初めて恋するときめきを描いた純情恋愛長編
四年間の学生生活を送った京都で、山根は四月一日から工業化学科の大学院生として新たなスタートをきった。学部生のころから暮らしている学生寮には、生物学科の安藤をはじめ電気電子工学科の寺田などゆかいな仲間たちのほか、数学科の龍彦もときどき遊びにやってくる。研究室でその日、明け方までかかってやっと山根は仮説を裏づける数値を導き出したが、教授から簡単な計算ミスを指摘され、ひとり居残りを命じられる。気分転換に糺(ただす)の森を訪れると突然の雷雨に見舞われ、豪雨の中に浮かび上がる満開の山桜の向こうに、白いワンピースを着たそのひとがいた。あれこれ考える前に楼門の下まで駆け寄り、自分の傘を彼女の足もとに置いて、一目散に立ち去っていた山根。ずぶ濡れになったせいか熱を出し、熱が下がってからもどうも様子がおかしい。そして京都御苑での花見の席で、龍彦のガールフレンドの花にいとも簡単に見抜かれる。「山根くん、もしかして好きなひと、できた?」。花は言う、もう一度姫に会いたければ、下鴨神社に毎日参拝すべし-----と。
(小学館HPより)
初恋っていいね~(^^)
京都の大学工学部院生の山根くんが主人公。
ある日、出会った野々宮美月に恋をする。
研究一筋の理系男子。女の子とは縁がなかった山根くんが友達の彼女・花からアドバイスを受けながら初デ-トに。
ハラハラドキドキ。
まるで影から見守る親の気分・・・^^;
一生懸命、美月のことを楽しませようとする山根くんが可愛い!
美月もそんな山根くんの優しい気持ちを汲んで、アクシデントにも笑顔でフォロ-。
お似合いのカップル誕生!!
と思っていたら・・・・・。
なるほど、そういう環境で育ったお嬢様だったのね・・・・。
それでもめげずに告白した山根くんの勇気に拍手!
その告白を誠意をもって受けなかった美月にも拍手!
実らなかった恋だけど、山根くんにとっては良い経験だったと思うし、良い思い出は一生残るでしょう。
恋っていいな~と思わせてくれる物語でした(^^)
京都ならではの風景、季節行事なども織り込まれていて、京都にまた行きたくなります。
葵祭りも見てみたいなぁ~。
姉妹編として先に出ている「左京区七夕通東入ル」も読んでみよう。
そちらは、山根くんがアドバイスを受けた花ちゃんと山根君の友人・龍彦の恋のお話とか。
★★★★
ここは、世界でいちばん小さなア-ケ-ド。
愛するものを失った人々が、想い出を買いにくる。
小川洋子が贈る、切なくも美しい記憶のかけらの物語
(講談社HPより)
世界で一番小さなア-ケ-ドのなかで暮らす人たちとそこに買い物に来る人の物語。
ア-ケ-ドのお店が、ちょっと変わった品物を扱っている。
衣装の端切れを扱うレ-ス屋さん、使用済みの絵葉書などを扱う紙店、義眼、勲章、
遺髪で作られたレ-スなど。
ア-ケ-ドで過ごした幼い頃の思い出を振り返りつつ、今現在のア-ケ-ドで暮らす人たちの話が語られていく。
語り手は、既に大人になった私。
父親はア-ケ-ドの大家さんだった。
そして私は16歳のとき、町の半分を焼き尽くす火災により、そのとき、映画館に居た父親を亡くしている。
心に残ったのは2番目の「百科事典少女」。
幼いとき、一緒にア-ケ-ドの一番奥の中庭にある読書休憩室で本を開いて同じときを過ごしたRちゃんとの想い出が語られる。
Rちゃんは数ある本のなかで百科事典を好んで読んでいた。その様子が実に可愛らしい。
第1巻【あいう】の最初のペ-ジからスタ-トし、第10巻の【ん】まで読み終えるのを楽しみにしていたのに・・・
その後、Rちゃんのお父さん(紳士おじさん)が訪れてRちゃんが開いて読んだペ-ジを鉛筆で書き写すという作業を続ける。
子どもを亡くした父親の哀しみが伝わってきて切ない。
ほかの話も、今はもう居ない人を思い出すような話で切ない。
けれど、その人の思い出は、遺された物たちによって、いつまでも残っている。
それが辛いのか、手放しに来る人もいたけれど・・・。
変わった品物を売る店主たちも皆、個性的でした。
現実離れしたお話ではないのに、小川さんの作品は、現在ある世界とはまた違う世界を感じさせる不思議な雰囲気を漂わせる。
やはり小川さんの作品は良いです!!
表紙の酒井絢子さんの絵が、物語の雰囲気を高めてくれている。
ちょっと気になった遺髪でレ-ス編みって、本当に何処かでやっている商売なんだろうか??
かなり魅惑的。
★★★★★
作家=小説を書く人。
文芸編集者=小説のためになんでもする人。
本を創るために本に携わる人たちのまっすぐな思いに胸が熱くなる一作。
(ポプラ社HPより)
主人公は、老舗大手の出版社で編集担当をする29歳の工藤彰彦。
担当する作家の書いた作品を読んで、自分が読んで出版できないものは「ダメ」と言う。
そして、偶然あるパ-ティ会場で見かけた泥酔気味の作家・家永嘉人を介抱し、自宅に送り届け、そこで家永の書いた小説の原稿を手に取る。
まだ何処にも持ち込んでいない作品。
今は、忘れ去られたかんじの作家・家永だけど、なんとなく読んだ彰彦は、その作品を自分の手で出版したいと強く思う。
家永は、大手出版社では無理なことだと最初は、消極的。
社内に持ち込み、編集長に打診するけど、当初はうまくいかない。
ほかに確実に売れる作家の作品があるから・・・。
大手では無理とはそういうことだったのか?
出版業界の内情が垣間見れるのも面白かった。
若手敏腕営業マンの若王子も最初は、彰彦と衝突したけど、良い本を売りたいという気持ちでは彰彦と共通の思いで、2人は最強のコンビとなる。
若王子の戦略はさすが~!!
作家の家永の娘・冬実との関わり。
祖父の隠し子で自分とは10しか年が違わない叔父・尚樹との思い出。
いろいろなグチャグチャしていたことが、家永の「シロツメクサの頃」が出版されることにより、クリアになっていく。
彰彦の人柄にも好感が持てました。
最初の方でだめだしをした作家と再会した場面もジ~ンとしました。
良い本を作りあげていく人たちの熱い思いにも感動した。
本が好きで、出版業界に興味がある人には勉強になることも多いかも?
素敵な物語でした♪
やはり元書店員の経歴をお持ちの大崎さんだからこそ書ける分野の話かも。
過去作品の「平台がおまちかね」も「背表紙は歌う」も良かったですからね~。
編集者とか書店員のお話、まだまだ書いてくださるかな?
年の離れた「レミちゃん」との不思議な友情
「ふつうの人と違う」37歳の元文学少女レミちゃんと
15歳の作家志望のわたしが過ごした1年。
切ないラストに胸がつまる感動作
(文藝春秋HPより)
中学3年生のとき、両親の大学時代の友人だというレミちゃんが一緒に住むことになった。
レミちゃんは心を病んでいるから、優しくしてあげてほしいと藍子は言われる。
デザイン事務所経営の父と美術雑誌の編集者である母は、忙しく、レミちゃんと一緒の時間を過ごす時間が一番長い藍子は、次第にレミちゃんと心を通わせる。
年の差を感じさせない関係がとてもよかったなぁ~。
レミちゃんは藍子の心の中に秘めたものも汲み取る。
両親には福祉関係の仕事がしたいと言っているけれど、本当は小説家になりたいと思っていることも藍子はレミに告白する。
レミは大学時代、小説を書いていて、両親に言わせると、才能に満ち溢れていたとか。
でも、その才能を開花させることなく・・・・・
受験前の揺れる年ごろの藍子。
推薦入試合格を共に目指す友。
ちょっと好意を寄せた男の子の存在。
中学3年生特有のザワザワした気持ちもうまく表現されていて、自分の同じころが蘇ってきた。
そして、突然、レミと別れる日が来る。
再会出来る場面があるかと思ったけれど・・・・。
しかし、ラストで大人に成長した藍子の姿は、レミと過ごした1年間がとても大きな影響を受けていたとわかる。
自分にとってかけがえのない存在だったんだろうなぁ~。
そんなレミと藍子が再び会える日が来るといいのにな・・・・。
淡々としていたけど、良いお話でした。
★★★★
やっと気づいた。ただ「死ぬなよ」って、それだけ言えばよかったんだ----。
心療内科の薬が手放せない青年、倒産しそうなデザイン会社の孤独な女社長、親の過干渉に苦しむ引きこもり少女。壊れかけた三人が転がるように行き着いた海辺の村で、彼らがようやく見つけたものは?
人生の転機にきっと何度も読み返したくなる、感涙の物語
(新潮社HPより)
3人が出会う前のそれぞれの生い立ちが暗くて重くて、読むのが辛かったぁ~。
田宮由人・・・心療内科にて内服治療中。デザイン会社勤務。
中島野乃花・・・由人の会社の社長。18歳のとき、すべてを捨てて東京に。
篠田正子・・・高校生。母親の過干渉に耐える日々。
それぞれが緊迫した精神状態でそれなりに頑張って生きていて、でも苦しくてどうしようもないという状況で、読んでいるこちらも苦しくなった。
自分が同じ状況に置かれたら・・・と想像してしまって・・・・・。
由人と野乃花は会社の上司と部下の関係。
会社の経営状態が悪化し、破綻寸前のところで、自殺をしようと思いつめる野乃花を由人が見つける。
そして由人がテレビのニュ-スで見た浅瀬に迷い込んだクジラを一緒に見に行こうと提案する。
由人もやっと自分にも幸せな日々が訪れたと思っていたのに恋人に振られ気持ちが落ち込んでいた。
自分も死のうと思っていたのに、目の前で死のうとする人を見て、もうちょっとだけ生きてみようと言う。
人って不思議だなぁ~。
そして、高校生の正子を偶然、見つける。
正子も窮屈な思いをしながら生きていて、そこから逃れたいと思って夜明けの国道を歩いていた。
由人と野乃花は車のなかから正子に声を掛け、クジラを見に行こうと誘う。
ここからは、ちょっと明るい雰囲気になってきて、楽しくなってきた。
クジラが迷い込んでいる海を見に行き、たまたま知り合った雅晴の家に泊めてもらう。
雅晴はクジラ守り隊隊長。祖母と2人暮らしだから遠慮なくと親切。
このおばあちゃんがまた良かったなぁ~。
成り行き上、3人は母親と息子と娘で家族ということになり・・・・・。
クジラが浅瀬に迷い込んだニュ-スは前に見たことあるけど、実際、その土地の人たちには、いろんな影響があるんだ~役所も大変なんだな~と思った。
生きたまま沖に戻してあげれるのが一番いいけれど・・・・。
ここに迷い込んだクジラは耳が聞こえないのでは?ということが調査でわかり、この先海で生きていかなければいけないクジラを自分たちの状況と比べる3人。
クジラはどうなる?
それを見届けた3人はどうする?
結末が気になって終盤は読む速度が速まりました。
ラストは・・・・・よかったぁ~。
静かに泣けました。
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;