヤロ日記三年目
この二つの句は笑った!
最後の
俳句を、作ってみませんか。
では俳句に出会った経緯などから俳句づくりのコツのようなことなどが書かれていました。
う~ん。
でも自分で作るとなるとあれこれ考えちゃって、なかなか上手く出来そうもないな^^;
言葉選びのセンスがないとね~
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;