発行年月:2013年2月
喪失がももたらす深い愛。感涙にむせぶ小説
「もしもあなたが誰かを本気で愛したら、行き着く先には悲しみがある。悲しみ以外のものはない。なぜならあなたの愛した者は死ぬ。それでも誰かを夢中で愛したあなたは、報われる。私にそのことを教えてくれたのは、一匹の猫だった……」(プロローグより)
著者自身の、愛猫との別れの体験をもとに、喪失→再生、そして愛をとことん掘り下げた、小手鞠るい氏、作家活動の集大成となる、渾身の小説。
猫好きなら、感動できる物語。
物語は、一組の夫婦、冴子と悠起夫と愛猫・プリンが一緒に生活している場面から始まる。
その後、夫婦が出会う前、それぞれまだ独身の若い頃を別々に語る。
2人の側には常に猫が登場。
どの猫も可愛い。
猫って犬ほどの人懐こさは、ないんだけれど、そこにいるだけで、なんだか癒される。
2人は、日本だけでなく、アメリカでもそれぞれ生活していて、外国で出会う猫たちとのエピソ-ドも素敵。
けれど、猫の寿命は、人よりも短くて、病気にもなったり、怪我もしたり・・・・。
冴子と悠起夫が知り合う場面も良かったなぁ~。
猫好きの2人だから巡り遇えたんですよね~(^^)
そして、2人が愛したプリンの死は哀しかった。
小さい生き物なのに、一緒に暮らしていると、亡くしたときは、本当に辛い。
わたしも実家で飼っていた猫を亡くした経験があるので、そのときのことを、久しぶりに
思い出してしまいました(/_;)。
表題の九死一生の意味は?と読むときから思っていましたが、
普通に良く知っている意味のほかに
猫は9回生まれ変わるという意味も含まれていると知り、そんな風に信じていたら
亡くなっても、また何処かで生まれ変わった可愛がっていた猫に会えるかも?
ふと、出会った野良猫なのに、妙に親しげに近づいて来る猫っているから
もしかして、生まれ変わり?とか、思うのも楽しい。
でも、猫好きじゃない人が読んだら、共感できないかもな~。
小手鞠さんは、きっと猫が大好きな人だ!と
ちょっと調べたら、愛していた猫が亡くなってもう結構経つのに、哀しみは消えないっていう
インタビュ-がありました。
ああ、やっぱりね・・・・。
小手鞠さんの猫関係の本もあるようなので、また探して読んでみよう♪
顔にアザがあるアイコ。
研究一筋の大学院生活を送っていたが、
映画監督の飛坂と恋に落ちる。
しかし飛坂は仕事優先、女優とのスキャンダルも飛び出し、
アイコは自身のコンプレックスと向き合うことに…。
(集英社HPより)
表題と本の表紙からも宮沢賢治の『よだかの星』を連想させる。
でも、主人公・アイコの生き方は、芯が通っている感じで、好感が持てました。
変に卑屈にならず、けれど、控えめに目立たないように生きていた。
国立大の物理学科を卒業し、さらにその上の大学院に進んで研究室通いのアイコ。
研究室の仲間たちがみんな、良い人たち。
教授も素敵だなぁ~。
そして、アイコの家族もいい。
素敵な人たちに囲まれて成長していくアイコ。
そして、出版社で働く友人・まりえの頼みである雑誌のルポタ-ジュを受け、その雑誌の表紙写真に載ったことから、少し、世界が広がっていく。
俳優によってアイコを題材にした映画を作ることになり、その監督の飛坂と知り合う。
そして飛坂に惹かれていくアイコ。
自由奔放なかんじの飛坂だけど、アイコには心を開いて自分が今まで抱えていたことも吐き出す。
お互いが胸のうちをぶつけ合える相手に初めて出会ったという感じ。
しかし、そのまま恋愛に発展するのは・・・・・・
アイコの飛坂に対する気持ちが切ない。
気持ちは素直にぶつけたし、それを分かっても貰えたけれど・・・・・
もどかしいかんじが、なんだか凄く新鮮でした!
こういう表現力はウマいなぁ~。
顔に生まれつきのあざを持つ女性の恋愛というと、うまくいくのかいかないのか?とその行方が気になって読んでいたのだけど、うまくいかなくても、アイコが恋をしたということが、アイコを大きく成長させた。
清清しいラブスト-リ-だったと思う。
太田母斑はある程度、治療で消すことが出来るあざだと思うけれど、アイコはその治療をまだ受けない。
そこにある考え方には、納得した。
なるほどな~。そういう風に考えるのか?と。
あざに限らず、身体的コンプレックスを抱えている人は、世の中に沢山いる。
そういう人たちの思いを少し考えてみようと思える話でした。
★★★★★
耳を澄ませば、彼らの声が聞こえるはず----。
「文藝」掲載時より口コミで話題を呼び、かつてない大反響に。
著者16年の沈黙を破る、
生者と死者の新たな関係を描き出した心に深く響く物語。
(河出書房新社HPより)
いといせいこうさんが小説、書くんだ?と思ったので、手に取りました。
本の内容には、何ら前知識なく読みました。
なので、途中で「え?そういう話だったんだぁ~!?」と驚きました。
でも、それが良かった!
なので、もしここを読んでいる人で、まだこれから読まれる人は、これより先は読まないで欲しい。
先入観なしで読むほうが絶対に良いと思うので・・・・(^^)
物語の主人公・芥川冬助は38歳。
杉の木のてっぺんになぜか居て、そこから想像ラジオを発信している。
彼のラジオを聴くリスナ-はどんどん増えていく。
メ-ルをよこしたり、電話をくれたり・・・・想像力で成立しているラジオ番組。
5つの章から成り、第2と第4は、リスナ-側の物語。
ア-クの元に時々、様子を見に来る、父親と兄。
「下の降りて来いよ」と言いながら、自分では降りられないというア-ク。
しかし、最後は、リスナ-たちの助けでア-クは別の場所に旅たつことが出来た!
ア-クの喋りは飄々としていて悲壮感とかあまり、ないんだけれど、
物語を読んでいると、3.11で亡くなった人たちの物語と気づき、哀しさでいっぱいになる。
第2章は、福島に援助物資などを届けた5人が、東京に帰る車中での場面。
彼らは生きている。
が、ふとした拍子にア-クの声が聞こえた者が、
かつて日本にも同じように苦しんで亡くなった人がいたと話す。
広島、長崎、東京、神戸、そして東北。
苦しみを体験していない、わたしたちには、彼らが亡くなった哀しみや悔しさや苦しみは理解のしようがない。
人を想うには、想像力が必要なんだ。
想像力を持って、彼らの哀しみ、辛さを共有してあげることが、供養に繋がるのかな?
う~ん、凄い小説だ!
感動したというより、衝撃的でした!
★★★★★
□いまは独り身である。
□友だちはあまりいない。
□引き出しから、思いがけないガラクタが出てきたことがある。
□自転車に乗れる。
□自由奔放な弟/妹になれたら、とときどき思う。
□道に迷いがちである。
□小さなものが好きである。
煌めくことばの宝箱。
(マガジンハウスHPより)
2人の主人公の物語が交互に登場。
一人は、小さな男・・・・名前は???出てきたっけ?
もう一人は静かな声の深夜ラジオのパ-ソナリティ・静香。
小さな男も静香も独り暮らし。
友達は、2人ともそんなに居ない。
行動範囲がごく限られた場所。
共通点が結構、あるなぁ~と思いながら読んでいた。
そして、後半になると・・・2人に共通する友達・ミヤトウさんの存在が、バラバラだった2人の
生活が、なんだかちょっとずつ良い感じで近づいていく。
2人の語ることばに、納得したり、驚かされたり、感心したり・・・・。
小さな男の疑問・・・・カレンダ-はどうして日曜からなのか?
全くもって同感の疑問だったので、なんだかすごく嬉しかった。
以前、その説明も聞いた記憶があるんだけど・・・。
静香の「消息」の意味って?には、なるほど!
わかっているようで、正確な意味を理解していないことばって結構、あるなぁ~。
ちなみに「消息」の意味は「生死」。
消える=死んでしまうこと
息=生きていること
なので、「消息を絶つ」とは、生きているのか、死んでしまっているのかわからなくなってしまったということ。
ほかにもなるほど、なるほどということがいっぱい出てきて・・・
静香のように、自分が一番そぐわない色の手帳に書き留めておきたい!!と思ってしまった(笑)。
静香は一番、そぐわない派手な真っ赤な手帳を鞄に忍ばせてメモしていたけれど、
わたしなら何色だろか?
ドギツイピンクとかかなぁ~?
ラストは、この先、静かな男と静香がミヤトウさんを介してご対面なんて場面を勝手に
想像させていただき、楽しい気分になりました♪
希望は、国ではなく、あなた自身の中で、芽吹きを待っている。
多くの人々が、将来への不安を抱えている。だが、不安から目をそむけず新たな道を探る人々がいる。婚活、再就職、家族の信頼の回復、友情と出会い、ペットへの愛、老いらくの恋…。さまざまな彩りに充ちた「再出発」の物語。
(出版:幻冬舎)
55歳頃に転機を迎えた男女の物語が5つ。
「結婚相談所」
54歳で離婚した中米志津子。
離婚の原因は、60歳で定年退職した夫と一緒に居るのが苦痛だから。
しかし、58歳でこの先の経済的不安と夫以外の人と付き合ってみたいという2つの理由で
結婚相談所通いを始める。
う~ん、離婚したのに、また再婚しようとする気持ちが理解できない。
経済的不安があるのに、なぜ離婚したんだ???
「空飛ぶ夢をもう一度」
6年前、出版社勤務だったが54歳でリストラされた因藤茂雄。
妻のパ-ト収入だけではこの先、不安なので再就職先を探すがうまくいかず・・・。
なんとか見つけた交通誘導員の仕事中に、中学時代の同級生・福田に再会。
中学時代の思い出などを語る。
茂雄が友の死の後、思うことばに、そうだよ!!と強く共感!
しかし切ない話だなぁ~(;_;)
「キャンピングカ-」
冨裕太朗は58歳で会社の早期退職に応じた。
自由な時間が出来たらやってみたかったのは、キャンピングカ-で妻と日本全国を旅行すること
が。。。妻は乗り気でない。
全く、妻に同感!!
この夫は何を考えているんだか??
一緒に大喜びで、旅行に行く妻は、たぶん、居ないんじゃないかなぁ~?
ま、でも他に生き甲斐を見つけられたようでホッとした。
「ペットロス」
高巻淑子はマンションで定年退職した夫と2人暮らし。
息子が海外赴任で居なくなった寂しさを埋めるため犬を飼うことを夫に認めさせて柴犬のボビ-を飼い始める。
だが、ボビ-は亡くなってしまう。
淑子の夫は、ぶっきらぼうなだけで実は優しい。
妻が病に倒れたボビ-と過ごす時間を横で見ながら、自分も同様に心配していた。
ボビ-の命と引き換えに、夫婦は信頼関係を深めた。
5つの話のなかでは、一番、感動的でした(^^)
「トラベルヘルパ-」
下総源一は63歳の長距離トラック運転手。
本を読むのが趣味になり、本屋に入りそこで、堀切彩子と知り合う。
上品な彩子と親しくなりファミレスでのデ-トにうきうき気分。
しかし10回目のデ-トで明かされたこと。
彩子の生活は厳しい状況だった。
辛い生活のなかで彩子も源一と会うことでひと時の希望があったのかなぁ~?
なんだかこの話も切ない。
でも辛い状況でも理解してくれる誰かがいれば、心強いだろう。
結構、気分が落ち込む話が多かったな。
55歳からの・・・・とあるけれど、転機がおきるのがそのくらいで
実際の主人公達は、それから何年か経ったかんじ。
健康で前向きな気持ちで生活出来る力を今のうちに養っておかなきゃいけないなぁ~
なんて思ったけれど、どうすればいいんだろ???
とりあえず、心身を鍛えてるために適度な運動と規則正しい生活を続けよう!!と
なんだか強く思った^^;
★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;