「月の街」「山の街」と呼ばれる韓国の貧民街に住む、何も持っていなくても心に愛を持つ人々が織りなす、ささやかだけれども幸せを運ぶ実話集です。
翻訳出版にあたり数冊に及ぶ原作からストーリーを厳選して抜粋・収録。
時代や国境を越えた感動を呼ぶ物語が凝縮されています。
(ワニブックスHPより)
本書の著者・イ・チョルファンは韓国では有名な作家さんらしいです。
その著者が、「月の街、山の街」という貧しい暮らしをする人たちが集まっている街の出身で、そこで暮らす人たちから聞いた話をまとめて本にしたものだとか。
お話は、ひとつひとつ短くて29編。
どの話も心を温かくしてくれました。
そこに登場する人たちは、貧しく、また健康でなかったりですが、他者に対する思いやりの心はとても豊か。
日本の終戦直後を思わせるような雰囲気もあるなかで、でもやはり、日本とは違う場所の話なんだと感じながら読みました。
一番、心に残ったのは「優先席」。
1ペ-ジちょっとのとても短いお話でしたが・・・
おなじような話を聞いたことがあったので、この話のなかの足の不自由な女性の気持ちを考えたら切なくて・・・
見た目で判断して「若者なのに・・・・」と席に座ったままの人を非難の目で判断するのは自分もやめようと思った。
人を非難することは、極力控えて、ただ人のために自分が出来ることだけに心の目を向けて生きて行けたらいいな。
道徳の教材になりそうなお話ばかりだなぁ~と思ったら、実際、韓国では国語の教科書に著者の作品は多く載せられているそうで、納得!
草彅さんの訳もよかったし、挿絵も素敵でした。
★★★★★
発行年月:2011年4月
六本木の超高層ビルがジャックされた!犯人は今、何を望む-------?
「我々は、ウインドシア六本木をビルジャックした!」
ビル会社社長を人質にとり、最上階に立てもこる犯人。地上で手をこまねく警察を前に、17階のオフィスにいた船津康介はある奇策を思いつくが・・・・。最先端技術を極めた都市の要塞と、どんな時代にも変わらぬ人々の「思い」が交錯する、どんでん返し満載の城攻めサスペンス。
(新潮社HPより)
冒頭のプロロ-グが後の物語にどう関係してくるのか?予測しながら読んだので、ビルジャックの犯人とビル会社社長は、きっとプロロ-グで登場の人物たちだろうと想いました。
そして、その通りだった(笑)。
なぜ、ビルジャックに及んだのか?
そのあたりの犯人側の気持ちもあるのだけど、イマイチ共感出来なかったなぁ~^^;
緊迫した状況でありながら、ビルの管理会社の企画事業部社員・船津を中心にした社員たちや、犯人側のメンバ-の様子は、なんだか緩いかんじで、会話も結構、面白い。
事態は警察も介入するほどのものなのに・・・
最後のどんでん返しと言われる部分は、ちょっと「おっ!」と思ったけれど
全体的にはちょっと拍子抜けなかんじで、消化不良気味の読後感。
しかし、高層ビル内の知らなかった構造やら管理方法なんかがわかったのは面白かったな。
好きな作家さんだけど、物語としてはこちょっとハズレだったかも?
サスペンスとは言い難いし。。。。
人情物語の要素の方が大きいようなかんじでした。
好きな作家さんだから、期待しすぎたのが良くなかったか?^^;
★★
唯一の被爆国が、
なぜ原発大国に?
世界で唯一原爆を落とされた国が、なぜ原発大国になったのか? そのつながりを圧倒的な想像力で描き出す。歴史を振り返り、これからの「核」の話を始めるきっかけになる一冊。
(筑摩書房HPより)3.11後、いろいろなところで原発問題を耳にするようになったし、そんな書物も幾つか読んではみたけれど、
難しい話も多く、正直、よくわからなかった。
しかし、この本に書かれていることは全てスッと入ってくる。そして、胸に残る言葉が多かった。
何がわからないのかすらわからない原発の問題だったけど、なるほど!!と思うことばかりだったように思う。
田口さんの筋道立てた考え方に共感!
歴史的背景から考えた原発問題。
人間の心理から考えた原発に対するさまざまな意見。
副表題でもある「原始力を受け入れた日本」のことも、なるほど、そういう経緯があったからなのか?と納得。
勿論、これに対する反論を持っている識者もいるんだろうけど
わたしには、納得出来る言葉でした。
最後の章で書かれていた、今後の原発に対する日本の対応に感じる危惧。
原発反対と言うだけで、悪の象徴のように扱うだけではダメなんですね。
一度持ってしまったものは、簡単には無くせない。
それ相当の科学技術をもって管理し続ける体制がないと、再び危険なことが起きてしまう。
それに関わっていく人たちに対する我々、国民の意識も少し変えていかなくてはいけないのかも。
この書はわかりやすので、未来を担う子どもたちにも是非、読んでほしい。
中学生くらいならわかるだろうから・・・。
ランディさんの小説が好きだけど、ますます好きになれた。
いつかどこかの国の、王や王女たちのお伽話集。
まじめで滑稽で愛すべき彼らを時にシニカルに描く─
何かを気づかせてくれる七話。
(理論社HPより)
どのお話もつづきが気になり、サクサク読める。
今まで知っているお話にちょっと似ているけれど、全く別のお伽噺。
「おめざめですか、お姫様」
朝、起きて別の人になって違う生活を体験したいと願うお姫様のはなし。
「バカなんだか利口なんだか」
つりをしていたら、小人が釣れた。
愛馬を亡くしたことを嘆く若者に小人がくれたにんじん。
それは金と銅とふつうのにんじんだった。
「きみの助言」
ふたごが忌み嫌われることから森のきこりの元で暮らしたふたごの妹姫。
優しく賢い姫だが、お城で暮らす姉姫はわがまま放題。
あることがおき、再びお城に連れ戻された妹姫は、ふたごのたまごの亡霊と出会う。
「魔法のパン」
痩せた土地ゆえ作物が上手く実らない国の若い女王。
町に出て人々の様子を窺うと悪口を言っている者が多いことに気づき
悪口禁止令を出す。すると病人が続出。
栄養失調によるものかもしれないと識者から言われ悩む。
そしてある日、行商人からパンの実を譲り受け、国中に、その実をわける。
「ウミガメの平和」
几帳面な王子は、まん丸のウミガメのたまごを食べたがる。
そして、一日の過ごし方は、予め書いた日記の通りにしないと気がすまない。
そしてある日の日記。それはウミガメのたまごを食べる為にいっぱいとると決めた前の日の日記。
「呪われた王子たち」
美しさと強さを手に入れた奇跡のような王子。
しかし、それを一番知っているのが当の本人というところがまずかった。(本文より)
「木霊が住む谷」
魔物が住みつく場所だから入ってはいけないと村人たちが言っている森のなかで迷子になった少年。
そして、そこにいた人たちと出会い、仲良くなる。
村人たちに彼らのことを理解して欲しいと思うが、事態は逆の方に。
どの話もよく出来たお話。
ブラックなユ-モアもあり、クスッと笑えるユ-モアもあり、次はどんなお話だろうか?と1話ごとに期待しながら読みました。
特に気に入ったのは「きみの助言」。
ちょっと切なくなったけど、良かったのは最後の「木霊が住む谷」。
この著者の「頭のうちどころが悪かった熊のはなし」も良かったなぁ~。
表題にもセンスの良さを感じる。
ほかの本も読んでみよう。
★★★★★
朝日新聞連載小説の単行本化。著者は芥川賞を受賞した初めての中国人作家。貧農の子・二順は雑技学校に通っていたが、怪我のため調理師をめざす。彼が作る巨大な肉団子「獅子頭」は評判を呼び、妻子を中国に残して日本の中華料理店へ。同僚の中国人、ウェイトレスの日本人女性、予想外のカルチャー・ギャップ……気の弱い二順は日本でどう生きていくのか。力強い明るさにみちた波乱万丈の成長小説。
(朝日新聞出版HPより)
ちょっと厚い本(450頁ほど)だけど、読みやすいので、スラスラと読めました♪
楊さんの物語は、中国人の考え方や暮らしぶりがよくわかって、興味深いことばかり。
物語の主人公は張二順(ジャン・ア-シュン)。
1967年、彼の出生時から始まる物語。
舞台は中国の田舎から大連、そして日本へと移っていく。
両親は貧しい農民だったけれど、伯父が大連で裕福な暮らしをしていて、その伯父の力で父親が雑技団の調理師としての職を得、二順も7歳で父親に次いで大連に渡り雑技団に入学する。
調理の経験などない父親だったが、一生懸命、調理を覚える。
練習が終わり、食堂で食事を貰う訓練生たち。
父親はそっと二順のご飯のなかに小さな肉団子=獅子頭を入れてくれる。
物語は、場所を変え、二順に関わる人も変わるのだけど、いつも獅子頭がある。
雑技団を怪我で辞めたあとは、調理人の道に進む二順。
そして、妻となる雲紗(ユゥンシャ)と出会う。
結婚し、娘・雲舞(ユゥンウ-)も生まれ、幸せな二順だったけど・・・・波乱万丈な暮らしへ移って行く。
やがて単身で、日本に渡り、そこで料理人として働く。
中国人が思う、日本の文化のあれこれは、なかなか新鮮。
蕎麦屋で蕎麦を食べる場面は面白かった。
中国人って、そういう風に考えるのかぁ~。
波乱万丈な暮らしのなかでも、悲壮感が感じられないのが救い。
二順が出会う人たちは、みな、気持ちが優しいひとたちで、だからそれに甘えてしまうダメな二順なんだけど、憎めない。
日本で別の家庭を持つことになるのだが、妻となった幸子には愛情をあまり感じない二順。
なんでじゃあ結婚したの!?と思うところだけど、そこには中国人ならではの政治的背景が絡んできている。
幸子と結婚しなくては、強姦罪にされ、国に戻され政治犯となってしまうと恐れが強かったから。
二順の無知がそうさせたんだろうけど、時代的背景や暮らしてきた環境を考えると、そういう考え方をする者は別に特殊じゃないのかも。
日本人には、ちょっとわからない考え方だけど。
成り行き任せの感が拭えない二順だけれど、なんとなく幸せな暮らしが出来そうか?と思えるラストで
ホッとするような気が抜けるような変なかんじ。
でも、なかなか面白い一人の中国青年の生き方でした。
料理屋が舞台なので、美味しそうな料理がたくさん登場するのは楽しかった♪
本場の獅子頭・・・どんな味なんだろ?
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;