食堂は、十字路の角にぽつんとひとつ灯をともしていた。私がこの町に越してきてからずっとそのようにしてあり、今もそのようにしてある。十字路には、東西南北あちらこちらから風が吹きつのるので、いつでも、つむじ風がひとつ、くるりと廻っていた。くるりと廻って、都会の隅に吹きだまる砂粒を舞い上げ、そいつをまた、鋭くはじき返すようにして食堂の暖簾がはためいていた。暖簾に名はない。舞台は懐かしい町「月舟町」。クラフト・エヴィング商会の物語作家による書き下ろし小説。
(筑摩書房HPより)
クラフト・エヴィング商会の本を数冊、読んでどれも面白かったので、その物語作家である吉田篤弘さんの小説が読みたくなり、読んでみました。
たしか・・・映画化されているような・・・。
表題に聞き覚えがあったので、まずはこれを選んだ次第。
つむじ風が巻き起こる十字路の角にある食堂。
名前は特にないけれど・・・・いつしか常連さんから「つむじ風食堂」と呼ばれるようになる。
開店時間は夜の6時。そして深夜2時くらいまでが営業時間。
常連さんたちが個性的で楽しい。
皆、近所に住まう人たち。
主人公の私は・・・月舟アパ-トの七階に住み、人工降雨の研究をしているので皆からは「先生」と呼ばれている。
最近、引っ越して来て、つむじ風食堂に入ったところ、気に入り、常連客の一人になる。
帽子屋の桜田さんから、二重空間移動装置を譲り受けたり、
古本屋ではなんとも奇妙な「唐辛子千夜一夜奇譚」を見つけ、店の主からは300万円で売ると言われ・・・・
果物屋の青年とは宇宙や哲学的な話を楽しみ・・・・
ほかにも舞台女優の奈々津さんとの関わり、かつて父親に連れられて行った懐かしい喫茶店の二代目店主との再会など、登場する人物たちと主人公の「私」の会話が全部、ほんわかするかんじ。
読んでいて、とても心地よい、大人のための童話のような物語でした。
映画化された作品も見てみたくなった!
好きだな~こういう話♪
★★★★★
運命の糸に導かれた二人の少年ハギと透流は、
殺されかけたハギの母を救うため、
得体の知れない闇の世界「ウンヌ」へと旅立つ。
(毎日新聞社HPより)
第一部を読んでから時間がちょっと経ったので、詳しい内容を忘れていたけど・・・
読み始めたら、すぐ思い出した!
結界を境に別々の世界で暮らす、ハギと透流が森の中で出会い、お互いを最初は警戒しつつ互いに助け合い困難に向かっていく姿は、ハラハラドキドキ。
ハギの暮らす「ウンヌ」では厳しい格差社会の掟があり、それを支配しているのがミドさま。
恐れ崇められているミドさまだけど、「ウンヌ」の外の世界で生きる透流にしてみれば
それはおかしな話。
同じ地に暮らすものなら皆、平等なはず。そこになんら差別される所以はないはず。
「ウンヌ」では透流たちのような者は「マノモノ」として恐れられている。
見ただけで体が腐ってしまうと言われていて、接触することがないように気を付けていると。
それも全てミドさまの言いつけ。
第二部は、ハギと透流が森で出会い、怪我を負っているハギを透流が家に連れ帰り手当てをして助け、森に怪我をしたまま残されたハギの母親・トモを二人で助けに行く話。
無事、母親と再会出来てホッとしたのは良かったけれど・・・・
物語は気になる場面で終わってしまったぁ~!!
う~早く続きが読みたい!!
進化し続ける湊かなえの新たなる代表作!
元英語講師の梨花、結婚後、子供ができずに悩む美雪、
絵画講師の紗月。3人の女性の人生に影を落とす謎の男「K」。
感動のミステリ
(文藝春秋HPより)
帯文に「湊かなえのセカンドステ-ジ始動!」とあるように
今までの人間の醜い悪が渦巻くような重く暗い、なんともいえないイヤ~な雰囲気の話とは、ちょっと方向が違うようなお話でした。
今までのような作風も面白いけれど、物語としては、今回のようなものが個人的には良いな~。
三人の女性の話が最初はばらばらに語られる。
最初に登場の女性は梨花。
両親を亡くし、祖母と二人で暮らしていた。
しかし祖母が入院、講師として勤めていた英会話スク-ルは経営破綻であっけなく解雇。
経済的に不安な日々に追いやられる。
以前から「K」と名乗る人物から経済的援助を申し出されていたため、まだ見ぬ謎の人物だが、頼ってみようか?と考える。
二番目に登場の女性は美雪。
伯父の経営する建設会社に勤務し、伯父の勧めで同じ会社の営業担当の和弥と結婚。
和弥のことは前から好意を持っていいたので美雪にとっては幸せな結婚だった。
そして、伯父の息子・陽介と和弥は親友。
陽介の妻・夏美を含め4人は親しく交流を持つ。
三番目に登場の女性は沙月。
母親と二人暮らし。
学生時代は、友人の希美子に誘われて山岳同好会のメンバ-だった。
希美子は先輩の浩一に好意を抱いていた。
沙月は初対面の浩一に不思議な親近感を抱いていた。
最初の梨花の話で登場の謎の人物「K」とは誰なのか?
気になり、イニシャルが「K」の人物が出るたびに「この人?」と思ってしまった。
でもイニシャルは、苗字なのか?名前なのか?わからないので、最後の方まで確信は持てず、楽しみが先延ばしにされる仕掛けは、なかなか上手い!
三人の女性たちの関係も段々とわかっていき、
最初から登場人物をメモしながら読んでいたので、それらが見事に繋がっていく様子は楽しかった!
表題の意味も納得でした!!
ちょっと切ない話ではありますが、良いお話でした。
美雪、沙月の過去の思いを抱えて、
梨花がこれから幸せな人生を歩んで行ってくれたらいいなぁ~。
★★★★★
物騒な奴らが再びやってきた!
三年ぶりの書き下ろし長編登場!!
酒浸りの元殺し屋「木村」。狡猾な中学生「王子」。腕利きの二人組「蜜柑」「檸檬」。運の悪い殺し屋「七尾」。物騒な奴らを乗せた新幹線は、北を目指し疾走する! 『グラスホッパー』に続く、殺し屋たちの狂想曲
(角川書店HPより)
「グラスホッパ-」(たぶん、未読)の続編になるとは知らずに読みました。でも、困ることはなく、最初から最後まで面白く読みました♪
東北に向かう新幹線のなかで、繰り広げられる物語。
限られた空間と時間のなかで、スリル満点の物語が描かれていた。
新幹線のなかに、集まった人たちの、そこに来るまでの話も盛り込まれ・・・
最初は、悪魔みたいな中学生・王子とその子分みたいな生徒たちの行動が実に不快なかんじで、そこに偶然、通りかかった木村が、王子に関わっていく様子に興味を持った。
木村は、アルコ-ル依存症で、見た感じも危ない男。
けれど、根っからのだめ人間ではないような感じで、好感は持てないけど、王子をなんとかして懲らしめて欲しい!なんて期待しながら読んでいた。
でも・・・・・王子のほうがいろいろなことに長けていた。
怖すぎるぅ~、この中学生。将来、どんな大人になるのやら・・・。
そして、新幹線のなかに木村と王子が乗ることになって・・・・
そこにある使命を果たすための殺し屋。その使命を妨害するために乗り込んだほかの殺し屋。
ばらばらに進んだそれらの人物たちの話が段々に繋がっていき・・・・
最後に登場した人物には、驚きでした!!
おぉ~!!すごいな、この夫婦!!
そして、王子の「どうして人を殺したらいけないのか?」の問いに答えた
塾講師の鈴木の回答には、なるほど~!と感心してしまった!
「グラスホッパ-」では、この塾講師の鈴木も登場するらしい。
ここに少し出てきた殺し屋も登場するというから、順番が逆になってしまったけれど
そちらも読んでみたい!
しかし・・・・王子はその後、どうなったんだろう?
成長した王子の様子も怖いけど、ちょっと興味あるなぁ。
★★★★
人妻は物を感じちゃいけないなんて法があるかしら。
----せめて、きちんとした不倫妻になろう。
満ち足りているはずの生活から、逃れようもなくどんどんと恋に落ちていく。恋愛を、言葉の力ですべて白日の下にさらす、江國作品の新たなる挑戦!
恋愛のあらゆる局面を、かつてない文体で描きつくす意欲作!
私は転落したのかしら。でも、どこから?
会社社長の夫・浩さんと、まるで軍艦のような広い家に暮らす美弥子さんは、家事もしっかりこなし、「自分がきちんとしていると思えることが好き」な主婦。大学の先生でアメリカ人のジョーンズさんは、純粋な美弥子さんに心ひかれ、2人は一緒に近所のフィールドワークに出かけるようになる。時を忘れる楽しいおしゃべり、名残惜しい別れ際に始まり、ふと気がつくとジョーンズさんのことばかり考えている美弥子さんがいた-----。
(講談社HPより)
面白かったぁ~。
今まで不倫を扱った物語は、沢山、読んできたけれど、文体が異質。
まるで、童話か何かを読んでいるような感覚。
主人公の美弥子は、真面目で家事も抜かりなくこなす。
いつ誰に見られても恥ずかしくないように生活することを心がけていて、見習いたいところがいっぱい。
子どもがまだ居なくて、夫の浩と二人暮らし。
夫婦仲も悪くない様子。
でも、アメリカ人のジョ-ンズと知り合い、二人で散歩をすることが習慣化し、段々惹かれていく。
先にジョ-ンズのほうが、美弥子に好意を寄せていた様子だけど・・・。
そして、親密さは増して・・・・。
今まで清く正しく暮らしてきた主婦ならこその行動かなぁ~?
本人が言う「世界の外に出てしまった」ら、もう元には戻れないのかなぁ~?
ジョ-ンズはアメリカに妻と子どもが居て、その結婚の前にも一度離婚をしていて・・・・
かなり要注意人物というかんじだけど、大学の先生だし、物腰も柔らかで無理強いはせず常に紳士的な態度となれば、最初に抱いていた警戒心のようなものも薄れるのかも。
読みながら・・・あら、良いかんじの人。とわたしも思ってしまったから・・・笑
でも、最後の・・・・・もう小鳥のようには見えないのでした。 はショックだった!
ジョ-ンズが憎らしくなってきた!
美弥子はどうなるんだろ??
と考えたら、気の毒になりました。
表紙の絵とこの物語の内容が、ピッタリ!
フランシスコ・ゴヤの「気まぐれ」No.72 お前は逃げられまい だそうです。
★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;