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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2022年7月


真っ直ぐだから怖い、純粋だから切ない。あの人のこと、笑えますか。
“普通”の可笑しみから、私たちの真の姿と世界の深淵が顔を出す。
大将とぼっちゃんが切り盛りする中華料理店とんこつで働き始めた「わたし」。「いらっしゃいませ」を言えるようになり、居場所を見つけたはずだった。あの女が新たに雇われるまでは――(「とんこつQ&A」)
姉の同級生には、とんでもない嘘つき少年がいた。父いわく、そういう奴はそのうち消えていなくなってしまうらしいが……(「嘘の道」)
人間の取り返しのつかない刹那を描いた4篇を収録、待望の最新作品集!


                   (講談社HPより)




どの話も面白かった。

主人公たちは、だれも一生懸命なんだけれど、ちょっと不器用というか
融通が利かないというか・・・・


<とんこつQ&A>
中華料理店「とんこつ」で働き始めて7年の今川の話。
最初は接客がまったくできず、勤務時間中、直立不動でいるのだけど
メモに書いた言葉を読むという方法で、どんどん接客が出来るようになっていく。
普通、そこまで行く前にクビになりそうだけど、店主と息子さんも
少し変わっている・・・・^m^
でも、似たような人が新しく加わり・・・

今川がそれでも、ずっと働き続けられてよかった。


次の<嘘の道>は、ちょっと怖い。
町内の嘘つき少年のことが度々、家族間の会話に出てきて
「そういう奴はいつの間にか消えちゃうんだよ」と父親が言う。
それは姉と弟の身に降りかかることになるという話。

<良夫婦>
妻の友加里が、ある日、偶然、知り合った小学生・タム。
以後、友加里はタムのためにお菓子を用意して少年の下校を待つように。
いつもお腹が空いているし、がりがりに痩せているのは虐待じゃないか?と
夫にも相談。
痣がないか?も観察するように。

思い込みは、危険だけど、気持ちはちょっとわかるかな?


<冷たい大根の煮物>
工場勤務を始めた19歳のわたし。
ほかの人から「芝山さんにはお金を貸したらダメだよ」と忠告される。
芝山さんに近所の安いスーパーを案内することになり、その帰り
アパートに。帰るまえに味噌汁を作ってくれて、以後、度々、アパートで
夕食のおかずを作って置いていってくれる。
自分の家の夕食も作って持ち帰る芝山さん。
ある日、お財布を忘れちゃったというので、1万円を貸す。
その日は、大根の煮物を作ってくれたが、翌日、芝山さんは会社を辞めたと
聞く。

1万円は返ってこなくても、それ以上のものを貰ったとおもうな~。
ちゃんと自炊するようになったのは芝山さんのおかげだものね。


前回読んだ「父と私の桜尾通り商店街」も短編集だったけど
こちらも面白かった。




                     ★★★★
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発行年月:2020年4月


「辻堂ミステリの最高傑作であり真骨頂。本書で秘密を解くのは探偵ではない。読者である」先生、聞いて。私は人殺しになります。お願いだから、じゃましないでね?(「教師と児童」)わたしだって本当の気持ちを書くからね。ずっと前から、ムカついてた。(「姉と妹」)嘘、殺人予告、そしてとある告白……。大切な人のために綴られた七冊の交換日記。そこに秘められた、驚きの真実と感動とは?――この緻密な仕掛けを、是非読み解いてください。

                  (中央公論新社HPより)



先に読んだ作品より、こちらは明るいかんじでよかった。

最初の話<入院患者と見舞客>は
10歳(小学4年生)で白血病の治療のため入院中の愛美とそこに訪れて愛美と
交換日記を交わす先生の話。
愛美は快方に向かい退院し、小学6年生で学校に通い始める。

以後、色々な交換日記の話が続くのだけど、
それらがどれも感動的。
読んでいくと、最初の登場人物2人と関わりの在った人たちの話なんだと気づく。


愛美は大人になり小学校の先生になって、担任になったクラスの子どもたちと
交換日記をしていく。
2番目の話<教師と児童>は、大杉寧々香を殺したいと思いますという児童の
衝撃的な告白。
交換日記に対しても否定的。
そんな児童があることを機に変わっていく話。
以下
第三話 姉と妹
第四話 母と息子
第五話 加害者と被害者
第六話 上司と部下
第七話 夫と妻


ネタバレ・・・自分の覚えかき

第一話の愛美と交換日記をしていた先生は、入院中の子どもの勉強をサポートする
先生・坂田小百合。
51歳の時、孫のさくらとすみれとの散歩中に孫をかばって交通事故死。
事故の加害者は飲酒運転だった。そしてその助手席に乗っていたのが
第五話の加害者・礼二。
礼二は坂田の直接の加害者ではないが、見舞いに訪れ、坂田と交換日記を
していたが坂田が脳内出血により亡くなったと知り、命日には事故現場に花を持って
訪れていた。
そんなある日、出会ったのが愛美。
二人は言葉を交わしやがて結婚。
礼二は坂田と会う時は、「伊吹」として会っていたが、加害者の名前を使っていた。
本名は「葉山礼二」。


色々なしかけがあり伏線がのちに判明する。
途中、事故死したのは愛美?と勘違いした・・・(^^ゞ

この著者の本は、過去の作品もこれからの作品も全部、読みたい!!



                     ★★★★★



発行年月:2020年12月


2021年へ!時代を貫く親子三代の物語
 スミダスポーツで働く泰介は、認知症を患う80歳の母・万津子を自宅で介護しながら、妻と、バレーボール部でエースとして活躍する高校2年生の娘とともに暮らしている。あるとき、万津子がテレビのオリンピック特集を見て「私は・・・・・・東洋の魔女」「泰介には、秘密」と呟いた。泰介は、九州から東京へ出てきた母の過去を何も知らないことに気づく。
 51年前――。紡績工場で女工として働いていた万津子は、19歳で三井鉱山の職員と結婚。夫の暴力と子育ての難しさに悩んでいたが、幼い息子が起こしたある事件をきっかけに、家や近隣での居場所を失う。そんな彼女が、故郷を捨て、上京したのはなぜだったのか。
 泰介は万津子の部屋で見つけた新聞記事を頼りに、母の「秘密」を探り始める。それは同時に、泰介が日頃感じている「生きづらさ」にもつながっていて――。
 1964年と2020年、東京五輪の時代を生きる親子の姿を三代にわたって描いた感動作!前作『あの日の交換日記』が大好評!!いま最も注目を集める若手作家・辻堂ゆめの新境地となる圧巻の大河小説!!

                  (小学館HPより)



初めて読む作家さん。
何かでお薦めされていた「あの日の交換日記」も読みたいと思い、こちらも
図書館で借りてみた。



東京オリンピックが開催された1964年と二度目の開催となった2020年。
両方の年代を交互に物語が進む。


1958年、15歳の万津子は中学を卒業し、熊本から愛知県の紡績会社に集団就職。
そこでバレーボールをはじめ、仕事の後はバレー部の練習。
仲良しの友達も出来て充実した毎日。
18歳・・・見合い話が実家から。
相手は熊本大学の工学部を出たとか。
自分のような農家の貧しい学歴もない者には、勿体ないくらいの人だと
万津子自身も思ったが、話はとんとん拍子に進み、夫となった佐藤満の会社の
社宅で暮らし始める。

けれど、悲劇がここから・・・
満は、すぐに癇癪を起し、暴力も。
実家に帰りたいが母は「辛抱がたりない」と。
そして妊娠。生まれた泰介は夜泣きが酷く、成長すると益々、手が付けられないほど
の癇癪を起す。
次男の轍平より手がかかる。

2020年では、泰介が50過ぎ。
部署が変わり慣れない事務仕事でミスを繰り返したり、遅刻も多く
部署内では、なんとなく浮いたかんじ。
自分より年下の者が上司で、周りもみな若く仕事が自分よりも出来る。
そんな状況でいることに辟易している。

イライラを家に帰り、母の万津子に当たる。


泰介が、若い頃の満にそっくりだなと思った。
高校生の娘の一言で、ADHDのことを知った泰介が、少しずつ変わっていくのは
嬉しかった。
こんな風に自分から受診して治療を受けようとする人は珍しいかも。
でも、最後、母親に感謝の気持ちが持てるほどになって、良かった。


重たい話だったけれど、良い話だったな。




                   ★★★★



発行年月:2019年2月


違和感を抱えて生きるすべての人へ。不器用な「私たち」の物語。
桜尾通り商店街の外れでパン屋を営む父と、娘の「私」。うまく立ち回ることがきず、商店街の人々からつまはじきにされていた二人だが、「私」がコッペパンをサンドイッチにして並べはじめたことで予想外の評判を呼んでしまい……。(「父と私の桜尾通り商店街」)
全国大会を目指すチアリーディングチームのなかで、誰よりも高く飛んだなるみ先輩。かつてのトップで、いまは見る影もないなるみ先輩にはある秘密があった。(「ひょうたんの精」)
平凡な日常は二転三転して驚きの結末へ。
『こちらあみ子』『あひる』『星の子』と、作品を発表するたびに読む者の心をざわめかせ続ける著者の、最新作品集!
収録作品
・白いセーター
・ルルちゃん
・ひょうたんの精
・せとのママの誕生日
・モグラハウスの扉(書き下ろし)
・父と私の桜尾通り商店街

                   (角川書店HPより)



短篇集だったんだぁ~。
6つのお話、どれも変わった人たちが出てくる話で決して読んでいて楽しい
ものではないのだけど、不思議な魅力があるのは何でだろ?


主人公たちの行動は、「え?」と不思議に思うものなんだけれど
嫌悪感を抱くと言うより、あまりの不器用さに同情するというか・・・

最初の<白いセーター>では、恋人から昨年、クリスマスプレゼントに貰った
白いセーターを着る機会がなかなかなかったけれど今年のクリスマスイブの夜
二人で夕飯を食べにいくときに着ようと決め、急に義姉から子どもたちを
昼間、教会のクリスマス会に連れて行って欲しいとお願いされた主人公。

その先で起きた不運には・・・・あら~っと同情。
会の途中で大声を出した4歳の子を黙らせようとしたのだけど
口を塞いで殺そうとしたと他の子どもたちに言われてしまうことに。

<ルルちゃん?>と<ひょうたんの精>は、ちょっと不思議系。

<せとのママの誕生日?は、想像するとちょっと怖かった。

<モグラハウスの扉>も工事現場で働くモグラさんと小学生のやり取りは
ちょっと、ほのぼのしたものを感じたけれど、そこに学童の女の先生が
加わると途端に不穏なかんじになって最後は、やはりちょっと怖い。

表題作の<父と私の・・・・>も商店街でパン屋を営む父と娘の話で
まあ割と普通な話かな?と思ったら・・・やはり最後は期待通り
「えぇ~!?」という終わり方。


期待通り、変わった人たちが出てくる変わったお話ばかりで
それぞれ面白かった。



                    ★★★



発行年月:2024年7月


舞台は帝国ホテル。じんわり心が温まる、42編のショートストーリー
母に教わった「バーの味」、夫婦で訪れた憧れの上高地……。
全国3か所の帝国ホテルを舞台に織りなす、めくるめく部屋の物語。
帝国ホテル発行の会報誌「IMPERIAL」で11年間にわたって連載した、42編のショートショートを一冊にまとめました。
幻想的な夢の世界を描くものもあれば、現実の夫婦を描いたものもあり、また過去と現在を行き来して語るものも。42編すべて趣向の違う、角田光代さんの幅の広さを思い知る短編集です。
1話5ページで読める短い文章量ながら、じんわりと心が温まり、時には泣け、時には笑えるストーリーが詰まっています。
(収録作)
クロークに預けたままの、亡夫の荷物。夫の秘密がそこにあるのか――開いた鍵の先に、妻が見たものは(秘密を解く鍵)
半年に一度しか会えない小学校6年生の娘。連れだってブフェに行くも、娘はなかなかマスクを外さない(父と娘の小旅行)
窓から射しこむ朝の光、錆びた流し台にしたたる水滴の音――ホテルで眠る夜、どこかで出会った部屋たちの夢をみる(表題作・あなたを待ついくつもの部屋) 
他、全42編

                  (文藝春秋HPより)





ひとつひとつの話は短いけれど、ちゃんと物語があって、それは素敵なものばかり。

ホテルは3か所?
上高地と東京はわかったのだけど・・・・(^^ゞ

ホテル利用することが滅多になくなってしまったけれど、若い頃はランチで
利用したりしたなぁ~。

あとは、結婚式を挙げたり、友達の結婚式に呼ばれたり。
もう考えたら10年以上、ホテルには足を運んでいないかも・・・。

でも、きっと利用したことのあるホテルに行けば、そこでの思い出が
この物語の主人公たちのように蘇ってくるだろう。


亡くなったひとを偲んだりする話も結構、あったな。
全体的に温かい気持ちになれる話が多く、楽しい1冊だった。



                  ★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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