飛びこみ出産の身元不明の妊婦が急死。
それにかかわった「聖職者」たちは、
小さな嘘を重ねるうちに、人生が狂っていく……。
妊婦は誰なのか? 新生児は誰の子か?
傑作医療ミステリ。
(幻冬舎HPより)
面白かった!
医療現場を知ってる人なら、このリアル感には引き込まれるかも。
善良でプロ意識の強い、外科医の司馬健吾は、飛び込みの妊婦の帝王切開術を行う。
が・・・妊婦は原因がよくわからないまま血圧低下、意識レベル低下の後、術中に死亡。
新生児は未熟児だったが無事に保育器にて治療され、やがて退院を迎える。
この最初の場面だけで、実際の現場の様子がリアルに浮かんで、自分がそこに居るかのようなハラハラとした緊迫感に襲われました。
司馬医師は、超過勤務続きで疲れていた自身のコンデションから、もしかしたら何かミスを犯したのか?と疑心暗鬼になり、医師としてやってはならない検査デ-タ-などを隠匿してしまう。
この心理は、すごくよくわかる!
こういう状況だったら・・・・・誰もが同じ行動に出てしまうかも。
そして、ほかの登場人物たち。
病院長の大久保、
学校教育では知られる日向夫妻(敏夫・圭子)、
司馬の手術に立ち会った看護師長の春日井と
司馬の恋人でもある看護師の平井瑤子、
司馬を含めた6人の人物たちが、この妊婦死亡の事態に大きく関わっていく。
死亡した妊婦・有馬三恵の人物像も亡くなった後で、段々にわかる。
6人がそれぞれに嘘をつく。
自分にとって大切なものを守りたいために。
しかし、そのことが、自分以外の者を辛い状況に陥れていく。
6人がつく嘘には、ちゃんとした理由があり、それぞれ自分が同じ立場だったら、もしかしたら同様のことをしてしまうかも?と思ってしまうようなこと。
それが怖い。
病院経営の実態、夜間当直の医師や看護師の過酷な労働状況など医療現場の緊迫した問題点などにも触れていてノンフィクションの要素もちょっと感じた。
読後感はすっきりとは言えないけれど、リアリティさはあったかも。
そして、表紙が凝っている!!
広げると白鳥が6羽!
くら~い水辺のなかを漂っているこのかんじは物語の内容そのものだと思う!
初読みの作家さんだけど、なかなか良かった!
違う作品も読んでみたい!
創薬化学を専攻する大学院生・研人のもとに
死んだ父からのメールが届く。
傭兵・イエーガーは不治の病を患う息子のために、
コンゴ潜入の任務を引き受ける。
二人の人生が交錯するとき、驚愕の真実が明らかになる-----。
(角川書店HPより)
凄いスケ-ルの大きな物語だった!
ハリウッド映画の原作を読んでいるような気分にもなった。
日本の薬学を研究する大学院生の古賀健人の話とアフリカのコンゴでの極秘作戦に参加するジョナサン・イエ-ガ-との話が交互に語られながら話は進む。
健人は、突然亡くなった父から生前、送ったであろうメ-ルを受け取る。
それには、不治の病である肺胞上皮細胞硬化症の特効薬を作ることを引き受けて欲しいと。
研究者としての使命のようなものを感じ、それに没頭する健人。
しかし、背後にはそれを阻止しようとする大きな力もあり、自らも危険な状況に置かれる。
イエ-ガ-は、特殊部隊出身で難病に苦しむ息子のために膨大な治療費確保が目的で極秘任務に加わった。
当初目的がはっきりしなかった作戦だが、新種のウイルスに感染した少数民族集団とアメリカ人の人類学者、そして「ヌ-ス」と名づけられた3歳時の抹殺が課せられた目的だとわかる。
交互に語られる物語も面白いけど、それらが繋がっていく終盤も良かった。
自分たちと違うものは脅威だと徹底的に力で排除しようとする人間の恐ろしさも描いていた。
わたしがよく知らない残酷なことがそういった心理で沢山、起こっている事実にも気づかされた。
かなり残酷な描写も出てくるけど、事実、大量虐殺(ジェノサイド)はいろいろなところ(他国間での戦争だったり、同じ国内での内戦だったり)で行われていた。
まだ今もニュ-スで報道されないだけで実際に起きているんだろうか?
表題はジェノサイドだけど、人間の持つ、他者を理解しようとする心理の方が平和をもたらすという救いのある終わりになっていたのは良かった。
実際の社会でも、他者を理解しようと歩みよる知恵を全世界のリ-ダ-たちが率先して欲しい。
ここではアメリカのイラク侵攻とかを非難するような著者の考え方がチラチラ頭を掠めたけれど・・・・
それもちょっと引っかかってしまった。
確かにそう思うけど、なんだろう?このモヤモヤ感は?
アメリカ人の作家がこれを書いているのなら(ハリウッド映画とか)、おぉ~と感動するんだろうけど日本人が他国のことを批判するような考えの言葉には・・・・・・・。
でも、いろいろと考えさせられる物語だった。
それから・・・・理系の専門的用語の多い箇所は眠くなってしまった(汗)
これだけの専門的な用語やらを羅列されると、それを理解しようと文字を追うことに神経を遣い物語りの面白さが削がれてしまったのが残念。
主人は先に読んで「実に面白い!」と大絶賛でしたが
確かに凄い話であるけれど・・・・・人に薦めるほどの熱い感動はなかったのが事実。
高評価の作品であるということは読んで、なるほど!と納得は出来たけど・・・
この辺は個人の好みの問題かも?
よって★ちょいと少なめです・・・・・スミマセン
春の朝、土壌生物を調べに行った近所の公園で、
叔父のノボちゃんにばったり会った。
そこから思いもよらぬ一日がはじまり……。
少年の日の感情と思考を、清々しい空気の中に描く、新・青春小説。
(理論社HPより)
読むたびに思うけど・・・梨木さんって、やっぱり凄い!!
物語の主人公・コペル君は14歳。
日本人だけど、呼び名はコペル(名前は出てきたかなぁ~?)。
母親が大学で教鞭をとっていて、少し離れた地に転勤になってしまい、父親が母親の体調を心配しながら度々、その地を訪ねるいうち、いつしか母親の住む地に一緒に行ってしまった。
なので、一人暮らし。
とはいえ、すぐ近くに叔父が居て、度々様子を見に来てくれる。
叔父はノボちゃん。染織家。
そしてコペルには愛犬のブラキ氏がいる。
ブラキ氏はゴ-ルデンリトリバ-で本当の名前はブラキッシュだけどいつしか省略してブラキ氏となった。
梨木さんといえば、いままでの作品の多くに植物が出てきたけど、ここでも染織家のノボちゃんが草木から染料の素を採取する場面があるので、いろいろな植物、または生物が出て来る。
コペル君の考えることが実に哲学的。
そして会話するノボちゃんとの話のなかに、実に深いものが沢山。
人が生きていくなかで考えてみなくちゃいけないことをあれこれ提起してくれる。
コペルの友人、ユ-ジン君をノボちゃんと共に訪ねた先でも多くのことが問題提起される。
ユ-ジンは、暫く前から学校に来ていない。
その原因はなんだろ?そのわけは、ちゃんと説明されている。
なるほど・・・・・そういう辛いことがあったんだ。
ユ-ジンもまたコペルと同様一人暮らしという設定。
それだけ聞くと不自然だなと思うけど、ユ-ジンの家庭環境を考えたら、別に不自然ではない。
梨木さんの物語には、不自然さを感じない計算された設定がちゃんとされているのも凄いと思う。
ユ-ジンの亡くなった祖母の話も良かった。
表題の「僕は、そして僕たちはどう生きるか」の言葉は物語中に出てくる言葉だけど
それは、洞穴に潜んで住んでいた男性が言った言葉。
その人は、召集令状が来たが、それから逃れていた。
そして洞窟に一人潜んで何を考えていたか?というと「僕は、そして僕たちは・・・・・」ということをずっと考えていたと。
召集令状が来たら、国のため戦地に向かうことが当たり前だった時代、それをしながら生き延びたその男の人の気持ちをコペルたちが考える場面は、一緒に考えさせられた。
そして物語の全体を通して、この本で何を言いたかったのか?ということが最後にキチンと示されていた。
本文最後の方を抜粋しておこう。
・・・・・人間には、やっぱり群れが必要なんだって、僕はしみじみ思う。・・・・強制や糾弾のない、許し合える、ゆるやかで温かい絆の群れが。人が一人になることも了解してくれる、離れていくことも認めてくれる、けど、いつでも迎えてくれる、そんな「いい加減」な群れ・・・・・・・・・
そういう「群れの体温」みたいなものを必要としている人に、いざ、出会ったら、ときを逸せず、すぐさま、この言葉をいう力を、自分につけるために、僕は考え続け生きていく。
長女が先にこの本を読み
「すごい!すごく良かった!!」と言っていて
そりゃ、梨木さんの本だから良いでしょうと応えたけど・・・・
これは最高だと読んで思った。
★5つじゃ足りないくらいだけど・・・
★★★★★
「離さない。絶対に離さない。もう二度と、行かせたりしない」赦しと救いを描く慟哭の物語。
あの人に逢いたい、もう一度――。ここから人の世が尽き、山が始まる。そんな境界の家に暮らす老夫婦の元へ、ある日一人の娘が辿り着いた。山に消えた少年を追っていると言うが……。狂おしい思いにとらわれ、呼ばれるように山へ入った二組の男女が見たものは----。
『バッテリー』の著者が描く切なさと恐ろしさに満ちた物語。
(新潮社HPより)
18歳の真帆子が大好きな陽介を追って山に入る。
そして、山と人の世の臨界に住む、老夫婦・日名子と伊久男に出会う。
日名子と伊久男の家に辿りつき、食事と温かい場所を提供して貰い、好きな人を追って山に入ると告げる。
老夫婦はそれを最初は止めるが、真帆子の決心を知り、共に山へと向かう。
日名子と伊久男がどうして、この地に住むようになったのか?
最初から興味があったので、日名子が語る過去の話には惹かれた。
その話だけで書かれても良かったような・・・。
1年前に山に入ったという陽介を追っていく真帆子の存在が再び二人を山に入らせるキッカケになったんだけど、そこで簡単に陽介が見つかったことに、なんだか興ざめしてしまった。
出会えたことは、喜ばしいことなのに、なんだろ?このモヤモヤした感じは?
陽介が山に入ってしまう事になった事件の真相もよくわからないままだったし・・・・。
ちょっと今回のあさのさんの話は感動しきれず残念なかんじでした。
物語の雰囲気は良かったけど・・・。
教室の中で奇蹟が一つくらい、起きたっていいじゃないか。
森島巧は公立小学校で臨時教師として働き始めた23歳だ。
音楽家の親の影響で音大を卒業するも、流されるように教員の道に進んでしまう。
腰掛け気分で働いていた森島だが、学校で起こる様々な問題に巻き込まれ……。
(角川書店HPより)
臨時講師として小学校で音楽を教える森島巧の奮闘ぶりが良かった!
小学校の現場で今、実際に問題になっている、虐めやらクレ-マ-の保護者などなどいろいろな者に独自の見解で取り組んでいく。
他の教師が見て見ぬふりをする事にも、体当たりしていくので、一部の教師からは疎ましい存在になるが、負けるな!と応援したくなった。
小学生とはいえ、子どもと侮ってはならない。
結構、シビアに大人の行動を見て、自分の立ち振る舞いを考えている。
最初の話で起きた放火事件の真相も明らかにされたら、悪いのは大人。
次の事件、ビルマリクガメ不明事件でも、明かされた大人の身勝手な行動。
いろいろ起きる問題の殆どは、周りの大人の言動が引き金になっている。
子どもを持つ親として、考えさせらる事も多かった。
森島先生、教師の素質あると思う。
こういう先生が教育現場に沢山、居てくれたらいいなぁ~
でも、こういう先生が居ずらいのも今の教育現場なんだろうか?
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;