幕府海軍の最期。少年士官たちの箱館戦争を描く、書き下ろし歴史小説。
新政府に抗した旧幕府方は、榎本武揚のもと箱館に結集した。旧幕府海軍の佐々倉松太郎ら若き浦賀衆たちもこれに加わるが、開陽丸は沈没、新政府軍が箱館に迫る。歴史小説の気鋭が描く、少年たちの箱館戦争とその後。
(角川書店HPより)
大政奉還、徳川幕崩壊。
幕府の海軍に属していた浦賀衆たちは、恭順を示した徳川の意に従う諸藩とは別に、自らの武士としての力を示そうと榎本武揚のもとに結集。
そこには、かつて幕府海軍として海陽丸に乗っていた、朝夷正太郎、三郎、佐々倉松太郎、
中島恒太郎、英次郎などの若者もいた。
佐々倉松太郎と中島恒太郎は、家が近く幼い時からの友。
松太郎の父・桐太郎はかつて太平洋を横断したが、肺病を患い家督を松太郎に譲っている。
恒太郎の父は、現在隊長を務め、桐太郎とも厚い信頼関係がある。
物語では、新政府軍を敵にまわす形で戦いを続けることになった者たちが、箱館で五稜郭を築き、そこで戦いに挑む姿を描いている。
歴史的に言うところの箱館戦争ということらしいが、あまり知らなかった^^;
そこで命を落とすことを使命のように感じている若者達の想いが切ない。
そして、一緒にこの地で死のうと誓いあいながら、生き延びた佐々倉松太郎のその後。
生き延びたことを恥と思う当時の考え方。
生きて帰ることの辛さ。
しかし、その後、松太郎は浦賀に造船所を造ることに決め、その計画を実行する。
植松さんの歴史物語は、読みやすく、よく知らなかったことを学ばせて貰ってとても勉強になります。
壮絶な戦いのなかで、生き延びた若者が、苦悩しながらも生きた物語としても感動しました!
★★★★★
トレードマークは中折れ帽に渋いチェックの替え上着。
女が淡い恋心を抱いたその紳士は----幽霊だった。
兼業漫画家の立石晴奈がまだ幼かった頃、
家族旅行中に放火にあい、実家が全焼した。
燃えさかる家の中から写真が一枚出てきたのだが、
写っていたのは家族の誰も知らない女性だった。
この出来事は立石家にとって長年の謎になっている。
馴染みのバーのバーテンダー・柳井にその話をすると、常連の炭津は「名探偵」だから話してみては、という。
晴奈は炭津に事件のあらましを語るのだが・・・・・・。
(光文社HPより)
幽霊の炭津の暮らしぶりもなかなか面白く、物語のなかにいろいろ登場する謎を解決していく推理の過程も楽しめた。
幽霊の炭津は、56歳のときに交通事故で亡くなっている。
廃校になった小学校を住処にし、柳井が経営するバ-に夜になると現われ、隅の席で柳井と会話をする。
柳井は特殊な能力で幽霊の姿を見ることが出来、炭津とは、若い頃会っていた。
漫画家の立石晴奈は、ある日、酔っ払いにからまれて困っているところを炭津に助けられ、その後バ-に一緒に寄り、店の雰囲気が気に入り、毎週顔を見せるようになる。
柳井と晴奈がそれぞれ、自分の過去に起きた話で不思議に思うことを話し、炭津がそれを解決していく。
晴奈が語った、幼い頃、旅行中に自宅が家事で全焼した事件での、いくつかの謎の真相には、ビックリ!なるほど~そういうことだったんだぁ~!!
真相がわかってから、もう一度この物語を読むにも面白いかも。
時間があったら、ササッと再読してみようかな?
ラストは、炭津がこの世に留まっていた理由がわかり、切ないけれど、なんだか温かい気持ちにもなれた。
うん、面白かったぁ~!
表題の「煙」は出てきたけど、「サクランボ」は?一度出てきたような気もするけど、
よく覚えてない^^;
やはり再読しなきゃ!
でも、この著者のほかの作品も是非、読んでみたい!と思わせてくれました♪
★★★★★
自分でも理解できない感情に突き動かされ、平凡な主婦・小夜子は若い美容師に執着する。やがて彼女のグロテスクな行為は家族も巻き込んでいく……。息苦しいまでに痛切な長篇小説。
(幻冬舎HPより)
物語は、主婦・親海小夜子、その夫・光太郎。
そして、小夜子の行きつけの美容院の美容師・山田海斗の3人が代わる代わる語るかたちで進行していく。
小夜子は、40歳台の専業主婦。
高校生の娘と夫と最近、新しい家に引っ越した。
夫婦仲は悪くなさそう。
そして、近所のヘアサロン・MINTへ行き、そこの美容師・山田海斗からメ-ルを受ける。
ただの営業メ-ルなのに、小夜子は返信する。
まあ、そこまでは別に変というほどの行動ではない。
けれど・・・・その後、小夜子はなぜか海斗に固執していく。
彼のアパ-トを探し当てたり、行きつけだと言っていた飲み屋を見つけたり・・・・
留守中に買い物したものをドアノブにかけて来たり・・・・・
ちょっと変わったおばさんくらいの認識だった海斗と、その恋人・唯も、段々、小夜子の行動に気味悪さを覚えてくる。
読んでいながらも・・・・なんだかイヤな人だな・・・と思いました。
特に、海斗のことが好きだとか、海斗とどううこうなりたいとか思っている様子は、ないのに
行動が意味不明で怖い。
夫の光太郎は、そんなちょっと「?」とは思いながらも短絡的に解釈してるのみ。
光太郎の物の考え方もちょっと可笑しい。
海斗の恋人・唯がついに小夜子の行動の異常さを暴露しに小夜子の元に乗り込んで行ったが、光太郎の発言に怯む。
ああ、この夫婦は、お互い、お似合いだ・・・と変な安心感を覚えてしまった^^;
ずっと嫌なかんじの雰囲気だったけど、なんだか最後のこの場面で、スッと解消。
なかなか面白かった。
スト-カ-行為って、こんな風にも生まれてしまうんだと、ちょっとショックだったけど、
気づかないうちに他人から見たら、行き過ぎた変な行動って、誰にも起こす可能性あるってことだな。
この表題の意味を考えると、なかなか深いと思う。
物語のなかに特に「木琴」が出てくるわけではないので
自分なりに想像するしかないけれど・・・。
心臓外科医は、なぜ消えた?
「ドナ-予定者」「友のいない男」「関西弁の呟き」
かすかな手がかりを、元刑事・鹿川奈月が追う!
医療ミステリ-界の気鋭が贈るノンストップ・サスペンス!
「私は孤独意外の何ものでもなかった。でも現実から目をそらし、憑かれたように動いた。佐藤基樹も、そういう生活をしていたのだろうか?」
肝臓移植のドナ-になるはずだった心臓外科医・佐藤基樹が失踪した。佐藤はかつての恋人・遼子から捜索を頼まれた元刑事・鹿川奈月は男の生まれ故郷を訪ねる。しかし、以前そこにおた「佐藤基樹」はまったくの別人だった。“佐藤”とは何者なのか?そして、なぜ逃げるのか?足取りを追う奈月は、孤独な男の影にいつしか自らを重ね合わせていた・・・・・。
(祥伝社HPより)
最初は、状況を飲み込むまでちょっと戸惑いましたが、途中から面白くなりました。
心臓外科医として信頼される仕事をしながらいた人がなぜ、突然、失踪したのか?
すごく疑問を持ちながら・・・・
そして、追う奈月が真相を掴んでいく様子が面白かった。
「佐藤基樹」と名乗っていた外科医の本当の名前は、棚田弘志であり、どうして名前を捨てて逃げ
どういう経緯で佐藤基樹になったのか?
ラストで明かされ・・・・・なるほど~といっぺんに納得出来ました。
言ってみれば、勘違いなんですが・・・・こういう状況にもしも追い込まれたら、あり得る話ではあると思う。
途中のハラハラドキドキ感も楽しかったし、真相が分かった後の、後日談にもホッとした。
まあまあ楽しめる作品だったと思います。
医療ミステリ-というには現場から離れ過ぎの話ではありましたが・・・・^^;
元刑事の奈月が、またどこかで登場する話しが読めるといいな。
逝ってしまったきみへの追想と祈り----。少年と教師、ひと夏の恋。
追悼式の日、合唱隊が歌い、彼は目を閉じる。夏休みの小さな港町で、少年は美しい教師に恋をした。海辺の出会い、ヨットレース、ビーチドレスと短い黒髪、そしてホテルの夜……織りなす記憶の重なりは、やがて沈黙に満たされる――妻を亡くした巨匠レンツが祈りを紡いだ物語、ドイツでベストセラーとなった清冽な恋愛小説。
(新潮社HPより)
物語は、学校の講堂での追悼式の場面で始まる。
その学校で英語を教えていた教師・シュテラ・べ-タ-ゼンの追悼式。
彼女は、生徒たちに人気があり同僚からも高く評価されていた。
そして、その追悼式のなか、一人の青年・クリスティアンは特別な想いでそこに居た。
先生と過ごした時間を思い出しながら・・・・
一言で言うと高校生と女教師の恋物語を描いたもので、そういう話は結構、過去にも読んだし、物語としてはありがちな設定です。
でも、物語のうしろにある背景が頭に浮かび、それがとても美しい。
海辺が近い場所が舞台で、そこで過ごす二人の姿はロマンチック。
状況として、よくわからない部分もあるのだけど・・・・
例えば・・・シュテラはクリスティアンになぜ、そしてどこに惹かれたのか?
事故の起きたときの状況もちょっとよく分からなかった。
それは、まあ置いておいて
80歳を過ぎてもこういう恋愛話を書けるレンツって、素敵だな。
ほかの物語も読んでみたくなった。
こういう雰囲気のある小説って好き。
海外の作品ぽくて・・・。
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;