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読んだ本の感想あれこれ。
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5105AK3P4NL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2001年9月


『朗読者』の深い感動をもう一度。

ベルンハルト・シュリンクが「愛のかたち」を
描いた最新傑作短編集


                     (本の帯文より)



7つの短編からなる本。
どれも深い物があり、さすがシュリンク!!


「もう一人の男」
最愛の妻が病死した。バイオリニストだった妻。
その妻に届く、ある男からの手紙。
そして、その手紙に妻に成りすまし返事を書き、どんな男なのかを探る

「脱線」
ベルリンの壁崩壊後、知り合った東西の男達。
友情を感じ、親交を深めるが段々とある疑惑が浮かび上がる。

「少女とトカゲ」
幼い頃から家の壁に飾られていた少女とトカゲが描かれた絵。
その絵を父親は、ある経緯で家に持ち帰った。
その絵のことは他の人には知られない方が良いと言っていた意味を知る僕。

「甘豌豆」
妻子ある身ながら、別の女性に恋をしその女性との間にも子どもを儲ける男。
それぞれの家を行き来することに疲れた男は、更に別の女性に安らぎを求める。
だけど、いつの間にか女性達が結託して・・・・

「割礼」
ドイツ人の男性がユダヤ人の恋人との関係に行き詰まりを感じ、悩んだ末の決断は
割礼を受けることだった。

「息子」
戦地で、あれこれかつての結婚生活、息子との関係に思いをめぐらす男。

「ガソリンスタンドの女」
以前から見る同じような夢。
ガソリンスタンドにいる女性の夢。
妻とは銀婚式を迎える準備をしていたが、祝うことなど何もないことに気づき
いつのまにか愛は消えて逃げていったと感じる。



どの作品もこうして振り返ると男性目線で書かれた物語だと気づいた。
そして、ドイツ人作家らしいドイツという国が歩んできた歴史のなかにある様々な問題も含まれている。
ユダヤ人とドイツ人。
東西ドイツだった時代を生きた者達。

逃げてゆく愛という表題どおり、あまりハッピ-な内容のものはないけど、何故か読んでいて安らぐという不思議な感覚。
シュリンクのワザなのか?訳者のワザなのか?

読んではずれのない作家さんには間違いないとまだ数冊しか読んでないけど思った!
まだ読んでない作品も読ませてもらおう。


★★★★★
 
 
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41FPJZ4VMQL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2005年11月


母親から縛られた纏足をみずからはずして
江青は政治中枢にまで登りつめる
一歩を踏み出した


            
                     (本の帯文より)



なんとなく図書館棚で目について借りてきました。
いや~面白かった!

あとがきで著者が書いていますが、史実を基にした歴史小説です。
大方の登場人物は実在した人物です。
なので、よくわからない中国の歴史も少しわかりました。

毛沢東夫人・江青といえば、恐ろしい権力者で己の権力を使い多くの命を奪った悪女というイメ-ジ。
毛沢東が英雄的扱いをされた時期もあるのに、その夫人の江青には良いイメ-ジが全くない。
本当にそんなに悪い人だったんだろうか?と思っていました。

この物語は、江青の幼少期から数回の結婚ののち、毛沢東夫人の地位まで登りつめ最後は、四人組の一人として死刑判決まで受ける身になったところまでが描かれています。

毛沢東夫人になる前に、3回も結婚していたのは知らなかったぁ~。
そして、いろいろな男性から好意を持たれていたんですね~。

政治に関わる前には女優として舞台に立ち、美しい人だったことも男性から好意を持たれる要因だったんでしょうけど・・・。

でも、権力欲の持ち方は半端じゃない。
そして、女性として夫に近づく者には嫉妬心も抱き相手の女性を憎む。

兎に角、自分の思い通りに物事を運ぼうとするためなら、あらゆる手段を選ばないかんじで、その意味では怖い女性だなぁ~と思いました。
権力者となってから、自分に屈辱を与えた人物を抹殺したりしていたし・・・。

でも、最後はなんだか少し可哀想な気持ちにもなった。
尊敬し愛した毛沢東から裏切られた形になって。

子ども達も最後はそばに居なかったし・・・・・

最後、どういう気持ちで自ら命を絶ったのか?

空しいばかりの人生に思えるけど、本人はこうい生き方に納得していたのかも。


読み応え十分の書でした!!


あとがきで・・・・著者のアンチ-・ミンは江青の指揮した最後の舞台で主役に抜擢された女優だったとか。江青逮捕で舞台は幻に終わり、著者自身も江青の一派として厳しい迫害を受けたそう。
その後、アメリカに渡り、写真家・作家・画家・音楽家と多彩な才能を発揮して活躍しているそうです。

この本の表紙写真も著者自らの撮影作品。

う~ん、著者の自伝も読んでみたくなった!


★★★★★
31Z5G7N4T9L__SL500_AA300_.jpg発行年月:2005年3月


チェックイン・・・日没後
チェックアウト・・・日の出まで
最高の眠りを提供するホテル・・・
オテル・ド・モル・ドルモン・ビアン

ホテルのフロントで働き出した希里が知る、優しい対峙の仕方。


                                           (本の帯文より)

いつもちょっと不思議な雰囲気を描く作家さん。
過去の作品が気になり、図書館棚で見つけた1冊。
表紙の絵からして、ちょっと期待できるかんじなのも◎。

23歳の希里が、初めて職に就く。
面接に行くまでの様子もなんだかちょっと不思議。
そして、めでたく採用されホテルのフロント係りとしての日々が始まる。

ホテルは少し変わっている。
会員制で一見さんはお断り。
地下にあり、最下階は13階。客室数は99。
一泊8400円で食事提供はなし。
特に宣伝もしていないのに、稼働率は99%を維持し、リピ-タ-率は88%という。

ホテルのモット-は最高の眠り、最良の夢を提供すること。

そんなホテルでのあれこれ。


ホテルの従業員らしき人は、面接官であった客室係り兼、ホテル営業者の外山さん以外出てこない。
希里と外山さんのやり取りも、ほのぼのしていて、ちょっと不可解で、なんとも言えないかんじ。
その感じそのものが眠りを誘うような心地よさ。

希里の家庭環境は、ちょっと複雑なものを抱えていて、そのことで希里自身にかかる負担も多そうですが、このホテルで働き始めたことにより、そんな問題も少し良い方向に向かいそうな気配。

これは、ちょうど、寝る前(1時間ちょいで読了)に読んだので、その後、なんだか気持ちよく眠れた気がする(笑)。


★★★★


 

51hPkgHAjIL__SL500_AA300_.jpg
発行年月:2011年8月

愛は要らない、と言える狡(ずる)さも愛が欲しい、と叫べる強さもその女にはなかった。それでも――。

父親の酒と暴力に支配される愛のない家――。北海道の開拓村から奉公に出された百合江(ゆりえ)は、旅の一座に飛び込む。「歌」が人生を変えてくれると信じて。押し寄せる波に翻弄されながら一切の打算なく子を守り生き抜いた女の、他人の価値観を寄せつけない「見事」な生が、息もつかせぬ圧倒的な筆力で描かれる。新感覚のストーリーテラー北に現る。


                                          (新潮社HPより)


すごい物語だった!
一気に読ませる力にも脱帽!

物語は、最初は現代の話。
それから・・・そこで出てきた女性二人・理恵と小夜子のル-ツを知らされるような物語へと移る。

理恵と小夜子は、母親同士が姉妹。
それぞれの母親である百合江と里実の幼いころからの話が始まるのだけど、百合江の話が中心かな?
二人の両親は北海道の開拓村に住み、一家の暮らしはとても貧しい。
父親は酒癖が悪く、母親に暴力を振るうことは毎日。
幼い弟たちの面倒を見たり、家事を手伝ったりの百合江が不憫。
進学したいと思っていたのに、奉公に出されることになる。
そして今度は自分が家のなかでしていた苦労を里実が引き継ぐ。

やがて成長した姉妹は、それぞれ家とは疎遠な状態になり、自分たちの働き場所で懸命に働き、それぞれ伴侶を得る。
里実は奉公先の理髪店での働きを認められ親方の息子と結婚。
店の経営は順調で里実の采配が一家を支えるまでになる。

一方の百合江は偶然、目にした旅芸人の歌や踊りに惹かれ、その一員になる。
そして知り合った女形役者の宗太郎との間に女の子・綾子を産むが宗太郎は姿を消してしまう。

その後、知り合った役所勤めの高樹春一と結婚。
姑との同居が始まるが、この姑がとんでもない意地悪!
おまけに春一には多額の借金があった!
二人の間の子を出産時、長女の綾子を姑に預けたのだが、とんでもないことになり・・・・
春一は外で遊びまわり家には帰らない日が続く。
全部、百合江のせいだと言う姑。ホントに鬼のような人だ~。

とまあいろいろと苦労の連続の百合江。
妹の里実が居なかったら、もっと大変なことになるところだったけど、姉妹っていいな。
心強い味方としていつも里実がそばに居てくれて、読みながら、姉妹はずっと離れないで~なんて思った。

時々、大人になった理恵と小夜子の話に変わるのだけど、この二人は従姉妹という関係だけど実質姉妹と変わらないかんじ。

終盤、理恵と小夜子が百合江の二番目の夫だった高樹から話しておきたいことがあると連絡を貰い、老人ホ-ムに入所中の高樹を訪ね、聞いた衝撃の事実には驚いた!



苦労続きで幸せを掴んだと思えば、またその幸せを逃がして・・・・という百合江の人生だったけど、高樹の告白から知った事実には、百合江が知ったら、驚くかもしれないけどホッとするようなこともあって、少し最後は救われた。


兎に角、すごくよく出来たスト-リ-で最初から最後まで頁をめくる手が止まらないかんじだった!

やはり、この作家さんは凄い!
まだ作家デビュ-してからそんなに年数立ってないけど、これからの作品も大いに期待したい!!

これは、また暫くしたら、絶対、再読したいと思う!!


★★★★★
 
8a61af9d.jpg   発行年月:2011年7月

   科学に翻弄される人間の滑稽な姿を描く、現代の黙示録

   レアメタル入りのウナ ギ、蘇生した縄文時代の寄生虫、
   高性能サル型ロボット……
   科学技術発展の先に人類の幸福は本当にあるのか 
                           

                           (文藝春秋HPより)   



4つの短編からなる。
どれもとても面白かった!


「深海のELL」
駿河湾沖の漁に出た漁師たちが引き上げた大量の巨大うなぎ。
そのうなぎは異様なかんじで、目が異様にキラキラ。
体内にパナジウムを取り込んでいることがわかる。
プラチナと同様、希少価値の金属(レアメタル)をなんとか資源として使えないか?
パナジウムをうなぎから取り出す開発チ-ムが組織される。

「豚と人骨」
マンション建設予定地の地下で、見つかった大量の骨。
かなり昔の人骨と何やら獣のような骨。
調べた結果、獣は豚と予測される。
そして、骨の発掘調査に関わった者達に広まる異変。
大量の骨と一緒に蘇った寄生虫。

「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」
自分で判断して行動する猿のロボットに追い掛け回される女性の話

「エデン」
気づいたら異国の地でトンネル掘りの重労働をさせられることになった青年。
新世界を求めて63年間そのトンネルは掘られるのだという。


どの話も実際にはない話・・・・でしょう。
でももしかしたらこれに近いことはあるのかも?

全部面白かったけど、後半の2つが好き。
「はぐれ猿・・・・」は、最初は、なんとも異様なかんじでぞわぞわするような恐怖を読みながら感じるのだけど、ラストはちょっとほのぼのした気持ちになれる不思議な展開。

最後の「エデン」も最初は、変な世界から早く逃げ出せたらいいなぁ~と主人公の気持ちで読んでいましたが、ラストは、そういう生き方もありかな?
と今までの緊張感が取れて良い意味で脱力。


短編集だけど、内容はすごく充実で読むのが楽しかった!



 

★★★★★

 

 


 

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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
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