発行年月:2012年6月
会えない人と、死んでしまった人と、どこに決定的な違いがあるのだろうか。

世界は変わってしまったと騒ぐけど、いつのまにか戻っている。戻ったみたいに、なっている-----。大阪で、ユーゴスラヴィアで、墨田区で、アフガニスタンで、世田谷で、イラクで、瀬戸内海で、ソマリアで……、わたしは、かつて誰かが生きていた場所を、生きていた。今この時を確かな言葉で捉えた作家の放つ、圧倒的飛躍作。
(新潮社HPより)
タイトルから惹かれるものがあった。
主人公の36歳・平尾砂羽(さわ)は離婚して引越した。
休みの日は一人で戦争に関するドキュメンタリ-番組を見るのがすき。
そして偶然、ネットで見つけた作家・海野十三の敗戦日記を知り、文庫を買い求め、
終戦間際の海野氏の日記を読みながら、あれこれ考える。
自分の祖父も1945年の広島でホテルのコックをしていたと聞く。
砂羽の日常はごくごく普通。
職場の同僚とのたわいない会話。
友人の中井は、自由気ままに旅を続け、その様子を帰って来ると報告してくれる。
そして、中井との会話にたびたび登場の行方知れずの葛井(クズイ)。
ごく普通の生活をしながら、ふとした瞬間に、自分が居るこの場所の
過去に起きたこと、そこに居た人のことを思う砂羽。
旅行中には、たびたびそういう気持ちになることがあるけれど、
自分が今、ここに存在しているのは、いろいろな偶然が重なってのことなんだと
改めて気づかされた。
砂羽が読む『海野十三敗戦日記』・・・ちょっと読んでみたい。
なかなか深い話だった。
廃校が決まった高校の、最後の生徒として入学した僕ら。
平凡な毎日は、熱血中年オヤジ・ジン先生との出会いによって一変した……。
今を生きる全ての人に贈る、まっすぐな青春賛歌。
(中央公論新社HPより)
廃校が決まった東玉川高校の3年生の主人公たち。
松田錬太郎(ネタロ-)、大久保省吾(ヒコザ)、戸川翔太(ドカ)
3人それぞれのキャラクタ-が個性あって楽しい。
そして、錬太郎に堂々告白した、天然キャラの小島史恵(ムクちゃん)がかわいい♪
そこに赴任してきた元は私立高校教師の神村仁。
廃校で学校がなくなっても、気持ちが通じる仲間と出会えた場所で
楽しい思い出があればいいんじゃないかなぁ~?
錬太郎が公園で偶然、見かけたピエロ。
そこでやっていたジャグリングに興味を覚え練習する錬太郎。
ピエロは元東玉川の生徒・藤田智子(フジトモ)。
仁先生とは同級生の設定。
天然キャラのムクちゃんが一番、具体的な将来の目標があるのに驚いたけど、
みんなそれぞれ悩みながら卒業後の自分の道を決めたようで
彼らのこの後のことも知りたくなる。
大きな感動はなかったけれど、読んでいて楽しい
爽やかな青春物語でした♪
★★★
国有化、反日デモで中国軍が動き出す!
2012年、中国は尖閣諸島を「核心的利益」と言い出し、「(尖閣に)軍が施設を作れ!」と軍幹部が号令した。そして日本の国有化で反日デモが巻き起こり、中国海軍のフリゲート艦も進出して、尖閣海域は緊張が続く。中国は潤沢な予算で空母やイージス、ステルス艦などの新鋭艦の開発、配備を進めている。日本は経済に次いで海軍力でも中国に凌駕されるのか?漁民に偽装して中国軍が出てきたら、領土問題ではアメリカも動きにくく、日本独自で対処せざるを得ない。そこで、かつてソ連の潜水艦をオホーツク海に封じ込めてきた元海将(少将)の著者が、日中の海軍力を徹底分析し、起こりうる海戦の様相と自衛隊の戦い方を明かす。「海軍力とは武器の数やカタログ性能ではなく、戦略と統合運用能力による。勝利のカギは海自の新型潜水艦が握ると思う」(著者)
(小学館HPより)
〔プロフィ-ル〕
昭和11年、鹿児島生まれ。
35年防衛大学校卒(第4期)、海上自衛隊入隊。
対潜哨戒機パイロット、在米日本大使館駐在武官、第5、第4航空郡司令、
昔の陸・海郡大学校を統合した学校に相当する統幕学校副校長として
高級幹部教育に従事する。
退官後、NPO法人岡崎久彦研究所複理事長、日本戦略研究フォ-ラム監事。
海軍戦略、中国海軍分析のエキスパ-ト。
何度か訪中し、中国軍幹部と激論を交わす。
専門的な話が多いのですが、述べたいことはストレ-トに伝わってきました!
著者が言いたいことは大きくは3つ。
・尖閣諸島の領有を叫ぶ中国の真の狙いはなにか?
・中国海軍の実力とはどのくらい?
・日本の防衛力はどうあるべきか?
読んでいると、日本政府が中国が主張する領有権問題そのものが存在しないと冷静に対応していることが果たして正しいのか?と思えてくる内容でした。
中国は強行突破で尖閣を獲りに来るという危機感を国民も少しは危機感を持って考えるべきなのか?
そうした場合、日本の自衛隊がどう動くかがカギ。
最初は軍として獲りに来るわけではなく、漁民として尖閣諸島に接近し、上陸するするだろう。
そのときに、ナンとしても阻止しなくてはならない。
本書第7章では、中国が獲りに来たときをシュミレ-ション化した物語を載せている。
シュミレ-ションのように奪還出来ればいいけれど、そうでなかったら・・・・と考えると恐ろしい。
野田政権では、あまり動きがなかった尖閣諸島問題だけれど、
時期政権を執るであろう自民党にはそのへんも毅然とした対応で臨んでほしいと思う。
自民党の公約を見てみると・・・・
「尖閣諸島の実効支配を強化し、島と海を断固守ります」と書かれている。
何らかの形で尖閣諸島に日本の領土だと示す建物なり、形になった実行支配がされるべきなのかも。
そのためには、今の自衛隊のあり方も見直さなければならないこともあり
難しい問題もあるけれど、いざとなったらアメリカが味方してくれると考えるのは
間違いとなると・・・・・。
読みながらいろいろなことを学び、いろいろなことを自分なりに考えました。
★★★★
未来どころか過去の時間も奪われたような……
絶望感に向き合って、見えてくるものは。
平穏に暮らしていたはずの両親。その父が突然いなくなった。
思い出の詰まった実家も売却されていた。
何一つ身に覚えのない母は、
なぜと叫びながらも答えを手繰り寄せていく。
苦しみの量というのは、誰にも一定なのではないだろうか。
自分はその苦しみがこれまで少なかったのかもしれない。
だから今少し、その苦しみがやってきたような気がする。
幸せの量は一定ではないのだと確信している。
幸せは自分しだいで増やせるものだ。
(光文社HPより)
面白かった!!
話は深刻なんだけど・・・。
70歳目前の園原聡子の夫が突然、行方不明。
不倫相手と暮らすことになったという。
そして離婚届け、持ち家は売却されたという。
聡子の手元には自身の名義の預金通帳200万円。
引越しを余儀なくされる。
うわ~最初から凄い。
気が重くなるような深刻な状況。
物語は、冒頭、聡子の夫であった章が自宅で独りで亡くなっていたというところから始まる。
そして、そうなった経緯が時系列で語られる。
大変な状況を助けるのは、聡子の娘・香織と姪の優子。
娘は結婚し、夫と娘2人。
優子は母親を病気で亡くし、父親と暮らす。父親は聡子の弟。
聡子が母親の代わりという気持ちもあり親身になり聡子のことを気遣う。
法律事務所に理不尽な目に遭った母親の無念を相談し、不倫相手を訴えることも出来ると聞き、
章の不倫相手沼田和恵を相手に訴えるが
逆に沼田側からは名誉毀損の訴えが起き、裁判になる。
沼田和恵・・・ひどい女だな。
聡子の夫・章・・・・バカな男だな。
結末は?と気になり一気読みでした!
理不尽な目に遭っている聡子だけど、不幸だと嘆いている様子があまり見られない。
前向きと言うのか?
なんでもっと怒らないのか?と思ってしまう部分もあったが、
終盤、聡子の人柄がわかる言葉で、ああ、こういう考え方もあるんだなぁ~と思った。
自分自身に聡子が言い聞かせる言葉
不幸の量はみんな同じ、幸せの量はその人それぞれ
なるほど・・・・。深い言葉だ!
裁判の結末は、聡子が勝訴し、その後、和恵側は控訴するが、その後の調査で
和恵の証言は偽りが多いことが判明。
勝訴したことよりも、自分には、周りに気遣ってくれる身内が何人もいることに
幸せを感じる聡子。
ああ、こんな素敵な女性の元を去った章が、本当に大ばか者に思える。
ホイッスルの意味もよくわかった。
法律事務所の弁護士・芳川と事務員・涼子も良心的な人たちで
聡子の周りには頼もしい味方がいっぱい。
この先は平穏な日々が続くといいな。
聡子さん、がんばれ!!とエ-ルを贈りたい。
初読みの作家さんだったけど、すごく面白かった。
過去の話にも興味を覚えたので、それも読んでみたい!
★★★★★
絶賛された受賞作に、著者の最新最高の作品を合わせた花束のような短編集!

空港の国際線到着ロビーを舞台に、渦のように生まれるドラマを、軽やかにすくい取り、「人生の意味(センス)を感得させる」、「偶然のぬくもりがながく心に残る」などと絶賛された、川端賞受賞作。恋の始まりと終わり、その思いがけなさを鮮やかに描く「寝室」など、美しい文章で、なつかしく色濃い時間を切り取る魅惑の6篇。
(新潮社HPより)
既に発表済みの6編を集めた書なので、「あ、これ読んだことある」という作品もありましたが
こうして順番に読むと、何か共通するようなものを感じた。
<犬とハモニカ>
空港の到着ロビ-に居る人々、それぞれがどういう経緯でここにいるのかが個別に語られる。
そして、飛行機が空港について同じ飛行機に乗り合わせていた人たちが降りてきて
僅かな関わりがあって・・・・。
犬とハモニカもそこに登場。
空港の情景が目に浮かんでくるような楽しさがあった。
<寝室>
5年間付き合った恋人から別れを切り出されショックを受ける文彦。
文彦には妻子がある。
恋人から言われた言葉「あなたはどのくらい困ったひとかわかっていない」
未練が残ったまま帰宅した文彦だったが、帰宅した途端、その気持ちは薄れベッドで寝ている
妻をみて恋人と別れたことに感謝したい気持ちになる。
まったくもって困ったおとこだ・・・・笑
<おそ夏のゆうぐれ>
付き合って半年の男と旅行。
旅行先で男に向かって「食べたい」という。
文字通りの意味にビックリしたが・・・・食べたのはほんの指の皮膚。
ちょっと怖い女。
食べれば自分の一部になっていつも一緒にいる気分でなにも怖くなくなるからと・・・
一番怖いのは、この女だよ~。
でもなんとなくそういう自分も冷静に見ているかんじで更にゾッ。
話としては面白かった。
<ピクニック>
結婚5年の夫婦。
週末は近所の公園に昼食を持って出かける。
ピクニックは妻の好み。
夫がその理由を聞くと「外で見る方があなたがはっきり見えるんだもの」と。
ちょっと不思議なかんじ。
夫もそれを感じるが・・・・この夫婦の今後がちょっと心配。
<夕顔>
付記にもあったが、これは江國流、源氏ものがたり。
儚く美しい源氏のピュアな恋物語。
<アレンテ-ジュ>
ポルトガルが舞台。
ゲイのカップル、マヌエルとルイシュが、リスボンからアレンテ-ジュに旅行。
旅行先で出会った人たちとのことで、小さな諍いが起きるが、仲直り。
町の様子がなんだか面白い。
街頭もまばらな道の壁に一列に並んだ、おばあさん8人は、江國さんがポルトガルに
旅行中、実際にみたそうだ。
どうしてそんな風に並んで??理由がしりた~い!!
どの話もとってもよかった。
たぶん、江國さんの文章が読んでいてとても心地いいからかな?
それぞれの話のなかで、登場する人たちが、身近な人からの言葉や態度から
ちょっとした違和感とか孤独感を感じる瞬間がうまく描かれていた。
いつもながら表題のセンスには脱帽です♪
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;