家庭の複雑な事情を理由に陸上部を退部した高校一年生の加納碧李。
だがそれは走ることから逃げてしまった自分への言い訳だった。
少年の焦燥と躍動する姿を描いた、青春小説の新たなる傑作!
(幻冬舎HPより)
主人公の碧季の置かれた家庭環境が、深刻な状況。
両親が離婚して、母親と、5歳の妹・安樹と暮らしている。
母親は薬剤師として働き始め、経済的には困っていない様子だけど、両親の離婚の経緯、杏樹と母親との関係が複雑で、碧季は、そのことに神経を遣い、陸上部で走っているときではないと判断して走ることから距離を置いている。
心優しい、碧季が実に痛々しい。
そして、安樹も可愛そう。
母親の千賀子も心を病んでいる。
家族全員がとても緊張した状態で暮らしている。
あさのさんの物語だから、きっとこの先は希望の光が射すんだろうけど・・・と思いながらも少々気が滅入ってしまった。
碧季が所属していた陸上部の監督・箕月、友達・久遠、マネ-ジャ-の先輩・杏子たちが皆、碧季のことを気に掛けて接する様子が温かい。
碧季も部活ではないけど、走り始めた。
続きの物語では、碧季の家族の様子も良い方向に向かい、蒼季がランナ-として活躍する場面が読みたいなぁ~。
続きがまだあるとわかって、この本を読んでよかった。
これだけを読むと、ちょっと物足りなかったかもしれないけど・・・・
遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた----
慎み深い拍手で始まる朗読会。
祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは……。
しみじみと深く胸を打つ小川洋子ならではの小説世界。
(中央公論新社HPより)
タイトルを見たときから「どんな話なんだろ?」と読む前から興味が沸きました。
そして、最初に語られるショッキングな事件の様子。
とある旅行会社の企画したツア-に参加した8人が反政府ゲリラに拉致・監禁されたすえ命を落としたというニュ-ス。
そして、後から見つかった人質たちがそこで語っていたであろう物語。
8人の綴った物語が順番に語られる。
そこには、日常のふとした瞬間やら遠い過去の思い出だったりがあり、どれも心がちょっと温かくなるようなお話。
お話の最後には、その人の年齢と職業、そのツア-に参加することになった経緯のようなものが記されている。
それを読むと・・・お話の主人公がそのお話の後、どういう風に生きて来たのかが、想像出来て、まだまだこの先、やりたいこともあったでしょうに・・・・と途端に何とも切なく哀しい気持ちにさせられた。
自分もいつどんな場所で最期を迎えることになるのか、予測出来ないんだなぁ~なんてことまで考えてしまった。
何かを記しておくことは、自分が生きていたという証を遺すことになるのか!
ならば、こうして今、書いていることもずっと後で、家族とかがみて何か感じるだろうか?
などなど・・・・・。
8人の人質たちの物語とともに9番目の話では
事件現場で人質になっていた8人が語る言葉をヘッドフォンを通して聞いていた特殊部隊隊員の物語。
「ハキリアリ」というアリについて語ったもので、事件には一見なんら関係ないようだけど、ハキリアリを通じて知り合った日本人との思い出話であり、彼が感じた人質たちの様子が語られたときには泣けた。
人質たちが語ったお話のなかで特に好きなのは「やまびこビスケット」。
★★★★★
朝起きると、隣の部屋に幽霊が!?
ある街の高台に佇むおんぼろアパート「てふてふ荘」。
敷金礼金なし、家賃はわずか月一万三千円、
最初の一ヶ月は家賃をいただきません。
この破格の条件の裏には、ある秘密があって……。
(角川書店HPより)
古いアパ-ト「てふてふ荘」に住む住人たちの物語。
1号室~6号室まであるアパ-ト。
それぞれの部屋には、自縛霊が住んでいて・・・
部屋を借りる前に大家さんから顔写真を何枚か見せられ「どれがいいですか?」と。
借りる側は「?」と思うのですが、その写真が自縛霊たちの写真というわけ。
お化けは嫌いだけど、ここに登場の自縛霊たちは、殆ど普通の人間のようなので、怖くはない。
その部屋に住むことになった者と自縛霊たちの関係は、なかなか微笑ましい。
自縛霊たちが成仏するには、その部屋の住人が、幽霊という枠に囚われずに相手に対してなんらかの感情を抱いて触れ、それが出来れば成仏してこの世から消えてゆく。
住人と良い関係を築くことで、成仏し、そこに別れが生じる。
ちょっと切ないけれど、霊たちにとっては、幸せなことかも。
一番好きだったのは、4号室の自縛霊・湊谷薫と、てふてふ荘最初の住人で、4号室の住人だった平原明憲の話。
平原は訳あり、アパ-トを出たのだが、再び、そこを訪ねる。
平原が出たあと、薫は、頑なに他の住人を拒んでいた。
その理由がわかったときは、温かい気持ちになったけど・・・心が通ったと同時に別れが来たのは切なかったなぁ~。
そして大家さんと自縛霊との関係には、驚きの真実があった!
なるほど・・・・。
大家さんも辛かったんだろうなぁ~。
皆が成仏出来るまで見守りたかった理由がわかった。
乾さんのお話は、やはりいい!
発行年月:2011年2月
唯腕村理事長となった東一は、村を立て直すために怪しげな男からカネを借りて新ビジネスを始める。しかし、村人の理解は得られず、東一の孤独は深まる一方だった。女に逃げ場を求める東一は、大学進学の費用提供を条件に高校生のマヤと愛人契約を結んでしまう。金銭でつながった二人だが、東一の心の渇きは一層激しくなり、思いがけない行為で関係を断ち切る。それから10年、横浜の野毛で暮らしていたマヤのもとに、父親代わりだった北田が危篤状態だという連絡が入る。帰郷したマヤは、農業ビジネスマンとして成功した東一と運命の再会をした。満たされぬ二つの魂に待ち受けるのは、破滅か、新天地か。週刊文春と別冊文藝春秋の連載が融合されて生まれた傑作小説、堂々の完結。
(「BOOK」デ-タベ-スより)
長い物語でしたが、不思議とスラスラ読み進めることができた。
大して面白くもないけど・・・何故か「唯腕村」の行方が気になって・・・。
新理事長の座に就いた、高浪東一だが、リ-ダ-の素質はゼロに等しい。
けれど、自分がこの村をなんとかしていかねばならない!と言う心意気は感じられて
軽薄だけど、単純明快な性格は、ちょっと憎めない。
途中から入村した美少女・真矢をリ-ダ-という権利を使い、自分の都合に合わせて利用するのはどうか?と思ったが、真矢も負けずに強かであり、この二人の今後が、この物語の後も気になる。
続編が読めたら面白いだろうなぁ~。
「ポリティコン」とは?
ソクラテスの唱えた「政治的動物」という意味だとか。
わかるようなわからないような・・・・笑
物語の舞台になっている「唯腕村(イワン村)」のなかで、鼓舞奮闘する東一はイワンのバカ。
イワンのバカは、トルストイ?
物語自体は、凄く面白いわけではなかったけど、何となく惹かれる雰囲気はあった。
発行年月:2011年2月
大正時代、東北の寒村に芸術家たちが創ったユートピア「唯腕村」。1997年3月、村の後継者・東一はこの村で美少女マヤと出会った。父親は失踪、母親は中国で行方不明になったマヤは、母親の恋人だった北田という謎の人物の「娘」として、外国人妻とともにこの村に流れ着いたのだった。自らの王国「唯腕村」に囚われた男と、家族もなく国と国の狭間からこぼれ落ちた女は、愛し合い憎み合い、運命を交錯させる。過疎、高齢化、農業破綻、食品偽装、外国人妻、脱北者、国境…東アジアをこの十数年間に襲った波は、いやおうなく日本の片隅の村を呑み込んでいった。ユートピアはいつしかディストピアへ。今の日本のありのままの姿を、著者が5年の歳月をかけて猫き尽くした渾身の長編小説。
( 「BOOK」デ-タべ-スより)
唯腕村(イワン村)のリ-ダ-的存在となった東一の逞しさには感心するけど、
なんだか危なっかしいかんじ。
村が設立当時は理想郷を謳っていたが、段々と村の活気が失われていく。
上巻では、まだまだこの物語の面白さがよくわからなかった。
けれど、読みやすく結構、早いペ-スでぺ-ジをめくっていた。
全体を通しての感想は下巻を読んでから・・・
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;