この世はすべて幻影?
震災後の生と死を鋭く問う問題作
郷里を離れ東京で酒造メ-カ-に勤める熊沢武夫。
震災後に起きた不思議な出来事をきっかけに、
ある女性の顔が浮かぶ・・・・
(文藝春秋HPより)
予備知識なしで読んだので・・・^^;
冒頭に、起きた不思議な現象を読んで、パラレルワ-ルド的なはなし?と思ってしまった。
郷里の母から電話で、「こっちに帰って来てたのなら、知らせなさい」と言われ「?」と思う主人公・武夫。
バス停付近にあったネ-ム入りのレインコ-トを駐在さんが届けてくれたという。
そして、ポケットには子どもの頃からの好物m&mが入っていた。
郷里に帰った覚えは全くない武夫は混乱する。
そして、そのコ-トを送ってくれるように母親に頼む。
届いたコ-トは、自分が少し前に百貨店で購入したものと同一で、自宅にちゃんとそれはあった。
そして、m&mのほかに、内ポケットから、SDカ-ドも出てきた。
そして、そのなかに入っていたデ-タは、武夫が仕事用に使っているSDカ-ドと全く同じであった。
ただ、知らない女性の写真など、自分で撮った記憶がない画像もあった。
不思議なことが次々起きながら、その真相ははっきりとはわからない。
でも、そんなことがあっても別に不思議じゃないのかも・・・・なんて物語を読んでいくうちに思ってしまった。
物語のなかには、3.11の震災も出てくる。
武夫の祖父が話してくれた過去の大水害の悲惨な状況も。
人が死ぬことについて書かれていた。
死だけが誰にも訪れる平等なこと。
そのほかのことは幻影のようなものなのかも。
そんな風に考えると、どんな辛く哀しいことが目の前に起きても少し受け入れられるかも。
読みながら、「死」とか「時間」について、考えさせられた。
なかなか深い話でした。
★★★
第4回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞作。地味で無口な28歳派遣社員・潔子。職場でいやがらせに遭うが、アパートで潔子を待つ飼い猫は、実は「猫魂(ねこだま)」なる憑き物! 潔子の怒りが頂点に達したとき、猫魂と一体化して美女に変身! いやがらせしてくる敵の憑き物に仕返しします! 妖怪×仕事人のコミカル・アクション
(メディアファクトリ-HPより)
先に読んだ、デビュ-2作目の「海に降る」がとても良かったので、こちらのデビュ-作を読みました。
なかなか面白い設定でした!
主人公の田万川潔子。
田万川家は夏梅種の家筋で、猫魂を自身に憑依させて、無敵の力を得ることが出来る力を、持っている。
潔子は、その唯一の末裔なのだが・・・・・本人にその自覚はなく、猫魂が憑依するとき以外は弱気で冴えない。
そのため、いろいろな人から理不尽な扱いを受ける。
が・・その相手は、憑き物(おにひとで、アライグマ、西洋たんぽぽ、フィレット)により潔子に災いをもたらしている。
派遣社員として昼間は働く潔子が、帰宅しては嫌な目にあったのを憂いている姿を飼い猫のメロが、特殊な能力により、潔子の脳のなかから抽出する。
潔子の負の感情が激しくなることで、メロの猫魂が潔子に憑依し、膨大なエネルギ-を生み出す。
そうすると、普段は冴えない潔子が風貌からして、美しく変身。
潔子に理不尽な態度を取った者たちに反撃していく様子が面白い♪
猫好きには、たまらない愉快な話でありました(^^)
面白いなぁ~。この著者。
もっともっといろいろな物語を読ませて欲しいと期待しちゃう。
その忠義、剛勇、鎮西一の武将なり!
筑後柳川の立花宗茂は、秀吉の九州攻めで勇名を馳せ、
関ヶ原で西軍に属して改易となり、
のち旧領に戻れた唯1人の武将である
(文藝春秋HPより)
初めて読んだ葉室作品。
主人公は、立花宗茂。
恥ずかしながら・・・・名前も知らなかった人物でしたが、物語を読んだら、素晴らしい人物だと思いました。
豊臣秀吉に気に入られ小田原攻めの際に
「東国に本多忠勝、西国に立花宗茂 ともに無双の者である」と言われた。
が・・・その後、関が原の戦いで破れ国を失い、牢人同然となる。
しかし、己の信ずる義を貫き通し、牢人同然の身でも常に宗茂の周りには仕える者たちが居た。
宗茂の義は「決して人を裏切らぬこと」。
戦乱の時代には、それを貫くことは覚悟がいることだった。
牢人の身になったほかの武将達が、家康の母の葬儀の場で家康を討とうとする場面では、20人ほどの関が原牢人をたった4人で倒し、家康を守った。
そのことを自らは報告せず、立ち去る・・・・格好いい!
宗茂の正室・誾千代との関係も最初は冷めたかんじであったのが、戦いに敗れた後、側室の元ではなく先ず、誾千代のところに報告に行き、夫婦の絆が強まった。
誾千代もまた格好よかった!
ほかにも出てくる武将達。
真田信盛、伊達政宗。
武将たちの格好いいところだけを書いているかんじもちょっとするけど、読んでいて気持ちがいい。
ほかの葉室作品も読んでみたくなった!
ちなみに・・・・
次女に「立花宗茂って知ってる?」と聞いたら・・・・・・
「ああ~知ってる、戦国武装(ゲ-ム)に出てくるからね・・・・立花勢ならほかに誾千代も出てくるよ」と。
恐るべし、戦国武装。
結構、歴史上の人物を学べるゲ-ムなんですね~(笑)
★★★★
これも、健啖。読書の快楽を味わい尽くす!
ドゥマゴ文学賞受賞から5年、食と生活のエッセイストとして活躍する著者が、読書の魔力をがぶり味わい尽くした名随筆。獅子文六、池部良、沢村貞子…昭和から平成へ全103冊の芳醇をご賞味あれ。
(集英社HPより)
第一章 贅沢してもいいですか?
食のエッセイを多く書いている著者だそうで、美味しそうなものがあれこれ登場しますが、太宰治が食いしん坊で大食漢だったのは知らなかったなぁ~。
値段も見ずに本を買う。しかもいっぺんに何冊も。そんなとき、神様に問うてみるのが
贅沢してもいいですか?
なるほど、なるほど・・・
第二章 わたし、おののいたんです
いろいろな作家さんの本が登場してきます。
どれも名前は知ってるけれど・・・書物は読んだことない方ばかり。
宇能鴻一郎、池部良、獅子文六、沢村貞子など。
沢村さんの「わたしの献立日記」は、興味あるなぁ~。
いつか読んでみよう!
第三章 すがれる
まず、「すがれる」って何?と思って調べたら・・・・
末枯れる・・・・・盛りが過ぎて衰えはじめる とありました。
ひとつ言葉を覚えたな。
しかし、「野蛮な読書」とは、また巧い表現だな。
日々の生活を送るなかで、本で読んだことが、ふと浮かんでくるなんて、わたしには殆どないことで・・・・
これを野蛮というのなら、わたしの読書は、なんと例えたらよいだろう??
食に関する著者のエッセイもちょっと興味あるので、
そのうち読んでみたい。
★★★★
演劇集団キャラメルボックスとのクロスオーバーから生まれた、物語の新しい光!
編集者の古川真也は、幼い頃から触れたものに残る記憶が見えた。ある日、同僚のカオルの父親が、20年ぶりに帰国する。彼はハリウッドで映画の仕事をしているはずだったが、真也に見えたものは――。表題作ほか、実際に上演された舞台に着想を得て執筆された「ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel」。
有川浩が贈る、物語の新境地。
(新潮社HPより)
面白い試みだな。
「ヒア・カムズ・ザ・サン」も「ヒア・カムズ・サン Parallel」も主な人物は同じ。
30歳の古川真也とその同僚の大場カオル。
主人公は真也かもしれないけど、カオルの父親との関係を描いている。
カオルの両親はカオルが幼い時に離婚していて、父親は渡米し、以後会っていなかった。
最初の話では、カオルの父親・白石晴男は事故で亡くなっている。
そして、脚本家として有名なHALはカオルの父親。
その代行者としてカオルの父と長年の親友でカオルの幼いころもよく知る榊宗一がHALの意志を継ぎ来日してカオルたちの前に現われる。
二番目の話では、カオルの父親・白石晴男がアメリカから20年ぶりに来日する。
自身はアメリカで有名な脚本家のHALだと言うが・・・・
実際は、離婚しアメリカンドリ-ムを夢見たが、上手く行かずに撮影現場の助手止まりだった。
撮影現場で女優を庇って大怪我をし、失明の危険もある身。
視力があるうちに娘に会いたいと思っての来日だった。
両方ともカオルを愛する人たちの想いが溢れる温かいお話だった!
物に触れることで、その所有者の想いを汲むことが出来るという特殊な能力を持った真也の行動や言葉にも感動。
祖母から言われた『自分の得のために能力を使ってはいけない』を意識しながら行動している姿は好感が持ててよかった。
カオルは沢山の人に愛されて幸せな女性だなぁ~。
同じような筋書きなのに、こんな風に違う話で、しかも感動させてくれるとは、有川さんって凄いな!
★★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;