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読んだ本の感想あれこれ。
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ecca7fba.jpeg発行年月;2012年7月

直木賞受賞の実力作家が描く感動作!
博多八景を背景に哀切な恋の行方と様々な事情で離ればなれになった男女の人生が交錯する。静謐な筆致で描く女絵師と狩野派の絵師との創作を通して交流する魂。
涙と感動を呼ぶラスト! 傑作時代小説!


                    (徳間書店HPより)


読む前から期待が高まる作家さんの新刊本!
期待を裏切らない作家さんとしては、わたしのなかでピカイチかも。

そして今回の作品も素晴らしいの一言です!!
泣けました。


主人公は26歳の女絵師・里緒(絵師としての号は春香)。
里緒には、忘れられない人が江戸に居て、いつか自分の居る博多に戻って来てくれると信じて生きている。

ある日、呉服屋の亀屋藤兵衛から呼び出され、<博多八景>を描いてほしいと言われる。
わけあって、師である衣笠春崖から破門されていた里緒だったが、藤兵衛に里緒を紹介したのは春崖だった。
そして、博多八景の創作が始まる。

八つの景色を描くため、それぞれの地を訪れ絵の構図を決める。
藤兵衛から、外歩きのお供として、お文が遣わされる。
お文は、父親がやくざ者を殺めた罪で島流し。
その母親は、父が殺めた男と密通していた罪を受けていた。

里緒の想い人との行く末も気になるところでしたが、それぞれの景色を描くに当たって出会う人々にもそれぞれの思いがあり、その思いの行方がひとつの物語として成り立っていた。

大切な人を想う気持ち。
大切な人を待ったり、失ったり・・・切なく苦しい恋模様も数々あった。


大抵の恋が切なく哀しい結末ですが・・・・
里緒の師である、春崖が思いを寄せ合いながら成就することなく離れて暮らしていた、お雪と再会することが出来たのはよかった!!
春崖は最期、幸せだったでしょうね~。


そして、里緒の想い人・杉岡外記との再会は・・・・・?
ラストは泣けました(;O;)

絵を描きながら、博多八景が完成したら、会える気がすると思っていた里緒だったのに・・・。
でも、外記の気持ちは、自分と同じだったことは、よくわかって救われたでしょう。

外記の妻・妙とその父・善右衛門を酷い人たちだと思っていたけど、本心を明かされ、憎めなくなってしまった。
葉室さんは優しい人だから、極悪人は書けないのかも?


哀しく切ない結末でしたが、不思議と清清しい読後感でいっぱいでした。
それが葉室作品の魅力でしょうか?


いや、しかし、本当に毎回、泣ける感動作を淡々と書いてくださいますね。
早くも次の作品が楽しみですが、まだ読んでいない過去作品があるので、そちらをまた読みつつ新刊を待ちたいと思います!



 
★★★★★




 
 
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51-iQ6eJtQL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2012年4月

市議会議員の選挙アルバイトを始めたことがきっかけで、議員の妻となった私は、幸せな日々を送っていた。激務にもかかわらず夫は優しく、子宝にも恵まれ、誰もが羨む結婚生活だった。だが、人生の落とし穴は突然やってきた。所属する党から県議会議員への立候補を余儀なくされた夫は、僅差で落選し、失職。そこから何かが狂いはじめた。あれだけ優しかった夫が豹変し、暴力を振るうようになってしまった。思いあまった私は……。絶望の淵にいた私の前に現れた一人の女性――有名な弁護士だという。彼女は忘れるはずもない、私のかけがえのない同級生だった……。(「ムーンストーン」より)7つの宝石が織りなす物語。湊かなえ新境地がここに。

                                       (角川春樹事務所HPより)


宝石に纏わるお話7つ。
短編集だけど、最後の2つは連作。

「真珠」
厳格な母親に甘いものを食べることを禁じられてきた真砂子にとって、ム-ンラビットイチゴ味の歯磨き粉は救世主のような存在だった。
けれど、その会社は買収され大好きだった歯磨き粉は販売中止。
復刻を願うばかりに・・・・

真砂子の正体がわかったときには驚いた。
なるほど・・・湊さんらしいオチだな。



「ルビ-」
3年半ぶりに帰省したら、両親と妹は、実家の窓から見える老人福祉施設に住む老人・おいちゃんと交流を深めていた。

ちょっと何者か不審に思っていた、おいちゃんだけど・・・すごいお金持ちだったってことですね?
なかなか面白い展開でした。



「ダイヤモンド」
プロポ-ズをするため訪れたレストラン。
彼女に無事、プロポ-ズを済ませてお店を出たとき・・・・ドアにぶつかり倒れたらしい雀を見つけ助ける古谷治。
後日、治のまえに見知らぬ女性が訪ねて来て、助けてもらった雀だと言う。

あ~面白かった!!
この話、好き!
雀の恩返しなんて、昔話のパロディみたいでした♪
そして、雀が健気で可愛いかった。
最後はちょっと切なかったけど・・・・



「猫目石」
飼い猫の「エリ」を探している阪口夫人。
一緒に探し始める大槻家(夫婦と娘)の3人。
そして木の上にいるエリを見つけ救出。
感謝した阪口夫人は、翌日から大槻家のそれぞれに自分が見た家族の秘密を告げにくる。

あ~阪口さん、嫌なおばさんでした~^^;
何でも教えるのが親切って勘違いしてる。
そして最後は・・・・・これまた湊さんらしいラストでした。



「ム-ンスト-ン」
夫からDVを受けていて、娘にも危険が及んだため守るために夫を殺害してしまった小百合。
弁護士として小百合の前に現われたのは、中学時代の友・久実だった。

中学時代に育まれる友情が素敵だった。
ム-ンスト-ンは2人の大切な思い出だったんですね~。



「サファイア」 「ガ-ネット」
紺野真美は、大学1年のときに中瀬修一と出会い付き合っていた。
が・・・ある日、修一は電車がホ-ムに入る寸前にホ-ムに転落しそのまま亡くなった。
事故なのか?他殺なのか?
失意の真美だったが2人の共通の友人・タナカに「生きろ」と励まされ、タナカから自分が誘い、宝石のアンケ-トをとるバイトを修一もやっていたと聞く。
そのアンケ-トは、悪質商法もどきの宝石を買わせるものだったらしい。
そして月日は経ち小説家になった真美。
作品がヒットして映画化が決定。
主演女優の麻生雪美との対談があり、彼女が以前、悪質商法で指輪を買わされたことがあると話す。

この話は、最後、どうなるのか?
暗く毒のある話になるのか?と予測していたら・・・予想に反して良い話に収まりました。
あ~予想外!
でも、こういう終わり方も良いです!!

小説家の真美と湊さんがダブります(笑)。
自分のことを客観的に書いてるかんじがちょっと面白かったなぁ~。



短編集ですが、ひとつひとつが完成されていて、凄く面白かった。
どれも良かった!!
やはり雀の恩返し「ダイヤモンド」が一番、好き♪

これからも、楽しませてくれる作品を書いてくれるでしょう(^^)



 

★★★★★

 

383342d4.jpeg発行年月:1971年12月(単行本初刊)
       1982年5月(文庫本)



太平洋上に張られた哨戒線で捕虜となり、
アメリカ本土で転々と抑留生活を送った海の兵士の知られざる生。
小説太平洋戦争裏面史


                     (新潮社HPより)



次女が夏休みの読書感想文の課題図書のなかから選んで読んでいたので、
わたしも読んでみました。

太平洋戦争初期の昭和17年4月に太平洋上で敵艦を見つける使命で、漁船に乗り込みその任務中、捕らえられ捕虜生活を送ることになった中村末吉氏。
4年半に及んだ捕虜生活の全貌を著者が取材し、物語にしたという本書。

アメリカ艦隊を見つけるために乗り込み敵艦を探す中村氏たちは、敵艦をみつけ、無線で知らせるのですが、それは敵にも容易に傍受され、直ちに中村氏の船は攻撃により撃沈。
そうなることは予測済みであり、死を覚悟の上の任務でありそれで死ねるのなら名誉なことという考えが当時の最前線で戦うものたちには共通した考え方であった。

が、中村氏の予想に反し、捕らえられてしまった。
命のあることを喜ばす、死ねなかったことを悔やむ。

捕らえた側のアメリカ兵たちにはその考え方は理解不能だったというけれど、読んでいるわたし自身もアメリカ兵の考えと同じ。
当時の日本人の考え方が特異なものだった。

捕らえられてからも、なんとかして自決しようと食事を断ったり抵抗を示す。
捕虜に出される食事は栄養がありそうな豊かなもの。
そして、次第に考え方を変えていく。
必ず、助けが来る。そのとき、弱っていたはダメだ。体力はつけておこうと。


捕虜として背中にPW(prisoner of war)と記された服を着せられている。
アメリカ兵たちは、捕虜になったことは恥じるものではなく、懸命に戦った証であるから誇れるものだと中村たちに言う。
そのときは、アメリカ兵の言葉に共感できるはずもない中村たちだっただろうけど、
人間らしく敵国の日本人を扱い、本土に帰してくれた。

歳月が経ち、振り返ったときに、その言葉に共感出来る物があったのかな?
本書の表題の意味をあれこれ自分なりに考えてみた。


敵国アメリカ。鬼畜米兵。
最前線で懸命に戦う兵たちに捕虜になったら恥だ。自決せよとまでの教育をしていた軍の上層部。
日本の国全体が恐ろしい考え方で洗脳されていたことに驚く。


戦争の物語は沢山、読んできたけれど、淡々と描く捕虜生活のなかで
生活していた日本人の精神的苦悩がよくわかる本。
文章も分かりやすく、物語に没頭して読めた。
ほかの書も読んでみたくなった。


★★★★★
 




51phQkkRknL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2012年2月

刑務所の作業技官の倉島は、亡くなった妻から手紙を受け取る。
妻の故郷にもう一通手紙があることを知った倉島は、妻の想いを探る旅に出る。
夫婦の深い愛情と絆を綴った、心温まる感涙小説。



                  (幻冬舎文庫HPより)



原作は、映画「あなたへ」の脚本家・青島武氏。
本書は、それを原案に創作された物語だそうです。

表紙に映画の主人公・高倉健さんの姿があるので、物語の主人公・倉島英二をそのまま健さんのイメ-ジに重ねるかんじで読みました。

健二とその妻・洋子の会話があり、その後、何人かの物語が続く。
その何人かが、後に健二と接触を持つことになることは想像出来たけれど、そこには、心温まるエピソ-ドがあって感動した。

妻の洋子は、余命短く物語始まってすぐに他界してしまうのだけど、その妻の遺言によって物語は始まっていく。

余命短い妻を思いやる健二の優しさとともに
先に逝く自分に出来ることは何かを考え、遺言のなかに素晴らしいアイデアを記す洋子も素敵だな・・・
良い夫婦だなぁ~としみじみ感じた。


映画はどういう風に展開されるのか?
ちょっと気になるな。

DVD化されたら見てみようかな?


                                         ★★★★

51MNTnfqOHL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2012年5月


この国は戦争に負けたのだそうだ。占領軍の先発隊がやってきて、町の人間はそわそわ、おどおどしている。はるか昔にも鉄国に負けたらしいけれど、戦争に負けるのがどういうことなのか、町の人間は経験がないからわからない。人間より寿命が短いのだから、猫の僕だって当然わからない──。これは猫と戦争と、そして何より、世界の秘密のおはなし。どこか不思議になつかしいような/誰も一度も読んだことのない、破格の小説をお届けします。ジャンル分け不要不可、渾身の傑作。伊坂幸太郎が放つ、10作目の書き下ろし長編。


                                         (東京創元社HPより)


国王・冠人が他国(鉄国)の者に殺され、国は鉄国によって支配されることになってしまう。
次期国王・酸人は、国民を裏切り、鉄国の者の言いなりに。

そんな人間たちのあれこれを冷静に見続け、時には意見する猫たち。
猫のトムの視線で物語が描かれ、また国に昔から居ると伝えられているク-パ-という怪物を退治するために送り出されたク-パ-の兵士の物語が織り込まれながら物語が進む。

途中、登場する名前が、これは猫なのか?人間なのか?とやや悩む箇所はあるものの、物語は面白く
ラスト付近になると、一挙にことの真相が明かされ、「なるほど!!そういうことだったんだ~」と気持ちよく今まで読んでいて「?」だった部分が解明された。

猫たちの会話が猫好きには嬉しい。
「舌が出たままだぞ」と仲間を注意する様子は、今まで飼っていた猫のそのときの表情が浮かんで、思わずニンマリ(笑)。
トムたち猫が、鼠と会話する様子も可笑しかった。
鼠がトムに「猫のみなさんが我々を攻撃しないように伝えて」と頼み、トムが「約束したところで、守る保証がどこにもない」という。
一見冷たいようだけれど、真実を述べて、それでも猫の仲間たちに冷静に向き合おうと言う。
猫と鼠でさえ、そんな風にするのなら、同じ人間同士で命を奪い合うような行為は愚行としか言えないな・・・・なんて改めて思った。

そして、語り伝えられてきたク-パ-のこと。
国王の企み。

終盤、トムが出会った謎の人間が物語のラストの鍵になっていた。


あ~面白かった!
こんな話をよく思いつくものだと毎回思う作家さん。
今回も期待を裏切らない作品を読ませてくれてありがとう~♪


★★★★★
 
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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