朝日新聞のルポルタージュ連載記事の書籍化。
福島原発事故による放射能汚染は、なぜこれほど多くの被害者を生んだのか。
政府、官僚、東京電力、そして住民。それぞれに迫った、
気鋭の取材記者たちの真実のリポート。
(学研パブリッシングHPより)
副題の明かされなかった福島原発事故の真実というののが凄くインパクトありますが、
本書で読んだ内容には、驚くことばかり。
なぜ、こんなに大事なことを知らせなかったのか!?
怒りが沸いて来ました。
これを知ったところでどうなる?とも思いますが、知らないでいるより知った方が、今後のための対策が打てると思うし、ある程度の覚悟も持てるんじゃないかな?
原発事故の起こったあの日、福島の人たちはどうやって避難していたのか?も体験談で知り、想像以上の苦労があったことを知り、今も尚、苦労されている現状が少しでも解消されることを願うばかり。
またあの日の官邸の様子もリアルに描いていた。
あのとき、首相だった菅さんには、いろいろな厳しい指摘も多いけれど、あれが出来る限りのことだったんだと思えた。
言葉の一部だけを捉えて批判されてしまう官僚だけど、こういう流れのなかでの発言だったのか?とあの頃のメディアの報道を振り返りながら考えさせられた。
こういう書は、多くの人が読むべきだと思う。
特別チ-ムをつくって、取材を続けている特別報道部のチ-ムの皆さんには、どこかで圧力がかかっているでしょうけど、屈しないで真実を伝え続けるという信念を貫き通していただきたいなと思う。
本書で一番驚いたのは、
SPEEDIというシステムの存在。
政府が130億円を投じて開発したシステムで、放出された放射性物質が、どう広がっていくのか、風向きや風速、地形を計算し飛ぶ範囲を予測するシステム。
あの日、その予測結果が全く、活かされなかったことが一番の問題。
官邸の中枢部はそのシステムの存在すら知らなかったという。
政府がお金を投じたのに、その存在を知らなかったってどういうこと!?
これから、時間が経てば、内部被爆の被害がどんどん出てきそうで怖い。
特別報道部による真実の追究を今後も追っていかなきゃ!
と思ったら、第二弾が既に刊行されていました。
そちらも読んでみようと思います。
★★★★★
島の子どもたちと“ぐうたら先生”が織りなす
感動の物語
教師から疎外された喧嘩屋といじめにあう少女-------
不幸を背負った2人は、ひたむきに幸せの道を探す。
(潮出版社HPより)
表題からしたら、のどかな島の学校の話かと思いますが・・・・
問題が山積みの学校が舞台でした。
東京の中学から伊豆諸島の離れ小島に赴任して来た教師・柏木真介。
娘の加奈子は中学1年生で真介が赴任した同じ学校の生徒になる。
真介が東京から赴任した経緯は、生徒への体罰が問題になったから。
しかし、その真相を知れば、真介ばかりを攻めるのは酷な状況である。
むしろ、教師らしい教師だと思う。
そして、赴任先の校長・岩崎も真介の東京で問題になった行動を擁護し、そのままの姿勢で、この学校を改革して欲しいと頼む。
すべての責任は校長である自分がもつという。
最初は、自ら「ぐうたら」と言い、生徒の行動に意見したりすることなく野放し状態だったが、校長の言葉や娘の「お父さんは悪くない」の言葉もあり、見過ごすわけには行かない状況にぶつかっていく。
喧嘩ばかりの不良のレッテルを貼られている東野。
親が島の有力者であることを盾に皆をまとめているいじめっ子の梨果。
梨果のいじめのタ-ゲットにされている律子。
母親がモンスタ-ペアレンツで授業妨害の常連者の小西。
学級委員長の坂崎。
真介と共に学校改革を目指す、養護教諭の真由子。
どうなることか?と思った問題だらけの学校が少しずつ真介の体当たりの対話で良い方向に向かう。
途中、東京で真介が体罰をすることになった生徒・林田の登場で、一騒動起きた時には、怒りが沸いてきた。
林田をけしかけた梨果にも同様。
こんな子どもたちが大人になったら、恐ろしいとも思った。
真介や岩崎校長が、子どもたちの間違った意識を真剣に正そうと自らの保身を一切捨てて臨む姿には感動した。
日本中の教師たちの意識がこういう風であって欲しいと思った。
巷でいろいろ問題になる教育現場がこういう意識で生徒に接する教師たちばかりだったら、哀しい事件も今よりずっと減ると思う。
読みながら、いろいろと考えさせられた。
心がほっとあたたまる、最高のお仕事小説
ダメ夫と離婚後、息子を連れ地元に帰った茜。何とか見つけた再就職先は、成績も経営も低迷中の地方球団アリゲーターズだった。個性的すぎるスタッフや選手との悪戦奮闘の日々が幕を開く。
(集英社HPより)
ササッと読めて楽しい、山本さんのお仕事小説。
プロ野球チ-ムだけれど、華やかさに欠ける独立リ-グ。
アリゲ-タ-ズの面々が愉快。
球団職員になった藤本茜は離婚して可愛い一人息子(6歳)を母親の元に預けて、球団のお仕事に奔走。
一番の大役は、チ-ムのマスコット、乙女なワニのアリ-ちゃんの着ぐるみで踊ること。
野球の試合の場面より、それを離れた場所でのやりとりが楽しかった。
なので、野球をよく知らなくても逆に楽しめると言う点がよかったかも。
元プロ野球選手で現在はチ-ムのゼネラルマネ-ジャ-・芹澤がなかなか格好いい。
泣き虫投手の荻野目選手もいいかんじ♪
物語の終盤には、芹澤が現役復帰して、茜が代わりにマネ-ジャ-になる?という終わり。
そうなったあとのアリゲ-タ-ズもちょっと気になるなぁ~。
プロ野球球団もひとつのお仕事と考えれば、今回の職場の人間関係も◎。
読んでいて楽しかった!
時代も場所もバラバラな世界を「箱庭」に見立てて、
短編の妙手である直木賞作家が紡いだ、笑いあり、
涙ありの少し不思議な連作小説集。
(PHP研究所HPより)
短編集のかたちを取っている本書。
出だしからちょっと不思議。
8歳の箱庭療法をしていた少年がいなくなったと母親が慌てている。
買ったばかりの白馬も消えている・・・・最初の話「旅に出ないか」
そして、短編集のようなかたちでいろいろなお話が始まる。
「ミッちゃんなんて、大キライ」は
ホラ-作家志望のシュシュだが、選評は、リアリティがないというお決まりのもので二次審査止まり。
そして、幽霊がいるというアパ-トに引越すけれど、自分の前には出てこない。
幽霊はミッちゃんというらしいが・・・・
シュシュのその後が気になりつつ、次の話を読んで、最後の話に近づいたところでの「七号室の秘密」で再びシュシュが登場。
無事に作家になれたようで、良かった!!
ミッちゃんの秘密もわかりました。
その次の「オツベルと象と宇宙人」は、変な話だったけど、
不思議な魅力のある話で、こういうの結構すき。
SFだけど、宇宙人、気が弱過ぎ。オツベルが怖いものなし過ぎるのか?
幾つかあるお話は、どれもよかったけど
もの悲しいかんじがするのが朱川さんらしくていいかな?
「秋の雨」は特によかった。
亡くなった孫が雨の日だけ祖母の元にやってくる。
「クリスマスの犬」もちょっと変わっていて面白かった。
振込み詐欺を働いて得た50万円をバイクに跳ねられて瀕死の犬の為に使う男の話。
バラバラのような話は、少年が白馬と箱庭のなかを旅しながらの風景で、まだまだ帰らないみたい。
ということは続編みたいに出るのかな?
そしたら、また楽しめそう。
朱川さんのいろいろな雰囲気の話が楽しめました♪
はるか昔、倭国の平和のために海を越え大陸をめざした人々がいた。それは、失われた歴史をつむぐ朝貢の旅。
いまにつながる、この国のはじまり。
日本人のルーツを壮大なスケールで描く、書き下ろし歴史ロマン小説
使譯(しえき/通訳)一族に伝わる四つの教えが、国を和の心へと導く――。
●人を裏切らない。 約束は守り、恩や親切を受けたならば、返さなければならない。
●人を恨まず、戦いを挑まない。 恨んで戦うと、天の恵みが受けられなくなる。
●良い習慣は才能を超える。 絶え間ない良い習慣があれば、才能など何の重みもない。
●骨休めは仕事と仕事の転換にある。 仕事の中味を変えるのが、骨休めなのだ。
(講談社HPより)
舞台は邪馬台国でしょうが・・・微妙に設定を変えて帚木さん独自の邪馬台国の話として成り立っていたかんじでした。
主人公は、日御子(卑弥呼)ではなく、代々、他国(漢)のことばを学び子から孫へと教えを受け継いでいく一族たち。
灰、圧、針、江女、朱、炎女、在、銘、治。
言葉の勉強とと共に大事な掟も守り抜き、それが国の和平にも繋がっていく。
一族は、遠い昔は漢の国から辿り着いたという。
そして弥魔大国(邪馬台国)を北九州北部に設定している。
実際の邪馬台国はどこにあったのか?歴史家たちの間でも諸説あるそうですが、この物語を読んでいると
この物語の通りでも違和感はないな・・・と思えた。
邪馬台国、卑弥呼・・・は学校の歴史で習ってはいるけれど、こうして物語で読むと、まだ日本の国内のなかに幾つも国があり、それぞれ王がいて、争いを繰り返していた時代に、平和な国づくりをするために努力した卑弥呼の偉大さを知ることが出来た。
読み応え十分の歴史ロマンでした!!
★★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;