下町の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。風変わりなシェフのつくる料理は、気取らない、本当にフランス料理が好きな客の心と舌をつかむものばかり。そんな名シェフは実は名探偵でもありました。常連の西田さんはなぜ体調をくずしたのか? 甲子園をめざしていた高校野球部の不祥事の真相は? フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか?……絶品料理の数々と極上のミステリ7編
(東京創元社HPより)
小さなフレンチレストラン<パ・マル>が舞台のミステリ-が7つ。
カウンタ-席7つ。テ-ブル5つ。
シェフは店長でもある三舟、料理人は志村、ソムリエはレストラン従業員のただ一人の女性・金子、
そして、物語の語り部でもあるホ-ル係りの高築。
表題作は一番最初
タルト・タタン・・・りんごをいっぱい使った焼き菓子。
読んでいたら食べたくなって来た!^^;
ほかのお話にも美味しそうな料理が出てきて、名前も聞いたことないようなものもあって
ミステリ-よりも料理の方が気になった^^;
ミステリ-は、そんなに重くなく、ちょっとした疑問が浮かぶけれど、その理由を知れば、なるほどねと納得出来るようなもの。
最後の「割り切れないチョコレ-ト」が好きだったなぁ~。
チョコレ-ト店<ノンブル・プルミエ>・・・・意味は素数。
ベルギ-に修行で出かけた兄は帰国後は人が変わったようだと妹が言う。
優しい兄だったのに・・・・入院した母親の見舞いに行かないと。
素数の数しか、箱詰めにされたチョコレ-トがない意味は・・・・彼の優しさだったんですね。
第二弾が発行されているようなので、またの機会に読んでみよう。
死んでしまったはずのあの人が見守っていてくれる街……。東京の下町、アカシア商店街に起きた心暖まる、7つの奇蹟の物語。
不思議なことが起きる、東京の下町アカシア商店街。殺人事件が起きたラーメン屋の様子を窺っていた若い男の正体が、古本屋の店主と話すうちに次第に明らかになる「紫陽花のころ」。古本に挟んだ栞にメッセージを託した邦子の恋が、時空を超えた結末を迎える「栞の恋」など、昭和という時代が残した“かたみ”の歌が、慎ましやかな人生を優しく包む。7つの奇蹟を描いた連作短編集。
(新潮社HPより)
朱川さんらしい、懐かしくて、ちょっと怖くて、でも心温まるお話が7つ。
どの話も「アカシア商店街」とその周辺が舞台。
アカシア商店街のなかにある古本屋の年老いた店主が独特な雰囲気で良かった。
店に来るお客さんには、本人には気づかれない心配りを忘れない。
でも、そんな店主にも過去には、哀しい出来事があり、そのことをずっと重たいものとして抱えていたと知る。
あの世と通じていると言われるお寺の存在の怪しさも物語の良い雰囲気づくりを買っていた。
お寺で遊んでいた少女が古本屋の店主に言付けを伝える場面は、ジ~ンとした。
全体の雰囲気も昭和が舞台なので、懐かしい。
表紙の絵もいいなぁ~(^^)
★★★★
著者初の自伝的小説
遺品の中から見つかったテープは、文字の書けなかった母から息子への遺言だった…。社会全体が貧しく、家族間の体温が熱かった時代の感触が濃密に甦る。「在日」の運命を生き抜いた親子二代の物語。
(集英社HPより)
「悩む力」で有名な、姜尚中さんの自伝的小説。
在日韓国人ということは知っていましたが、自身の生まれる前からの家族の歴史が綴られています。
韓国人の両親が日本に来るのは母が16歳のとき。
既に日本に渡り仕事を見つけていた父・姜大禹(カン・デウ)に見初められ、韓国に留まるより、少しは楽な暮らしが出来るかもと父親と共に日本へ。
そして、それは太平洋戦争が勃発する年の初めだった。
東京で暮らしていた二人だったが、父親の妹夫婦も一緒に尾張一宮(愛知県)へ疎開。
東京大空襲は逃れたが、その間もなく、名古屋大空襲に見舞われることになる。
そして、父の弟・テソン(大学の法学部に通い、憲兵となって熊本に赴任中だった)の元へ。
しかし、熊本でも大空襲に遭うがなんとか生き延びる。
そして終戦。
テソンは軍からの呼び出しを恐れ、祖国に戻る。残されたテソンの妻と娘は、父が面倒を見ると約束。
いつか日本に迎えに来ると約束したが・・・・・。
そして熊本で生活を始める。
空襲から逃れる最中に亡くした長男・ハルオの次に生まれたのが賛中(日本名・正男)。
そして鉄男(尚中)は三男。
貧しい暮らしのなかでも、困った家族が居れば助け共に生きる。
日本人でも敗戦後は食べるのがやっとの時代のなかで、食べて行くのは容易ではなかった様子。
しかし、母親は逞しい。
また日本人からは蔑みの言葉や不当な扱いを受ける。
それについては、日本人として申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
けれど、日本人を恨むようなことばが一切、ここには出て来ません。
そのことがさらに申し訳ない気持ちを強くさせました。
辛く厳しい生活のなかで、それでもへこたれず、前だけを向いて生きる家族たち。
そして、「永野商店」を建てる。
廃品を集めて廻る仕事。
トラックがあれば・・・と思い、懸命に勉強して車の免許を取る父。
商店はやがて兄が引き継ぎ、三男の著者が勉学に励む。
そして大学進学、海外留学・・・・。
両親の頑張りがあってこその今に感謝している気持ちがよく伝わって来た。
素晴らしいご両親だなぁ~。
とても感動しました!!
★★★★★
不慮の事故でP免になった戦闘機パイロット空井大祐29歳が転勤した先は防衛省航空自衛隊航空幕僚監部広報室。待ち受けるのはひと癖もふた癖もある先輩たち!? 渾身のドラマティック長篇小説。
(幻冬舎HPより)
ドラマの方を先に見ているので、主人公・空井=綾野剛さん 稲葉リカ=新垣結衣さん
というように俳優さんたちの顔が浮かんで来ちゃいました^^;
それでも原作どおりのイメ-ジなので、頭のなかで場面場面を想像しながら楽しく読めました(^^)
航空自衛隊の戦闘機パイロットの夢を叶えた空井大祐が不慮の事故により、パイロット免許を無くし
配属されたのが航空幕僚監部広報室。
広報班と報道班2つの部署のうち空井は広報班に配属される。
そして、その広報部と一緒に仕事をするのが、帝都テレビ局のディレクタ-・稲葉リカ。
自衛隊の予備知識ゼロなのに、プライドが高く、石頭、残念な美人として広報室にいる
美人なのにおっさんぽい報道部班の柚木典子とは良い勝負。柚木はドラマでは水野美紀。
自衛隊の広報って、こんなことをやっているのね?ととても興味深い内容でした!
有川さんのこの小説こそが、自衛隊の広報活動にかなり活躍するのでは?と思いました。
そして有川さんといえば、コイバナ。
空井と稲葉の段々にお互いを理解し、惹かれていく過程ももちろん、よかったのすが
個人的には、柚木とその後輩にあたる槙との関係が気になりました。
ドラマでもこの辺が楽しみなところ。
そして、ラストにある「あの日の松島」。
3.11があったからこそ、出来たスト-リ-。
有事のときに、どんな気持ちで自衛官たちが任務を遂行するのかがわかり、感動しました。
有川さんの自衛官たちに対する敬意がよく現れた文章でした。
国民ももっと自分たちの国を守ることを使命として日夜、訓練している自衛官たちのことを理解する必要があるなぁ~と思いました。
★★★★★
単行本は2000年6月発行
「あたし殺されたの。もっと生きていたかったのに」。通り魔に襲われた17歳の女子高生安藤麻衣子。美しく、聡明で、幸せそうに見えた彼女の内面に隠されていた心の闇から紡ぎ出される6つの物語。少女たちの危ういまでに繊細な心のふるえを温かな視線で描く、感動の連作ミステリ。日本推理作家協会賞受賞作。
(講談社HPより)
女子高校生・麻衣子が殺される場面から始まる物語。
麻衣子は、綺麗で頭も良くて、誰からも憧れの目を向けられていた少女。
けれど、心のなかには抱えている悩みがあって、保健室の神野先生のところだけ内面を見せていた。
そして、生前、書き溜めていた麻衣子の童話が見つかり、そのお話が物語のなかに劇中作のような形で登場する。
そのなかのひとつが「ガラスの麒麟」。
この時期特有の、繊細な気持ちがよく表されていると思う。
切なくなるようなお話ですが・・・惹かれるものがありました。
そして、麻衣子はなぜ、殺されたのか?
その真相は最後まで謎なのですが・・・・最後にはキチンと明かされます。
全く予測出来なかった!
けれど、物語を振り返ってみれば、なるほど!と納得のいくものでした。
麻衣子と幼いときから家族ぐるみの付き合いのあった野間直子に麻衣子の霊が乗り移ったかのようなことばはちょっと怖かった。
でもそれにもちゃんと理由があったことに後で気づく。
最初から最後まで引き込まれるように読ませるのはさすが!
切なくて哀しい物語ではあるけれど、人の優しさにも触れ、温かい気持ちに最後はなれました。
★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;