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読んだ本の感想あれこれ。
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21738591.jpg    発行年月:2010年12月


    パイプオルガン-----この心の震えは、祈りに似ている

     “俺は記憶のないころから鍵盤に触れてきた”。
      聖書に噛みつき、ロックに心奪われ、
      メシアンの難曲と格闘する眩しい少年期の終わり


                                            (文藝春秋HPより)


先に読んだ「第二音楽室」に続く、School&Musicのシリ-ズ2弾目の本書。

主人公の鳴海一哉は、キリスト教系の高校に通う3年生。
父親が牧師で両親は離婚しているが、母親はピアニスト。
幼い時から、オルガンの音に親しみ、高校でもオルガン部に所属し、礼拝奏楽を担当する。

オルガン部は5人。
文化祭で発表するメシアンの「神はわれらのうたに」を弾くことになり、元々メシアンは母親も好きでよく演奏していた曲だったが、次第に母親に対する複雑な想いや曲を弾く事につまずき、その曲を弾きたくないと思うようになって、文化祭当日は、クラスメイトの一人にエスケイプを誘われたことも重なって無断で欠席してしまう。


学校を無断で抜け出し、クラスメイトと共に行動しそのまま友人宅に泊まった一哉だったけど、その事がキッアケで一哉の気持ちも吹っ切れる。

外泊後の祖母の言葉が印象的だった。
怒るのは父親の役目だからとあえて厳しい言葉は言わず、一哉がずっとわだかまりにしていた母親が家を出て行ったことについての話。

その後、父親からも母が出て行った後の消息や届いた手紙を見せてくれる。

自分の元に残ってくれた一哉の存在が嬉しいとも。

ずっと正しい人、優しい人であった父親にも弱い部分はあったんだと思ったんじゃないかな?

オルガン部の皆にも謝り、担当の倉田コ-チ(先生とは呼ばないでということで、この呼び名)は一哉の気持ちに気づかなかったことを詫びる。
そして、文化祭直前に好きだと告白した青木は「自分のせいだと思った」と。
あ~青木さん、可愛いなぁ~。
一哉の周りの子達、みんな良い子♪

音楽を通じて成長していった一哉の物語も先に読んだ「第二音楽室」同様、爽やかで感動できる物語でした♪
音楽に詳しい人なら、より一層、楽しめるだろうな。

★★★★
 
PR
550870b0.jpg発行年月:2010年12月


四百年前、千葉沖で沈んだスペイン船、三十年前に消えたひとりの男、そして、現在の東京で発生した殺人事件。3つの点が繋がった時、運命に翻弄された男の悲しき人生が暴かれる。長編ミステリ。


                         (幻冬舎HPより)



「氷の華」 「目線」に続く「烙印」。
前2作も面白かったけど、これまた面白かった。

400年前の南蛮人を乗せた船の乗組員を救助するある村の人々。
30年前のものと思われる白骨化した遺体。

東京の公園で見つかった絞殺体。

この3つの事柄が最初は、別の出来事のように書かれ、いずれは繋がっていくのだろうと予測しながら読み進め、段々に繋がっていくその過程が面白かった。

事件を追う戸田刑事は、前の作品「氷の華」にも登場の刑事。
この刑事の扱う事件は今後もシリ-ズ化していくのでしょうね。

ミステリ-として戸田刑事の真相究明の過程は十分、楽しめるけど、もっと事件の当事者たちに主体を置いた書き方をした物語も読みたいと思った。


秋津直哉の事がもっと詳しく知りたかった。
そこだけに視点を置いて描くだけでも充分面白い人間ドラマが出来上がると思ったんだけど・・・。

400年前、座礁した船に乗っていたスペイン人たちを助けた海女と村人たちの話は、良かった。
ミヅキとニックの出会いから始まったロマンチックな物語が現代の哀しい殺人事件に繋がってしまったのは、あまりにも切ない(/_;)



尚、千葉県沖でスペイン船が沈没し、その乗組員たちを地元の海女たちが必死に助けた物語は史実に基づいているそう。
著者の天野さんの故郷・千葉県、御宿町にはその事実を記した記念塔(通称メキシコ塔)というものがあるそうです。



「氷の華」も「目線」もドラマ化されたけど、これもドラマ化されるかな?

今回も充分楽しませてもらいました♪


★★★★
 
6b842dc4.jpg発行年月:2010年11月


三世代にわたる「風変わりな一族」の物語
東京・神谷町の洋館に暮らす柳島家は、ロシア人の祖母、変わった教育方針、四人の子供のうち二人が父か母が違う…等の事情で周囲から浮いていた。時代、場所、語り手を変え、幸福の危うさ、力強さを綴る。


                           (集英社HPより)


600頁近い厚い本でしたが、面白くて最後まで夢中でした。
3世代にわたる柳島家というある変わった一家の歴史。

3世代の人々が代わる代わる時系列もバラバラで語る物語。
メモを用意して、相関図を書きながら読みました。

覚え書きとしてここに書いておくと・・・・・
ロシア人の絹は柳島竹次郎とイギリスで出会う。
そして、日本に二人で暮らし、3人の子ども(菊乃、百合、桐之輔)が生まれる。
菊乃が豊彦と結婚し、その子どもが4人(望、光一、陸子、卯月)。
けれど、望は父親が別にいて、卯月は母親が別にいる。
百合は一度結婚したが離縁して再び戻り、桐之輔は生涯独身宣言をしている。

子ども達は学校に通わず、自宅で家庭教師や親たちから勉強を教わっている。
3ヶ月だけ学校に通ってみたが、いずれも学校生活に馴染めず問題児扱いとされ学校に通うことは断念。

他者から見たら、実に風変わりな柳島家なのですが、家族は皆、仲良しで会話などを読んでも上流階級の上品な暮らしぶりといったかんじで楽しい。


段々、あとの年代になってくると、皆が年を取り、亡くなる人も出てくるけれど、この家族の一員で居られたことには、皆、満足していたんじゃないかな?
後ろの方で絹が竹次郎と知り合ったころの話には、驚きの事実があって、
あ~この家族の風変わりな様は、ここからスタ-トしていたのだなぁ~なんて思った。

抱擁とライスには塩・・・・柳島家を表す言葉が表題になっている。
ライスには塩・・・・わたしもこれはわかる!コショウも欲しいかも(笑)


本が終わりに近づくと、柳島家の話は、もうお終い?と淋しくなった。
ずっとこの一族の歴史を見ていたいと思ってしまった。
楽しかった。

★★★★★
 
31b8f197.jpg   発行年月:2010年9月


   いつもと同じ日々の中、忘れたくない光がある

   美しかったり、謎めいていたりする、私の隣の人々。
   芥川賞作家にして史上最年少の川端賞作家による
   「これぞ小説」な味わいの6篇

                                                    (文藝春秋HPより)


どの話にも別れがあるけど、恋人や家族とかの大袈裟な別れではない。
主人公たちが日常のなかで、ちょっと接点を持った人たちとの話でした。

こういうなんでもない日常の一こまのようなものをちゃんと文章にして読ませる事が出来る作家さんは好きだ!

6つの話どれもよかった。

「新しいビルディング」
入社して3ヶ月のマミコ。同じ部屋で毎日一緒に働くフジワラさんが妊娠し近く退職するという。
毎日近い距離で過ごしているフジワラさんとは殆ど話しをしないで過ごしている。


「お上手」
靴が壊れてしまい、思い出した地下広場の一角にある靴の修理屋に寄る万梨子。
後輩が買ったばかりの靴のヒ-ルに傷が付いたというので、その修理屋のことを話す。
早速行った後輩からその店員のことを「万梨子さんの好きそうな人」という。


「うちの娘」
大学の学食で働く雪子。
毎日同じような時間に来て、必ずわかめうどんを注文する女子学生が気になる。
結婚前妄想好きだった雪子は、女子学生を追いながらあれこれ妄想して楽しむ。


「ニカウさんの近況」
突然、届いた二飼という男性からの退職を知らせるメ-ル。
全然、心当たりのない二飼という人物だが、あえて返信することはせずにいる。
その後は転職先が決まったという報告メ-ル。


「役立たず」
配送ドライバ-の阿久津。
数々の女性と交際したが、途中でその女性といることに苦痛を感じてしまう。
結婚まで考えた理沙も荷物をまとめて部屋を出て行く。
そして、学生時代ちょっと気になっていた弥生から久しぶりに連絡が来る。


「ファビアンの家の思い出」
15年前の夏、イギリスに留学中の友人・卓郎からスイスに住む友人宅に行くが一緒に行かないか?と誘われジュネ-ブの空港で待ち合わせる。
卓郎の友人はナディア。彼女が連れて行ってくれた家はファビアンという知り合いの家を仮住まいさせてもらっているという。
卓郎の友人宅で2泊させて貰うが、その間、食事に出たチ-ズでお腹を壊してしまう。
吐き気と腹痛が時々、襲うが家の居心地はよく友人宅の人たちにも良くしてもらう。
今もスイスで知り合ったナディアとは文通を続けている。



一番面白いなと思ったのは
「うちの娘」かな?
勝手に一人の女子学生を自分の娘だと仮定してあれこれ思う女性。
付き合ってる男性が気に入らなくてヤキモキしたり・・・
着ている服が似合ってないなぁ~と思ったり・・・
でもある日、とうとう付き合ってる男性に言ってしまった!
ま、その後どうなったかは語られてないんだけど。


ほかの話もそれぞれ楽しめました。
すぐ忘れてしまいそうな些細なことを書いているのだけど、読んでいるときは楽しい。

この表題もよく考えたものだと思う。
別れじゃなくて「お別れの・・」っていう響きがいいなぁ~。

★★★★
9fcd3256.jpg発行年月:2010年9月


爆発不可避----身構えても、吹き飛ばされる、“怪物的”傑作、誕生!

母の愛人だった男が、私の夫。愛なんて最初からなかった、はずなのに。夫の事故ですべてが狂い始めた----。善悪の彼岸へ近づく日常。私たちの“仮面”は崩壊し“怪物”が顔を出す。死ぬって、恰好悪いこと? 忘却不能の最後まで、あなたの心は震え続ける! 2010年必読のミステリー。読み逃せば、後悔する。間違いなく!


                                             (新潮社HPより)


前に読んだ「凍原」が面白かったので、この著者の新刊は楽しみにしていました。
自分で買えばいいのに・・・・図書館にリクエストをして借りました。

文章は読みやすく、面白いのですが・・・
謎が多く読み終えた後、なんだかスッキリしたかんじがせず・・・・^^;


先ず最初に、物語の主人公となる女性・幸田節子が自身でガソリンをかぶって亡くなったと推測される事件が出てくる。

その後、物語は節子の生前の話に遡って展開される。
節子の夫・喜一郎は元は節子の母・律子の恋人だった。
この関係だけでもタダならぬものを感じるけれど、節子の周りにいる人たち全てと言っていいほどの人たちがタダならない^^;


節子の恋人・澤木(税理士)は節子が亡くなる直前まで行動を共にしていた人物。
不倫関係は長く、節子の夫が経営するラブホテルの今後の経営方針などの相談にも乗っていた。
澤木と付き合いながら、母親の恋人の喜一郎と結婚を決めた理由はなんだったんだろう?
それが最後までわからなかった。
そして、喜一郎が事故で意識不明の状態が続いた後、亡くなるけれど、喜一郎の死に対しても淡々と受け止めていたように思えた。
それがなぜ、自身も死を選ぶことに繋がったのか??

う~ん。わからない。

読解力のなさかなぁ?

節子のやる事、考えることが不思議でした。

歌詠みの会で知り合った佐野倫子とその娘・まゆみを暴力夫から守り、その後、犯した罪にも驚いた!
怖い女!



真相はよくわかないけれど、まあまあ楽しみながら読めた本。

でも「凍原」の方がわたしは好きだったなぁ~。

読ませる文章力は十分にある作家さんなので、次回作も期待はしてます!
過去作品をその前に読んでみようなか?


★★★
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★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
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